断崖のアルタン・ハーン 〜12歳の歴史オタ、前世の知識と近代兵器で女系ゲリラ部隊を率いて大帝国を押し返す〜 作:つる植物
「クソが!!迂回するのに時間が掛かっちまった」
取り合えず一番豪華な帽子の奴を撃ち殺した。
後は似たような帽子ばっかりだったので弾丸を再装填すると取り合えず狙える奴を撃った。
「ちっ、全員隠れやがった」
豪華な帽子が吹っ飛んだ向きから大体の方向を推察したらしい。
「斥候とは大違いだな!」
敵が優秀でうれしくない状況だ。
しかし一番トップは潰せた、しばらくは機能不全に陥るだろう。
軍隊では頭を叩くのがセオリーだ。
「親父に怒られそうな戦法だ……」
絶対に卑怯って言われるだろう。
戦場を俯瞰するが馬はいるが動いている
「多分死んでるな……」
いざ目の当たりにすると胸からこみ上げてくるものがあるが気合で抑える。
「泣いてる暇はない」
司令部はパニック状態だが騎兵や砲兵、歩兵はまだ事態を把握していないみたいだ。
自分の今の残弾を思い出す。
「弾は残り10発くらい、歩兵は多すぎ、騎兵は遠すぎ、狙うは砲兵だな」
大砲は脅威だが動かす人間がいなければデカい文鎮だ。
「出来れば観測手も撃ちたいけど無理っぽい、砲兵部隊のお偉いさん狙いだな」
エペルの腹を蹴って場所を移動して砲兵部隊を射程に捉える。
砲兵部隊は既に役目を終えてのんきに雑談に興じていた。
斥候から拝借した望遠鏡で砲兵部隊を覗き込む。
肉眼ではなんとなくしか分からなかったが表情まで見えるいい性能の双眼鏡だった。
「豪華な羽付きと……、近くには紙とペンがある机に座っている奴もいるな」
すこし考えて答えにたどり着く。
「砲撃とはすなわち数学か……計算しているってことは奴も高級将校だな」
ライフルを構えて一番豪華な帽子をしている奴の頭を吹っ飛ばす。
ボルトを引いて再装填、机に座っている奴の頭も撃ちぬいた。
砲台の近くにいた奴らが騒ぎ出す。
予備で2発だけのこして残りは砲兵達の頭に吸い込まれていった。
双眼鏡で覗くとパニックの真っ最中。
「出来れば降りて資料とか回収したいけど……さすがに無理だな」
平地に降りればハチの巣にされるのは目に見えている。
見つかったスナイパーの最後など悲惨以外の何物でもない。
エペルの腹を蹴るとウルスが崖を上っていく。
少し時間は掛かるが山伝いにウルスに帰る。
「半分帰ってくればいいって思ったのになぁ」
3000人いた大同盟だが生き残っているのは100人もいないだろう。
「取り合えず帰って報告連絡相談だな」
いつも早いと思っているエペルの速度がいやに遅く感じたのだった。
ハラ・タスのウルスに戻ると通常通りの賑わいだった。
「……どうやって伝えるんだこれ?」
血まみれの兵士でも帰ってくれば信じてもらえるだろうけど……。
取り合えず母に伝える事にした。
えー、信じてもらえませんでした。
3000対1000で負ける訳ないだろとの事です。
まぁ、当然と言えば当然の反応なんだよなぁ。
さてどうするかと考えているとウルスの入口が騒がしくなった。
どうやら数名帰還したらしい。
入口の方に急いでいくと血まみれの男が足を引きずっている
乗っている2名は血まみれでどう見ても無事ではない。
ほぼ落ちるように
「戦いはどうなったんだい?」
母は俺を一瞥したあと、血まみれの男に質問した。
「……ぜ、全滅だ!部族長も…全員死んだ……か、雷だ!奴らは雷を操っていた!!」
男は半狂乱ぎみに答えた。
周りの女衆がざわざわしだした。
「……アルタン、本当だったのかい?」
俺が頷くと母はその場で崩れて泣き出した。
部族長の妻である母が一時的に機能不全に陥る……そしてこれは俺にとってある意味チャンスでもあった。
なし崩し的にウルスの皆を俺の指揮下で動かすことが出来る唯一のチャンスでもあった。
「みんな聞いて!俺は男衆が全滅したところを見届けた!全員勇敢に戦った!しかし敵も無傷ではない!部族長は敵の首級を上げた!俺も雷の魔術師を森から討取っている!!」
男衆がゴミのように死んだ事実をそのまま伝えても意味はない。
皆に希望を持たす意味でも彼らは勇敢に戦って死んだことになってもらう。
「しかし奴らの歩兵も騎兵も健在だ!時復讐に燃えた奴らはウルスに押し寄せるだろう!」
蛮族相手の戦い、総司令が死んだのでノコノコ帰ってきました。
そんなことは出来ないのは古今東西どこも同じだ。
こっちを族滅するなりして強引にでも引き分けを演出する必要がある。
そうでなければ軍法会議で処刑されることも全然ありえる。
手ぶらで祖国には帰れないのだ。
必要があって動く軍隊は強い、しかし政治によって動かなければいけない軍隊は脆いのは歴史が証明している。
「動ける者は武器取れ!」
騎馬民族の女衆は弱くない……というか普通に強い。
男衆がいない時は
皆が慌ただしく動き出す。
恐らく敵軍が動き出してここに来るまでは1週間は掛かるだろう。
付近の親戚のウルスにも早馬を出してこのウルスにかき集めねば。
残せば略奪されるだけなのだ。
ここからは時間との勝負でもあった。
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