男女比崩壊社会で黒髪ツンツンお嬢様のペットになった俺、激烈に甘やかされる。 作:二見猟太郎
キッキンからまな板の音が鳴る。
ソファーに座りながらご主人様が尋ねる。
「
「たけのこの炊き込みご飯、おみそ汁、焼き鮭、卵焼き、サラダです、
「ふん……いい匂いね。ポチの分も忘れてない?」
「はい、2人分ご用意してますよ」
「そう、よろしくね」
「かしこまりました」
家政婦の瀬名さんはおっとりとしたタレ目のお姉さんだ。たぶん三十代だと思う。亜麻色のショートカットはゆるく波打っている。胸は薄く、スリムな体形をしていた。
そういえば、失念していたんだが、ご主人様の名前が彼女との会話の中で判明した。
俺の手をにぎにぎしながらニュースを見るご主人様に尋ねる。
「ご主人様」
「なに?」
「ご主人様の苗字ってなんなんですか?」
ほっそりとした指が俺の手にからみつく。
「そういえば名前を教えてなかったわね。わたしは
「わん」
紗和は敬語とご主人様呼びにこだわりがあるようだった。やはり雄犬ペットの地位は低いのだろう。とはいえ、奴隷のように扱われるわけでもなく、文字通りペットのように可愛がってくれているのだから文句はひとつもない。
瀬名さんが朝ごはんを運ぶ。
「紗和お嬢様、準備できましたよ」
円形のテーブルに移動する。ガラスとアルミ椅子を組み合わせたおしゃれなテーブルだった。ご主人様のとなりに座る。瀬名さんは俺たちが食べている間、壁際に立ってじっとしていた。
どれも美味かったが、とくに炊き込みご飯がほのかに甘くておいしかった。だし醤油の味かな? もりもり食べている俺を見てご主人様が幸せそうに笑った。テーブルから身を乗り出し、俺の口元についていた米粒をとって食べる。
「たくさん食べてるポチを見てると、いつもよりごはんが美味しく感じるわね。喉がつまらないようによく噛むのよ」
「わん」
すっと伸びた美しい姿勢、流麗な所作で紗和は箸を動かした。米粒一つ残さず食べる。ごちそうさまと瀬名さんに告げて、学校へ行く準備を整える。洗い物は瀬名さんがしてくれるみたいで、食器をシンクへ持っていこうとするとご主人様にリードを引かれて動きを制された。
寝間着を脱ぎ捨てて白いブラとショーツ姿になった紗和は、ホワイトムスクの香水をふり、シャツのボタンをとめた。スカートのファスナーをあげ、黒のニーハイソックスをはく。ふとももの肉がむちっとゴムに乗る。ブレザーを羽織って髪をハーフアップにまとめた。
「ポチも着替えましょうか、おいで。リードを外すけど逃げちゃダメなんだからね。その首輪には電撃装置が内蔵されているんだから、お利口にしないとビリビリさせるわよ、わかった?」
「わん」
ご主人様がリードを外す。スウェットの上下を脱がされた。パンツ一丁になった俺の体を、彼女のたおやかな指がつつつと撫でる。平坦な胸をさわり「やっぱり女の子とはまったく違うのね」と感心したようなことを言った。
パンツのゴム紐を引かれ、マイジュニアを見られる。
「へんなの。これって邪魔じゃないの?」
「ずっとあるから邪魔とかそういうのはないですね」
「ふん、わたしは胸が邪魔だと思うことがあるけれど」
豊かな膨らみがふにゅりと形を変えながら持ち上げられる。
ふーん、えっちじゃん。
冴えた頭で冷静にそう思った。
「ほら、これがポチの制服よ」
ご主人様の制服と同じデザインで、スカートではなくスラックスが用意されていた。自分で着替えられるが、もたもたと不器用にしていると紗和が喜ぶのでほとんど着替えさてもらった。
「ポチはどんくさいわね。厳しいご主人様だったら今ごろ大変よ。わたしが世話焼きでよかったわね」
俺の鼻をつまみながら紗和は呆れたような笑顔見せた。
リビングに戻るなり、瀬名さんに声をかける。
「10分後に出るわ。車を表に回してもらえるかしら」
「承知いたしました。ロータリーに着きましたらご連絡いたしますね」
ぺこりと頭を下げて瀬名さんが部屋を出る。
「もしかして瀬名さんが運転手なんですか?」
「そうよ。わたしの身の回りのことはほとんど瀬名さんがしてくれているわ。となりの部屋に住んでいるから、困ったことがあればいつでも駆けつけてくれるわよ」
「家政婦さんがいるなんて、ご主人様はお金持ちなんですか?」
ふるふると紗和が首を振る。
「わたしはお金持ちじゃないわよ。お母さまがお金持ちなだけ」
それきり口をつぐんでしまう。
不機嫌そうに眉をしかめていた。
リードを引かれソファーに座る。
俺の膝の上にご主人様がまたがった。
紫紺の瞳が俺を覗き込む。
「暇だからキスして待ってましょ。知ってる? キスってセロトニンが分泌されて精神衛生に良いらしいわよ」
「ほかの雄犬ペットもキスとかしてるんですか?」
「さぁ? 分からないわ。人それぞれなんじゃないかしら。わたしはこうしてぎゅっとしたり、キスしたりするためにポチを飼うことにしたのよ。あとは話し相手。……ひとりは淋しいから」
ちゅっと唇が触れ合う。
俺の首に腕を回したご主人様は、瀬名さんから連絡が来るまでバードキスを続けた。頭を撫でてあげると、彼女は目尻をとろりと落として陽だまりのような笑顔を見せた。
0時にあと1話いきます!
耐えてくれ、俺のストック!