悪役貴族? の影武者をしていますが、主が破滅回避とか言い出してから帰ってきません 作:カゲ・ムシャ―
俺が住んでるのはアステール大陸という場所だ。
この世界に存在する主要の三国に囲まれている大陸で、その大陸の中心に存在する大陸の名前を取ったアステール王国が俺の主であるレオン様が所属する場所だ。
そしてこのアステールという国は世界有数の迷宮保有国であり、モンスターが多い代わりに資源や鉱物などが豊富でかなりの強国。
入学式当日の事だ、俺はそんな王国にあるステラ学園という場所にいて、新入生達は王国の劇場のような場所に集められて始まりを待っていた――んだが。
どういうわけかそんな中、首席になってしまったらしい俺は壇上の裏にいて職員や学園長の話を近場で聞いていた。
「どうしようか、話とか全く固まってねぇ」
学園に着いたかと思えば、急に告げられた主席合格。
学園長曰くサプライズとのことなのだが、本当にやめてほしかった。
確かにレオン様を演じる以上は、首席合格は当たり前なのだがそれはそうとあいさつとかの準備はいるだろうと、心底思う。
それにだ、彼に成り代わっている身としてぼろとか出せないし、何より俺は口下手だ。もうちょっと早く知らせれていたのなら、友人を頼れただろうが、そんなこと位言っても、後の祭りであり覚悟を決めなければいけないだろう。
一応聞いた時には魔法によるパフォーマンスも考えたが……俺の魔法属性は闇。
他者を魅せられるような魔法が殆どなく煌びやかな技など一切ない。どれもが殺傷力に特化しておりこんな場所では使えない。
主と同じ属性に恥などはないが、如何せん戦闘特化しすぎているので場違いというかなんというか。
「さぁ! 次は首席合格者レオン・アゼリア君による挨拶だよ。ここにいる皆には彼の魔法を体験して貰うじゃないか!」
――は? え学園長!?
この学園の主である彼女が俺の試験を担当していたことは知っているから、俺の魔法のことは理解している筈なのに、どうしてそんな事を言うのだろうか?
耳を疑うのも束の間、壇上から見える生徒たちは俺の魔法に期待しているのか目を輝かせており、どう見ても逃げられる雰囲気ではなさそう。
挨拶で悩んでいたのに加え魔法は無理だと思っていたのに、それをやれとか正気じゃない。というかこんな場所で使える魔法とか本当に限られていて……一応あるにはあるがそれを使うのは危険なような。
「でも、レオン様が帰ってきたときのためにも舐められるわけにはいかないか」
ふと思うのはそんなこと。
俺の役割は彼の影武者であり、彼に従じ、彼を立て役に立つことを至上としなければいけない。このやれと言われた入学式で少しでも加減してしまえば、それこそ主の名前に傷がつく。
「――黄泉坂下りて罰を成し、祟り蝕み咒を喰らい星は瞬き命は廻る」
だからこそ、俺は魔法で刀と呼ばれる武器を創り出し言葉を紡ぎ始めた。
幼き日、主であるレオン様は仰った刀ってかっこいいと。だから俺は彼にかっこいい自分を見せたくて、御当主様に刀を強請ったことを覚えている。
従者としての初めての我が儘、その研鑽の果ての魔法を今――学園中に魅せよう。
一言一言に術を編み込み、俺は明確な効果を魔法に籠めて――そして劇場の屋根が開き晴天が見え――瞬く間に空に闇が広がった。
広がる闇はまるで夜空のようで、その闇の中には幾つもの星が瞬いている。
――だがこの魔法はこれで終わりではない。ただ単に綺麗なだけの魔法は必殺にはなり得ないのだから。
「闇夜に焦がる愚者の果て、天地太極夢うつつ、虚空の果てに願いを託す」
本来これは闇空を展開している間に俺が敵意を持った者全てに凶弾を放つ魔法なのだが、こんな場所でそれは使えないのでやるのは最終段のものだけになる。
効果としては倒した魔物から魔力を吸い取り巨大な一撃を放つものだが、今は敵がいないし魔力も十分なのでこれが使えるだろう。
「これは闇空を切り裂く
そして闇を晴らすように――箒星が落ちてくる。
瑠璃色のその星は、誰に当たるものでもなくキラキラと輝きながらも姿を消していき今の魔法がなかったように静寂のみが支配した。
あれ、やり過ぎた? そう思ったのも束の間、大歓声というか拍手のみが一気に場に満ちた。
「さてこれが首席。レオン・アゼリアの魔法さ――これからの三年間、彼はきっと君達の目標になってくれるだろう」
そしてそう締めくくられて入学式が終了した。