この日、1通の通達が全隊長及び護廷十三隊に送付された
【中央四十六室 通達】
文書番号:四六議第〇〇号
機密区分:極秘
刑事裁定通知
被告:朽木ルキア(護廷十三隊 十三番隊所属)
被告に対する審理の結果、死神の権限を逸脱し、現世人間へ故意に死神の力を譲渡した行為は、尸魂界の法秩序及び現世との均衡維持を著しく損なう重大犯罪と認定する。
よって中央四十六室は、被告・朽木ルキアを極刑に処すことを議定した。
一、刑罰内容
被告・朽木ルキアを**双殛(そうきょく)**による処刑に処す。
一、執行日時
西流魂街双殛の丘において、◾️◾️年◾️月◾️日 ◾️時◾️分に執行するものとする。
一、執行責任者
護廷十三隊総隊長
山本元柳斎重國
執行には護廷十三隊各隊隊長を立会人として出席させるものとする。
一、付記事項
本裁定は中央四十六室による最終議決であり、異議申し立て、再審請求、減刑請願その他一切の不服申立てを認めない。
護廷十三隊各隊は本決定を厳守し、処刑執行に支障を来す一切の行為を禁ずる。
以上。
瀞霊廷全域に、中央四十六室より一通の通達が下された。
各隊舎へ地獄蝶が飛び、隊長・副隊長へ極秘文書が届けられる。その内容は、護廷十三隊の歴史においても極めて重い意味を持つものであった。
朽木ルキアの死刑執行。それは中央四十六室による最終議決により、被告・朽木ルキアを双殛による極刑に処すことが正式に決定されたのである。
執行日時、立会人、執行責任者――その全てが記された通達の末尾には、一文だけ冷たく記されていた。
『本決定に対する異議申し立て、減刑請願、再審その他一切の不服申立てを認めない。』
その報せは瞬く間に護廷十三隊全隊へ伝わり、瀞霊廷は静かな、それでいて張り詰めた空気に包まれていくのだった。
現世にて浦原喜助及び、夜一達が隠れ家として使用している通称"浦原商店"…そこには現在4名の若者が集結していた。
1人目は現世の高校生にして朽木ルキアより死神の力を譲渡されたことで死神として覚醒した人間…黒崎一護。浦原喜助のもとで修練を積み、霊圧・身体能力ともに急成長を遂げている。戦闘技術は未熟ながら、その潜在能力と成長速度は極めて高く、既に護廷十三隊で言うところの上位席官クラスの実力を有している。
2人は現世に生きる滅却師(クインシー)の末裔である石田雨竜。霊子を弓矢として操る遠距離戦を得意とし、冷静な判断力と高い戦術眼を有する。近接戦闘は不得手だが、席官級とも渡り合える実力を持つ。
3人目は井上 織姫。特殊能力「六花」を扱う現世の女子高校生であり戦闘能力は高くないものの、防御・治癒能力に優れ、特に負傷者の回復能力は極めて優秀。後方支援において高い価値を持つ。
そして最後… 茶渡 泰虎。特殊能力によって右腕を強化し、高い破壊力を発揮する現世の高校生であり近接戦闘を得意とし、優れた耐久力と怪力を誇る。技術面では未熟だが、一般隊士を上回る戦闘能力を有する。生身の戦闘では一護より強いのかも知れない。
四名はいずれも死神ではないものの、通常の人間を大きく超える戦闘能力を有する。現時点で隊長格に及ぶ実力ではないが、連携時の戦力は席官級以上と判断される。
「はいはい皆さーん!注〜目!」
皆がルキアを救うため、この浦原商店へと駆けつけたのだ。そしてそれを導くのは浦原喜助。"元"護廷十三隊十二番隊隊長の歴とした実力者である。
「さ、これが尸魂界へ続く門…"穿界門"です」
浦原喜助が用意したのは、現世と尸魂界を繋ぐ特殊な門――穿界門であった。
この門には霊子変換機が組み込まれており、生身の人間を尸魂界を構成する霊子へと変換することで、魂魄ではない者でも尸魂界への侵入を可能としている。
しかし、その門は長時間開いておくことができない。
門が開いていられる時間は、わずか四分間。
さらに、門が開いた瞬間から断界には外敵を排除するための激しい気流――**拘流(こうりゅう)**が流れ始める。
その気流に捕らわれれば身動きは封じられ、断界へ永久に閉じ込められる危険性がある。
ゆえに、一護たちは限られた時間の中で断界を突破し、尸魂界へ辿り着かなければならない。
すなわち、朽木ルキア救出への道は、この瞬間から文字通り命懸けの戦いとなるのであった。
「皆さんをこれから尸魂界へとお送りします。朽木さんを救出する上で恐らく護廷十三隊との接触及び戦闘は避けられないでしょう。」
「おう!望むところだぜ」
「その上でこれから言う3人の方達と相対した場合は即逃げてください」
「は?逃げる?なんでだよ。今なら隊長格にも追い縋れるかも知れねぇってアンタ言ってたじゃねぇか」
「…これから言う人たちは隊長格の彼等とも更に次元が違うのです。彼等と出会って仕舞えばこの任務はその時点で失敗。ゲームオーバーです」
浦原の表情と言葉からただならぬ気配を感じる一同
「…そこまでなのかよ…で誰なんだソイツらは」
「1人は護廷十三隊総隊長…山本元柳斎重國。元々は一番隊の隊長を務めていた人物で1000年以上続く護廷十三隊の創始者であり長らく隊長を務めてきた人物です」
「1000年!?何歳だよソイツ!?」
「彼が一番隊隊長から降りなかったのはただ一つ。"彼より強い死神が生まれなかったから"…つまりはむちゃくちゃ強いって事っす」
「で、でも今変わってるってことはソイツが一番じゃねぇってことだろ!?」
「そうとも限りません。"彼"に変わったのも色々と事情があったみたいですし」
「…てことはつまり」
「はい。今もバリバリ現役っすよ。」
「んなヤベェ奴がいんのかよ!」
黒崎一護は以前一度朽木白哉と遭遇し戦闘している。その時隊長である朽木白哉相手に手も足も出ず完敗した記憶が脳裏を過ぎる
「そしてもう1人…正直言って彼がいる時点でこの救出任務すら成功率は50…いや30%まで下がっている程です。…彼は僕より頭が切れるかも知れません。」
「…アンタよりも…」
「えぇ。何せ1000年以上続く護廷十三隊の法を根本から捻じ曲げたお人っすからね」
「で、でも頭が切れるだけなら大したことねぇだろ」
「そんな訳ないでしょう。言ったでしょう?総隊長を一番隊隊長から引き摺り降ろした人物がいると」
「…ソイツが…そうなのか」
「えぇ。実際に僕がこの目で見ましたから間違いありません。何よりどんな事情があろうともあの山本元柳斎重國が自分よろ弱い死神に一番隊の隊長を任せるはずが有りません。」
「ソイツの名前は」
「彼の名は"雀部真叶"…現在の尸魂界に於いて"現代最強"との異名を持つ最も危険視すべきお人です」
「雀部真叶…アイツよりも強いのか…」
しかしそんな男を差し置いて浦原喜助が最も危惧する男がいる。
「それでも彼なら"まだ"良い方です。何故なら彼はその強さと反対に底抜けの優しさも持っている」
「…どういう事だ?」
「つまりは彼なら十中八九勝てなくても殺されはしないでしょう。彼は死神や人間の間に偏見の目は持ち合わせていないでしょうから。…しかし」
「…んだよ」
「問題は最後の一人です」
「…」
意味深に呟いた浦原喜助が最も危惧する男…それは
「五番隊隊長…"藍染惣右介"には気をつけてください」
「あん?藍染惣右介?」
一護が眉をひそめる。浦原喜助は珍しく笑みを消し、静かに続けた。
「……勿論、彼は仮にも護廷十三隊の隊長に選ばれているほどっすから、強いのは間違いありません。剣術も鬼道も隙がない。人格者としても有名で、隊士からの信頼も厚いお人です。」
一護たちは顔を見合わせる。
「じゃあ何で気を付ける必要があるんだよ。」
その問いに、浦原は珍しく笑みを消した。
「……ただ。」
一拍置き、静かに続ける。
「僕はあの人だけは、どうにも信用できないんです。」
「信用……?」
「ええ。理由を聞かれても困るんすけどね。確かな証拠も、根拠もありません。」
帽子の鍔に手を添え、小さく息を吐く。
「でも、長年死神を見てきた勘が言ってるんですよ。あの人だけは、決して見た目や評判だけで判断しちゃいけないって。」
その言葉に、その場の誰もが口を閉ざす。
「だから約束してください。」
浦原の声は今までになく真剣だった。
「もし五番隊隊長・藍染惣右介と遭遇しても、決して油断しないこと。戦うにしても、話すにしても、距離を置いてください。」
そして最後に、静かに付け加える。
「……願わくば、彼とは出会わないこと。それが皆さんにとって、一番安全な道ですから。」
「「「…。」」」
「それじゃあ行きましょうか!」
「「「行けるか!?」」」
「あれっ?ビビっちゃいました?」
「んな訳ねぇだろ!もうちょいなんかねぇのか説明とかほら!」
「これ以上は逆に慎重になってしまい余分なことに気を取られてしまうのでダメです。と言うか早く行かないと閉じちゃいますよ?」
「「「はあ!?」」」
「ほらほらーーぶはっ!?」
ニヤけながら急かす裏腹の頭部に何やら黒い物体が落ちてくる
「馬鹿者め…今から命懸けの任務を行うものを怖がらせてどうする」
「「「夜一さん!!」」」
現れた"黒い猫"は夜一であった。
「案内役はワシが務めよう。迷わず恐れず立ち止まらず、振り返らず、遺してゆくものたちに思いも馳せず…ただ前に進むのみ」
「「「…」」」
「それが出来るものだけついて来い」
夜一の言葉は一護達のことを思ってのこと…生半可な気持ちで行くくらいなら此処で諦めさせた方が双方のため…しかしそんな静寂を破ったのは一護であった。
「何寝ぼけたこと言ってんだよ。此処に集まった時点でみんな端から覚悟は決めてんだよ」
「分かっておるのじゃな小僧。負けたら2度と戻っては来れんぞ」
それでも一護は傲岸不遜に高高く言い放つ
「勝ちゃ良いだけの話だろ!」
「…その通り!」
こうして――それぞれが己の覚悟を胸に、一歩を踏み出した。
救うべき者はただ一人。"朽木ルキア"
待ち受けるは、千年の歴史を誇る死神たちの世界――尸魂界及び護廷十三隊の精鋭達。
瀞霊廷、そして、その頂点に君臨する最強の隊長たち。
常識も、力も、覚悟も。そのすべてが現世とは比べものにならない死者の国へ。
たった四人の人間が、たった一人の仲間を救うため侵入する。
それは無謀と呼ぶにはあまりにも小さく。奇跡と呼ぶには、あまりにも大きな戦い。
この瞬間より――尸魂界救出篇の幕が、静かに上がるのであった。
これは一護達が現世を旅立つ少し前ーー雀部邸、自室にて寝室に置かれている机の上には、中央四十六室から下された死刑執行命令書が静かに置かれている。
燭台の火だけが室内を照らし、揺れる影が壁へ映し出されていた。俺は椅子へ深く腰掛けたまま、何度目になるかも分からない溜息を吐く。
頭から離れないのだ…懺罪宮で見たルキアの姿が。
罪を認めながらも、最後まで誰かを恨むことなく、自らの運命を受け入れようとしていた少女。
そして――
『他の誰がなんと言おうと君が護廷十三隊である事を俺は誇りに思う。』
そう言った瞬間、子供のように泣き崩れた彼女。
……助けたい。
だが、一番隊隊長である俺が法を破れば、護廷十三隊そのものの秩序が崩れる。
静かなノックが響いた。
「…いるよ」
障子がゆっくりと開く。
「まだ起きてたのね。」
湯呑みを二つ持った乱菊が、柔らかな笑みを浮かべて入ってきた。
だが、その笑みは俺の表情を見るなりすぐに消える。
「……また考え込んでる。」
何も答えない俺の隣へ腰を下ろし、一つの湯呑みを差し出してくる。
温かな湯気が静かに立ち上った。
「ありがとう。」
礼だけ言って受け取る。それでも口はつけなかった。
乱菊はそんな俺を横目に、小さく息を吐く。
「ルキアちゃんのこと?」
山本総隊長の言葉も理解している。理解しているからこそ、苦しい。
「ああ。」
短く頷く。
「俺は……どうするべきなんだろうな。」
その言葉に、乱菊は少し驚いたように目を瞬かせた。
普段の真叶なら、人に答えを求めることなど滅多にない。
だからこそ、その迷いがどれほど深いものか伝わってきた。
「助けたいの?」
「…あぁ…助けたい。助けてやりたい…でも、一番隊隊長として、それは許されない。」
「……。」
「法を曲げれば、今度は俺が護廷十三隊を裏切ることになる。」
乱菊は静かに耳を傾ける。
「だけど俺が何もしなければ、あの子は死ぬだろう」
拳が自然と握られる。
「俺は何のためにこの地位に就いた。仲間を守るためじゃなかったのか。なのに……また守れない。…彼女のような人ほど…先に死にゆく定めにある」
その声は、酷くかすれていた。乱菊はそっと俺の手へ自分の手を重ねる。
「真叶。」
「……。」
「私はね。」
優しく微笑む。
「答えは教えられない。隊長としての責任も、1隊士の私なんかよりずっと重いものなんでしょう?」
俺は応えない
「でも。」
乱菊は俺の手をぎゅっと握る。
「一つだけ言えるわ。…後悔する選択だけは、しないで。」
「……。」
「誰かに褒められる道じゃなくていい。誰かに理解されなくてもいい。真叶自身が、何十年先になっても『あの時あれで良かった』って思える道を選んで。」
重みのある言葉だった。だが、その一つ一つが胸へ深く染み込んでいく。
乱菊は微笑んだまま続ける。
「だって、私が好きになった雀部真叶は。立場じゃなくて、自分の信じる正しさを最後まで貫く人なんだから。」
その言葉に、俺はゆっくりと目を閉じた。答えはまだ見つからない。
それでも、心を覆っていた霧がほんの少しだけ晴れた気がした。
――その日。静寂に包まれていた瀞霊廷へ、一つの異変が走る。
警報を知らせる鐘が鳴り響き、空気を震わせるような轟音が西流魂街方面から広がっていく。地獄蝶が一斉に飛び立ち、各隊舎へ緊急伝令が届けられる。
「緊急警報! 西流魂街にて正体不明の侵入者を確認!」
「侵入者四名! 現在、白道門を突破し瀞霊廷へ侵入!」
その報せは瞬く間に護廷十三隊全隊へ伝播する。
突然の非常招集に隊士達は一斉に持ち場へ駆け出し、瀞霊廷は平穏な日常から戦時体制へと移り変わっていった。
「侵入者だ!」
「各隊、配置につけ!」
「決して瀞霊廷内部へ入れるな!」
怒号が飛び交い、斬魄刀を抜いた隊士達が各所を駆け回る。
瀞霊廷全体が騒然となる中――一番隊隊舎の隊長室の障子が静かに開かれる。
「雀部隊長! 西流魂街・白道門付近にて侵入者を確認! 現在、各隊が迎撃に向かっています!」
「……そうか。」
真叶は静かに立ち上がる。その表情に焦りはない。だが、一つだけ胸に引っ掛かるものがあった。
侵入者四名とその数字、そして、この時期、自然と、懺罪宮で交わしたある少女との会話が脳裏を過ぎる。
『黒崎一護という人間は……』
命を懸けても仲間を見捨てない少年。ルキアが最後まで信じ続けていた一人の人間。
さらに、もう一人真叶の脳裏に、頼らなさそうに見えて誰よりも疑り深い男の姿が浮かぶ。
浦原喜助…かつて十二番隊隊長を務めた男である。
あの男なら――現世の人間を尸魂界へ送り込む術くらい、持ち合わせていても何ら不思議ではない。
「……なるほど。」
真叶は小さく息を吐く。
「君は本当に来たんだな、黒崎一護。」
その声には驚きではなく、どこか納得にも似た響きがあった。
仲間を救うために、死神の世界へ乗り込む。
無謀…常識では考えられない。だが、ルキアが語っていた黒崎一護という少年なら――。
そのくらいの無茶は、きっと笑ってやってのける。そして、その背中を押した人物がいるとすれば。
「……浦原さん。貴方までもが彼に惹きつけられたと言うのか」
苦笑混じりにその名を呟く。瀞霊廷を包む警鐘は、なお鳴り止まない。
そしてこの日、黒崎一護ら四人の侵入は、護廷十三隊を巻き込むかつてない激動の幕開けとなるのだった。
この先の展開!!
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