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瀞霊廷の遥か彼方――。
幾重もの霊山が連なり、千年もの間、人の手すら入ったことのない山岳地帯。
空は鉛色の雲に覆われ、山肌を撫でる風は鋭く、岩壁を削るような唸りを上げていた。草木は霊圧に耐えきれず根を焼かれ、大地には古の戦で刻まれたかのような巨大な裂傷が無数に走る。
そんな死地の中心に、二つの死神が相対していた。
黒の死覇装の上から、選ばれし者のみが纏うことを許される純白の隊長羽織、その羽織が灰色の世界にあたって異様なほど鮮明に映える。
一人は、かの総隊長から受け継ぎ認められた"現代最強"に最も近いとされる男…一番隊隊長――雀部真叶
もう一人は、大柄な真叶より更に二回りは大きい男…名を…十一番隊隊長――更木剣八と言う。
護廷十三隊十一番隊隊長――更木剣八。その名は、強者だけに許される称号であり、同時に歴代最強の剣士へと受け継がれる”剣八”の名そのものでもある。
流魂街北地区七十九番地区『更木』。無法と殺戮が日常と化したその地で、名も持たぬまま生き延びた男は、ただ強者を求めて剣を振るい続けた。やがて男は、当時の十一番隊隊長――先代剣八・鬼厳城剣八へと挑み、一騎討ちの末に討ち果たす。
隊長を正面から斬り伏せ、その座を力のみで奪い取る。護廷十三隊の長い歴史においても、それほどまでに苛烈な方法で隊長へと上り詰めた者は極めて稀であった。
以来、更木剣八は十一番隊隊長として君臨する。
曰く卍解も知らず、鬼道も使わない。
斬魄刀との対話すら拒み、己の肉体と剣だけを信じて数多の死線を潜り抜けてきた異端の死神。戦うことそのものを歓びとし、命を懸けた斬り合いだけを求め続ける、生粋の戦闘狂。
その圧倒的な霊圧は、解放すらせずに相手を威圧し、剣を振るえば大地を裂き、笑えば敵は恐怖する。
そして何より恐ろしいのは、その強さに終わりがないこと。己が戦いを長く楽しむため、無意識のうちに本来の力へと枷を掛け続けていたという、常識では測れぬ怪物。
己が部隊の隊士問わず護廷十三隊の殆どが認める”最狂の剣士”。ただ一太刀を交えるためならば、死すら厭わない。
その男こそ――護廷十三隊十一番隊隊長、更木剣八である。
互いに刀を構えることなく、ただ立つだけで空気が震えていた。
互いの霊圧がぶつかるたび、大気は悲鳴を上げ、周囲数百メートルの岩壁が音もなく砕け散る。
空に浮かぶ雲は押し退けられ、巨大な渦を描いた。
「…………」
「…………」
言葉はいらない。剣士同士にとって、それは余計なものだった。
剣八の口元が獰猛に吊り上がる。
「ようやくだなァ……!」
全身から溢れ出る狂気にも似た歓喜。
「ようやく、テメェと本気で殺り合える。」
真叶は静かに息を吐く。その瞳には激情も高揚もない。ただ、研ぎ澄まされた静寂だけが宿っていた。
「……はぁ…狂犬め。良い加減躾けてやる」
「やれるもんならなぁぁぁ!!」
次の瞬間、山そのものが跳ね上がった。
二人の姿が消え轟音が遅れて山々を駆け巡る。刹那に天を裂くような金属音が響き渡り互いの斬魄刀が激突した衝撃だけで爆風が生まれ、周囲の峰が根元から吹き飛ぶ。
剣八は笑う。
「最高じゃねぇか!!」
そのまま膂力だけで押し込み、大地を割る。対する真叶は微動だにせず、その一撃を受け流す。
力ではなく、技。流れるような剣筋で剣八の刃を逸らすと、そのまま喉元へ一閃。
だが。
「そう来なくっちゃなァ!!」
剣八は笑ったまま身体を捻り、頬を裂かれながらも強引に斬り返す。天を裂く剣戟。
衝突した瞬間、二振りの斬魄刀から放たれた衝撃だけで山肌が吹き飛んだ。更木剣八は獰猛に笑う。
「ハハッ!! 最高じゃねぇかァ!!」
巨躯から繰り出される一撃一撃は、技ではない。
それは純粋な膂力であり純粋な殺意。山を断ち、大地を抉るほどの暴力だった。
しかし真叶は一歩。ただ半歩だけ身体をずらす。
剣八の斬撃は空を裂き、その先にあった巨大な山を真っ二つに断ち割った。
「っは!」
振り抜いた勢いのまま剣八が肘を叩き込む。
「がっ……!」
だがそれよりも先に剣八の腹部へ、真叶の拳が深々と突き刺さった。単純な膂力で言えば剣八の方が真叶よりも上だろう。…しかしそれ以上に剣八と真叶では速度が違う。尸魂界最速の名を欲しいままにしている真叶が相手では剣八の速さは些か緩い。
空気が押し出される。剣八の身体が砲弾のように吹き飛び、岩山を三つ、四つと突き抜ける。
轟音と土煙が舞い山岳を崩壊させた数秒後…ガラッ……と岩を押し退け、剣八は血を吐きながら立ち上がった。
「ククッ……。」
剣八の口元が吊り上がる。
「いいぜ……!! そうこなくっちゃなァ!!」
瞬歩…それすら認識できぬ速度で一瞬で真叶の懐へ潜り込み、全身全霊の袈裟斬りを放つ。
しかし。真叶の刀が、最小限の動きだけでそれを受け流した。
「なっ……!」
体勢が僅かに泳ぐ。その一瞬で
「終わりだ」
真叶の柄頭が剣八の顎を打ち抜いた。
骨が軋む鈍い音が聞こえ続け様に背中へ峰打ち、止めとばかりに脇腹へ回し蹴りを叩き込み
剣八の巨体が宙を舞う。谷底へ叩き落とされた衝撃で地面が陥没した。
「……っは。」
普通なら終わっている致死量の一撃。
しかしーー
「最高だァァァァ!!」
笑い声と共に瓦礫が吹き飛ぶ。全身から血を流しながら、更木剣八は立っていた。
「もっとだ!!もっと俺を楽しませろォ!!」
霊圧が爆発し空気が軋み、周囲数キロの木々が根こそぎ吹き飛ぶ。真叶は静かに刀を構え直した。
「……霊圧が上がり続けている…まだやる気か?」
「当たり前だ。」
剣八は肩で息をしながら笑う。
「斬り合いってのはよォ……
ここからが面白ぇんだろ。」
二人が同時に踏み込む。斬魄刀がぶつかり合う事で火花が空を埋め尽くす。
山脈が一本、また一本と崩れ落ちる。剣八は血塗れになりながら笑い続けた。
真叶は一切表情を変えず、すべてを捌き続けた。
剣技において真叶が一枚も二枚も上だった。真叶の刃が剣八の肩口から胸元まで一直線に裂いた。
鮮血が宙を舞い膝をつく剣八。
それでもなおこの男は嗤う
「……足りねぇ…もっと喰わせろ。…お前と言う極上の獲物をよぉぉぉ!!」
ゆっくりと立ち上がる。霊圧がさらに巨大に膨れ上がる。
殺気を帯びた霊圧が山々を震わせた。真叶もまた刀を静かに構える。
「……これ以上は手加減は出来ないぞ」
「はっ…んなもん…いらねぇよぉぉぉ!!!」
二人の瞳から、試合という概念が消えた。 あるのはただ――殺すか、殺されるか。剣八の殺気が充満し殺し合いに発展するかと思われたその時ーー
「そこまでや。」
飄々とした声が、張り詰めた空気を切り裂いた。
二人の間へ、一筋の銀光が舞い降りる。
現れたのは三番隊隊長市丸ギン。そしてその背後には、白い羽織を翻す六番隊隊長の朽木白哉の姿。
「これ以上は、洒落にならへん。」
ギンは笑みを浮かべたまま言う。
「瀞霊廷まで吹き飛ばす気かいな。」
白哉は静かに二人を見据える。
「双方、退け。これは鍛錬ではない。既に隊長同士の私闘を越えている。」
剣八は舌打ちした。
「チッ……邪魔が入りやがった。」
そう言い文句を口にしながらも剣八は鞘へと刀を収めどこかに消えて行った。その様子を見ながら真叶は刀をゆっくりと納める。
「助かった。良いタイミングだったなギン。それに白哉も」
「そりゃ構へんけどそもそも何でこないなことなってんの?」
「…いやそれなんだが、お前達も知っての通り奴の戦闘狂たる執念は異常だ。戦前から俺に対して執拗にアピールしてたんだが…」
「いつもは適当にあしらってたやん。」
「まぁそうなんだが…アイツ…俺が無理ならって総隊長に仕掛けやがって…」
「「……。」」
白哉とギン…2人の脳裏にこれまでの剣八の問題行動が巻き戻された結果、あり得る話だと本能で理解した。現に2人も隊長になった際、白哉は祖父から引き継いだ後、ギンは真叶から隊長へと推薦された後それぞれ剣八に喧嘩を売られている
「流石に度が過ぎていると判断したのか上層部と総隊長の方から指令が出たのさ…」
「それがあの男との決闘だったと…」
これまで黙っていた白哉が会話に入ってくる
「あぁ。ある程度やれば落ち着くと考えていたんだが、寧ろヒートアップしてしまってな。結果はあの有様だ」
「…あのような獣同然の男を隊長に任命した事自体私は反対なのだ。」
「まぁまぁ、そやかて朽木隊長もあの男の強さは認めてはるんやろ?」
「…あの程度造作もない」
そう言う白哉だが実際のところ更木剣八の強さを理解し認めている事を2人は知っていた。出なければ今頃は真叶ではなく白哉が更木剣八と戦っていたに違いないからである。このプライドの高い男が認めていない男を自分と同列に置かれる事を良しとするはずもないからである
そもそもこの更木剣八とギン、白哉含め俺が入隊した頃と比べて護廷十三隊の隊長達は幅広く入れ替わりしていた。具体的に言えば一番隊には山本元柳斎重國から雀部真叶へと、二番隊には四楓院夜一から砕蜂へと。三番隊に関しても俺が入隊した頃は年配のご老人だったがそこから鳳橋楼十郎…そして市丸ギンへと。四番隊は戦闘より回復部隊として着名している事もあり変わらず卯ノ花さんが襲名している。
五番隊に平子真子から藍染惣右介へと変わり、六番隊には朽木銀嶺が老衰で退役したことから孫の朽木白哉へと継続した。七番隊には愛川羅武から当時死神ですらなかった狛村左陣へと引き継がれた。狛村左陣について隊長達以外知らない複雑な事情もあるのだが追々話していこう。九番隊も六車拳西から当時副隊長であった東仙要へと…八、十、十三の京楽、浮竹、志波の3名は変わらず隊長を続けており護廷十三隊に貢献している。十二番隊には浦原の置き土産である怪しい奴が就任したりもしたが…十一番隊においては特殊であって常に当時の十一番隊隊長を倒しての就任以外は認められないと言う独自の手法をとっている無法地帯なのだ。
それにより数年前に当時、十一番隊隊長に君臨していた――先代剣八・鬼厳城剣八へと挑み、一騎討ちの末に勝利をもぎ取ったのが更木剣八である。
まぁ鬼厳城剣八自体、隊長としての役目を放棄し酒に女に金と堕落した生活を送っているようなどうしようも無い屑であった事もあり鬼厳城剣八を打ち取ったことに関して特に異論は発生しなかった。
そんなこんなで数十年前とは隊長も隊員も様変わりした護廷十三隊であるが、ここ数年は例の虚化事件もなりを潜めている。あの大規模な被害をもたらした事件以来まるで全て終わったかのように動きを見せないのだ。
……だからこそ、不自然だった。
あれほど大規模な事件を引き起こしておきながら、犯人は未だ見つかっていない。
浦原喜助へ全ての罪が着せられた形で事件は幕を閉じたが、私にはどうしても腑に落ちなかった。
あれほど周到に仕組まれた実験。複数の隊長、副隊長が同時に巻き込まれた異常事態。
到底、一人で成し遂げられるものではない。必ずどこかに、裏で糸を引いた存在がいる。
それだけは確信していた。だから俺は、護廷十三隊そのものの体制を見直した。
犯人が誰なのかは分からない。何を目的としているのかも分からない。次にいつ動くのかさえ分からない。分からないのであれば、相手ではなくこちらを変えるしかない。
まず最初に着手したのは、情報共有体制の改革だった。
護廷十三隊総隊長命令
第一号
『虚化事件後における警戒態勢及び再発防止に関する基本方針』
発令者:護廷十三隊一番隊隊長 雀部真叶
発令日:虚化事件終結後
第一条【目的】
虚化事件のような護廷十三隊内部への重大な脅威を二度と発生させぬことを目的とし、本命令を制定する。
本命令は瀞霊廷並びに流魂街全域に適用される。
第二条【情報共有の徹底】
一、隊士失踪
二、異常霊圧
三、未確認の虚及び霊的災害
四、所属不明の死神・霊体
以上を確認した場合、所属隊を経由せず一番隊へ緊急報告するものとする。
虚化事件では各隊が個別に動き、互いの情報が十分に伝わっていなかった。
異変に気付いた頃には手遅れ。そんな状況を二度と生まないため、一番隊を中心とした緊急伝令制度を新設。重大な霊圧異常や隊士の失踪、原因不明の虚の出現などは、隊長格全員へ即座に共有される仕組みを整えた。
第三条【流魂街巡察強化】
各隊は定期巡察を実施する。
巡察内容は以下とする。
・住民の安全確認
・失踪者調査
・霊圧異常調査
・虚出現記録
・不審人物の確認
必要に応じ四番隊及び鬼道衆との合同巡察を認める。
続いて流魂街の巡察を強化。
これまでのような治安維持だけではなく、失踪者の記録、不可解な霊子反応、身元不明の遺体など、小さな異変まで報告対象に加えた。犯人は必ず痕跡を残す。
どれほど慎重な相手でも、それだけは変わらない。
第四条【霊圧観測】
十二番隊は瀞霊廷全域の霊圧変動を常時観測する。
以下を確認した場合は直ちに一番隊へ報告する。
・隊長格相当以上の未登録霊圧
・急激な霊圧消失
・局地的霊子異常
・原因不明の結界変動
そして十二番隊には、瀞霊廷全域の霊圧変動を長期的に記録する監視体制の構築を命じた。一日では分からない異常も、一年、十年と積み重ねれば必ず傾向が見えてくる。敵が姿を隠すなら、影を追えばいい。
第五条【現世駐在任務】
現世派遣中の死神は月例報告を義務とする。
以下の事象は大小を問わず記録すること。
・異常虚の出現
・未知の能力
・特殊霊圧
・身元不明の霊体
・通常任務では説明困難な現象
第六条【中央四十六室警備】
中央四十六室の警備を強化する。
一番隊直属警備隊を常駐とし、担当隊は定期的に交代する。
結界点検は毎月実施するものとする。
第七条【機密保持】
本命令の内容を外部へ漏洩した者は、隊規違反として厳重に処分する。
第八条【心得】
敵の姿は未だ判明していない。
故に我々は敵を追うのではない。
護るべきものを護り抜くため、己の備えを怠らぬこと。
些細な違和感を見逃すな。
その一報が、多くの命を救うことになる。
護廷十三隊一番隊隊長
雀部 真叶
“正義とは、剣を抜くことではない。抜かずに済むよう備えることだ。護廷十三隊は、そのために存在する。”
俺が考えた対策は以下の通りだ。無論これだけの大掛かりな政策だ、反対意見も少なくなかった。
「平時にそこまでの警戒は必要なのか。」
「事件は終わったのではないか。」
そう口にする者もいた。だが俺は、その考えこそ危険だと思っていた。
いくら何も無いからと言えど事件は終わったのではない。終わらされたのだ。真相は何一つ解明されていない。だからこそ、護廷十三隊は忘れてはならない。
守るべき者達がいる事を…何より…後悔しないために
姿を見せない敵ほど、恐ろしいものはないのだから
この先の展開!!
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原作まで飛ばす!
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オリジナルストーリーで!
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完全お任せで!