機動戦士Gundam GQuuuuuuX Meeeeeantimes 作:伴都さん
一瞬、レーダー観測を見る。
この周囲に限ってではあるが、ミノフスキー粒子は濃厚レベル。戦時中の名残りに加え、おそらく散布されている。
一応〈シービスケット〉の船影はわかる。
散布範囲に入ったのが合図だったのだろうか。
「イディアル、翻心の予定は無いかな?」
フィアースが遠ざかる中、イディアルに訊く。
「あなた、御自分の立場わかってます?」
イディアルは冷静に返す。銃口は向けられたまま。
「……そう、…………じゃ」
あたしは宣言することにした。
《……を、シマ・ハチジョウ戦術主任に許可する》
「イディアル、フィアース、オマエラを解雇する!」
デュークに貰った権限を行使した。
途端、2人の〈ザク〉のシステムが落ちた。解雇されれば〈ザク〉を操縦する謂れは無くなる。2人は慣性で漂うばかりになる。
イディアルの〈ザク〉の非常用マーカーだけ、外から作動させた。
「……イディアル、下手に動くなよ」
出来はしないだろうが告げた。
スラスターを吹かしフィアースを追う。
ヤツは加速中だった。すぐには追いつかない。
『姐さん!』
スタウスキの通信を認める刹那でセンサー類を見遣る。4機のMSの機影。
『こちらも認めた。そちらに近い一組は任せた!』
『了解!』
2人の返事が返る。
イディアル、警護ポッド、あたし、フィアース、スタウスキ、ハチソン、そして4機の新参、あたしの中で位置関係が決まる。
ずっと後ろに〈シービスケット〉。
制動できずに、警護ポッドを追い抜いたフィアースに追い付く。
『……なんだよっ…………クソッ!!……』
ヤツの喚きをBGMに、〈ザク〉の加速を殺し、フィアースとイディアルとの相対距離を整える。
『動くなよ、動いてどっかに飛んでっても知らないよ!』
こちらのマーカーも作動させた。あくまであたしたちが回収しやすくするためだ。
さて、どうする? 戻りながら考える。
スタウスキたちに任せたのは一組。もう一組は警護ポッドに、か?
あたしの〈ガーベラ〉の推進剤はそこそこ使ったが、戦闘に支障は無い。
そのうち、ここの2人が動かないのに相手は気づくだろう。
3対6は防いだが、相変わらず3対4、あたしが一組相手して、出来るだけ凌いて〈ソドン〉のところまで行けるか?
……現実的じゃない。
スタ・ハチ組のリスクは増えるが、〈シービスケット〉に戻って、残る予備の〈ザク〉にポッドのエグザベ君を乗せてもらうか?
と一瞬あたしは考えた。だが、エグザベ君の方が先に動いた。
予想より早く、警護ポッドに近づいた。
エグザベ君、加速してきた?
『シマさん、こっちに取り付いて!』
『デューク!?』
〈シービスケット〉に通信が届く。
全部言わなくても指示が来る。
『……このまま予定通り進め。MSを惹きつけろ。こちらの近くに、たぶん母船がいる』
母船は〈シービスケット〉でどうにかするつもりだろう。
スタウスキとハチソンに状況を通達し、あたしはエグザベ中尉とともに会合ポイントに向かった。
もはや警護ポッドは〈シービスケット〉を離れて、あたしの側にいる。
できればスタウスキ・ハチソン組の他にもう一つMAVが出来ると良かったのだが。
いっそ、ポッドに3機張り付いて、加速して〈ソドン〉に向かうか?
そう考えた時、足元から呼ばれた。
「ハロ、ハロ。……シマ、タスケガイルノカ?」
「よくわかったな?……要るぞ」
「……ハロ、ニマカセロ……」
何を任せるんだ? そう思った時。
ハロを通して、声が聴こえた。
『あたしはマチュ、あなたは?』
「…………シマ・ハチジョウだ」
『……じゃ、シマリンだね』
……? シマリン?
『シマさん! ポッドの横へ!』
エグザベ君が言うと、ポッドの上面が開いて行く。
そういえば、コレ、MS1機くらいは入るな?
爆発ボルトでハッチが一気に開いた一瞬、MSの機影が浮かんだ。
……何? 何だった? あたしは記憶を探る。
ああ、アレだ。
丁度この行程あたりで起こったアノ事件で、その前はサイド6のイズマで、何て名前だった?
…………何だった?
…………そうだ。〈ジークアクス〉。
モニターに映った女の子は、どう見ても、赤毛のJKだった。
あたしは困惑を必死に隠した。
あたしをシマリンと呼ぶんだ。まあそうだろうと自分を納得させた。
『シマさん、安心してください』
『……エグザベ君?』
『彼女は中佐の教え子みたいなものです』
…………ああ、そうか。そこまで事象の選択肢の枝分かれを読んでたか、あの中佐。
ならば、細かな思考は捨てる。
やることは一つ。
『マチュ、いつでも行ける?』
『もちろん!』
『なら、手を取れ。…………いくぞ!!』
〈ガーベラ・ヘキサ〉は〈ジークアクス〉の手を取り、センサーに写る二つの光点に向かった。
以降、あたしの目の届いていないところは、後で聞いた話だ。
『……ああ、新型で良かった』
『ダヴィ、手を抜かない!』
『もちろん!!』
ダヴィ・スタウスキとケリィ・ハチソン組は、既に会敵していた。
相手MSは、RGM‐83〈ウルトラ・ライト・キャノン〉だ。
RGM‐79〈軽キャノン〉よりさらに軽量化を図った機体。
ジェイクフォード・サーヴィスの配備が〈ザク〉のままならわりと厳しい相手だ。
〈ガーベラ・ヘキサ〉が加速にピーキーなら、コイツは小回りにパラメータが振られている。
さらに噂では、いくらかの迷彩効果を持つと言う。
『少し、カメラが乱れてる?』
『みたいね。滲んで、照準が外れる。アンタが……』
造られた死角から〈ULキャノン〉の波状攻撃が来る。
『……言った通り、新型で良かったわっ!』
『同意サンクスッ!』
スタ・ハチ組とその相手は、互いの優位を互いのスペックで補っていた。
『ああ、シミュ重ねてて、……良かったなぁ!!』
『ダヴィ、右下フォローよろしく!』
『おおよっ!!』
2人の〈ガーベラ・ヘキサ〉は、ほぼ初陣のわりに、敵MAV一組を釘付けにした。
相手パイロットは、さぞ手をこまねいていた事だろう。
あたしはマチュに問うた。
『戦闘経験はあるんだよね?』
『あるよ。クランバトルの方が多いけど』
クランバトル?
いつぞやの動画、あたしはちゃんとは見てない。
『……もしかして、シイコ・スガイとマッチングしてた?』
『……知り合いだったの?』
『ああ。…………だ、が、その話は後だっ!!』
そう、そんな話は後なんだよっ。
『長距離巡航中の会敵について説明する。
よほど変な機動をしない限り、敵と相対速度が揃い、拠点付近での戦闘とあまり変わらない。
ここまではいい?』
『いいよ!』
『あたしとの位置取りを常に意識しろ。
アンタがフォワード、あたしがフォロワー、敵をアンタの前に導くから、それを叩け!』
『凄いね、シマリン、まるでヒゲマンだ』
大体誰のことか判る。
『コレでも独立戦争の時、小隊長だぜ!』
敵MAVと相対した。機体は、見た覚えはあるな。
『いくぞ、イチ、ニィ、…………』
『サンッ』
繋いだ腕を起点に、〈ジークアクス〉を振り飛ばす。
『斧持ってたな!? まずは、ブチかませッ!』
『うああっ!!』
まずMAVの連携を乱す。
『姐さん、スタウスキですっ!』
『なんだ!?』
『一組はこっちで抑えてます。MSはRGM‐83、いくらかの迷彩効果あり!』
『心得た! 健闘を祈る!』
『ハイな!』
『聴いたな、マチュ。相手がブレて見えようが、とにかくブチかませッ!!』
『わかった!』
あたしは〈ガーベラ〉を横にスライドさせ、敵の軌道を牽制する。
マチュの二回目のアタック。
『ソイツらは小回りが利く。大体掴めたか!?』
『大体はね!』
(何だろな? この物覚えの早さ)
『よっしゃ、一旦戻れ』
『クランバトルの時はコロニーの構造体で位置が掴めたと思う。今はそんなものは無い。
従って、あたしを基点にしろ。あたしとロープで繋がっているつもりで動け』
『あ〜、なんとなくわかった。似た事はしたと思う』
相手のフォワードとフォロワーの分担もわかってきた。
交互切り替えではない。なら、やり易いかも。
互いのMAVが採る軌道を、二組の中心点を巡る楕円軌道に寄せて行く。ガンのビームが飛んで来るが、そうそう当たるものではない。
〈ULキャノン〉は肩のキャノンも廃したからな。手数が少なくなったのが、あたしたちに有利に働く。
より高速で回り込む〈ジークアクス〉をいなし、相手フォワードがあたしに突っ込んで来る。あたしは相手フォロワーに突っ込む。
軌道の中心点がズレる。
〈ジークアクス〉の軌道もズレる。
『いっくよ〜!!』
マチュの目前に相手フォワードの肩口が迫った。
武装を手に伸ばした右腕を叩き切った。
左腕で掴んたビームサーベルを〈ジークアクス〉に振り落とすが避けられる。
マチュはすり抜けたまま、フォロワーに向かい回り込む。あたしとマチュでフォロワーを挟む。
マチュの一閃は避けられた。
あたしは退避軌道にビームを叩き込む。が、当たらない。
『マチュ!!』
さっきみたいに手は繋いでいない。
だが感覚のロープが二つの機体を繋ぐ。
あたしは〈ジークアクス〉を振り回すように引き込んだ。
その先にあるのは、右腕を失ったフォワードだ。
〈ジークアクス〉のトメノスケ・ヒート・ホークが一閃し、フォワードの首を刎ねた。
センサー系と操作系を断絶された〈ULキャノン〉は、諦めて無駄な動きを留めた。