名探偵プリキュア VS 百尺様   作:ブラック

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初投稿ゆえ、投稿手順にかなり手間取ってしまいました……。

原作では、百尺様は劇中劇というオチでしたが、この作品では、そうではなかった世界線という設定です。


少し(?)変わった依頼人

 2026年、某所――。

 

「ぶぁっくしょぉぉぉぉい!!!」

 

 とある田舎の村の山奥で、辺り一帯を揺るがすような巨大なくしゃみが響き渡った。

 

 それが、始まり。

 

 

 

 

 

 

 1999年、まことみらい市。

 

「ふ~む……」

 

 この町にある探偵事務所、『キュアット探偵事務所』で、明るい茶髪をダウンシニヨンにした少女が、とある1冊の本を読んでいた。

 

 彼女の名は『明智あんな』。

 

 とある事情で2027年から1999年にタイムスリップし、色々あって変身ヒロイン『プリキュア』となり、今は『名探偵プリキュア』の1人として、『怪盗団ファントム』と『マコトジュエル』を巡る戦いをしている、色々と普通ではない14歳の女の子である。

 

「あれ? あんな、その本何?」

 

 あんなに声をかけたのは、小豆色の髪をツーサイドアップにした少女、『小林みくる』

 

 あんなと同じ14歳で、この時代であんなと出会い、色々あってもうひとりのプリキュアとなった、あんなのパートナーの女の子である。

 

 ひょいっと、後ろからその本を覗き込んだ直後、

 

「ひぃ!!?」

 

 短い悲鳴を上げて飛びのくように距離をとるみくる。

 

「あああんな? その本何!?」

 

 あんなが今開いているページには、古く、おどろおどろしい絵柄で描かれた『高女』という妖怪の紹介が書かれていた。

 

「あ、みくる怖いの苦手だっけ」

 

 ぱたん、と本を閉じ、頭をかく。

 

「いや~。『恐怖の大王』ってのを調べようかと思ってたんだけど……」

 

 ここ最近になって話題が広まりつつある、世界的に有名な大予言に記される『恐怖の大王』。

 

 怪盗団ファントムのボス『ウソノワール』は、マコトジュエルの力でそれに該当する存在になろうとしているようだが……。

 

「いつのまにか脱線した、と」

 

 ため息とともに声を出したのは、金髪を首の後ろで一つに束ね、額にゴーグルを被った少年、『ジェット』。

 

 一見すると少年だが、その正体は200年以上の時を生きる妖精で、あんな達の活動をサポートする様々なアイテムを開発した発明家。キュアット探偵事務所の実質的な責任者でもある。

 

「あはは……つい……」

 

「ポチぃ……」

 

 あんなが笑ってごまかす横を、ピンク色のディフォルメされた熊のぬいぐるみのような妖精がふよふよと浮かびながら、みくるへと抱き着いていった。

 

 時空の妖精『ポチタン』。

 

 あんながこの時代に来るきっかけになった、あんなとみくるのおとも妖精。

 

 今は力を使いすぎて幼児化してしまった、謎多き存在である。

 

「も~。ポチタンも怖がってるじゃない」

 

「あぁ!? ごめんねポチタン!」

 

「やれやれ」

 

 とりとめのない探偵事務所の日常の一幕の中、不意に、来客を告げるチャイムの音が響き渡った。

 

「あ。は~い!}

 

 急いであんなが出迎えに行き、扉を開けると、そこには――

 

「『きゅあっと探偵事務所』とは、ここで合っているかい?」

 

 白髪のお婆さんと、

 

「……」

 

 何故か無言無表情で激しく踊り続けるお爺さんの姿があった。

 

「うえぇぇぇぇッ!!??」

 

 

 

 

 

 

「おやおや。随分と可愛らしい探偵さんたちだねぇ」

 

「あ、あはは……。どうも……」

 

 2人を中に案内して席に着き、話を聞くことにしたあんなたちだが、その顔は引きつらざるを得なかった。何故なら……。

 

(何でお爺さん踊ってるの!?)

 

(集中できないんだけど!?)

 

(誰かツッコめよ!?)

 

(ポチィ!?)

 

 無言無表情で激しく踊り続けるお爺さんの存在が、気になって仕方がなかったから。

 

 あまりにシュールすぎて誰もツッコめずにいたが、このままでは話が進まないので、ジェットがひとつ咳払い。

 

「……ところで、2人とも。まだ名刺を渡してないんじゃないか?」

 

「「あ!」」

 

 踊るお爺さんのインパクトで、うっかり忘れていた2人は、慌てて名刺を取り出す。

 

「あ、改めまして。キュアット探偵事務所の明智あんなです」

 

「小林みくるです」

 

「天才発明家、ジェット博士だ」

 

「これはこれは。ご丁寧に」

 

 名刺を受け取ったお婆さんは、微笑ましいものを見るように頬を緩める。

 

「婆たちは見ての通り、どこにでもいる田舎から出てきたお上りさんだよ」

 

(((踊り続けるお爺さんがどこにでもいてたまるか!!!)))

 

 3人の心が1つになったが、ツッコミを入れたい衝動をこらえ、気を取り直して本題に入る。

 

「そ、それで、ご依頼のほうは……?」

 

「うむ。人を探してほしいんだよ」

 

 そう言いながら、お婆さんは懐から1枚の写真を取り出した。

 

 そこには、白髪で厳つい顔つきをした初老の男性の姿が写っていた。

 

「『タチバナ』というんだけどね、この町に来てはぐれてしまってねぇ……。探そうにも、婆たちは土地勘がなくてねぇ」

 

「なるほど。確かに、知らない町で闇雲に探し回れば、自分たちまで迷子になりかねない。高齢ならなおのこと。体力的な問題も――多分、ある。普通は」

 

 踊るお爺さんから目をそらしながら、歯切れ悪く言うジェットに、あんなとみくるも苦笑しつつも頷きあうと、勢い良く立ち上がった。

 

「任せてください! すぐ見つけてきますね!」

 

「写真、お預かりしますね」

 

「よろしく頼むよ。タチバナには『鉄火巻イクラちゃん推しの婆が探していた』と言えば伝わるはずだよ」

 

「「!?」」

 

 突然出てきたよくわからない名前に、動き出しかけた2人の体が止まる。

 

「鉄火巻き……」

 

「いくら、ちゃん?」

 

 聞いたことのない名前に、思わず聞き返す。――聞き返してしまった。

 

 次の瞬間。

 

 お婆さんは両手の指を合わせてハートマークを作ると、ガンギマった両目をくわっと見開き、口が裂けるように弧を描いた。

 

「「ひいぃぃぃぃぃッ!!!?」」

 

「ポチィッ!!?」

 

「うおぉッ!!?」

 

 突然豹変したような狂気的な笑顔に、あんなとみくるは思わず恐怖して抱き合い、ポチタンもポーチのふりを忘れて悲鳴を上げ、ジェットも椅子からずり落ちて机の下で妖精の姿に戻ってしまった。

 

 皆が怯えているのをよそに、お婆さんは早口でまくし立てる。

 

「あの鮮烈なデビュー配信以来、僅か1年でスターダムにのし上がった、個人勢ナンバーワンと言っても過言ではない、いま一番熱い配信者の鉄火巻イクラちゃんだよ。そして――」

 

(ごめんなさい知りません! でもこれ絶対知らないって言っちゃダメなやつ!!)

 

(お婆さんその笑顔怖い!! 『個人税』? って何!?)

 

 早口でまくし立てるうちに、どんどんその笑顔が深みを増していく様に震え上がったあんなとみくるは手に手を取り合うと、

 

「さ、探しに行ってきまぁ~~す!!」

 

「ジェット先輩あとはよろしく~~!!」

 

 机の下で人の姿に戻ったジェットを置いて、一目散に探偵事務所から脱出。

 

 後には「お前らズルいぞぉぉぉ!」というジェットの悲鳴が残されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 どこかにある、怪盗団ファントムのアジト。

 

 劇場を模して造られたそこに、怪盗団ファントムのメンバーが一堂に会していた。

 

 貴族風の帽子に騎士のような鎧、そして仮面で顔を完全に覆い隠した怪盗団ファントムの首領、『ウソノワール』。

 

 緑色の長髪に黒いシルクハットを被った青年、幹部『ニジー』。

 

 ピンク色の長髪をハーフポニーテールにし、頭にサングラスを乗せたギャル、幹部『アゲセーヌ』。

 

 逆立った銀髪、顔に歌舞伎風のメイクをしたガタイのいい男、幹部『ゴウエモン』。

 

 そして、くすんだベージュのセミロングヘアに、黒いリボンで飾り付けた少女、幹部『キュアアルカナ・シャドウ』 こと、『森亜るるか』と、彼女の膝の上に座る、紫色のディフォルメした狐のぬいぐるみのような姿をした、占いの妖精『マシュタン』。

 

 厳かな空気が漂う中、ウソノワールの前に置かれた白紙の本に文字が浮かび上がる。

 

 『未來自由(ミラージュ)の書』。

 

 未来を記すこの書に、新たな予言が記された。

 

 唯一この書を読み解くことのできるウソノワールが、その内容を告げる。

 

「未來自由の書が新たなマコトジュエルを示している。――『異邦人が抱く、熱き思い出の鳥』」

 

 告げられたその予言に、ニジーが自信ありげに立ち上がった。

 

「ウソノワール様、この僕にお任せください」

 

「……いいだろう。行け、ニジーよ」

 

「ライライサー!」

 

 下命を排し、怪盗団ファントム特有の敬礼をするニジーの脳裏に、紫色のプリキュアの姿が浮かぶ。

 

(『異邦人』……。奴のことか!)

 

 確信を得たニジーは、不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 ニジーが出撃し、ウソノワールもどこかへ姿を消した後。残された幹部たちは暇を持て余していた。

 

 マコトジュエル奪取に専念するよう言われているうえ、幹部同士で協力し合うこともあまりないため、指令を受けなかった幹部たちはどうしても手持ち無沙汰になってしまう。

 

 そんな中、るるかは1枚の広告を手にしていた。

 

 とある有名フライドチキンチェーン店の広告で、るるかの視線は『辛さと冷たさで暑さを吹き飛ばせ! 数量限定・激辛チキン&特製いよかんアイスのスペシャルサマーセット』の紹介に向けられていた。

 

 無表情のままじっと眺めているだけのようにも見えるが、マシュタンはなんとなく察していた。

 

(特製いよかんアイスに興味はあるけど、激辛チキンで悩んでいるのね)

 

 マシュタンとしても、いつもアイスばかり食べているるるかが、熱々の激辛チキンを頬張る姿は想像しづらいが――。

 

(……あら? ひょっとしてセクシー?)

 

 マシュタン補正で妙に色気のあるイメージになったそれに、外では見せられないわね、と心の中で独り言ちる。

 

 そんな折、

 

「おう、何見てるんだ?」

 

 無駄に元気な声で、ゴウエモンが歩み寄ってきた。

 

 幹部同士の仲があまり良いとは言えないなか、彼は後輩のるるかに対して、先輩風を吹かせながらも面倒見がよく、るるかたちのほうも、鬱陶しがりながらも、口で言うほど嫌ってはいなかった。

 

「……ゴウエモン、ちょうどよかった」

 

 るるかは手の広告をゴウエモンに見えるよう掲げると、言葉少なに問いかけた。

 

「フライドチキンは好き?」

 

(あっ……)

 

 マシュタンは察した。

 

(激辛チキンを押し付ける気ね、るるか……)

 

「お! 珍しいじゃねぇか。お前から飯に誘うなんてよ」

 

 るるかの意図を露とも知らぬゴウエモンは、珍しい後輩からの誘いに素直に破顔した。

 

「フライドチキンか。俺は和食のほうが好きなんだが、いいぜ。付き合ってやる!」

 

 普段、塩対応(塩分控えめ)な後輩からの誘いが嬉しいのか上機嫌なゴウエモンに、マシュタンはほんの少しだけ同情するのであった。




※『高女』:八尺様の都市伝説は2008年ごろに掲示板に投稿された創作が始まりだそうです。1999年には存在しないため、代わりに、八尺様の元ネタの1つといわれる妖怪・高女にしました。

※ゴウエモンが和食のほうが好きというのは、満面の笑顔でどら焼きを食べていたり、抹茶味のアイスを選んだ場面からのイメージです。(アイスを選ぶときは「王道はバニラだが、イチゴも捨てがたい」と言っていたので、洋風も嫌いではないと思います)
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