男女比崩壊社会で黒髪ツンツンお嬢様のペットになった俺、激烈に甘やかされる。 作:二見猟太郎
ポチ:元社畜。雄犬ペット。紗和に可愛がられて生きている。
白宮紗和(しろみやさわ):ご主人様。かわいい。黒髪ハーフアップお嬢様。ぼっち。
陽毬(ひまり):金髪ギャル。ばか。でかちち。紗和が好き。からんでくる。ギャルの群れに属する。
久崎ちゃん:金髪青目お嬢様。おしとやか。おくゆかしい。うすほそ。
小谷内(こやうち):黒髪ボブカット。陰キャ。ギャルを恐れている。まな板。ぼっち。
梁瀬(やなせ)先生:自分に甘い。後輩教師にセクハラしている。スタイル抜群。赤ジャージ。ビールを燃料にして動く。
エリック:おぼえなくてよい。
「おー、お前らー席つけよー、立ってる奴はケツ揉むぞー」
とんでもない事を口走りながら教室へ入ってきたのは、アラサーの女教師だった。ハスキーな声から酒好きの波動を感じる。さらりと伸びるロングヘアをかき上げると、インナーカラーの青髪が鮮やかにのぞいた。藍色の猫目でクラスを見渡す。
「おっ、白宮の雄犬ペットが来てるな。おい、白宮、一応みんなに挨拶しとけ。迷惑かけるかもしれないし」
「はい」
ご主人様が教壇に立つ。
俺も付き従って彼女の隣に控えた。
クラスメイトの視線が集まる。久崎ちゃんが柔らかに微笑み、小谷内はつまらなそうに外を眺めて、ギャルは腕を組んでむすっとしていた。
教師が先んじ声を張る。
「こいつは今日から白宮の雄犬ペットとして学校に持ち込まれるポチだ。エリックの前例があるから大丈夫だと思うが、こいつは白宮の所有物なんだから勝手にいじくるなよ」
ご主人様が一礼する。
「おはようございます。本日より、わたしの雄犬ペットのポチを連れ歩かせてもらいます。ご迷惑をおかけすることもあるでしょうけど、どうぞよろしくお願いします。もしポチが粗相をした場合はわたしに言いつけてください。飼い主として、しっかりと責任ある対応をさせていただきます」
俺もお辞儀しておいた。
「はい、分かったやつは拍手〜」
まばらにパチパチと音がなった。
自席に戻る。
ご主人様が手招きしたのでかがみ込んで身を寄せた。ほっぺたを親指で撫でられる。薄く唇をつり上げて彼女は言う。
「緊張しなかった? 上手にお辞儀できてたわよ」
「ありがとうございます」
お辞儀しただけで褒められちゃいました!
ラッキー!
チャイムが鳴る。
授業中はまじで暇だった。真面目に勉強してるご主人様に迷惑をかけるわけにもいかないし、俺の行動範囲はリードで制限されているので、とりあえず紗和の近くでだらけてる時間が
教鞭を振るう教師の声をBGMにして俺は床に寝転がる。
この世界の男女比が狂うに至るまでの歴史のこととか、体外受胎装置の仕組みとか、そんな何やかんやを先生が教えてくれていたが、ほんとに興味ないのですべての情報が右から左へ流れて消えた。
俺はずっとご主人様をいろんな角度から眺め続けた。かわいい。たまに俺に見られてることに気づくと、彼女は仕方なさそうに眉を困らせて、俺のあごをなでなでしてくれた。
くぅーん、もっとかまって〜。
授業を真面目に聞く紗和の太ももにあごを乗せたり、お腹に顔をうずめて甘えたりすると、最初こそ耳をつままれて「お行儀よくしなさい」なんて叱られるんだけれども、最終的には甘い手つきで頬を撫でてくれるのだから堪らない。ぴしりと伸びる背中を後ろから抱きしめて親愛を示す。紗和が呆れて微笑んだ。
「ポチ、授業中だからやめなさい。ほら、おすわりよ」
久崎ちゃんが信じられないものを見るような目で俺を見ていた。
隣の席だから見えてしまうんだけど、小谷内は授業中、ずっとくだらない落書きをしていた。にやにやしながら剣の絵を描いたり、最強のドラゴンを想像したり、異世界の勇者になったときの能力とその名前を念入りに考えたりしていた。勉強したほうがいいと思う。俺の学生の頃にそっくりで親近感が湧いた。
待ち望んだ昼休みになる。
瀬名さんからもらったお弁当を広げていると、メロンおっぱいを弾ませてギャルがやってくる。小谷内が縮こまりながら焼きそばパンをもそもそ食べた。
「紗和、今日もぼっち飯?」
「いえ、今日からはポチと一緒よ」
「そーゆーことじゃなくてっ! あいかわらず友達いないねって話をしてるのっ!」
「ええ、そうね、友達はいないわ」
途端ギャルがもじもじし始める。
お弁当が入った手提げをみつめながらか細い声で彼女は言う。
「紗和が、どうしてもってゆーなら、いっしょに食べてあげてもいいよ」
にべもなくご主人様は言い放つ。
「いらないわ。どこかへ行ってちょうだい。ポチと食べるから」
「……むぅーっっ!! そういえば名前ポチだし! ナヌンパボヤってなんなの! 嘘ついたでしょ!」
「知らないわよ。ポチの冗談に勝手に騙されたのは陽毬じゃない。文句を言われても困るわ」
「むぅぅぅっ!!」
頬をぱんぱんに膨らませたギャルは肩を怒らせて様子を見ていたギャル集団のもとへ戻る。道中で足の小指をぶつけて「ぁぁ……」と苦しげにしゃがみ込んでいた。
「おもしろいっすね、あのギャル」
「……ふん、迷惑よ。
「なんで一緒に食べてあげないんですか? 知らない仲じゃないんですよね?」
「……」
ご主人様が紫紺の瞳を伏せる。
不機嫌そうに唇を尖らせると俺の鼻をつんとつついた。
「秘密よ。色々あるの。わかった?」
「わん」
椅子がないので床にあぐらをかいて瀬名さんが作ってくれた弁当を食う。ご主人様と同じメニューだ。時々、小谷内がご主人様の目を盗んで俺にチョコレートを食べさせたりしてくれた。ありがとうの意味を込めて笑いかけてみせると、彼女も嬉しそうに目尻を下げるのであった。そういえば君、ご主人様と同じくらいひとりだけど友達はいるの?
「なんだよ、もうひとかけ欲しいのか? ボクも食べたいからダメ!」
見当違いのことを言って小谷内はそっぽを向いた。
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