瀞霊廷中央演武場。その場に集まった隊長達は、誰一人として口を開かなかった。
理由は単純である。ただただ目の前に立つ二人の存在が、それを許さないほどの圧を放っていたからだ。
一人は護廷十三隊総隊長、山本元柳斎重國。千年以上の時を生き、尸魂界の歴史そのものと言っても過言ではない男。
そしてもう一人…それは十番隊副隊長、雀部真叶。若くしてその地位へ辿り着いた異例の存在。そして今、彼が手にしている斬魄刀こそ――九天霄輪。
炎と雷…二つの異なる天災が向かい合う。
次の瞬間ー真叶の姿が消えた。
誰もが一瞬、見失う。あの隊長格ですら完全には追えない速度。
【神速】
それが九天霄輪の始解能力。雷を纏うことで、瞬歩による移動をさらに昇華させる。普通の瞬歩は霊子を足場にして空間を移動する技術であるのに対ししかし九天霄輪は違う。
己そのものを雷撃へ近付ける。踏み込んだ瞬間には、既に相手の間合いへ入っている。真叶が山本の側面へ現れる。
狙いは首元一択であり無駄のない一閃が振り下ろされる。
だがーー
「甘いわ小童め」
山本の刀がそこへ割り込んだ。互いの斬魄刀が衝突し轟音が鳴り響く。真叶の九天霄輪と流刃若火が交差する。
しかし真叶はそこで終わらない。刀を引いた瞬間。刃に残された雷が弾ける。
「む?」
斬撃の後に残った雷撃。正に二段攻撃。回避したと思った瞬間に、もう一度攻撃が襲う。普通ならば避けることは不可能な乱撃である
だがーー山本は炎を纏わせた。雷撃が届くより早く、炎圧によって軌道を変える。
雷が空へ軌道をずらされるのを確認した真叶は距離を取った。
その表情に焦りはない。むしろ確認していた。今の一手で分かった。山本元柳斎重國は、攻撃を対処している
九天霄輪の能力。雷撃が発生する位置。攻撃の起点。その全てを読もうとしている
「……」
真叶は再び踏み込む。今度は正面であり山本の視界内、わざと見える位置から更に途中で軌道を変える。
雷光が演武場を駆け抜ける。右から左、左から背後と前後左右に…そして上空からの急降下したその全てが雷を纏った斬撃。
観戦していた隊長達ですら、目で追うことを諦め始める。
「……速いね。正に雷ってことか」
京楽春水が小さく呟く。
「ただ速いだけじゃない。あれは移動そのものを攻撃に変えている」
しかし山本は動じない。全てを最低限の動きで受け流す。大振りな攻撃はしない。余計な力も使わない。千年の戦闘経験が、最も効率の良い動きを選択している。
真叶は理解する。速さでは届かない。ならばと速度ではなく、判断を越える。
九つの光輪が大きく展開され周囲の雷が一点へ集まる。真叶の姿が再び消えた。
今度は違う。残像ではなく雷そのものを囮にした攻撃…先に雷撃だけを走らせ、その隙間を縫うように本体が侵入する。
しかし
「眩しいのぉ」
炎が一瞬だけ揺れる。真叶が現れた瞬間そこへ流刃若火が置かれていた。
避けられるはずがない…そう誰もが認識し山本でさえこの攻撃は必ず決まると判断したそれは
「なに」
「残念!」
炎を纏った一太刀は確かに真叶を捉え切り裂いた。しかしそこから見えるは血飛沫などではなく雷によって攻撃を通り抜け無力化させた真叶の姿。
「ぐお!」
何よりも驚くよりも考えるよりも先に山本の体へと電撃が纏りつき囲雷する。
「これくらいでくたばるお人じゃないからね」
そう真叶が口にした瞬間に追い討ちとばかりに天空から巨大な落雷が発生し山本へと激突する。
その様相に誰もが息を呑んだ。先程までとは明らかに違う。雀部真叶という男が、初めて山本元柳斎重國へ届かせた一撃だった。
雷鳴が演武場全体を包み込み、蒼白い光が視界を奪う。落雷によって巻き上げられた霊子が霧のように漂い、中央に立っていた二人の姿を覆い隠した。
「……やった、のか?」
誰かが小さく呟く。
だが。
京楽春水だけは目を細めたまま、静かに首を横に振った。
「いや……まだだねぇ…護廷十三隊の総隊長はそんなに甘くない」
その言葉と同時だった。雷の中から、一つの影が歩み出る。
ゆっくりと何事もなかったかのように。白い隊長羽織に焼け焦げ一つない死覇装そして手に握られた流刃若火。
山本元柳斎重國…未だ一切の追い傷在らず…
「……」
真叶は僅かに目を細める。
当然だった。なにしろ今の攻撃は神速による加速、雷そのものを囮にした虚像。そして九天霄輪による追撃の雷撃は完全に決まっていた筈であった
しかし相手は普通ではない。
「今の一手……」
山本が口を開く。
「悪くはない」
その言葉に、隊長達の空気が変わる。褒めているのだあの山本元柳斎重國が、若き副隊長の一撃を評価している。
「速度を見せ札にし、本命を隠す、自身を雷へ変換したように見せ、実際には雷へ霊子を混ぜ込んだ幻惑、さらに雷撃による拘束を重ね、最後に天空からの落雷」
山本は淡々と言葉を並べる。まるで先程の攻防を、もう一度分析しているかのように。
「一つ一つは単純…じゃが、それらを組み合わせたことで一つの攻撃として完成させた」
真叶は静かに刀を構える。
「……そこまで分かっているなら何故受けたんです?」
その問いに。山本は僅かに目を細めた。
「ほっほっほ…舐めるなよ小童」
「っ!?」
山本から巨大で恐ろしいほどの霊圧が放たれ、手に持つ流刃若火からは炎が溢れ出している。
「貴様程度の攻撃でそう易々と倒れるとでも思うたか…自惚れも大概にせんとあかんのぉ」
「…ちっ…狸ジジイめ」
ここまで霊圧を隠してやがった。…いやそもそも試してやがったんだ。俺がこの男と戦うに値するのかどうか。つまりこの試験はここからが出発地点。
山本から放たれた霊圧に、真叶は無意識のうちに息を止めていた。
先程までの戦いで感じていたものは、あくまで表面に浮かび上がっていた力の一部だったのだと理解する。流刃若火という斬魄刀が恐ろしいのは、その炎が巨大だからではない。その存在そのものが戦場を支配するほどの圧倒的な熱量を持ちながら、山本元柳斎重國という男がそれを完全に制御しているという事実こそが、この斬魄刀を最強たらしめている理由だった。
「……」
真叶は静かに九天霄輪を握り直す。
焦りはない。恐怖もない。ただ一つ。
目の前の老人は、初めて俺を敵として認識した。
今までの攻防で真叶が使っていたものは、九天霄輪の能力を最大限に活かした速度による戦闘だった。
【神速】…それは雷を纏うことで瞬歩という技術そのものを別次元へ押し上げ、自身の移動を攻撃へ変換する能力。
さらに斬撃後に残留した雷撃による二段攻撃。普通の死神ならば、一度対応したと思った瞬間に次の攻撃へ移行され、理解する暇もなく戦闘不能へ追い込まれる。
だが山本元柳斎重國には通用しなかった。
「どれ…次はワシから攻めようかの」
「っんな!?」
そう言い放った次の瞬間には真叶の目の前に現れ流刃若火を袈裟斬りに振るう。
(この熱量…まずい!)
流刃若火から溢れ出る熱量に警鐘を鳴らした真叶は敢えてその攻撃を受けることなく上空へと回避する。
「小癪な。流刃若火に逃げ場など有りはせんわ」
そう言い放った山本は流刃若火を上空へと向けて"振り下ろす"。すると流刃若火から溢れ出た霊圧を纏った巨大な灼熱の斬撃が真叶へと襲撃する。
「避けろ真叶!!」
「いや!彼には物理的攻撃は効かないのではないか!」
2人の戦闘を見守っていた隊長達は各々の見解を示す
「流刃若火の炎は、万物を焼き滅ぼす至高の炎。雷鳴すら、その業火の前では等しく灰と化す」
その言葉の通り大炎が真叶に直撃し焼き尽くす。灼熱の炎は真叶に直撃した後爆風と爆炎を巻き起こし当たり一体を灰に変えるほどの天変地異を起こした。
「…こりゃあ少々分が悪いね」
「元柳斎先生相手だ…誰がやろうと分が悪いのは承知、彼もそれは分かっていただろうな。」
「さてさて…どうなることやら」
灼熱の炎と煙が収まったころ、その中から1人の影が姿を現す
「流石に今のはちょっと危なかったですね」
「ほう…その程度で済んだか」
現れた真叶は先程の攻撃の影響で死覇装の裾や襟など所々が焼け焦げその肉体を露わにしている。しかし当の本人の霊圧は欠片も減っていないことから山本も警戒を怠らない。
「九天霄輪の能力である肉体の活性化と雷という自然現象へと変貌を遂げる能力が流刃若火の前では意味を為さない。…このままだとまずいぞ真叶」
志波一心は焦ったように真叶を見つめる。
真叶は九天霄輪を逆手へ持ち替え、小さく息を吐く。
「……」
次の瞬間、指先から青白い雷光が幾重にも枝分かれし、演武場全体へと走る。
それは攻撃ではない。地面へ、空へ、壁へ。見えない陣を描くように霊子を刻み込んでいく。
「まさか……鬼道陣を戦闘中に構築しているのか?」
浦原が僅かに目を見開く。
山本は黙したまま流刃若火を構える。
「面白い。」
真叶は指を山本へ向けた。
「破道の八十八――飛龍撃賊震天雷炮。」
蒼雷が龍となり演武場を裂く。
続けざまに、
「破道の六十三――雷吼炮ーー破道の七十三――双蓮蒼火墜。」
「鬼道の連続詠唱!しかもこれほどの速度で…つくづく規格外な男だな」
高位鬼道が息を吐く暇もなく重ねられていく。
だが。その悉くを流刃若火が焼き払い、炎が鬼道すら呑み込んでいく。
「終わりか、小童。」
山本が真叶を見つめると彼は小さく呟くように"何かを口にしていた"
【ーーーー結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ】
「……いや。」
真叶は笑った。
「ここまでは準備ですよ。」
両手を静かに前へ。漆黒の霊圧が渦を巻く。
【破道の九十――『"黒棺"』】
世界が黒く染まった。巨大な黒い立方体が山本を包み込み、無数の黒き刃が内部で交差する。
「破道の九十番台!?鬼道にも優れているとは聞いていたがこれほどなのか!?」
「本当嫌になるっすよ。これが天才って奴っすか」
空間そのものを裂く音だけが演武場へ響く。黒い立方体が形成されると同時に、その内部へと山本元柳斎重國――そして詠唱者である真叶自身の姿までもが飲み込まれた。
「……自ら中へ?」
二番隊隊長の夜一が目を見開く。
「正気かい。黒棺の中は敵味方の区別なく空間そのものが切り刻まれるはずだよ。」
京楽が帽子の鍔を押さえながら呟く。だが浦原だけは扇子で口元を隠した。
「いや……違います。おそらく彼は最初からそのつもりだった。」
"黒棺"ーーそれは単なる拘束鬼道ではない。内部では空間そのものが閉鎖され、霊子の流れすら術者の支配下に置かれる異界。無数の黒き刃があらゆる方向から対象を切り裂き続ける処刑場である。
だが真叶にとって、その閉ざされた空間こそが最大の舞台だった。
そして黒棺内部。そこには光も音もなくあるのは無数の黒い刃だけ。その闇を切り裂くように、幾千幾万もの黒き刃が縦横無尽に交差し、空間そのものを断ち切るかのように山本へ襲い掛かる
だが、それだけではない。黒棺を構成する壁面という壁面を、青白い雷紋が這うように駆け巡る。
黒棺という閉鎖空間に逃げ場はない。
真叶は静かに九天霄輪を構えた。
「黒棺は閉じた空間です。外へ逃げる霊子は一切ない。」
真叶が静かに告げる。
「更にもう一つ」
指先を鳴らす。その一音を合図に、壁面を走っていた雷紋が一斉に脈動した。雷が四方八方から山本へ襲い掛かる。数え切れぬ雷と黒い刃が、黒棺内部を反響しながら何度も軌道を変え、永久機関のように襲い続ける。
この空間そのものが巨大な雷撃陣となっていた。さらに、その隙を縫うように黒き刃が肉体を切り裂いていく。
「……よもやここまでとはな」
山本が初めて眉を動かした。
「鬼道を檻とし、その中へ雷を循環させるか。」
真叶が踏み込むと同時に雷光と闇が空間を裂いた。その全てが一拍の狂いもなく連携する。黒棺という空間そのものが真叶へ味方し、一瞬たりとも攻撃の途切れる時間を与えない。
山本の腕へ浅い裂傷が刻まれる。肩へ雷が掠め、肉体を黒い刃が削る。羽織の袖が僅かに焼け焦げる。
その中で山本は流刃若火を静かに構え直した。
「……ほぅ。」
その一言だけだった。何度目かの雷を受け流しながら、山本の眼光だけが鋭く細められる。
「そういうことか。」
真叶が眉をひそめる。
「閉鎖空間で霊子を循環させ、その循環を利用して攻撃回数を無限に増やしておる。」
真叶は目を見開いた。たった数合で術式を見抜かれた。
「ならば。」
流刃若火へ炎が集まる。
「循環を断てばよい。」
「っ!」
真叶が神速で斬り込む。しかし山本は真叶を迎え撃たず流刃若火を地へ突き立てた炎が渦を巻いた。
それは対象を焼く炎ではなく、黒棺内部を満たす霊子そのものを灼く炎。
雷が消える壁を走っていた雷紋が、一つ、また一つと赤熱し、灰になって崩れていく。
「馬鹿な……!」
真叶が息を呑む。
「鬼道とは霊子を編み、一定の法則に従って循環させる術。」
山本は淡々と語る。
「ならば、その循環路そのものを焼けば術は機能せぬ。」
黒棺の壁に刻まれていた雷紋は、術式そのものだった。それを流刃若火の炎が燃やしている。鬼道そのものではなく鬼道を成立させる術式を焼いている。黒棺の壁へ亀裂が走る。
無数の亀裂が蜘蛛の巣のように広がっていく。真叶は静かに息を吐いた。
やはりこの老人は規格外だ。鬼道を力任せに破壊したのではなく構造を理解し、最も脆い一点だけを焼き切った。
「いや…だからこそ俺は瞬間を待っていた」
「…なに?」
真叶は薄く笑う。その瞬間だった。灰となって漂っていた黒棺の破片が、一斉に蒼白い光を帯び始める。黒棺を構成していた霊子一粒一粒が、真叶の霊圧を宿して共鳴する。
山本が初めて視線を巡らせた。
「……霊子を。」
「そうです。」
真叶は静かに頷く。
「黒棺を発動した時点で、俺は術式を二重に構築していた。一つは黒棺。そしてもう一つは――黒棺を構成する霊子、その全てを新たな術式へと刻む構築」
流刃若火が黒棺を焼いた。しかしそれも計算の内…術式が焼き切られた瞬間、霊子は崩壊し、空間全体へ均一に拡散する。
つまりこの閉鎖空間そのものが、一つの巨大な鬼道陣へと変貌していた。
「俺の攻撃はこれで完成する」
九つの光輪が真叶の背後へ展開する。黒棺の残骸が宙へ浮かび、灰と光が巨大な法陣を描き始める。
演武場の外にてその霊圧を感じ取った隊長たちの表情が一変する。
「……おいおい」
京楽が帽子を押さえる。
「この霊圧……ただの破道じゃない。まさかーー」
その静寂を破るように、真叶は完全詠唱を紡ぎ始めた。
【天哭せよ。
地は伏し星辰は軌を譲り玉座を明け渡せ。
万象を貫く裁きの柱よ。
天門を解き放ち、天上の律を此処へ示せ。
万象を貫く光条となり、終焉を慈雨の如く降り注げ。
遍く命に等しき裁きを――。
破道ノ九十八『"天墜獄門"』】
ーーそれは術者が指定した空間の”天”を鬼道陣へと変貌させる超広域殲滅鬼道。
発動と同時に空が暗転し、巨大な鬼道陣が幾重にも展開される。そこから降り注ぐのは純粋に圧縮された霊子の槍。
一本一本が八十番台鬼道に匹敵する威力を持ち、それが豪雨のように絶え間なく降り続ける。
回避しても意味はない。術者の霊圧を感知し、軌道を変えながら対象を追尾する。さらに一本破壊しても、上空の鬼道陣が即座に新たな槍を生成する。
「む!!」
初めて山本の表情が歪む。…なにせこの術式ではいくら山本といえど直撃して仕舞えばタダでは済まないのだから。
一本一本が空気を裂き、大地を穿ち、演武場を易々と崩壊させていく。轟音が轟音を飲み込み、衝撃波だけで周囲を巻き込む。
山本は流刃若火を静かに構えた。その一本の槍が頭上から迫る。
流刃若火振るい炎が槍を焼き尽くす。だが、次の瞬間には十本…さらに百本…焼いても焼いても、空の鬼道陣が新たな槍を生み出し続ける。
「終わりがない……!」
平子が息を呑む。
「違いますよ」
浦原は静かに首を振った。
「この術式は終わらせないように作られているんです。」
槍は破壊されることすら計算の内。砕けた霊子は再び鬼道陣へ吸い上げられ、新たな槍として再構築される。まるで天が無限に槍を生み出す兵器へ変貌したかのようだった。
「なるほどのう……。」
山本は空を見上げる。
「これが貴様が"開発した"九十八番か。」
その瞬間一本の槍が肩を貫いた。鮮血が舞い総隊長の身体が初めて大きく揺らぐ。
「元柳斎先生!!」
浮竹が思わず声を上げた。しかし続けざまに三本、五本、十本と四方八方から迫る神槍を山本は流刃若火で迎え撃つ。
しかし、その全てを捌き切ることはできない。袖が裂け肩が抉れ脚へ一本が突き刺さり、大地へ膝を沈めた。
真叶はその姿を見据えながら、小さく息を吐く。
「形勢逆転だな」
しかしこの状況下に置いて山本は笑った。
「……ほっほっほ。」
その笑みには焦りなど微塵もない。
「実に見事じゃ、小童。」
流刃若火を握る右手へ、凄まじい霊圧が収束していく。燃え盛っていた業火が、まるで何者かに吸い込まれるように刀身へと収束していく。
【"卍解"】
轟々と大気を焦がしていた炎は一つ残らず消え失せ、辺りを包んでいた灼熱さえ静寂の中へ呑み込まれた。
その瞬間だった。炎は見えない…だが、刀身を中心に空間そのものが蜃気楼のように歪み始める。足元の大地は何も触れていないにもかかわらず黒く炭化し、演武場を構成する白い石畳は音もなく灰へと変わっていく。
霊子が燃えている。
流刃若火の刀身は、炎を纏ってはいない。墨を流したように黒ずみ、刃先だけが灼けた鉄のような紅を宿している。
その一振りには、尸魂界の歴史すべてを焼き尽くし得る熱量が封じられていた。
山本は静かに目を閉じる。
「この姿を晒すのは……いつ以来かのう。」
その声に、隊長たちの背筋へ悪寒が走る。空から降り注いでいた『天墜獄門』の神槍が、山本へ届くよりも早く、その先端から音もなく消滅していく。 近づいただけで、存在を維持できなくなった。
真叶の瞳が僅かに揺れる。
(馬鹿な……俺の鬼道が、触れる前に崩壊している。)
山本は流刃若火をゆっくりと肩へ担ぐ。その一動作だけで、大気が悲鳴を上げる。そして静かに告げる
【残火の太刀】
尸魂界最古にして最強の斬魄刀がいよいよ牙を剥く
この先の展開!!
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原作まで飛ばす!
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オリジナルストーリーで!
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完全お任せで!