男女比崩壊社会で黒髪ツンツンお嬢様のペットになった俺、激烈に甘やかされる。 作:二見猟太郎
「……なにをしているの?」
お手洗いから帰ってきたご主人様が平坦な声音で言う。嬉しそうに笑ったギャルがここぞとばかりに紗和へ絡みに行った。小谷内は小さくなったまま事の成り行きを眺めている。
「あっ、紗和! 紗和の雄犬ペット見てたんだけど、ぜーんぜん可愛くないね! 名前もナヌンパボヤとか変なだし。センス悪すぎ! あたしならエリックみたいな雄犬ペット飼うもん」
「……なぬん?」
「ナヌンパボヤ! これの名前よ! ナヌンパボヤ!」
「誰から聞いたの?」
「こいつがそう名乗ったけど?」
ご主人様があざけるように鼻を鳴らす。
それきりギャルから目線を外し、腕を組んだ紗和は、つんとした表情で縮こまった小谷内からリードを受け取った。
「ありがとう、小谷内さん。大丈夫だった?」
「う、うん。逃げるふりしてからかってきたけど、それくらいかな」
「あら、そんなことしたの? ダメじゃない」
おでこをつんと人差し指で押される。
俺はてへへと笑って誤魔化した。
ギャルがわめく。
「ねぇ、紗和! あたしもナヌンパボヤのこと見てあげてたんですけど! お礼とかないわけ!」
ご主人様がため息をつく。
「
「……わ……ぁ……ぐぅ」
ぐうの音が出た。
翡翠の目を細め、悔しそうに唇を噛み締めたギャルが地団駄を踏む。ご主人様よりも大きなおっぱいがぼよんぼよん跳ねた。まるでバレーボールが弾んでいるみたいである。ここは体育館なのかもしれない。
思わず見つめてしまっていると、たおやかな手が目を覆った。
「こら、あんな下品な肉の塊を見ちゃだめよ」
「ちょっと〜っ! もしかしてあたしのおっぱいの悪口言った!? みんなに大人気なんですけど! 自分のほうが小さいから悔しいんでしょ? いい加減なこと言わないでよね!」
「みんなに大人気ですって。下品な女ね。きっと誰にでも揉ませているのよ。アバズレね」
「……? アバズレ? なに?」
「……もういいわ。小谷内さん、椅子を返すわ」
「あ、うん。ど、どうも」
リードを引かれ立ち上がった俺は窓際の床にしゃがみ込んだ。すっかりギャルのことを意識から外したご主人様は、彼女に背を向けて俺のことを可愛がりはじめる。頭をよしよし撫でたり、あごの下を指先でコショコショしたりした。
「小谷内さんをからかったのはダメだけど、ちゃんと待ててえらいわよ。陽毬に変なことされなかった?」
「陽毬ってあのギャルですか?」
「ええ。あれのことよ」
「まあ、うるさいだけでした」
「そう。無視できてえらいわよ。ほら、お膝においで」
とんとんとご主人様が膝を叩く。乗ると重いだろうから頭だけ乗せた。紗和が俺の髪をわしゃわしゃとかき混ぜる。つい嬉しくなってしまった俺は、お腹に抱きつき顔をうずめた。ブルブルと顔を振る。ご主人様がくすぐったそうに笑った。
「こら、おかしなことしないで」
「ぶるぶるぶる」
「ふふ、あはは、やめてよポチ。くすぐったいでしょ」
ギャルが叫ぶ。
「ちょっとぉっ! なにふたりで楽しんじゃってるの!」
「あら、まだいたの陽毬」
「ずっといるんですけど!」
「はやくどこかへ行ったら?」
「……むぅぅっ!」
頬をぱんぱんに膨らませて目を涙ぐませたギャルがぷりぷりしながらグループのもとへ帰っていく。
「ばかばか、紗和のばか! ナヌンパボヤのばか!」
「はいはい」
何度も何度も恨めしそうにこちらに振り返って、途中したたかに腰を机へぶつけて悲鳴をあげ、中腰で痛みに耐えるメロンおっぱいはギャルの群れのなかへ帰っていった。
「あの子、なんなんですか?」
ご主人様がつんとした顔をして答える。
「腐れ縁よ。陽毬は瀬名さんの子供なの。小さい頃から付き合いがあるから知らない仲じゃないわ」
「へぇー、じゃあ友達なんですか?」
しばらく間が空いてから。
「……いえ、わたしに友達なんてひとりもいないわ」
ご主人様の指が俺の耳をくにくにと揉む。
ひっそりと浮かべた微笑には青い影が差していた。
祝二万字!
明日も更新します!
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