機動戦士Gundam GQuuuuuuX Meeeeeantimes 作:伴都さん
ソロモンだがコンペイトウだか、呼び名が定まらなかった元小惑星もとい宇宙要塞。
ソレを月のグラナダに落とそうとかいう、建前としては最後に敵ジオン公国のリソースを少しでも減らしたい、その実もはや嫌がらせに違いない作戦。
その場に居合わせたからという世知辛い理由で随行したあたしたち。
艦長は思い切り嫌がってたが、あたしたちもだ。
嫌がらせで民間人何十万人死なすつもりだ、立案者出て来い。
少なくとも旗艦に座乗しているワッケインさんではあるまい。あの人は発想はしても実行はしない、そういう信頼はある。
負け戦はさぁ、退き際が大事なんだよ。
置き土産なんかいらん。ああもう、嫌な予感しかしない。
と、いうわけで、予感は当たった。
「いぃ、やあぁぁ~っ、もうっ、イヤや〜〜」
赤い彗星と灰色の幽霊の吶喊に晒されたあたしには、もう叫びながら避けるは逃げるはするしか術はなかった。
友軍機がさぁ、瞬く間に厳かな煌めきに変わってくんだ。
僚機も誰かやられたなぁ、ありゃ。混乱の極みで判別つかない。
蹴散らされた随行艦隊とMS隊は、間隙を抜いて残存戦力を整える。
だが、相手に何かする時間は与えてしまった。
ああ……頼むから落下阻止でもしてくれや。
あたしは母艦を確認する。通信は切れ切ってないはず。
いた、〈ペガサスJr.〉。
回線を開こうというとき、接触通信のインジケーション。僚機の生き残りだ。
『姐さん、シマ姐さん、無事かい!?』
『カイ、無事よ。そっちは?』
『どうにか無事。ひでぇ目に遭った』
『姫さんは?』
カイ・シデンにツーマン・セルの相棒について訊く。
『思うことあって、って要塞に行っちまった』
『またあの人の勘?』
『オレに付いてきて欲しくなさそうな勘かな?』
『それでも付いてけ』
『悪ぃ……』
そのときだ。
宇宙要塞の一角より発した光が瞬く間に拡がり、要塞の何割かを覆う光球と化した。
更に濁流のような光が襲う。こんな光の圧力なんて初めてだ。音やら声やら聴こえてくる気もするが、何なのかわからない。
そのうち光は止み、要塞は大きく抉られた。重心がずれ軌道もずれ、要塞は月への落下コースから外れる。
衝突軌道からは外れたが、宇宙要塞は月に向かっていく。
姫さん、セイラ・マス少尉はまだ戻ってこない。
ただ、大体のところの彼女の位置を、あたしは掴んでいた。
『姐さん、セイラさんが何処かわかるかい!?』
『大体はね……』
『ルートがあるなら教えてくれ、姐さん!』
『行ける!?』
『行くのさ!』
あたしは連邦接収時のデータを参照しながら、カイに指示を出す。
モニタリングする。
セイラに近づくカイ。
『姫さん、セイラさん!!』
呼びかけるカイ。
かすかな返信が返る。
『……あら……あなたが来たの……?』
『セイラさん、逃げんだよ!』
少しずつ返信がはっきりしていく。
『……もう、……いいのよ……あなたは脱出しなさいな』
『何言ってんの!?』
『……兄がいたのよ。……シャア・アズナブル』
『はぁ!?』
『落下阻止してると思ったら、設置したのを壊してんのよ。本当何してるんだろ?……あの人』
深い溜息が聞こえるような気がした。
『その話はあとでいいからさ。……姐さん、ルートを!』
『いいのよ……もう』
カイ・シデンは、意味は無いかもしれないが、息を深く吸った。
『いいわけあるか!!』
一瞬、セイラが静かになった。
『覚えてるかい? あんたに命を拾ってもらった子、あいつがあんたにもう一度会いたいって言ってんだよ!』
『………』
『オレはあいつとあんたを会わせるんだよ!!……四の五の抜か……』
そこにあたしは指示を入れる。
『カイ、そこ、少し右』
カイは半壊した〈軽キャノン〉の元に辿り着く。
そしてカイ・シデンは、自機の手を伸ばして限りなく優しく言った。
「……帰るよ、姫さん」
あたしはサイド3はズムシティに来ていた。
しかも公王庁近くの公園である。
指定されたベンチに座り、ピートの入ったキャリーを膝上に乗せ、ヤツにも外が見えるようにした。
ピートがキャリーの窓に鼻を付け、一声啼いた。
待ち人が来るのに、しばらく時間が掛かっていた。
この近くに住んでいるヒトのはずだが、どういうことだ。
カジュアルな格好をした、金髪の若い女性に声を掛けられる。
「まぁ! 可愛い猫ちゃん。見てもよろしいかしら?」
「はい、構いませんよ」
合言葉だ。
「お久しぶり。アルテイシアかセイラか、どう呼べばいい?」
「セイラでいいわよ」
アルテイシア・ソム・ダイクン様は微笑んで、あたしの横に座った。
あたしは周りをそっと見渡し、アルテイシア様がいつも侍らせている青いオッサンを探した。
どうやら、今は近くにはいないらしい。
「ラルは近くにいないわ。そう命じたから」
……左様ですが、はい。
そういえば姫さんも今の地位から見るとラフな姿だ。
「セイラ、なんで会うのがあたしなんだよ。デュークでいいだろ」
「彼とは前にゆっくり話したから」
ああ、前から、ね。前から。
「……あたしらに大元の依頼したのはあんただったんだな?」
「カイにも色々協力してもらったわ」
ああ、やっぱりそうですよね。
「で、なんであたしたちだったんだ? 青いオッサンや、シャリア・ブルもいるじゃん」
「それだけじゃ足りなかったのよ」
セイラは何度も何度も言葉を反芻するようにして、繋いだ。
「……私だって、もっと多くの、信頼できる仲間が欲しかったのよ。
元の乗組員仲間なんて、最適ではなくて?」
「……ふぅん」
あたしはそっけなく返したが、内心、このツンデレ気味な姫さんに一矢報いた気がした。
「そういえばあんたさ、ドズル・ザビを倒したのって知られてないよね?」
「さぁ? たぶんそうだろうけど、わからないわ。……ああ、ドズル・ザビといえばね?」
セイラは小さなフォトフレームを取り出し、あたしに見せた。
ソコには、赤ちゃんと写る、今より少し小さなピートらしき猫がいた。ピートを連れてくる意味がわかった。
「……いえばね? って、まさか」
「その赤ちゃん、ミネバ・ザビよ」
「うっわ」
なんとなくそうかも、とは常々思っていたが、ついに答えが向こうから来た。
セイラが何か楽しそうに言う。
「シマ、ちょっと御相談があるのだけれど?」
「……言うな」
「ピート、ミネバに返してあげたいの。ザビ派もまだまだ強力だわ。少しは大人しくなるかも」
「…………」
「本気で考えていただけないかしら?」
「うわ〜〜〜」
「冗談よ」
同時に、ピートがニャアと啼いた。