悪役貴族? の影武者をしていますが、主が破滅回避とか言い出してから帰ってきません   作:カゲ・ムシャ―

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第1話:主、帰ってこねぇ

 俺の名前は、アルマ・ラグナエル、とある侯爵貴族の屋敷で働いている者だ。

 役目はそう、影武者。

 大事な主であるレオン・アゼリア様の身を守るべく、その身を挺して影から守護し、時には成り代わり、戦い、料理を作り……と、まぁ色々する者である。

 

 容姿も身長さえも似ていたことから影武者に選ばれた己。

 現在進行形で仕事も順調で、今日も影武者生活を成就すべく仕事をこなし一日を終えたのだが、最近の俺には一つ悩みがあった。

 その悩みは数年間から感じていたものであり、最近になってあれぇとなったことなのだが、ここは率直に言おう。

 

 なんか、俺の主であるレオン様が三年ほど帰ってこないのだ。

 ……うん、そう。

 自分の為にもう一度語るが、主が三年間も屋敷に帰ってきてないのだ。

 耳を疑うかもしれないが、それはマジであり俺は現在進行形で影武者として三年成り代わっている。

 

「え、おかしくないか?」

 

 レオン様に与えられた自室の中、俺は一度天を仰いで冷静に日頃日課であった日記を確認する。

 書かれている日付は三年前の今日、それもレオン様の誕生日当日の記録。

 そこには、最後の会話が記されていて、要約すると俺は悪役貴族で破滅するんだけど、それは嫌だからちょっとだけ屋敷出るねって感じだった。

 

 今にも瞼に焼き付いて離れない、彼の十二歳の誕生日。

 いつもの様に俺が食事を作り美味しいと言ってくれた彼が、少しふらっとしたかと思えば、その後に自室に呼ばれたそう言われたのだ。

 

「思えば様子がおかしかったが……三年も帰ってこないなんてあるのだろうか?」

 

 疑問を持ってしまい、そうやって零した時だった。

 部屋の戸がノックされ、誰かが訪ねてききた。

 

「レオン兄さま、いま大丈夫かしら?」

「ん、なんだミリィ? 大丈夫だぞ」

 

 かけられるのは少女の声。

 この声を間違えることなどないが、正体はレオン様の妹君であるミリア・アゼリア様だろう。

 返事をすれば入ってくるのはレオン様と同じ銀髪の少女。

 アメジストの様な紫に輝く瞳をする長髪の彼女は、俺を見るなりおずおずと言葉を投げかけてくる。

 

「ねぇ兄さま、明日から学園に行くって本当?」

「……まぁ、そうだな。貴族として王都の学園に通うのは責務、この家に恥じないためにもきっちり卒業しなければいけないだろ?」

 

 少し返事に迷ったが、俺はレオン様を演じながらそう答えた。

 そう、俺が今更になって疑問に思ったのは大きな理由がある。

 それは年齢が十五となった貴族の者は王都にある学園に通うことになるのだが、そこに通う前日となった今日にいたるまで彼が帰ってこなかったから。

 前々から思っていた、流石にそろそろ帰ってくるよな? という思いがあったが、まさか大事な日である今日まで帰ってこないとか思わないだろう。

 

「そう、それは寂しくなるわね」

「なに、通うのは三年だ。あっという間だろう?」

 

 事実、三年というのはめっちゃ早い。

 だって、俺が今それを実感しているからマジで説得力があるはずだ。

 というか貴族としての責務というか、教育が激務すぎてすごく早かった。

 朝起きて、鍛錬して、魔法の勉強して、ミリア様と遊んで、同僚のご飯を食べて、御当主様と会話して、その日の事を記録して、気づけば一日が終わる。

 レオン様の影武者として、彼に恥じない実力を得なければいけないからこそ、鍛錬も魔法の勉強も一切妥協できず、講師殿達からのしごきにも耐え……気づけば今。

 

「それに、ミリィも一年すれば学園に来るんだろう? ならすぐだ」

「そう、ね。えぇそうよね、一年我慢すれば兄さまにまた会えるのよね?」

「それに夏と冬には休みがある絶対に帰ってくるさ。ほかにも連休もあるらしいし」

 

 そこまで伝えたところで、ミリア様にいつもの笑顔が戻る。

 安心したのかほっと笑い、彼女は俺がいつも使っているベッドに腰掛けて……悪戯するかのように微笑んだ。

 

「じゃあ兄さま、せっかくだし明日まで一緒に居ましょ?」

「だめだ、明日俺は早いし何より年頃の女性が男の部屋に長居するな」

「むぅ兄妹なんだしいいでしょう?」

 

 兄妹じゃないから不味いんですお嬢様。

 いや、敬愛する主の妹君に手を出すつもり何て一切ないが、彼女というかミリア様は本当に美しくて綺麗な少女だ。そういう貞操観念はしっかりしていただきたいので、しっかり断る。

 

「とにかく、絶対駄目だ」

「けちね、まぁいいわ。明日兄さまは入学式でしょう? 頑張って頂戴」

 

 しっかり俺が拒否したおかげかわかってくれたのか、ベッドから降りてくれた彼女は残念そうに部屋から出ていき、そのままレオン様の自室には俺だけが残された。

 

「本当にどうするか、明日入学式だ」

 

 帰ってきたときのためにも、絶対に手が抜けなかった学園の試験。

 力をつけてくださった皆様のおかげかいい結果は出すことができたと思うが、入学時の成績は当日発表されるらしいので不安である。

 だが、そんな事よりも……本当に大事なことが一つ。

 

「レオン様、帰ってこないんだが?」

 

 そう、入学前夜どう頑張っても帰ってこない気配しかないので、俺はまだまだ影武者を続けないといけないだろうか?

 

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