名探偵プリキュア VS 百尺様 作:ブラック
※7/25:微修正しました。
タチバナ氏の足取りは、思いのほかあっさりと掴めた。
聞き込み調査で得た情報をもとに公園に向かうと、そこには、片手でお腹を抑えながらベンチに座り込んだ男が1人。
うつむき加減だったが、写真の顔と見比べたあんなとみくるは、頷きあってから声をかける。
「あの、タチバナさん、ですよね?」
「……君たちは?」
「私たち、探偵なんです」
「お婆さんに頼まれて、あなたを探していました」
「お婆さん?」
「鉄火巻イクラちゃん推し……のお婆さん、と言えば伝わる、と」
鉄火巻イクラの名で先ほどのガンギマリスマイルを連想して、思わず表情が引きつってしまったあんなとみくるだったが、タチバナは気にした風もなく納得を返した。
「……あぁ、あの婆さんか。すまない、迷惑をかけた」
「い、いぇ。……あの、どこか具合が悪いんですか?」
写真の中の顔よりも弱弱しい雰囲気にあんなが心配するが、タチバナは首を横に振る。
「いや、いたって健康だ。ただ……」
そこで、タチバナのお腹から大きな音が鳴った。
「……財布を忘れてしまってな。腹が減っているだけだ。大したことじゃない」
タチバナはそう言うが、目の前で弱っている人間を放っておけないのが、あんなとみくるという少女たちだった。
「じゃあ、事務所に行く前に何か食べていきますか?」
「お金なら、わたしたちが立て替えておきますから」
「! いや、子供にそこまでさせるわけには――」
断ろうとしたタチバナだが、さらに大きな音を立て、痛みすら感じるお腹を押さえると、苦し気に呻いた。
「ぐ……。すまない、世話になる。……俺もジジイということか。歳には勝てんな……」
「気にしないでください。……ところで、おいくつなんですか?」
「もうすぐ80になる」
「「嘘ぉ!!?」」
見た目以上の高齢に、びっくりして思わず素が出る2人。
「もっと若いかと思ってた……」
「体格もがっしりしてるし……」
「フッ。見た目だけでも若く見えるというなら、若いころに鍛えた甲斐があったというものだ。――では、行こうか」
少女2人からの、若く見えるという感想に気を良くしたタチバナは、空腹の体に喝を入れて立ち上がる。
「どこに行きますか? おいしいケーキとアイスを出してくれる店を知ってますけど」
「甘いものも悪くないが、空きっ腹だからな。ここはガッツリと――そう。ティキンがいいな」
「「ティキン?」」
何故かそこだけ外人のような発音になっていることに、あんなとみくるは思わず顔を見合わせたのだった。
*
某フライドチキンチェーン店、2階。
ゴウエモンは、赤みを帯びた衣を被った揚げたて熱々のチキンを手に取ると、大口を開けてがぶりと食らいつく。
ザクザクとした衣の歯ごたえ、弾力のある肉の旨味、口内に広がる刺激的な辛味。すべてが一体となって、力強い多幸感をもたらした。
「効くねぇ~ッ。激辛チキンとやらも、なかなか悪くないじゃねぇか」
ゴウエモンが満足げに笑みを浮かべる隣では、るるかが黙々と特性いよかんアイスを口に運んでいた。
「本当に良かったのか? コレをもらっちまって」
「ええ」
無表情のままの端的な返事に、ゴウエモンはふむ、と少し思案すると
「よし。じゃあ俺の抹茶アイスはお前にやる!」
自分の注文した和風チキンサンドセットに付いていた抹茶アイスをるるかの前に置いた。
「! ……いいの?」
「応とも。後輩からもらうだけじゃあ、先輩の株が下がるってもんよ」
からからと笑いながら激辛チキンをほおばる横顔に、るるかの中で罪悪感がチクチクと刺さる。
「………………あ、ありがとう……」
(るるかったら戸惑っちゃって。可愛い♡)
テーブルの上でぬいぐるみのふりを維持したまま、内心で微笑むマシュタン。
ゴウエモンから見ても非常に珍しいものだったが、あえて触れずに話題を変えた。
「そういえばよ、ニジーの奴は妙に気合入ってる感じだったが、予言の意味が分かったのか?」
その問いに、るるかもいつもの調子を取り戻す。
「おそらく、キュアアンサーに狙いをつけてる」
予言の一節の『異邦人』と、闘争心を感じさせるニジーの表情から、るるかはニジーの思惑をかなり正確に推察していた。
「あいつにか?」
「彼女は、別の時代から来た」
「……なるほど、確かに『異邦人』だな」
「まぁ、十中八九、外れだと思うけど」
「そうなのか?」
納得した直後の否定に聞き返すゴウエモンに、るるかは根拠を語る。
「あのプリキュアたちのことは、未來自由の書に記されない」
その一言に、ゴウエモンは改めて納得した。
「そういや、そうだったな。未來自由の書に書かれた時点で、あいつらは候補から外れるってことか。――となると、『異邦人』ってのは外国人か観光客ってところか」
ちと面倒だな。と顔をしかめる。
少数なうえに協調性にも欠ける怪盗団ファントムでは、まことみらい市に住む外国人や、各所に点在する宿泊施設を全て調べるのは、少なくない時間と労力がかかる。
「それに、その『異邦人』が抱くっつー『熱き思い出の鳥』。『熱き思い出』ってのは夏の思い出か……いや、それともスポーツか?」
頭を悩ませるゴウエモンだが、幸いにも、このメンバーは協調性の面で例外であった。
「マシュタン」
「(るるかが言うなら、後で占ってあげるわ)」
「おぉ! そりゃ助かるぜ。――よし、お前にはポテトをやろう!」
破顔してマシュタンの前にポテトを置くゴウエモンだったが、マシュタンは現在、ぬいぐるみのふりをしている最中である。
「(いや、今は食べられないんだけど)」
「まるでお供え物ね」
微かに笑みを浮かべたるるかだったが、すぐに無表情に戻り、懸念を口にする。
「問題は、今はニジーが動いていることだけど」
「(あぁ。『手柄を横取りするつもりか!』って騒ぎそうね。っていうか、絶対騒ぐわ)」
面倒そうな顔をするマシュタンだったが、ゴウエモンはそれを笑い飛ばした。
「その時はその時よ! 責任は俺が取る! お前らは気にするな! ――ん?」
その時、ゴウエモンの視界の端に、階段から登ってくる客の姿が映った。
「げ! あいつらは!?」
明智あんなと小林みくる。
注文したセットを乗せたトレーを持った2人の姿が見えた瞬間、ゴウエモンは咄嗟にテーブルの陰に隠れた――隠れようとした。
位置的に2人からは見られなかったが、大柄な体格のゴウエモンでは、テーブルの陰に隠れ続けるのは無理があった。
「くっ。こうなったら……!」
テーブルの陰で縮こまったままゴソゴソと動くと――
「よし!」
変装をして椅子に座りなおす。
……変装といっても、とりあえず口紅を塗り、OLのような服を着ただけの、雑な女装だったが。
「新人! お前も早く変装するんだ!」
「必要ない。……意味もないし」
「ん? そりゃどういう――」
怪訝な顔をするゴウエモンだったが、
「「あぁ――――ッ!」」
重なる2人の声に振り返ると、あんなとみくるが片手でトレーを支えたまま、ゴウエモンを指さしていた。
「「ゴウエモン!」」
「なにぃ~ッ!?」
即バレしたことに大仰な仕草で驚くゴウエモン。
「なんで分かった!?」
「なんでバレないと思ったの……」
冷ややかなツッコミがるるかから飛んでくる。
「あ。よく見たらるるかさんもいる」
「(悪目立ちするから、るるかより先に見つかってるじゃないの……)」
小声でひっそりと嘆息するマシュタン。
そこで、あんなとみくるの後ろにいた男――タチバナが2人に問いかけた。
「友達か?」
「え? あ、え~っと……」
「それは……その~」
怪盗だとか、マコトジュエルの争奪戦をしている敵同士だとか、そういった裏事情を話すわけにもいかず、答えに窮し、2人して目を泳がせていると
「何故か行く先々でよく出会う、というだけ」
意外にも、るるかから助け舟が出された。
「ふむ。ではそちらは――」
ゴウエモン(女装中)のことを聞かれ、るるかは一瞬だけ思案すると、答えた。
「わたしが所属してるサークルにいる、売れないコメディアンのおじさん」
「ぅおい!」
ゴウエモン的に不本意な紹介にツッコミを入れるが、
「他にどう言えと?」
るるかとしても、これでも可能な限り無難な言い方にしたつもりではある。
「もっとあるだろ、ほら――役者とか、俳優とかよ!」
何故か必死なゴウエモンのそのセリフに、あんなとみくるは顔を見合わせた。
「俳優?」
「ゴウエモンが?」
「しるくさんみたいな?」
2人の脳裏に、シルキーアイスのCMが再生される。ただし主演ゴウエモンで。
ゴウエモン『シルクのような口どけ。あーん、私はこれ。シルキーアイス』
インパクトのありすぎるイメージ映像に、シンクロするような動きで、2人同時に苦笑しながら顔の前で手を振る。
「「ないない」」
「おめーらまで!」
3人の漫才のようなやりとりをよそに、るるかは男に問い返した。
「……あなたは?」
「俺はタチバナ。観光客、といったところだ」
「……そう」
そっけなく視線をアイスに戻するるかだが――一瞬、ゴウエモンと視線を交わす。
マシュタンもぬいぐるみのふりを維持したまま、ひっそりと表情を引き締めた。
(このタイミングで、プリキュアの2人と一緒にいる観光客、ね……)
3人とも、それを偶然だとは考えていなかった。
「……とにかく、座って食べたら? 冷めるわよ」
「え? あ、うん」
「そう……ね」
るるかに促され、あんなとみくるも隣のテーブルに向かう。
「(なんかペースを握られてる気がする……)」
「(今、騒ぎを起こすわけにもいかないし、ここは合わせよ?)」
何も知らないタチバナがいる手前、相手が波風を立てないようにしている以上、こちらからおおっぴらに対立の姿勢を見せるわけにもいかない。
もちろん、相手が盗みを働くなら話は別だが、今は食事をしに来ただけのように見える。
しかし、その怪盗たちは声を潜めて相談をしていた。
「(……どうする?)」
「(多分、ニジーも近くにいるわね)」
「(臨機応変で行くしかねぇだろうな)」
「(じゃあ、ニジーが出たら手を引く)」
「(揉めるのも面倒だし、それがいいわね)」
「(……まぁ、それが妥当か)」
方針をまとめると、るるかたちは食事の続きを再開しつつ、密かに意識をあんなたちのいるテーブルのほうへと向けた。
そんなことは露とも知らないあんなたちは、どこか釈然としないながらも、気を取り直して席に着くと、行儀よく両手を合わせた。
「「いただきます」」
今どきの若い子には珍しい2人の姿勢に、見た目以上に年寄りなタチバナは微笑ましく思って目を細めると、2人に倣って手を合わせた。
「いただきます」
直後、まるで早送りするかのようなスピードで、ポテトの全てとドリンク(ミルクたっぷりのカフェオレ)の半分が、タチバナの口の中へ消えていった。
「早!? はなまるびっくり」
「ほ、本当にお腹すいてたんですね」
驚く2人の前で、タチバナはお腹に手を当てながらゆっくりと背もたれに体を預けた。
「あぁ……生き返るぜ。五臓六腑に染み渡るとはこのことか」
ふぅ、と大きく息をつくと、おもむろにチキンに手に取り――しかし、すぐには頬張らず、何かを懐かしむように遠い目をした。
「ティキンか……昔を思い出すぜ」
「「昔?」」
あんなとみくるはきょとんと小首を傾げ――るるかは静かに表情を引き締める。
「子供のころ、君たちよりももっと小さな子供のころだ。その日の給食もティキンだった」
思い出すのは、幼き日の思い出。
「よく遊びに行く神社に『棲む』お姉さんに、子供心に告白したのが、その日だった――そう、
『S'il te plait, épouse-moi』と」
「「!?」」
突然の聞きなれない外国語に困惑する2人。
「(みくる、今の何? 英語?)」
「(ごめん。わたしもよく聞き取れなかった)」
唯一聞き取れたるるかも「(……なんでフランス語?)」と困惑しきりだったが。
しかし、その時――。
「ポチィ!」
おとなしくポーチのふりをしていたポチタンが、上を向いて声を上げた。
「「ポチタン?」」
あんなとみくるも、その視線の先を追って顔を上げると、不意に、小さな虹色の光が虚空に出現。静かに漂ってくると、揺らめくように何かの形状に変化しながら、タチバナの持つチキンの中に入り込んでいった。
「(って、今のマコトジュエル!?)」
「(チキンでもいいの!?)」
「(『熱き思い出の鳥』ってそれかよ!)」
小声で騒然とするという器用なことをする一同だったが、困惑している暇はなかった。
タチバナが大きく口を開けて、マコトジュエルが宿ったばかりのチキンを口に――
「「「(あ!)」」」
止める間もない、と見えた瞬間、るるかが咄嗟に近くにあるものを掴んで投擲した。
そして高速で飛んでいくマシュタン。
「(るるかぁぁぁぁぁッ!!?)」
「あ」
咄嗟だったとはいえ、おとも妖精をぶん投げた自身の暴挙にるるかも思わず固まるが、しかして狙いたがわず、マシュタンはタチバナの持つチキンに衝突し、それを弾き飛ばした。
「(痛ァい!)」
そのまま床に転がり落ちたマシュタンだったが、必死に我慢してぬいぐるみのふりを維持。
かくしてマコトジュエルが食われるという珍事からは脱したものの、裏事情を知らない人間から見れば、初対面の相手にぬいぐるみを投げつけるというのは、普通に非礼である。
タチバナの視線はチキンに向いていたため投げる瞬間は見られていないとはいえ、すぐ謝罪して、それらしい理由を――と、るるかが動こうとしたその時、
「おぉ~っとぉ~!!」
ゴウエモンがわざとらしく大声をあげて立ち上がった。
「いや~、悪い悪い。急に虫が目の前に来てよ。ついその人形を振り回しちまった」
おどけながらそう言うと、床に転がっていたマシュタンを拾ってるるかに渡す。
「ゴウエモン?」
「(お前はよくやった。あとは任せろ)」
自分に代わって、わざと道化を演じて泥をかぶるゴウエモンに、るるかは目を泳がせながら、本日2度目の慣れないお礼を口にする。
「(……あ、ありがとう)」
「(気にするな。新人のフォローをするのも先輩の務めよ)」
にかっと笑みを浮かべると、タチバナのほうに向かっていく。
「(カッコつけちゃって。女装のせいでカッコつけれてないけど)」
「(……マシュタンもごめん)」
ぶん投げてしまったマシュタンにも謝りながら、その体を労わるように撫でる。
「(わざとじゃないし、許すわ。それにしても、今日はるるかの星の巡りが悪いのかしら)」
後で占ってみましょうかと、マシュタンが過保護気味に考える一方で、ゴウエモンのほうもタチバナと話を続けていた。
「悪いことをしちまったな。そいつは弁償するぜ」
そう言いながら、床に落ちるチキンのほうに向かうゴウエモンの姿に、あんなとみくるは「はっ」と気付く。
「(自然な流れで持っていかれちゃう!)」
「(でも、割って入るわけにも……!)」
床に落としてしまったチキンを拾いに行くというのは普通のことで、それを阻止しようとするほうが、不自然。
動くに動けない2人の姿を横目で見たゴウエモンは、ふっと小さく口の端を上げる。
「(さりげなく堂々と目的のものをいただく。これも怪盗の手腕ってものよ)」
勝利を確信したゴウエモンだったが、そこで、チキンを先に拾い上げる者がいた。
「うん?」
視線を上げると、そこにいたのはどこにでもいそうなOL。
しかし、その表情はとても一般人とは思えない悪意をはらんだ嗤い顔。
「「あれは!」」
OLの正体に勘付いたあんなとみくるが立ち上がり、同時に、OLはその正体を現した。
「「ニジー!」」
変装を解いたニジーは、芝居がかった仕草でポーズをとる。
「やれやれ。危うく手柄を横取りされるところだったよ」
しかし、ゴウエモンは先に方針を決めていたこともあって、特に反論することもなく、肩をすくめるとそのまま下がっていった。
それが自分に譲るという意思表示と気付いたニジーは、機嫌よさそうに言葉を続ける。
「予想は外れてしまったけど、結果オーライというやつだね。君たちを監視していた甲斐があったというものだ」
そう言って、あんなとみくるの2人を見やる。
嘲笑するような視線を向けられた2人は無意識に構えるが、そこに、2人を視線から庇うようにしてタチバナが立ちはだかった。
「そこまでだ」
「おや、なんだい君は」
ガタイはいいが、所詮は一般人。相手にもならないと、ニジーは余裕をもって笑うが――
「俺が相手になってやる。ロリコンのストーカーめ」
「はぁ!!?」
即死レベルの風評被害に、一気にその余裕が吹き飛んだ。
「ちょっと待て! なんでそうなる!」
「年端もいかない子供を監視していたと言ったじゃないか」
「た、確かにそうは言ったが、そういう意味じゃない! 僕の目的はこのマコトジュエルだ! そいつらなんかに興味はない!」
慌ててマコトジュエルの宿ったチキンを突き出して弁明するが――
「……お前は何を言っているんだ?」
心底わからない、といった感じでタチバナは首を傾げ、その後ろであんなとみくるは思わず噴き出した。
「(そ、そっか。何も知らない人から見たら、拾ったチキンをジュエルって言ってるただの変な人だ……!)」
「(というか、チキンを持ってる時点で、絵面が……!)」
なまじ、ニジーは容姿が整っている分、余計に珍妙さが際立っていた。
「お前ら! 笑うな!――くそっ!」
予想外の屈辱に、ニジーは強引に話を断ち切るべく煙玉を取り出した。
「とにかく! これはいただいていく!」
煙玉を床に叩きつけると、周囲に一気に煙が充満し、ニジーはそれに紛れて素早く逃走。
「あ! 待ちなさい!」
「タチバナさんはここで待っててください!」
「待て! 危険だ! 奴はロリコンだぞ!」
タチバナの制止の声も振り切って、あんなとみくるは逃げたニジーを追いかけていった。
*
数分後、とある屋上――。
先ほどゴウエモンからもらったポテトを小動物のように食べるマシュタンと、マシュタンの代わりにその袋を手に持つるるか。
建物の屋上からそのまま下を見下ろしている2人の後ろに、女装を解いていつもの服装に戻ったゴウエモンが姿を現した。
「悪いな。遅れた」
「るるかを待たせるなんて、何をしてたのかしら?」
「弁償するって言ったからな。それを済ませてきた――代わりに俺が様子を見に行く、ともな」
「律儀ね」
「というか、まだ始まってなかったんだな」
ゴウエモンもるるかの隣に並んで、下を見る。
「『かくれんぼ』があったのよ。まぁ、たいして面白くなかったけど」
俯瞰した視点から『ネタばれ』を見てしまったのも、その評価の要因ではあるが。
「でも、今から始まる」
3人が見下ろす先では、あんなとみくる、そしてニジーが相対している姿があった。
「相変わらずしつこいベイビーたちだ。しかも今日は酷い侮辱を受けたよ」
「自業自得でしょ!」
「マコトジュエルは渡さない!」
「なら取り返して見せたまえよ。先ほどの屈辱の分も合わせて、まとめて返してやる!」
一輪のバラを取り出して構えると、『召喚』の態勢に入る。
「ウソよ覆え! 出でよ! ハンニンダー!」
フライドチキンにニジーの投擲した薔薇が突き刺さると、宿っていたマコトジュエルがどす黒いオーラで覆われ、そして――
「ハンニンダァァァァァッ!!」
5メートル以上はありそうなフライドチキンに手足が生えたような怪物、フライドチキン型のハンニンダーが召喚された。
同時に、ニジーは部外者を排斥する特殊な結界、密室のフィールドを展開する。
それを受けて、あんなとみくるは頷きあうと、首から下げたアイテムを手に取って発動させた。
「「オープン! ジュエルキュアウォッチ!」」
そして、2人でダンスを踊るようにして、あんなは紫を基調としたプリキュアに、みくるはピンクを基調としたプリキュアに、それぞれ変身する。
「どんな謎でもはなまる解決! 名探偵、キュアアンサー!」
「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵、キュアミスティック!」
「「名探偵、プリキュア!」」
「わたしの答え、見せてあげる!」
名乗りとともに、戦いの火ぶたが切って落とされた。
「行け! ハンニンダー!」
ニジーが号令をかける。が――
「ハ、ハン、ニン、ダ~……」
ハンニンダーは弱弱しく両膝をつくと、両手もついて倒れ伏した。
「「え?」」
「な、何!?」
まだ何もしないうちから倒れたハンニンダーの姿に、全員が困惑する。
「お、おい!? どうしたハンニンダー!」
ニジーが声をかけてもハンニンダーが立ち上がる様子はなく――その体から、どす黒いオーラのようなものが立ち昇ってきた。
「「「あれは!?」」」
全員がその異変を前にして立ち尽くす中、そのオーラはどんどん大きく、高く立ち昇っていくと、やがて人型となり――実体化し、その姿を現した。
ほっそりとしているが、見上げるような巨体。長い手足。黒い髪。そして、巨体でなければ清楚さを感じさせたであろう、白いワンピースと帽子。
「「女の人の……巨人!?」」
フィールドで余人の排斥されたまことみらい市の街並みに、巨大な怪異が顕現した。
※タチバナは、原作で70年前に小学生ぐらいだったのと、アキラが「厳ついおっさん」と言っていたことから、年齢に対して若く見えるのだろうと推察しました。
※るるかがフランス語が分かるのは、独自解釈です。(ロンドンで数多くの難事件を解決した、とあったから、何となく外国語が分かりそうなイメージだったので)