機動戦士Gundam GQuuuuuuX Meeeeeantimes   作:伴都さん

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3.

 

 

 発射と加速と減速と、何度かシートに押し付けられながら、久々に宙に浮く感覚を味わっている。

 

 形は休戦といえども、実質地球連邦はジオン公国に負けたわけだ。

 が、戦後連邦は完全に地球に押し込まれたわけではなく、沿岸警備隊的な船団やステーションなどは近傍軌道に維持できていた。

(させてもらってた?)

 

 

 地球連邦宇宙軍は長期計画で体勢を整えているらしい。

 あたしに伝わる噂では、一部を除いて大人しくしているそうだ。

 

 民間の移動やら貿易やらは、地球及び残存するコロニーや軌道拠点については戦前の様相にほぼ回復しつつある。

 

 だけど、地球から宇宙に上がったり降りたりが面倒な人々が大半なのは、相変わらずだ。

 

 金銭的なものもあるけど、まあ、重力の井戸とはよく言ったものと思う。

 軌道エレベーターの計画はあるが、いつになることやら。そもそも実現できるのか。

 

 

 あたしは比較的行き来している人だが、地べたに立ってるのと、今のこう、空間にいるなぁってのは、やっぱり感じが変わる。

 

『御搭乗の皆様にお伝えします。当シャトルは間もなく中継ステーションに到着致します。三分後に減速を始めますので、シートベルトを着け、御備えください』

 

 何人かの乗客が慌てているのを横目に見ながら、あたしはシートに沈み込んだ。

 

 

 

 各地に散らばっていた元第13独立戦隊メンバーの何割かが、デュークことジェイクフォード元艦長の要請を受けた。

 

 設立された民間軍事会社〈ジェイクフォード・サーヴィス〉は、軌道上のドック船に仮事務所を置き、竣工した運用船とともに社員らの集結を待っている。

 

 中継ステーションのコンコースで、あたしはピートの特注キャリーと手荷物を抱え、迎えを待つ。

 大きな荷物は発送済みだ。

 

 

「シマ、シマ姐さん、やあ、お久しぶり」

 

 後ろから陽気に声を掛けられる。あたしは振り返ってそれに応えた。

「あんたもね。リュウ」

 

 リュウ・ホセイは、相変わらずの大きな身体と明るい笑顔であたしを迎えた。

 

 

 キャリーの窓から顔を覗かせたピートが、リュウを見定めて長目に啼いた。

 

「凄いな、大気圏脱出してなんともないのか」

「再突入のときもケロっとしてたしね。こいつもしかして経験者だったりして」

 

「可能性はあるよなぁ」

 キャリーを覗き込むリュウに、あたしは訊く。

「そういうあんたはどう? 身体の調子」

 

 

 リュウ・ホセイはかなり早い段階からMSパイロット候補だったが、赤い彗星のサイド7襲撃の際怪我を負い、一旦候補から外れた。

 

 ただそれまでの経験が勿体ないとかで、怪我が治るまで、〈ペガサスJr.〉で基礎項目の教官めいたことを始める。

 

 が、運の悪いことに例の訓練中の事故に巻き込まれ、また怪我を負う。

 

 軍人としては軽症だったが、パイロットとしては致命的だった。片目の視力を奪われてしまった。

 

 その後のリュウは、MSの知見を生かし整備スタッフに回った。整備とパイロットの架け橋と言える存在としてデュークの片腕の一人となる。

 

 

「怪我はもう全然、目は眼球移植でもできれば、てとこだね。だが視界については随分慣れたよ」

「そうか〜」

 

「前にも言ったけどさ、姐さん。逆に運が良かったんだよ。俺の腕じゃ、ソロモン落としのときのアレでやられてた」

 

「そうかな〜」

「そうだよ」

 もう気にしなくていいよ、って感じにリュウは微笑んだ。

 

 

 リュウはあたしの手荷物をさっと預かり、内火艇へのルートを進む。

 ピートのキャリーを抱え続いたあたしは、ちょっとだけ気になることを思い出したので、訊いてみた。

 

「……そういやさ」

「なんだい?」

「今更なんだけど、あたしってなんで〈姐さん〉て呼ばれるの?」

 

「……ね、姐さんは、頼りになる姐さんだから」

 リュウは明後日の方向を向いた。

「だからなんで?」

 

 しばしの沈黙。

 

「怒らないで聞いてほしい」

「怒らないよ、今更」

 

「ええ……うちの部隊にはもう二人いたじゃないですか、正規の女性パイロットが」

 

「うん」

「そのうち一人は〈姫さん〉と呼ばれてましたよね」

 

「うんうん」

「……だからです」

 

 あたしもしばし考えた。

 

 そして合点がいった。

「……対比かっ!?」

 

 

 急に足早になったリュウを追い掛けるうち、内火艇ポートが近づく。

 

 そうそう、ちなみにデュークの片腕と言えるもう一人は、操艦周りや戦闘指揮で縁の下の力持ちだった。

 数少ない軍に残った一人だ。元気にしてればいいな。

 

 

 

 中継ステーション近くに停泊するドック船は、大きな花の形をしていた。

 

 元は地球連邦の所属だったが、独立運営となり、所属元は問わず船を受け入れることになっている。ということだ。

 

 花びらの内側の雄しべや雌しべにあたる部分に作業設備が伸び、数隻の船が繋がっている。

 

 

「右の窓から船が見えるよ」

 リュウが言った。

 

 〈ペガサスJr.〉の中央船体を小振りにしたような主船体の後方に、やはり小振りにした推進ブロック。主船体前方のカタパルト・ハッチの先に船首が伸び、軍艦ほどではない兵装が見える。

 船体全体は、渋めのブルーで塗られていた。

 

 船と交信しながらリュウが言う。

「元は巡視船として建造されたものを、ここで改装させてもらったんだ。いい船だよ」

 

 

 内火艇は船の後方に回り込み、着船シークエンスに入る。

 

 ハッチの開いた後部デッキの上方に、船名と、おそらく馬を象ったエンブレムが見えた。

 

 リュウ・ホセイ整備主任、は改めて言う。

 

「シマ・ハチジョウ戦術主任、

 民間警護船〈シービスケット〉へようこそ」

 

 

 

「……戦闘糧食を名前にしたの?」

「え? うん、まあそんなところ」

 

 リュウは笑いながら船名の由来を語ってくれた。

 

 

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