男女比崩壊社会で黒髪ツンツンお嬢様のペットになった俺、激烈に甘やかされる。   作:二見猟太郎

19 / 19
019 ご主人様と後輩ちゃん

「やってる?」

 

 居酒屋の暖簾(のれん)をくぐる仕草で梁瀬(やなせ)先生が現れた。うしろにはツインお団子ヘアの少女がちょこまかと付き従っている。部室の中を見渡し、俺を見つけるなり「まじでいるっす!」と喜びの声を上げた。少女の糸目が弓なりになる。

 梁瀬が小谷内と眠れるギャルを認めて満足げに頷く。

 

「桧森と白宮も無事に勧誘できたみたいだな」

 

 ジャージのポケットから何回も折りたたみ小さくした入部届を取り出して長机の上に広げる。折り曲げたあとがびっしりついたそれを小谷内に渡し、眠るギャルの腹に置き、連れてきた女子に渡した。

 

「こいつが先生がハントしてきた新入部員だ。1年生だからお前らの後輩だな。可愛がってやれ」

 

 入部届に署名した後輩ちゃんが元気いっぱいに挨拶をする。

 

「うち、猿渡鈴(さわたりすず)っす! 本とか興味ないんすけど、梁瀬ちゃんが雄犬ペット触らしてくれるっていうから入部したっす! うち、雄犬ペット飼いたいなって思ってて、けどお金持ちじゃないから無理なんですよ! だからこんなチャンス滅多にないって思ってついてきたっす!」

 

 ご主人様が梁瀬をじろりと睨みつける。

 

「どういうことですか、先生」

 

 腕を組んで悪びれもせずにアラサーは語る。

 

「まあまあ、減るもんじゃないから触らせてやってくれよ。どんな手を使ってでも部員を確保する必要があったんだ。猿渡が雄犬ペットに憧れてるのは知っていたからな。策士だろ? これでも先生、色々考えているんだからな」

 

「わたしのポチを勝手に交渉材料にしないでください。触らせませんからね」

 

 後輩ちゃんがぶーたれる。

 入部届に手をかけていまにも破きそうな素振りを見せた。

 

「えー、話が違うじゃないっすか。それならうち、文芸部入らないっすよ。手芸部の久崎先輩が飼ってるエリックのところに行くっす」

 

 梁瀬が余裕たっぷり髪をかき上げた。

 訳知り顔でため息をつく。

 なんで達観してるの? お前が火種だからな?

 

「まあまあ落ち着けふたりとも。白宮、ここは先生の顔を立ててポチを触らせてあげてくれないか? 今日の放課後までに部員を5人集めないと廃部なんだぞ? お前たちが集めた部員も無駄になっちゃうじゃないか? いいのか?」

 

 紗和が苦虫を噛み潰したような顔をする。

 舌打ちをし、座った目をして低い声を出した。

 

「わかりました。一日一分なら触ることを許します。ただし、今後勝手にポチを使って部員集めをした場合、わたしが文芸部を抜けますのでご承知おきを。そうなれば猿渡さんは部活をやめるでしょうし、また部員が足りなくなることを忘れないでください」

 

 ご主人様の怒りなぞどこ吹く風とばかりに梁瀬が親指を立てて笑った。俺への接触許可が下りたことで猿渡後輩も笑顔を見せる。八重歯がちらりとのぞいた。

 

「おっけー! ほんと今回だけだから。先生約束しちゃうぞ!」

 

「やったー! 正直エリックよりポチのほうがタイプだったんで嬉しいっす。梁瀬ちゃんに写真見せてもらったんすけど」

 

「──写真?」

「ちょっと一枚盗撮したんだ! 必要だった! 許してくれ!」

 

「素朴で間抜けでかわいいっす! 白宮パイセンはセンス抜群ですよ! 華々しい派手な雄犬ペットばかり流行ってますけど、うちとしてはポチみたいな家庭的な見た目のほうが断然いいと思うっすもん! あのあの! さっそく撫でていいですか?」

 

 手をワキワキさせながら後輩ちゃんが近づいてくる。

 ご主人様はおでこに手を置いてやれやれと首を振った。

 鼻息の荒い猿渡が目の前に立つ。紗和たちよりも一学年下ということもあり幼く見える。親戚の子供みたいな感じがした。そろそろと伸びる手を紗和がはたき落とす。

 

「わたしに許可を得てからよ」

 

「おお、()らされてるのめちゃくちゃやばいっす。興奮してきました。鼻血でそうです」

 

 荒い息づかいの猿渡をげんなりとした顔で見ながら顎をしゃくる。意図をくみ取った後輩ちゃんは震える声で許可を求める。

 

「さわっていいっすか?」

 

「乱暴にしちゃダメよ」

 

「はいっす!」

 

 糸目がうっすらと開く。金色の瞳が興奮に潤み熱っぽく俺を見据えた。小さな手がおそるおそる伸びてきて俺の頭を優しく撫でる。ぎこちない指使いはワレモノを扱うくらい慎重だった。

 ご主人様が感心したような目を向ける。

 

 もっとムチャクチャにされると思っていたが、後輩ちゃんは俺の頭を撫でるだけで満足したようで、恍惚とした笑みを浮かべ、過ぎ去った一分(いっぷん)反芻(はんすう)するかのように指を握りしめた。パイプ椅子に座り、くたりと長机に身を投げ出す。足をバタバタさせながら言う。

 

「ああ、やっぱりかわいいっす〜! うちもほしいな〜。いいな〜雄犬ペット。ポチくんかわいいっす〜!」

 

「ふん、見る目はあるみたいね」

 

 ご主人様が猿渡後輩の痕跡を上塗りするみたいに俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。「ひぇ〜、うらやましすぎるっす〜」と切なげな声がした。

 

「誰がご主人様か忘れないように」

 

 ほっぺたをつまんでそんな事を言う紗和に苦笑する。

 

「あれくらいで忘れないですよ」

 

「ふん、気持ちよさそうにしてたじゃない」

 

 そうかなぁ?

 ソウカモナァ!?

 だって女の子によしよしされるなんて嬉しいんだもん。表情が緩んだって仕方がないじゃないか。俺は誤魔化すようにご主人様の首元に顔をうずめて大げさに甘えた。くんくん。いい匂いだ。

 紗和がくすぐったそうにする。

 後輩ちゃんがか細い悲鳴をあげた。

 

「ひぇ〜! そんなんありなんすか〜!?」

 

 なんと、ありなんです。




体調不良からの即日復帰。
わたしを寝込ませるなんて大したもんですね、キェイ!

気付けば四万字です。
いつも読んでくれるみんな、サンキュー!(CV.野沢◯子)

とりあえず思いついてる登場人物は出揃いました。ご主人様の妹が未登場ですね。嘘つきました、ごめんなさい。

お気に入りのキャラができてたら嬉しいぞ〜、ふぉふぉふぉ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

うすほそな幼なじみを口説き落とすRTA(作者:アホ面オムライス)(オリジナル現代/恋愛)

五歳の春、黒瀬湊は砂場の隅で膝を抱える少女を見て「放っておいたら死ぬ」と直感した。以来十二年、彼は彼女を幸せにするための「最短ルート」を走り続ける。これは善意100%のRTAが、いつしか彼女を誰よりも重く育てていく物語。▼高評価だけ忘れずにポチッとよろしくお願いします!!▼※カクヨム・なろうでも公開中▼https://kakuyomu.jp/works/29…


総合評価:913/評価:7.89/完結:10話/更新日時:2026年07月16日(木) 22:01 小説情報

衛宮士郎モドキは英雄にしかなれなかった(作者:曇らせはいつかガンにも効くようになる)(原作:ブルーアーカイブ)

注意:本作主人公は衛宮士郎本人ではありません!▼先生の存在しない平行世界のキヴォトスに、衛宮士郎の体に憑依転生した主人公。▼そんな衛宮士郎モドキが今度は先生のいる正史ルートのキヴォトスに、英霊として召喚されたっていう話。▼主人公は型月知識アリ、ブルアカ知識ナシです。▼


総合評価:912/評価:7.65/連載:11話/更新日時:2026年07月22日(水) 20:00 小説情報

あべこべ逆転異世界で孤児院の頼れるお兄ちゃんになるため奮闘する(作者:あに)(オリジナルファンタジー/日常)

身体がちょいとガタつくけど、大丈夫。▼僕はみんなのお兄ちゃんだからね。▼カクヨムの方にも投稿してます


総合評価:3534/評価:8.32/連載:20話/更新日時:2026年05月16日(土) 17:04 小説情報

スキルレベルしか上がらない一般身体能力学生が迷宮に挑んだら(作者:石田フビト)(オリジナル現代/冒険・バトル)

迷宮という存在が当たり前となった現代社会で、冒険者になろうとしている青年がいた。▼何か高尚な理由があったわけではない。▼ただ生きるためには、母を楽にさせるためには金が必要だった。▼されど一攫千金も莫大な名誉も求めずに。▼永遠と続く薬代を稼ぐことだけを希望として。▼その青年は一人、迷宮へと足を踏み入れる。▼……はずが、何故か個性的な女性達と関わり合い、彼自身も…


総合評価:2081/評価:8.07/連載:45話/更新日時:2026年07月28日(火) 20:14 小説情報

TS転生したら小鳥遊ホシノだったので青春を………Q.誰?お前?A.エーテリアスです(作者:如月トッポ)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

ある日、少年だった人物は見知らぬところで目を覚ました、▼よく見てみるとなんとブルアカの小鳥遊ホシノに転生していた!?▼けれど、転生先はブルアカでは無いようで……▼色々ちぐはぐすぎるこの主人公はこの終末世界でどう生きるのか………


総合評価:2888/評価:7.97/連載:11話/更新日時:2026年07月26日(日) 23:48 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>