機動戦士Gundam GQuuuuuuX Meeeeeantimes 作:伴都さん
幹部社員の顔合わせを済ませ、三々五々社員たちが集まる。
ほぼ勢揃いしたところで、全員が主船体上部気密区画のブリーフィングルームに集結した。
会社の恒例行事、朝礼の始まりである。
社長のデューク、戦術主任のあたし、整備主任のリュウと並ぶ一歩前に、何枚か書類をくっつけたタブレットを抱えた、内勤主任のタムラさんが立つ。
〈ペガサスJr.〉ではよく厨房に立っていたイメージのタムラさんだが、そもそもは主計士官だ。
真っ先に彼が来てくれて助かったとデュークが言っていた。
「皆さん、おはよう。さて、全員が揃うのはこれが初めてだね。内勤主任のタムラです、よろしく」
落ちついてよどみなく、ブリーフィングが始まる。
「ほとんどの皆さんは顔見知りだと思いますが、幾名が新顔もおみえなので、改めて紹介します。
私の後ろ、右からジェイクフォード社長兼船長、戦術主任シマ・ハチジョウ、整備主任リュウ・ホセイです。
皆さんの希望を募り、操船課、戦術課、整備課、内勤課にそれぞれ配属致しました。
私たちは皆さんの直属の上長となります。
なお操船主任については、選抜中につき空席であります。
当面船長が兼任するのでよろしく。
ほらそこ、怖がらなくてもいいですよ」
指さされた一角から小さく笑いが起こる。
「ブリーフィングは適時行いますので、通常時は必ず出席すること。
特に請負業務の開始前は重要ですからね」
タムラさんはタブレットからスクリーンを操作し始める。
ブリーフィングのレジュメを表示しながら続ける。
「もうしばらくは、業務開始前の準備期間となります。それぞれ担当する業務に習熟してください。
細かな配置に意見のある方は私が窓口になります。気軽に声をかけてください。
……おっと、ちょっと待ってください」
タブレットの通知アラームが鳴り、タムラさんは凝視する。
一通り目を通すと、デュークに渡し目配せをした。デュークは頷く。
「戦術課と整備課に通達。明日一〇:〇〇標準時、MSが搬入されます。対応準備願います。
マニュアル、チェックリストが揃ってない者は私まで」
変わった通達はそれだけで、後は諸々の連絡事項と新顔の紹介、最後に社長挨拶。
「元第13独立戦隊の諸君、元気そうで何よりだ。
新顔の諸君、何かと不安はあるだろうが、我々は幸運艦とも呼ばれた艦の乗員だ。
あやかってもらって損はさせないよう心掛けよう。
我が社の主な業務は、警備や護衛といったものとなりそうだ。軍にいたときよりは軽い仕事と思われがちだが、危険度に変わりはない。
変わらず気を引き締めて業務に当たってほしい。
今後ともよろしくお願いする。以上だ」
デュークが一歩下がり、再びタムラさんが前に立つ。
「ではみなさん、怪我などしないよう、充分気を付けてください。それでは、解散!」
社員たちがブリーフィングルームを出ていく中、タムラさんは一息ついて、デュークに振り向く。
「……どうでした?」
デュークは頷いて応える。
「少し固かったが、問題ない。お疲れ様」
「おつかれ〜」
「お疲れさん」
あたしとリュウも続く。
「とにかく、タムラさんがある意味一番大変な立場だ。
何かあったら溜め込ますに私に報告。意思疎通は大事だからな」
「了解です、社長。いや、流石に初めては緊張しますな」
「そのうち慣れるよ」
「そういやデュークの呼び方は揃えるの? 社長? 船長?」
あたしの問いにまず、タムラさんが応える。
「元々艦長と呼んでましたからねぇ」
「プレジデントよりはキャプテンかな」
「じゃあ船長で」
「了解した」
「酒保はもうちっと品揃えが欲しいな〜」
「おいおい、社員せいぜい数十名なんだから、予算が増える分、代金取らなきゃならなくなるよ」
「そうだな、オレは品揃えが良くなるようならそれでもいいよ」
「あたしも。船長は?」
「船上暮らしだからな、福利厚生は厚いに越したことはない。タムラさん、考慮してみようか。資料頼む」
「了解です」
「オレはドクターはやっぱり必要だと思うんだ」
「そうだね〜、ファーストエイドはみんなできるけど」
「できれば乗船してくれる人材を選抜中だ。何人かには絞っている」
「もう少し待ってくださいな」
会社立ち上げ時のぶっつけ幹部会議は、もうしばらく続いた。
翌日、某企業からMSが届く。
格納デッキにて、あたしはそれらを眺めた。
予備パーツと共に、弊社カスタム仕様の〈ザク〉3機。
それから。
〈軽キャノン〉所望とは言わないけれど。
「……なんじゃコレ?」
見慣れぬ割とスマートなのが3機。と、その予備パーツ。
「仮の名前は〈ガーベラ〉と言うらしい。正確には〈ガーベラ・ヘキサ〉」
添付ファイルと本機を交互に見ながら、リュウは言った。
リュウによると、来歴はこうだ。
連邦系の開発会社が改めて〈ガンダム〉を開発し直そう(〈軽キャノン〉よりリーズナブルな、主力機とは別にシンボリックな機体という趣旨で)
と、試作MSを競作したが、結局うまくいかずロールアウトまでこぎつけず終わった。
それが二年前。
だがいつの世も諦めの悪い輩(企業)はいるもので、二年近く開発を継続した結果、ややピーキーな性能なれど、ほぼ満足のいく機体は完成した。
しかしプロダクションモデルとして売り込むにはまだ調整不足、そして予算不足。
歯噛みする開発陣に申し出がある。
実践運用データを渡すからそれ、配備させてくれないか? 金なら出す。
本来そのような話に乗るはずもないが、申し出た人物にはMS運用艦の艦長という実績があった。
開発陣は試作機の外装を〈ガンダム〉っぽくないものに換装し、弊社に引き渡した。
「大丈夫か、それ?」
「一通り開けて見てみたが、造りは大丈夫そうだね」
「誰が乗るのよ」
「そりゃ姐さんと」
「……う゛」
「スタウスキとハチソンかな」
「そうなるわな」
「一応新型でしょ、いいじゃないですか」
「あー、慣熟やり直しですかぁ」
後ろから顔馴染みのMSパイロット男女ペアがやって来る。
ダヴィッド・スタウスキとケリィ・ハチソンだ。2人とも元少尉。
〈ペガサスJr.〉のMS隊は、ツーマンセルのMAV戦術が確立前なため、最終期には3機編成2個小隊だった。
正規パイロットは中尉のあたしと少尉のカイ、姫さん。
ソロモン落としで戦死したベッカー中尉とスタウスキ、ハチソン。
結局6名中5名が生き残っていた。
「〈軽キャノン〉と操作性は近いらしいし、ザクの操作系も参考にしたそうだから、これまでの訓練も無駄じゃなさそうだぞ」
そう、リュウは言う。
「いつ仕事が舞い込むか、わからない限りは、動かせなきゃですねぇ」
スタウスキが返す。
「そういうこと」
「シミュは?」
「ソフト的には対応させた。レバーレイアウトなんかは、なるべく早く換装するよ」
「ソフト的に動くようなら、もう試しちゃいます」
引っ詰めた髪を整え直して、顔はうんざりそうながら、ハチソンは言う。
「いい心掛けだ。……もういけるぞ、基礎操作は問題ない」
シミュレーターの設定を確認したリュウが2人に伝える。
「行きますかぁ、ダヴィ」
「おまえも新型乗りたいんじゃん」
「うるさい」
スタウスキとハチソンは上部デッキのシミュレータールームに去り、リュウと2人に戻る。
「あいつらも変わらないな」
「一説によれば、付き合い始めたという」
「えっ、本当?」
「真偽はあたしも確認しとらん」
向かい合って笑う。
「……さて、問題は」
あたしは少々真顔になる。
「新顔の2人だね」
現在、弊社のMSパイロットは5名。
新顔の2人は面接採用だ。
元連邦軍。
MSに乗れるが休戦後から、とのことで、今のところ予備扱い。
「船長の『なるべく目を掛けてくれ』ってどういう意味だろうね〜?」
「どういう意味かなぁ?」
今度は別の意味で向かい合って笑う。
「あれだよねぇ、『想定できるパターンを考えとけ』ってヤツだよね〜」
「だよな」
船長がまだ〈答え〉を提示してないってのは、そういうことだ。
後輩、部下の成長を暖かく見守るだけならいいんだけどな〜。
かくして、あたしたちの素敵な社会人生活は、幕を開けたばかりである。