宇宙世紀0093 サイド1・ロンデニオン
「そうか! シャア!」
アムロが車の中で吐き捨てると、馬に乗って駆けるシャアに飛びかかる。
本来の歴史であればシャアは馬から落とされ、そこから殴り合いが始まるはずだった。
「うわっ!」
だが、この世界ではそうはならなかった。
神様の悪戯が働いたのか、2人は馬から落ちた拍子に頭を強く打ってしまった。
アムロとシャアは横になるように落ちたので、2人とも側頭部を打ったのだ。
「アムロさん!?…クェス、親父を呼ばなくちゃ!」
飛びかかったアムロに代わって車を運転していたハサウェイが慌てて側に駆け付ける。
クェス・パラヤもアムロの顔を覗き込む。
「アムロ!ちょっとアンタ、しっかりしてよ!」
クェスの呼び声にアムロが微かに眼を開ける。
「クェス!親父がすぐ来るって…あれは!?」
ハサウェイが驚いたように地平線の先から来る物体を見る。
なんだろう、と思ってクェスもその目線をハサウェイと同じ方へ向ける。
「…モビルスーツ?」
2人の声が重なる。
人類史上初のMSが開発されてから既に20年ほどが経って、一般人でもMSを持つ人間は増えた。
それ故、2人は最初こそたまたま金持ちか何かがMS遊びの最中に近くを通りかかったと思った。
「…大佐!?」
だが、MSが2人の前に降り立ちシャアの名を呼んだ時に背筋が凍った。
ホビーハイザックから降りて来た男と目線が合い、殺されるとハサウェイは思った。
「そこの2人、何があったか知らんが手伝ってくれ!」
そう言われて、ハサウェイはアムロが居るはずの場所に目を向ける。
だがー
「そんな…ありえない…」
いつの間にか、アムロもシャアもいなくなっていた。
昭和57年 ××県鹿骨市・雛見沢村
「う、うん? 一体何が…」
アムロが呻きながら体を起こす。
確かハサウェイ達とドライブをしている所にシャアが…そうだ!シャアは?
「ア、アムロ…」
隣でうごめく気配を感じて見れば、ちょうどシャアが起きるところだった。
「シャア!貴様!」
頭に血が上るのをアムロは感じた。
思わずシャアの襟元を掴み、締め上げる。
「アムロ!待て!」
シャアの制止も聞こえなくなっているアムロは、いっその事ここでシャアを殺してしまおうと思った。
不思議なもので、一度殺意に駆られると二度目から先はそのことに対して何の疑念も抱かなくなる。
「ええい…!」
首を絞める事に夢中になっていたアムロの体は、シャアの膝が腹に入ったことで吹き飛ばされる。
「アムロ!落ち着け!…ここは何処なんだ?」
シャアの困惑した声で、ようやくアムロは動きを止める。
周りを見渡すと、見慣れたロンデ二オンの風景とは似ても似つかない山奥だった。
「まさか…夢でも見ているのか?」
思わず声が漏れる。
「その様子を見るに、少なくともロンデ二オンではないようだな」
シャアの言葉に、無意識に頷く。
「ああ。ロンデ二オンはロンド・ベルの本拠地だが、こんな場所は知らない」
2人は少し考えて、お互いに目配せする。
「…アムロ。ここは一時休戦としないか?」
そういって、シャアは右手を差し出す。
「いいだろう、シャア。その手は握れないが、取り敢えずここが何処か分かるまでは手を出さない」
差し出された手を冷めた表情で見ながら、アムロも仇敵との休戦に同意する。
2人とも状況は飲み込めないままだったが、比較的楽観的だった。すぐに仲間の元へ帰れると。
「時刻は…昼過ぎといったところか。田んぼの向こうに民家があるな」
シャアが歩き始め、その後ろを少し警戒しながらアムロが続く。
「…シャア。なんで俺たちと戦った男が地球を…」
「アムロ、君にも分かるはずだ。地球に残る者たちは地球を汚染することしかできないのだよ」
「だからといって!」
憤るアムロをシャアが見つめる。
「ならばアムロ、君がその叡智を民衆に授ければ良い!私は数百年後の人類の為にやっているのだ!」
「ぐっ」
また歩き出す。
自分に背を向けるシャアに、アムロは背広の下に隠した銃で撃ってしまいたいと思いながらも抑えつけていた。
「あれ?…観光客の人?」
しばらくして、聴きなれない声にアムロは顔をあげる。
2人の目の前に、緑髪の少女が立っていた。
「ああ。そうなんだが、少し道に迷ってしまってね。…良ければ案内してくれないかね?」
シャアが優男の仮面で、少女に語りかける。
10代前半ぐらいの少女にはそれだけでも刺激が強かったのか、顔を真っ赤にしながら頷いた。
「も、勿論です!」
こくこくと、糸が切れた人形のように少女が頷く。
「ありがとう。ところで、今日は何年の何月何日だったかな…」
それとなく、探りを入れる。
2人とも、少なくとも宇宙世紀93年という答えぐらいは返ってくると思っていた。
だからこそ、少女の返答に絶句した。
「え?ええと、今日は昭和57年の4月1日だけど」
昭和?
殆ど聞いたことがない単語に2人は困惑する。
「あ、ああ。いや、宇宙世紀何年だったかな?」
「ウチューセーキ?って…」
まさか、この少女は宇宙世紀を知らないのか。
想像以上に不味い状況に焦りが出る。
「昭和57年、旧せ…いや、西暦何年だったかな?」
「1982年になりますけれど」
少女はアムロにも照れているのか、チラチラと見ながら答える。
「アムロ…まさか我々は旧世紀にいるというのか?」
小声でシャアが尋ねる。
小さく頷いて、アムロが言う。
「二ホンに昔そういう年号があったという話を聞いたことがある」
「二ホンだと…?ええい、一体どれほど前の世界に来たというのだ」
アムロが少し俯いて、考える。
「確か改暦が21世紀の中頃から終わりにかけてだったはずだ」
「ということは私たちが生きている時代からざっと150年から200年ほど前か」
そこへ、おずおずと先程の緑髪の少女が2人の顔色を窺いながら会話に入る。
「あ、あの…?お2人の話はよく分からないのですが?」
「おっと、すまない。ああ、ここは何という場所かな?」
「ええと。雛見沢、ですが?」
なぜそんな事も知らないのか、という顔を少女はする。
「恥ずかしい話なのだが、実は記憶喪失のような状態なのだ。何故、ここに居るのか分からないのだよ」
「ええっ!?じゃあ診療所に案内しますよ!」
シャアは丁寧に少女の提案を断る。
「いやいや、行った方が良いですって!」
「代わりにこの村を少し案内してくれないか?」
アムロがウィンクしながら笑いかけると、やはり刺激が強かったのか少女は頬をまた赤らめた。
「じゃ、じゃあ。案内、しますね?」
「よろしく頼むよ」
未舗装の砂利道を歩きながら、互いに自己紹介をする。
「わ、私は園崎魅音です!この村にある雛見沢分校の2年生です!」
「俺はアムロ。アムロ・レイだ」
「シャア・アズナブルだ。よろしく頼む」
宇宙世紀であれば、誰もが知っている2人の英雄の名を聞いても魅音には特に響かないようだった。
「へー!名前から察するにシャアさんは外国の人なの?」
「ん?ああ、そうだな」
「じゃあ英語も出来るんだ?」
そう言われて、2人はハッとなった。
2人とも何の違和感も抱かずに、日本語を喋っていた。
「シャア、共通語は今も話せるよな?」
「ああ、だが気が付かないうちに現地の言葉になっていた…習った覚えもないぞ」
小声でひそひそと話す2人を見て、魅音が声をかけようとする。
その時だった。
「アムロ大尉にクアトロ大尉?」
「ほぅ?シャアが居るとは…」
「へぇ、あんたがアムロさん?」
「シャア?こんな所で何をしているのだ」
「これが、希望を見せた人…!」
「この世を地獄に変えた元凶が居るとはな…」
「あ…ああ、ああああ!そんな…嘘だ!」
「伝説の2人が居る?こんな馬鹿な状況ありえるのか?」
ー過去、現在、そして未来に名を残すパイロット達は雛見沢に舞い降りた。
「ひぐらしのなく頃に」×「ガンダム」という事で要はひぐらしのなくコロニーという話です
アムロとシャアを軸に各主人公やライバルが雛見沢症候群に立ち向かいます(←!?)
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