時間はさかのぼり少し前
ラストダンジョン最下層
そこでひとりの子供が一匹の小さなスライム相手と戦っている。
スライムは一撃でスライムの心臓である核ごと貫かなければいけない。
何度も何度も剣で核を狙うが、スライムの弾力性の影響で刃を通すことが難しい。
「やぁぁ!」
ボロボロになりながらも何度も挑戦する。
時には跳ね返ってくる剣の刃がその子供に襲いかかってきたり
スライムの弱酸性の液体がかかったり。
ただスライム一体相手に数時間もかけて戦う。
そしてようやく、核を貫き通してはスライムは蒸発し消えていった。
頬にスライムがふっかけてきた酸のせいでできた傷があることを確認し、軽く触っては「痛っ」と手を引っ込める。
すると奥から人影が現れる。
「ルイア、スライム討伐。」
「はい!できました魔王さま!」
黒のローブと顔を隠すちょっと不気味なマスクを付けたそれは魔王である。
「頬の傷…スライムの酸」
「はい、治癒してくれませんか?」
「わかった」
魔王はその子供、ルイアの頬に治癒魔法をかけては傷を癒す。
たちまち傷はなかったかのように透明な肌へと戻っていた。
ダンジョンの最下層にしては派手な装飾もなくましては上の階層よりも装飾が少ない。
そんな最下層の片隅にある小さなテント。
「見てください魔王さま!灯火の欠片がいつもよりきれいに輝いています!」
テントへ戻ってきては中にあるオレンジ色宝石のようなものの欠片を取り出す。
その欠片は色収差を起こしている。
ルイアは欠片を抱きしめる、それを見て魔王は何か言いたそうな仕草をするがすぐに冷静になった。
体と服を魔王の魔法で軽く洗浄し、温風で乾かした後、ルイアは古びた一冊の絵本を魔王の元へ持ってきてはとあるページの絵を指さす
「魔王さま!この青いものはいつになったら見ることができますか?」
その絵はきれいな青空と輝く太陽、それに照らされた木の下で遊ぶ獣人の子と人間の子が描かれていた。
「…転生者がいなくなれば」
「てんせいしゃ?」
「うん、別の世界からやってきた勇者」
「勇者ですか!…けどなんでその勇者様がいなくなる必要があるのですか?」
魔王は黙り込み少し考えた
「わた…我の複製体を倒した後の出来事」
◇◇◇
一年前
「ほう、我をここまで追い詰めるとは」
魔王城内、魔王のコピー体と最初の転生者であり勇者、のちにアルファと呼ばれる男がにらみ合っていた。
この頃のアルファはまだ女神と戦っていないため今よりも断然と弱い
「今日こそ決着をつけてやる!」
アルファは魔王へ向けて凄まじいオーラを放つ剣を差し込む
差し込まれた傷口から魔王のコピー体にひびが入る。
「そんな初級のスキルが通じるわけ…」
必ず攻撃が当たる初級スキル<
しかし、アルファのそのスキルは威力が違った、いや、そのスキルに合わせて別のスキルで攻撃を仕掛けている。
「はっ!初見殺しの俺のユニークスキル!」
魔王のコピー体の全身に猛毒が巡る。
そして内側から溶けては跡形もなく消えた。
「ラクショーラクショー。」
アルファは被害ゼロで魔王を討伐したことを王都で祝福され、ヒロインとのハーレムと一生の裕福。完全なるハッピーエンドで終わったのである。
しかし悲劇は突然始まった、とある勇者主催のお祭りの時、アルファは屋台をめぐっている途中、とてつもない美人を見つけるのである。
「そこの女、よろこべ、俺様と一緒に屋台をめぐろうじゃないか」
「すみません、お断りします」
彼にとって「はい!」という未来しか見えていなかった。
だが現実はその美人さんはアルファの誘いを断った
「もういい、全員殺す」
それにキレたアルファは突如として祭りに来ていた先住民全員を殺した。
悲鳴が後を絶えない、アルファはゲームでストレスを発散しているかのように一人一人殺していく。
だれも彼を止めることはできない、最後は神頼み
その神頼みをする人たちをみてさらにイラついたアルファは天界へ行っては
「イラついたから今日からお前は俺様の奴隷な?」
「え?」
彼にスキルを付与し魔王討伐を命じた女神さまを奴隷とした。
こうして、先住民は皆殺され、日本で「異世界転生現象」の噂を流し、大量に同じ日本人たちを転生させては、ゲームのように未来的な建築がポンポンと建てられていった。
「ハチオンに投稿しよっと、逆らったやついたから世界滅ぼしちゃったーってなアハハ」
アルファはスマートフォンを取り出しSNSにこう投稿した
「死ねば異世界へ行けるぜ?」
◇◇◇
「アルファが、先住民全員抹殺するようにって」
魔王の話を聞いて驚きすぎて開いた口が塞がらないルイア
ただ美人さんにナンパして失敗しただけなのに先住民絶滅させるという頭がイカれているという言葉では収まりきらないほどの異常すぎる行動…
「奴隷ってどういう意味?」
「あるじの命令は絶対…」
「だから転生者が大量に…」
「そういうこと。」
魔王は、温めたポーションをルイアに渡しては話を続ける。
「だからルイアも狙われている、ルイアは最後の先住民」
「僕が、最後?」
その時、とてつもなく巨大な気配を感じた
魔王はそれを感じ取り立ち上がる。
「ルイア…逃げて」
「え?」
「今すぐ!」
ルイアは言われるがままにラスボス部屋へと逃げ込む。
突如魔王から言われたことに体をビクビクさせながらも片隅に座り込んでは魔王の無事を祈る。
しかしその時、ドアが開けられる。
一瞬魔王が帰ってきたかと思ったが…
「え?子供?wまさかー、子供相手に手こずってたの?今まで?w」
腹を抱えながら笑うガンマ達転生者の姿だった。
その姿を見てはルイアは腰を抜かす。魔王が言っていた先住民を殺した人たち。
「まおう、さま…?」
魔王の姿はなかった。涙目になりながら後ずさりをする。
しかしすぐ後ろは壁。もう逃げ場などない。
そこへナイフをひとなめしながら近づいてくる男。
そのナイフを見ては殺されると涙も出なくなってしまうほど恐怖を感じた
「ガキを殺すなんて夢だったんだよ」
耳元でその男は囁きながらナイフを首筋に当てようとした。
その途端、男は動きを止めた。
そして顔が膨れ上がりパァンと音を立てては破裂する。
そこからは大量の血が流れ出してルイアの全身を赤く染める。
大量の血を浴びたルイアは恐怖とグロさに泡を吹いて気絶してしまった
「誰がやった!?」
スキルを使えばいいものの…ガンマはまるで小学生かのように犯人捜しを始めた。
一人は新たに録画を取り直し始め誰かはまるで心当たりがあるかのようにまた別の人間に視線を移す。
そんな中、ひとりの女の子が手を挙げる
「私がやった」
「はは…ファイが殺人だ殺人ー」
頭が破裂しなくなってもなお頭を探し暴れ回るグザイの死体。
それを背中に向けながらガンマは「こいつ正気じゃないな」と思いながら
「ルール違反だからバンするねー」
何人かの転生者がそれぞれのチートスキルを駆使してファイに襲い掛かる
「はぁ…」
ファイはため息をつく。その途端に転生者達の姿はなくなっていた。
元からなかったかのように。
「…俺がいく」
ラムダという男。彼はファイをじっと見つめては
「洗脳」
その言葉を聞いたファイは目のハイライトが消え洗脳された、そして人形のように倒れた。
「急所を差し出せ、」
ファイはその
そしてファイが目の前まで来るとラムダは彼女の狼耳を強くて握りしめてはナイフで心臓を貫く。彼女は灰になって消滅した。
「ありがとうございますガンマさん余計な血を浴びなくて済みました」
「え、あ、あぁ」
ファイが刺されたとき灰になったことについてガンマのおかげだと思いお礼を言ったラムダ。
しかし、そんなことをガンマはやっておらず思わず素が出てしまった。
頭がないグザイを投げ飛ばしては泡を吹いて気絶しているルイアの心臓をめがけてナイフを突き刺すラムダ
「抗えない洗脳は薄い本だけにしてくれ」
ラムダはルイアではなく自身を刺していた。
両手でナイフを握っていたラムダその手をファイは優しくラムダ自身の心臓のほうへと動かしていた。
「ラムダなにやってんのねぇー!てかなんで生きてんの?理不尽過ぎないねぇ?」
残るはガンマだけになった。
「ごめんな、この子は私が引き受けることにした」
「…あんた誰?」
ファイは力強く言った
「通りすがりの獣人だ」
シーンと当たるが静かになる
そして突如ファイの空気が変わる。
「いやぁいってみたかったんだよねぇごめんねぇ、」
「え?は?私今何ってたの?」
無意識に「誰」と聞いたガンマ。
ファイのその姿を見ては怒りがこみあがってきた
「私が怒ったらどうなるかな」
大量のウィンドウが出現する
そこには数々のチートスキルが書かれており簡単操作で発動することができる
「手始めにファイのスキルを封印!」
「じゃー私はどんな状況下でも絶対に発動するスキルを使って矛盾を発動!」
再び静まり返った。ファイにスキル無効化を仕掛けたのにファイは強制的にスキルを発動し矛盾を発生させてはまるでそのシーンがカットされたかのように二つのスキルが打ち消された。
「なんでぇ?」
「永遠に私のターン、ドロー!この物語から紅茶を取り出し飲んで精神統一!ターンエンド!」
ファイの言っていることがさっぱり理解できないガンマ。
ファイは突如空間に出現した本から紅茶を取り出しては口に運んだ!
「次の本はこれねー」
「それがアンタの攻撃に必要なものなのね!」
ファイが本を取り出した瞬間、ありとあらゆる遠距離攻撃スキルを本に向けて放った。
どかーんとファイもろとも粉々になっていそうな威力。ダンジョンが無傷なのがこわい。
ガンマは先のことでこの程度の攻撃じゃ彼女は死なないと思っている、せめて本だけでも破壊できれば…
「ごめーんこれ破壊不能」
煙が収まると傷一つもない本とファイがいた。
驚いた顔をしながらも絶対に破壊するためにも「破壊不能なものを破壊するスキル」を作ったガンマ
もしかすると矛盾による消滅で本が消えないかと思っていた。
「ここで絶対に殺す。」
スキルを発動し球体の結晶が本へとくっつく。
すると奇声をあげながらその本を破壊しようとした。
しかしそれと同時にガンマへ鋭い激痛が襲い掛かる
その奇声が高くなるにつれ締め付けられていくように、
「痛い!っ痛いよぉ…」
泣き叫びながら必死で痛みを少しでも和らげようと暴れ回る
そしてファイはその結晶を電磁石で取り除いた。その本のタイトルは「伊藤 宝海」と書かれていた。
「
力尽きたガンマはタイトルを見るやなぜここに自身の本名が書かれた本があるのか不思議に思うのと同時に中身が男だとバレていたことについての怒りを感じていた
「君の中身も分かったことだし、私も種明かししますかぁ」
ガンマの本を別の空間へと閉まってはガンマを拘束した。
「モノガタリって言ったらわかる?物語じゃないよ、
ガンマはそれを聞いた途端なぜ負けたのかようやくわかった。
「奴隷女神と…モノガタリ…」
この世界は一人の女神がアルファを転生したところから始まった。
そして女神が奴隷になった時
「読者…モノガタリがまだいる」
と言い残したのが始まり、その後なんでも知ることができるスキルを持つ男からモノガタリについてありとあらゆることを知ったのだそう。
「そうそう、もう見てらんなくてね、」
ファイことモノガタリはガンマの頭を撫でては
「君は特別に痛くないようにまた元の場所に…地球へ戻してあげるよ」
「いや、いやだ…」
ガンマは帰りたくないと泣きながら言う。
醜い過去が彼の脳内に蘇る。
そしてガンマの下に巨大な魔方陣が展開されそこへ吸収されていった。
「さてと、この子はーっと」
真っ赤に染まり泡を吹いて気絶しているルイア。
モノガタリは彼を抱き上げてはまた別の次元へと姿を消した。
◇◇◇
とある場所
「アルファ、モノガタリが」
「とうとう現れちゃったかぁ…会議を開こう、これ以上死者を出さないように対策もしたい。よろしく頼むよベータ」
「了解」
ガンマ視点の映像を見ながらアルファは別の画面を表示し文字を入力する。
モノガタリは死ぬ。ただそれだけ
「さてと、あいつにまたいろいろ命令しなきゃ」