機動戦士Gundam GQuuuuuuX Meeeeeantimes 作:伴都さん
なんとなく、特定の誰かがその辺りにいる。
そんな感触を意識するようになったのは、宇宙(そら)に上がった時だ。
今でも地球―月軌道を、なんらかの飛翔体に乗り込み移動することになる者たちは、まず初めに最もわかり易い天体、太陽―地球―月をマークして、己の位置を把握するよう教育される。
慣れていくと、月の公転による移動に加え、目立つ星々をマークして、より詳細に己と仲間たちあるいは〈敵〉の、位置関係を感覚できるようになる者さえ現れる。
ヒトの環境順応ってのも大したものだ。
ま、今はナビも発達して、平和な空間のクルージングなら初級者でもできるけどね。
まぁ初級者ならオートに頼るか。
あたしがMS乗りとして長けていたのは、マークポイントの初期設定に、最初から自分がいたことだ。
慣れていくと、ソレに仲間たちが加わった。
カイ・シデンが言っていた、〈それなりの特技〉の正体だ。
とはいえ、ジオン独立戦争の末期には、ソレが頭の中のノイズとして、煩わしく成りつつあった。
トドメはソロモン落としのときのアレだ。
だからあたしは、連邦宇宙軍を放逐されたあと、宇宙(そら)に残らず、地球に降りたのだ。
それなのにまた宇宙(そら)に昇ってきたのは、デュークに誘われたからだろうか。
ああ、そうだよ。誘われたからだよ。
当人には言わないけどな。
本日の公的業務は、新人の見極めだ。
新顔MSパイロット2人に、マーキング・ボールを〈ザク〉で追い掛けさせ、どのような動きまで任せられるか見ている。
もちろん、あたしが普通よりちょっと、位置把握能力が高いことは伏せてる。
『イディアル、動きが鈍い、あと半秒を意識しろ』
『フィアース、おまえは逆に早い。イディアルとぶつかるぞ』
『……はい』『うぁい』
わかってるのか、わかってないのか、よくわからない返事が返る。
アイツラ、軍じゃないからって舐めてるな。正確にはあたしが舐められてんだが。
マイク・フィアースとパトリック・イディアルの2人は、面接を通った新顔だ。
地球のどこかで訓練を続けていたが、この度連邦軍をお役御免になったらしい。
元所属基地でも同僚とのこと。
フィアースは少々ひょろ長体型で、イディアルはリュウほどではないが大柄。
そういやコイツラ、リュウにはわりとヘコヘコしてたな。……わかり易い。
『フィアース、安易に〈ザク〉壊すと給料から差っ引くぞ、マニュピレーターたっかいんだぞっ』
『……』
な〜んか、舌打ちらしい音は聴こえたが、スルーする。
これほど左様に、フィアースはどこか反抗的で、イディアルは控えめ。なんかイディアルがフィアースのパシリみたいなことをしてるのも見たな。
デュークに目を掛けてくれって言われたけどなぁ、人材難じゃなければチェンジだな。
特にフィアース。
『では主任、お手本を見せていただけませんか? 宇宙(そら)に慣れてない私どものために……』
フィアースが言うや否や、イディアルが捕獲していたマーキング・ボールを明後日の方向に射出する。
コイツもどちらかと言えば大人しいんだが、なんだかなぁ。
あたしは無言で〈ガーベラ〉を機動させる。
太陽、地球、月、あたし、フィアース、イディアル、そしてマーキング・ボール。
空間の対応像を頭に描き、あたしは真っ直ぐにボールに向かう。
ボールと相対し、柔らかに掴む。
そして〈ガーベラ・ヘキサ〉を、ヤツラのいる方向に向け静止させた。
ボールを掴んだ右腕マニュピレーターをヒラヒラと振る。
『こんなもんだよ、見てたか? おい』
返事があるまで数秒掛かった。
馴致回航中の〈シービスケット〉に帰投した。
船内は本格的に稼働を始めたため、なかなか慌ただしい。
「で、どうだった?」
コクピット脇に来たリュウに訊かれる。
「一言で言えば、女だと舐められてる」
リュウは苦笑いした。
「ああ……オレには愛想いいぞ」
「そうなんだよなぁ……腹立つ」
「船長に報告するだろ? その間にモニターから見てたぞって感じで話してくるよ」
「……助かる」
気密区画に入って、スタウスキとハチソンに会う。
「姐さん、〈ガーベラ〉、なかなか良いですよ。ピーキーなのは加速関係かな」
そう言う彼の横で、ハチソンがうんうんと頷いた。
「あんたもそう思う? なら報告まとめて船長へ提出だな」
「え、オレも?」
『おまえも』
あたしとハチソンが同時に答えた。
パイロットスーツのまま、ブリッジに上がるシャフトに乗る。
コンソール上にマニュアルやら資料やらが散乱するブリッジを抜け、船長室に。
「入れ」
ドアを開け、あたしは船長室に入った。
「どうだった?」
デュークは簡潔に訊いた。
「チェンジ」
あたしも簡潔に答えた。
「……もっと詳しく」
彼は笑って促す。あ、この笑顔はまともに応えないとまずい。
「程度の差こそあれ、あたしには反抗的です。逆にリュウには従順です。典型的な男性主義と言いますか」
「……他には?」
「印象ですが、まさかアースノイド至上主義だったりしません?」
「うむ」
デュークは一拍置く。
「そうかも知れんし、違うかも知れん。ほら、アレ、わりと上官や周囲に染まってってのが多いじゃないか」
「……ですね」
「彼らがどうだろうか? って点では、大きく二つある。コレは主任クラスに共有しとくんだが」
「……はい?」
「普通にそういう連中の仲間だった。これなら場合によっては矯正可能だ。もう一つは、どこぞの破壊工作員だ」
「はあ? ウチ、初仕事前ですよね?」
「だから出鼻をくじいてやろうってことでは? オレたち、一部に恨まれてるだろ?」
だんだんデュークの口調が崩れてきた。
コレは、あたしにとっては危険信号だ。
「観測しながら、警戒します」
「……そうしてくれ」
船長室を出た。
ブリッジを抜け、控室までのシャフトに乗り、あたしは大きくため息をついた。
「あ〜〜。また出たよぉ」
あたしの観測対象はもう一つ増えたのだ。