機動戦士Gundam GQuuuuuuX Meeeeeantimes   作:伴都さん

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5.

 

 

 なんとなく、特定の誰かがその辺りにいる。

 

 そんな感触を意識するようになったのは、宇宙(そら)に上がった時だ。

 

 

 今でも地球―月軌道を、なんらかの飛翔体に乗り込み移動することになる者たちは、まず初めに最もわかり易い天体、太陽―地球―月をマークして、己の位置を把握するよう教育される。

 

 慣れていくと、月の公転による移動に加え、目立つ星々をマークして、より詳細に己と仲間たちあるいは〈敵〉の、位置関係を感覚できるようになる者さえ現れる。

 

 ヒトの環境順応ってのも大したものだ。

 

 

 ま、今はナビも発達して、平和な空間のクルージングなら初級者でもできるけどね。

 まぁ初級者ならオートに頼るか。

 

 

 あたしがMS乗りとして長けていたのは、マークポイントの初期設定に、最初から自分がいたことだ。

 

 慣れていくと、ソレに仲間たちが加わった。

 カイ・シデンが言っていた、〈それなりの特技〉の正体だ。

 

 

 とはいえ、ジオン独立戦争の末期には、ソレが頭の中のノイズとして、煩わしく成りつつあった。

 

 トドメはソロモン落としのときのアレだ。

 だからあたしは、連邦宇宙軍を放逐されたあと、宇宙(そら)に残らず、地球に降りたのだ。

 

 それなのにまた宇宙(そら)に昇ってきたのは、デュークに誘われたからだろうか。

 

 

 ああ、そうだよ。誘われたからだよ。

 当人には言わないけどな。

 

 

 

 本日の公的業務は、新人の見極めだ。

 

 新顔MSパイロット2人に、マーキング・ボールを〈ザク〉で追い掛けさせ、どのような動きまで任せられるか見ている。

 

 もちろん、あたしが普通よりちょっと、位置把握能力が高いことは伏せてる。

 

 

『イディアル、動きが鈍い、あと半秒を意識しろ』

『フィアース、おまえは逆に早い。イディアルとぶつかるぞ』

 

 

『……はい』『うぁい』

 わかってるのか、わかってないのか、よくわからない返事が返る。

 

 アイツラ、軍じゃないからって舐めてるな。正確にはあたしが舐められてんだが。

 

 

 

 マイク・フィアースとパトリック・イディアルの2人は、面接を通った新顔だ。

 

 地球のどこかで訓練を続けていたが、この度連邦軍をお役御免になったらしい。

 元所属基地でも同僚とのこと。

 

 

 フィアースは少々ひょろ長体型で、イディアルはリュウほどではないが大柄。

 そういやコイツラ、リュウにはわりとヘコヘコしてたな。……わかり易い。

 

 

『フィアース、安易に〈ザク〉壊すと給料から差っ引くぞ、マニュピレーターたっかいんだぞっ』

『……』

 

 な〜んか、舌打ちらしい音は聴こえたが、スルーする。

 

 

 これほど左様に、フィアースはどこか反抗的で、イディアルは控えめ。なんかイディアルがフィアースのパシリみたいなことをしてるのも見たな。

 

 デュークに目を掛けてくれって言われたけどなぁ、人材難じゃなければチェンジだな。

 特にフィアース。

 

 

 

『では主任、お手本を見せていただけませんか? 宇宙(そら)に慣れてない私どものために……』

 

 フィアースが言うや否や、イディアルが捕獲していたマーキング・ボールを明後日の方向に射出する。

 

 コイツもどちらかと言えば大人しいんだが、なんだかなぁ。

 

 

 あたしは無言で〈ガーベラ〉を機動させる。

 太陽、地球、月、あたし、フィアース、イディアル、そしてマーキング・ボール。

 

 空間の対応像を頭に描き、あたしは真っ直ぐにボールに向かう。

 

 

 ボールと相対し、柔らかに掴む。

 そして〈ガーベラ・ヘキサ〉を、ヤツラのいる方向に向け静止させた。

 

 ボールを掴んだ右腕マニュピレーターをヒラヒラと振る。

 

『こんなもんだよ、見てたか? おい』

 返事があるまで数秒掛かった。

 

 

 

 馴致回航中の〈シービスケット〉に帰投した。

 船内は本格的に稼働を始めたため、なかなか慌ただしい。

 

「で、どうだった?」

 コクピット脇に来たリュウに訊かれる。

 

「一言で言えば、女だと舐められてる」

 リュウは苦笑いした。

 

「ああ……オレには愛想いいぞ」

「そうなんだよなぁ……腹立つ」

 

「船長に報告するだろ? その間にモニターから見てたぞって感じで話してくるよ」

「……助かる」

 

 

 

 気密区画に入って、スタウスキとハチソンに会う。

 

「姐さん、〈ガーベラ〉、なかなか良いですよ。ピーキーなのは加速関係かな」

 そう言う彼の横で、ハチソンがうんうんと頷いた。

 

「あんたもそう思う? なら報告まとめて船長へ提出だな」

「え、オレも?」

 

『おまえも』

 あたしとハチソンが同時に答えた。

 

 

 

 パイロットスーツのまま、ブリッジに上がるシャフトに乗る。

 コンソール上にマニュアルやら資料やらが散乱するブリッジを抜け、船長室に。

 

「入れ」

 ドアを開け、あたしは船長室に入った。

 

「どうだった?」

 デュークは簡潔に訊いた。

 

「チェンジ」

 あたしも簡潔に答えた。

 

「……もっと詳しく」

 彼は笑って促す。あ、この笑顔はまともに応えないとまずい。

 

 

「程度の差こそあれ、あたしには反抗的です。逆にリュウには従順です。典型的な男性主義と言いますか」

 

「……他には?」

「印象ですが、まさかアースノイド至上主義だったりしません?」

 

「うむ」

 デュークは一拍置く。

 

「そうかも知れんし、違うかも知れん。ほら、アレ、わりと上官や周囲に染まってってのが多いじゃないか」

「……ですね」

 

「彼らがどうだろうか? って点では、大きく二つある。コレは主任クラスに共有しとくんだが」

「……はい?」

 

「普通にそういう連中の仲間だった。これなら場合によっては矯正可能だ。もう一つは、どこぞの破壊工作員だ」

 

「はあ? ウチ、初仕事前ですよね?」

「だから出鼻をくじいてやろうってことでは? オレたち、一部に恨まれてるだろ?」

 

 だんだんデュークの口調が崩れてきた。

 コレは、あたしにとっては危険信号だ。

 

 

「観測しながら、警戒します」

「……そうしてくれ」

 

 

 船長室を出た。

 ブリッジを抜け、控室までのシャフトに乗り、あたしは大きくため息をついた。

「あ〜〜。また出たよぉ」

 

 あたしの観測対象はもう一つ増えたのだ。

 

 

 

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