男女比崩壊社会で黒髪ツンツンお嬢様のペットになった俺、激烈に甘やかされる。 作:二見猟太郎
陽毬と恋人繋ぎをしてご主人様のマンションへ戻る。
「またいっしょに遊ぼうね」
「わん」
キス以来、俺たちの距離感はすごく近くなり、陽毬はご主人様と同じくらいべたべた引っ付いてくるようになった。インターホンを押して待つ間も、顎の下をこしょこしょ撫でたり、握った手を抱き込むようにして身を寄せてきたりした。柔らかな胸が腕に当たって心地よい。
おでこにキスすると陽毬は照れたようにはにかんだ。
「えへへ、なにポチ。甘えたいの?」
翡翠の瞳が俺の唇を熱心に見つめる。
とろんと緩みはじめる目元。
しかし、ギャルは首を振ってキスの誘惑を断ち切った。
「あぶなっ。もうっ、ポチがおでこにチューするからだよ。紗和に見られたら恥ずいじゃん」
「なにが恥ずかしいのかしら」
「わぁっ!?」
ご主人様が現れた。
ドア枠にもたれながら腕を組み、半目をこちらに向けている。俺と陽毬の恋人繋ぎを見つけると、不愉快そうに鼻を鳴らしてムスッとした表情をした。
「ずいぶんと仲が良さそうね」
屈託なく陽毬が笑う。
「うん! ポチと超仲良しになったよ。可愛がってみて分かったけど、ポチかなり沼かも! ハマるとどんどん好きになるね!」
「……ふん、いまさらポチの魅力に気づくなんて遅いくらいだわ。おいで、ポチ」
ご主人様が手招きをする。
陽毬が軽いハグをしてきたので俺も応えた。温かくて柔らかな女の子の体を抱きすくめる。くすぐったそうにギャルが笑う。
ご主人様が靴底で地面を打った。
リードが紗和の手に渡る。
「じゃあね、ポチ。紗和もまたね。貸してくれてありがと」
「ふん」
俺はのほほんと手を振って陽毬を見送る。ギャルは何度も振り返って「ばいばい」と白い歯を見せた。その姿が見えなくなってから、リードを強く引いて、ご主人様が俺をかがませる。鼻を寄せくんくんと匂いをかぎ、しかめっ面をした。
「陽毬臭いわ。変なことされなかった?」
「されてませんよ」
「……ふたりで何をしてたの?」
恋愛相談についてはふたりの秘密だ。それ以外のことを話すとなると、ポテチを食べたり、コーラを飲んだり、アニメ鑑賞会をはじめた以降はキスとハグをしたくらいか。
「ポテチ食べながらコーラ飲んで、アニメ観て、キスとハグをしてました」
「ずいぶんと楽しそうね」
「そうですか?」
「ええ。ポチ、ニコニコしてるもの」
リードを引かれた。
さらに頭が下がり、紗和の顔が間近に迫る。
紫紺の瞳が俺を睨みつけた。
「誰がご主人様か、忘れてないわよね?」
「もちろん、俺のご主人様は紗和だけですよ」
紗和が鼻を鳴らす。
「ふん、ほんとかしら。ポチったら陽毬とも喜んでスキンシップするんだもの。節操のない雄犬ペットだわ。おいで、わたしがあの子を上書きしてあげる。主従関係を思い出させてあげるわ」
「忘れてませんって」
「ふん」
リビングのソファーに連れて行かれて座らされる。太ももに乗られ、肩に手を置かれて動きを止められた。さくら色の唇を赤い舌がぺろりと舐める。紫紺の瞳は嗜虐的な光をたたえて、まな板の上の魚をさばく料理人のようだった。
腰に手を回そうとすると、その手をはたかれる。
「だめ、ポチはじっとしてなきゃ。待て」
「わん」
どうやら身動きをとってはいけないらしい。
目を閉じてキス待ちしていたら鼻をつままれた。
「いてて」
「生意気ね。キスをするタイミングはわたしが決めるわ。ポチはお人形みたいにそこにいればいいの。ぜんぶ好き勝手するんだから。あなたは何一つ逆らっちゃダメなのよ」
言い終えるやいなや、ご主人様が覆いかぶさり俺の耳たぶをはむはむと噛んだ。唇で甘噛をして、前歯で優しく噛み潰して、熱い舌先がチロチロと弾くように舐めていく。ふんふんの聞こえる可愛い鼻息。左耳を絶え間なくいじめる刺激に背すじがゾワゾワする快楽に襲われた。
「あら、情けない声ね。耳をいじめられただけでそんな風に鳴いちゃうの? わたしの雄犬ペットなんだから我慢しなきゃダメじゃない」
「わん」
俺は唇を噛み締めて漏れ出す声を必死に抑え込もうとした。だけど紗和は俺の反応を観察しながら弱い場所を的確にいじめてくる。ついには耳の穴に舌を入れて、もう片方の耳を細くたおやかな指で弄びながら、俺をおもちゃにして遊んだ。
身をよじり、もだえ、くぐもった声を出すたびに、ご主人様は「もう我慢できないの?」「こんなことで気持ちよくなるなんて下品な子ね」「雄犬ペットのくせにスキンシップされるのが嬉しいだなんて、とんだ変態だわ」と掠れた低い声でささやいて言葉責めをした。
吸い上げるような音を立てて左耳への責めが終わる。
ご主人様が俺の顔をのぞき込んで、ほうとため息をついた。
頬をよしよしと撫でながら恍惚とした表情を浮かべる。
「マヌケな顔。ポチ、可愛いわ。わたしがもっと可愛くしてあげる。ほら、今度はこっちよ」
紗和が右耳に唇を寄せる。
赤い舌がでろんと外に投げ出され、俺の耳を舌先が這った。くねくねとうねる柔らかくて温かい粘膜が、耳の中へ侵入して、胎動のような音を響かせながら内部を蹂躙する。脳に響くような淫靡な音と舌の感触に身震いしながら、拳を握りしめ、唇を噛み締めた。やはり、声が我慢できなくて、俺は少女のように情けない声で喘いでしまう。紗和がくすくすと笑った。
「そんな女の子みたいな声も出せるのね」
ご主人様が離れる。
耳責めが終わった。
尾を引く肉悦のほてりに俺は肩で息をする。ぼやける視界に紫紺が揺らめいた。涼やかな眉を切なそうに歪め、怜悧な瞳をとろりと
「かわいい。ポチ。かわいいわ。こんなことをされてもわたしにされるがままなんて。嫌がって逃げないの? 突き飛ばそうとしないの? 手を握りしめて、唇をかんで、女の子みたいな声を出して、そんなになってまでわたしの言うことを聞くの?」
紗和が俺の頭を持ち上げる。
目と目が合う。
熱に浮かされたご主人様と口づけを交わす。
唇をはみ、舌を入れ合う。
陽毬とのキスがお遊びに思える、激しいキスだった。