男女比崩壊社会で黒髪ツンツンお嬢様のペットになった俺、激烈に甘やかされる。 作:二見猟太郎
部室から教室へ帰るやいなや、ご主人様はギャルの群れへと
「ちょっと〜みかぽよ肩やめろし〜」
褐色肌のギャルが爪を見ながらダルそうに言う。
「みか、あんたの前にいんだけど」
「え、がちじゃん、こわ。じゃあこれ誰?」
「わたしよ、陽毬。すこし話したいことがあるの。来て」
「さ、紗和〜っ!?」
椅子から転がり落ちた陽毬が尻をさすりながら立ち上がる。どたばたするギャルに目もくれずご主人様はさっさと自席へ歩いていった。不機嫌そうな足取りである。リード使いが荒い。
椅子に座る。
俺は床にあぐらをかいた。
「ご主人様、陽毬を部活に誘うんですか?」
苦い顔をしてご主人様は爪を噛む。
「……ええ。陽毬なら確実に入部するわ。あの子、わたしのこと好きだもの。必死に勉強して高校までついてきたのよ。小学生のころから冷たくしてるのに。……はぁ、勘違いされないかしら」
紫紺の瞳が憂いを帯びる。
ご主人様の学力は未知だが馬鹿には見えない。
けどギャルは見るからに馬鹿である。
紗和と同じ入試試験を突破したのだから、たくさん勉強したんだろう。そんな努力ができるとするならば、ギャルはかなりご主人様が好きなはずだ。同じ部活に誘ってもらえた日にゃ、舞い上がるに違いない。勘違いするなという方が難しいだろう。
「勘違いされちゃうんじゃないですか? 同じ部活に誘うなんて仲良くないとしなさそうですし」
「あら、ポチはそういうことも分かるのね。情操教育がきちんとされてる証拠ね。伝統ある雄犬ペット屋で買って正解だったわ。会話が成り立たないと腹が立つもの」
机に肘をつき、顎を手のひらに乗せて、紗和がため息をつく。
「背に腹は代えられないわ。文芸部なんてどうでもいいけど、もしわたしだけが新入部員を連れてこられなかったら梁瀬先生がどんなことになるか想像もできないわよ。……想像したくもないわ。とにかく何でもいいから、陽毬を文芸部に入部させる」
「まあ今でも絡まれてるわけですから、そんなに変わらないかもしれませんよ」
「……そうね、そうだといいけれど」
ギャルの群れから歓声が上がる。体を四方八方から叩かれて、集団バフを受けながら陽毬が勇ましくやって来る。メロンおぱぱいが通常の三倍の速度で揺れていた。赤い彗星である。もしかしたらブラが赤い可能性がある。新型ブラである。
腰に手を当て胸を張り、ギャルがあごを上向ける。
「お待たせ、紗和。あたしに何の用? ふたりきりで話したいなんて珍しいけど、もし、もし、もも、もももし、もしかし、もしかして、こ、こ、こ、こここ、こ、こ、こくは、は、はこく、はこくは」
こわいこわい。
バグってるバグってる。
紗和が陽毬の頭にチョップをくわえる。
「あいたっ」
「怖いからやめてちょうだい。陽毬に声をかけたのはお願いがあるからよ。告白ではないわ」
ギャルがしゅんとする。
「……そっか」
しかしすぐに持ち直し、彼女は明るい声で尋ねた。
「まあいいや。紗和から話しかけてくれること自体珍しいし。それで、お願いってなに?」
ご主人様が腕を組みながら答える。
「じつは文芸部の部員が足りなくて廃部になりそうなの。もしよかったら入部してくれないかしら。幽霊部員でもいいの。とりあえず数が欲しいだけだから」
「ふーん、文芸部かぁ〜。あたし本読むと寝ちゃうんだけど」
「べつに来なくてもいいわよ」
「えー、それはダメでしょ。入部するならちゃんと活動するよ」
口を開けてぽーっと考え込む陽毬。
待ちきれなくなったご主人様が返事をうながす。
「……それで、入ってくれるの?」
「そんなにあたしに入部してほしいの?」
腕を組むご主人様の指に力がこもった。
屈辱に耐えるように言葉を紡ぐ。
「……ええ、入部してほしいわ」
ギャルがだらしのない笑顔を浮かべた。
鼻の穴が地球儀くらい膨らんでいる。
「でへへ、ど〜しよっかなぁ〜。ところで、何であたしなの?」
「……お願いできるのが陽毬くらいだからよ」
「げへげへ、そぉ〜なんだぁ〜。ふーん、あたしが紗和の、唯一の頼みのツナなんだねぇ〜。えへへ、べへへ」
締まりのない顔の陽毬が小谷内の席に座る。食堂にでも行っているのか、小谷内は不在だった。足を組み、ハニーブロンドの髪を指でくるくるしながらギャルは言う。
「べつにいいよ。文芸部入ってあげる」
「ありがとう。要件はそれだけよ──」
「──ただし、お願いを一つ聞いてもらいたいな」
紫紺の瞳を細めて陽毬を見やる。
冷たい声でご主人様は尋ねた。
「お願い?」
「うん。ポチ貸して。あたしも雄犬ペットのお世話してみたい」
「……」
ご主人様が俺を見る。
悩ましげに眉を寄せ、しばらく考えてから彼女は言う。
「乱暴しちゃダメ。リードを外しちゃだめ。逃げるような危険があることはしちゃダメ。外に連れ出すのもダメよ。瀬名さんの家の中でポチを可愛がるだけなら、貸してあげてもいいわ」
ギャルが身を乗り出す。
「ほんと!? やった! じゃあコーショーセーリツね! 入部届書けばいいの?」
「用紙を持ってないから放課後に文芸部へ来てくれるかしら」
「場所わからんない」
「……はぁ、いっしょに行きましょう」
「うん!」
もう用済みとばかりに上機嫌な陽毬を追い払うと、ご主人様は暗い顔をして俺を見つめた。視線をそらし時計を見る。
昼休み終了まであと15分。
立ち上がる。
とぼとぼとした足取り。
どこかへ向かう紗和にリードを引かれてついて行く。
そして俺は、女子トイレの個室に連れ込まれた。
タバサックスさん、評価していただきありがとうございます!
モチベ下がってたので助かりました! ぎり耐えた!
はじめて雷鳴八卦くらった時のルフィみたいな顔してました!
ほんとに感謝です!
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