男女比崩壊社会で黒髪ツンツンお嬢様のペットになった俺、激烈に甘やかされる。 作:二見猟太郎
つんとした表情のご主人様にうながされトイレの蓋に座る。膝に乗った紗和が「ううう」と唸りながら抱きついてきた。胸もとにおでこをごしごし擦りつけてくる。ホワイトムスクの甘い匂いがほのかに香った。
「……はぁ、疲れたわ」
しばらく身悶えて、落ち着きを取り戻すと、ご主人様は乱れた前髪を整えながら俺の鎖骨あたりを睨みつけた。
「逃げたらお仕置きだからね」
忠告しながら首輪を外す。
とつぜん首筋に噛みついてきた。
いてて。
まだ落ち着いてなかったみたいだ。
整然と並んだ歯列がはむはむと肌に食い込んでくる。
生温かい吐息がくすぐったい。
「痛いっす、ご主人様」
「ふん、そんなに強く噛んでないでしょ。我慢しなさい」
また噛まれる。
相当ストレスがたまっているようだ。
仕方ないので彼女の頭を撫でて冷静になるのを待つ。後頭部をよしよし撫でていると噛みつきが弱まってきた。やがて、痛めつけたお詫びとばかりに温かな舌が首を舐める。ぞわりと走る甘い痺れに背筋が伸びた。ぺちょぺちょと水音が鳴る。最後にキスを落として離れていく。
「歯型がついちゃったわね」
「俺のこと食べようとしないでください」
「こんな筋張った肉、食べられたもんじゃないわよ」
歯型に指先をそわせる紗和が俺を見つめる。
紫紺の瞳がわずかに揺れた。
「……ねぇポチ。わたしのこと嫌いになった?」
乱暴を恥じ入るような声だった。
俺は首を振る。
「嫌いになってないですよ」
「こんなに酷いことをしたのに? ポチの首、痛くしちゃったのよ? 赤くなってるし、へこんじゃってるわよ?」
「これくらい平気ですよ」
「……」
じっと見つめ合う。
俺の真意を探るように彼女の瞳は揺らめいた。
親指が頬を撫でる。
「……もっとお詫びするわ。ポチ、首出して」
そう言うとご主人様は首筋に顔をうずめて丹念に舐めはじめた。親猫が子猫を舐めるように、自分が刻みつけた歯型を赤い舌で癒そうとする。温かな粘膜がねっとりと首筋を這い回る。むずがゆい快楽につま先をギュッと丸めた。
「ん、ポチ、もしかして気持ちいいの?」
「気持ちいいです」
紫紺の瞳がいたずらに細められる。
「ふふ、かわいいわね。たくさん舐めてあげる」
熱い吐息を漏らしながら、ぬたりとした赤い舌が首筋を丁寧にねぶった。痺れにも似た悦楽に拳を握りしめ、目を閉じる。時おりリップ音を響かせ、湿っぽいキスを混ぜながら、ご主人様のグルーミングは続いた。俺が情けなく、くぐもった声を漏らすたび、彼女の舌は喜びに打ち震えるかのように勢いを増した。
「はい、おしまいよ」
ようやく終わった攻めにこわばっていた肉体が脱力する。肉の喜びに浸る脳が熱に浮かされるように
「やり過ぎたかしら。ポチ、大丈夫?」
「大丈夫です。気持ちよすぎて力が抜けただけですから」
「スキンシップに疲れたんじゃないの? 気を使ってない?」
「気なんて使ってないですよ。反応でわかりませんか?」
「……そうね。かわいい目をしてるわ。ほっぺたも赤くなってて、すごくマヌケな顔。だらしなくてばかになってるみたい」
紗和が斜め上を見て考えるような素振りをした。かと思うと、ハーフアップにした黒髪を後ろに流して、すらりと伸びる白い首筋を惜しげもなくさらけだす。膝の上でお尻を滑らせ、こちらに身を寄せながら、ご主人様は命令する。
「今度はポチの番よ。わたしの首に噛みついて、その後に舐めて治してちょうだい」
「歯型つきますよ? 首に吸い付いた時、恥ずかしいからダメって言ってませんでした?」
「ふん、もういいわ。わたし文芸部のことでムシャクシャしてるの。好き勝手やらないとやってられないわよ。それに、そんなに気持ちいいならわたしも体験したいもの」
さっさとやりなさい、と目だけで命じられる。
恐るおそる、その白い首筋に唇で触れた。ご主人様の身体がびくりと跳ねる。これから噛むところを教えるために、何度も同じ場所にキスを落とし、舌先でちろちろと柔肌を舐めた。紗和は身震いしながら俺の体にぎゅっと抱きついて甘い声を噛みつぶす。
「噛みますよ?」
期待にうち震える声で彼女は言う。
「勿体ぶってないではやくしなさい」
歯を立てる。
鋭敏な痛みにご主人様は苦しげに呻いた。
首筋に顔をうずめているから伺い知ることはできないが、その息づかいとくぐもった声から、苦悶に歪む表情が思い浮かぶ。あごの力を緩めて離れる。しみひとつない新雪のような美しい肌に、あまりに
熱に犯され潤んだ瞳が俺を見る。
「痛い。ひどいわポチ。こんなに痛くするなんて」
いつも凛としていて、涼やかなご主人様の声が、この時ばかりは弱々しかった。
くらりと視界が揺れた。
従うべき主に牙を剥いた罪悪感と、ペットという立場にありながら、美しい彼女を汚してしまった興奮に、心臓が高鳴った。俺はうわ言のように謝罪の言葉を繰り返して、赤く腫れ、なまなましく残った歯型に、舌を這わせた。一心不乱に傷を舐める。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「んん……」
甘い声を漏らす紗和が白い首を後ろへ反らす。熱心に
舌を熱心に動かす。熱い吐息に
熱の中にある心が息継ぎをする狭間、俺は顔を上げる。
ふと鼻先同士がひそかに触れ合った。
重たげにまぶたの下がった瞳がじっと俺を見入る。
「……。」
ためらうように開いた口のなか、誘うように赤い舌が揺れた。
どちらともなく、俺たちは唇を重ねた。
ぬらぬらと蠢く舌がその身を絡ませ合う。
悦楽にとろける紫紺の瞳が弧を描き、深いため息をつかせた。
そのなまなましい美しさに圧倒されて、夢遊病者のような意識のうつろいに犯されながら、みずみずしい唇をむさぼり続けた。
なんと、また評価していただけました涙
REeeeさん、KU7493さん、にゃふふさんありがとうございます! 書いてると面白いか訳わからなくなって迷子になることがあるので反応があると助かります。柱間に再会したときのマダラくらい喜びました。
感謝!
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