悪役貴族? の影武者をしていますが、主が破滅回避とか言い出してから帰ってきません 作:カゲ・ムシャ―
入学式から数時間後、新入生を歓迎する貴族達のパーティーがあったので、レオン様の影武者である俺はそこにやって来ていた。
「……慣れない」
礼儀作法自体は完全に頭に叩き込んでいるが、レオン様自体の地位が侯爵の息子という事もあり、いろんな方から挨拶される。
だが偉いのは彼であって影武者である俺からすると胃が痛い案件でしかないのだ。
……本当に、早く帰ってきてくれレオン様、こういうパーティー苦手なんだよ。というか、俺は元々ただの平民なんだけど。
「いっそのこと、部屋に戻るか」
学園の生徒達には寮が用意されているので、まだ確認してないその部屋にでも向かおうと思うほどに気まずい空間。
思えば他の生徒達からの反応もぎこちないし、アウェイというかとてもつらい。
「やぁ、レオン元気そうだね」
あ、もう無理帰ろうとか思ってたたら後ろから声がかけられた。
聞き覚えのある声に振り返ってみれば、そこには黒髪の男が一人。
その人物を見たこの会場に来てようやく知り合いに会えた事の安堵を感じるが、それ以上にそれ以上に胃が痛かった。
「
「そう畏まらないでよ、僕と君は友人だろう?」
彼の名前は、
この世界に存在する羅華という国の皇族であり、皇帝の長子である人物。
魔法に長けており次期皇帝とも名高い有名人であり、二年前に訳あって羅華に行ったときに知り合った友人である。
「貴方がいるという事は、あの方も?」
「うんいるよ。君の姿がなくてとても不満そうというか、現在進行形で君の婚約者とバッチバチだ」
「……なんで」
「知らない、確かめてよ」
我関せずにいたせいか一切気付かなかったけど、確かに今会場が悲鳴を上げているというか、会場の一角からすごく魔力が迸っている。
「えぇ……行けと?」
「友人としてお願いだよ、というか君が発端だから行って?」
困惑しつつも、俺がその場所に行ってみれば……そこには二人の美少女が。
一人は白く着物に近いような道士服を身に纏った白銀の髪を三つ編みに束ねた美女。虚ろながらも吸い込まれそうな淡い色の瞳の彼女は、その衣服も相まって鶴を擬人化したようなイメージすらある。
対するもう一人の女性は腰まで伸びる黒髪に、それこそ宵色と表現していいような瞳を持つ女性。
桜雷という国に存在する着物を身に纏っており、とても綺麗で儚さすら感じるが、怒りというか喧嘩中で持つ魔力属性故か雷が漏れている。
「……止めろと?」
「君にしか無理さ、頑張ってー」
一触即発……いや、そんな言葉すら生温い威圧合戦。
そこに飛び込めばどうなるか分かり切ってるが、止めなきゃ不味いというのも分かる。だからというかそんな死刑宣言にも等しい言葉を受けて、俺はそのまま死地に飛び込んだ。
「あー二人とも……えっと、久しぶりだな?」
「久しぶりだなレオン、我は貴様が元気そうで嬉しい」
とりあえず挨拶しないのも不味いので俺は彼女達に声をかければ、彼女は旧友に会ったかのように少しの歓喜を含ませたような声音でそう言って――次の瞬間。
「……
より近づいたかと思えば、俺を急に抱き寄せてきた。
抱かれて感じるのは冷気の寒さと柔らかさ、何とは言わないが色々大きい彼女の感触を感じながらも逃げようとするが、力が強い彼女の抱擁から逃げるのは魔法を使わないと無理。
「この暖かさ、本物はやはり違うな」
「離しなさい雌狐、彼は私の物よ」
「むぅ……前々から言っておるが、そろそろ我に譲ってくれても良いだろう?」
「嫌ね、絶対に嫌よ――寝てから吐いたらどうかしら、その妄言」
「怖いな、こんな気性の荒い娘より我の方が得だぞレオン? ――それに、ふっ」
「ねぇ今何を見て笑ったの死にたいなら言ってくれれば良いのよ?」
俺を間に挟みながら喧嘩をするのは止めてほしい。
割と切実に魔力が迸っているし、何より彼女の感情に呼応してもっと強い雷が出そうになってる。
何よりこんな場所で問題起こしたらやばいので止めたいけど、俺が暴れたときが一番最悪だし。それに本当に力強くて逃げられないし、これじゃあそろそろが限界に。
「というか貴方はいつまで抱かれてるの?」
「悪いな桜国の姫……やはりレオンは我の方がいいそうだ」
「貴女には聞いてないわ。早く離れなさいレオン」
「――鏡月様離してくれ、そろそろ不味い」
「仕方ない……貸し一つだぞ、学園に入ったら我の部屋に来ると良い」
「行かせるわけないでしょう?」
離してくれたけど、やっぱり二人は一触即発状態。
このカオスな魔力があふれる空間で仲裁しようという勇者は現れず、俺が宥めるも火に油を注ぐだけなので何も出来ずにいた。
「そこまでだよ鏡月? これ以上は危ないだろう?」
「む……滄波か、今頃出てきてどうしたのだ?」
「君らの魔力を抑えるために結界を用意してたんだけど? ――それと、ありがとうレオン止まったよ」
「……これ俺必要だったか?」
「ははっ、だって君が困っているのを見るのは楽しいからね」
「答えになってないぞ」
「元は君が発端だよ?」
その返しに何も言えなかった俺は、顔を逸らしてから話題を変えることにした。そろそろ試験も近づいているし移動しないと不味いと思ったからだ。
でも、俺がいないときの喧嘩なら俺は悪くないよなと思ったけど。
「改めてになるんだが、久しぶりだなみんな。元気そうでよかったぞ」
「うん、僕も君に会えて嬉しいよ」
「――我も同じ気持ちだ。貴様と過ごせるだろう学園での時を楽しみにしよう」