ロープウェイで山の頂上へと登る…つもりが、ケーブルを切られていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あ、オレそこの車借りてきます!!」
サダオカの怒りのボルテージが上がっていく。
それを眺めながら、タカマツが交渉するのを眺める。
「・・・おーい!貸してくれたぞー」
「おー・・・」
快く車を貸してくれた初老の男性に深々と頭を下げる。
「ありがとうございます」
「いやいや、今年も面白い映像を期待しているよ」
「えぇ、必ず。腹が捩れるほどの笑いをお届けします」
顔見知りにして、自分の事をよく知るタバコ屋のじいちゃんに笑顔を返した。
彼は勇者と魔王の戦いを描いたアニメの、3世代に渡ってのファンである。
車に全員が乗り込んで、そのまま山道を登っていった。
「知り合いなのか?」
「あぁ・・・さっき話したろ?踊り子のばーちゃんの連れ合い」
「あぁ・・・」
「品のいいじいさんだったな」
「昔、ばーちゃんが芸者だった時に一目惚れしたらしい」
「マジか!!」
「芸者さんだったのか・・・あの人」
「美人で、教養もあって、器量もよくて、その辺の男性の憧れだったぞー」
「へー・・・」
彼はあの踊り子の心を射止めた策士だ。
年齢差20をやってのけたつわものである。
しばらく昔話をしながら走っていると、前方に人影が見え始めた。
「お・・・」
「・・・お出迎えか」
「だなぁ・・・」
「ご苦労なこった。いつ来るかわからない俺らを待つなんてさ」
「給料分は働くんじゃね?」
「ふむ、そこは感心なことだな・・・若いのに」
「いや、仕事に年齢は関係ないから」
車を止めておりれば、ニヤニヤとした浮ついた笑いを浮かべる黒服の集団。
「・・・アレだな。おやじ狩りをするガキみたいな・・・」
「俺はまだ若い」
「ま、オレからしたら若いな、全員」
なんせ年齢差は倍以上だ。
頷いていると、鉄パイプやらナイフやらを持った黒服の・・・たぶん、10代の少年達が取り囲む。一体どうした上層部。いつもの筋肉マッチョはどこにいるんだ?
「さてと・・・」
コキコキと首を鳴らして、サダオカが笑った。
「やるか」
笑う彼は、どうみても勇者というよりも悪役でしかなかったのだけど。
戦闘を始めた彼らを、少し後ろから眺めて傍観する。
え?参加する気なんてありませんよ?
「やる気があるのは良い事だ・・・」
向かってくる子供を一歩横に動いて避け、その腹にサダオカが膝を叩きこむ。
「ぐぇ!!」
「だが、それを勉学や仕事に生かせないかねぇ・・・」
「だな」
タカマツ兄弟が武器を持った奴らを重点的に無力化していく。
相変わらず素晴らしい切れ味と破壊力だ。弟の包丁(エクスカリバー)で、鉄パイプがまるで紙のようにスパスパ切れていくし、兄の肉たたき(ブラッディハンマー)で地面が陥没してそれに何人か戦意喪失していく。
本来の目的に使ってやってくれ。道具がなんか泣いている気がしてくるから。
「ハハハ!!オレを倒したければ、ボディービルダーの兄貴を連れてこい!!」
「ぐっ・・・あ、アニキは育児休暇なんだよ、ばっきゃやろー!!」
「え、既婚者!?」
「マジか!!」
「ちくしょう!なんであのマッチョが結婚できて、俺が結婚できねーんだよ!!」
「!あ、アニキを馬鹿にするな!!」
「アニキは料理と裁縫とフラワーアレンジメントが得意なんだぞ!!」
「何その乙メン!?」
何だか色々面白い会話が飛び交っている。まぁ、同じだけ打撃音も響いているけれど。
「あの3人で充分ですね」
「そうですね」
ヒガとヤマダはオレと一緒に傍観に回ったようだ。
隣で、持ってきた水筒からお茶をついで飲んでいる。
「どうです?」
「あ、いただきます」
「あぁ・・・やっぱりお茶がいいですね」
「そうですねぇ・・・」
濃い緑茶に和んでいると、不穏な声が聞こえた。
「腰が甘い!!そんなんじゃ、このオレに一撃も入れられんぞ!!」
「うっせー黙れ、このクソジジイ!!」
「あ゛?」
直後に鈍い音。それに、慌てて飲んでいたお茶のカップをヒガに託す。
「頼む」
「はい、はい」
暗い笑みを浮かべるサダオカにダッシュした。
「だ・れ・が・ジジイだってぇ?」
「がっ!?ごっ・・・ごふっ!!」
「ちょ、サダオカさん!!サダオカさんストップ!!」
「死にますから。その子、死んじゃいますから!!」
「中学生!!それ、まだ中学生ですって!!」
「るっせー!!仕事してんだから、正当防衛だ!!」
「過剰防衛だ!!中学生をマジで締め上げるんじゃねぇ!!」
ブレイク、ブレイク!!と、ヤマダと二人で押さえる。
ひとまず、その場にいた連中全員を無力化してロープで縛りあげた。
「それにしても・・・今年は気合が入ってるなぁ・・・」
「ちゃんとレポートしてるか?」
「え?あぁ・・・大丈夫、大丈夫」
パタパタと、自分の肩に止まる記録装置代りのペット(テリー)の頭を撫でた。
「ウチのテリーは優秀だからな」
ここでの行動は、ほぼすべてテリーを通して家のパソコンへ届く。
そうして、それを編集したものがテレビ局へと売られていくのだ。
もちろん、このテレビ局は身内でもあるサキュバスが会長を行っている。
著作権によって入る収入によって、フリーターでも生きていけるのだ。
こういう時だけは神に感謝する。
ま、なくても生きていけるけどなー…
どこぞの戦闘員らしく『キー』とだけ喋っていればいいのに、不用意に『オヤジ』などというものだから年齢を気にしていた勇者にフルボッコされてしまった。
「可哀想に・・・口は災いの元だと学習しようぜ?」
「そうですねぇ・・・」
「あれ?サダオカ、どうした?」
「・・・腰が、ごきって・・・」
「・・・ハッスルするから」
「オレらも歳だよなぁ・・・」
「ま、それでもこれくらいはやらないとな」
うんうんと頷きあって、タカマツ兄が武器を持ち上げる。
「んじゃ、壊すか・・・」
「あ、ストップ」
「あん?」
巨大な門を壊そうとした彼を止めて、タカマツ弟の肩を叩いてその隣の石壁を指さした。
「ここ切ってくれ。」
「・・・石を?まぁ、切れない事もないが・・・」
首を捻りながらも、俺の注文通り一刀のもとにぶった切ってくれたタカマツ弟に拍手する。
「・・・薄い?」
「ベニヤ板に石を貼り付けていたのか・・・」
「よし、行こうか」
「あぁ・・・でも、なんでこっちを?別に鉄くらいは・・・・・・」
「あー・・・」
「1日でコレが出来上がったんだから、予想はついただろ?壁はたぶん張りぼてでも、門は必ず通るだろうし・・・な?」
「発案者、ぶっ飛ばさないとなぁ・・・・・・」
「流石に神には会えねぇって」
巨大な鉄の門の裏側には、ちょうど自分たちの背丈分だけオリハルコンで裏側から補強してあった。それも二重にだ。
本当に今年は色々、妙な所に手が込んでいるな。