機動戦士Gundam GQuuuuuuX Meeeeeantimes   作:伴都さん

8 / 16
7.

 

 

 〈シービスケット〉は月の近傍軌道に到着した。

 

 あたしとタムラさんは、ブリッジ窓際のハンドレールに身体を預け、じっと前を見ていた。

 

 

「……あれじゃないか?」

 タムラさんが指差す先に、航法灯らしき光が伺えた。

 

 やがて太陽光、月光、地球光の順にその艦体を照らしていく。

 現れたのは、何処かでよく見たような、艦の色違い。

 

 ジオンで〈ソドン〉と名付けられた、鹵獲された元〈ペガサス〉だ。

 

 

 〈ソドン〉から飛来した内火艇が、後部デッキに降り立つ。

 

 気密控室に待機したあたしたちは、モニターに写る、ノーマルスーツ姿の3人を見守る。

 

 彼らがエアロックに入ってしばらく後、控室の扉が開き、3人のジオン軍人が入室した。

 

 中央の背の高い、上品な髭を蓄えた男、その向かって右に秘書っぽい若い女性、左に武官らしき若い男性、なかなか面白い組み合わせだ。

 

 中央の男は、なんか青い。というか緑色?

 さらに仮面を着けていた。

 

 

 デュークが先に、緑色の男に握手を求めた。

「ようこそ〈シービスケット〉へ。

 船長のジェイクフォードです。

 後ろは内務主任のタムラ、整備主任のリュウ・ホセイ、戦術主任のシマです」

 

 緑色の男は握手を返し微笑んだ。仮面の下はわからないが、たぶん微笑んでいるのだろう。

 

「ジオン特務施設部隊、ベアティガーマン中佐です。よろしく」

「エグザベ・オリベ中尉です」

「コモリ・ハーコート少尉です」

 

 脇の2人も名乗る。

 男性がエグザベで、女性がコモリか。

 

 あたしたちも挨拶を返した。

 返したが。

 …………???

 …………ベアティガーマン、中佐?

 …………あれ?

 

 

 あたしの頭の中には、既にいくつもの《?》が舞散らかしていた。

 

 そんなあたしに中佐は話し掛ける。

「あなたがシマ・ハチジョウさんでしたか。こちらの船長さん共々、私はよく存じておりますよ」

 

「……中佐? 何処かでお会いしましたか?」

「いいえ」

 目元の見えない微笑みって、案外得体のしれないのだと、あたしは学んだ。

 

 

 

 一同は回転重力区画の作戦室に移った。7人が円卓を囲んで、互いに持ち寄った資料を拡げる。

 

「ガルマ氏の件、そちらで御存知なのは?」

 ベアティガーマン中佐が口火を切る。

「今はここにいる、4人だけです」

 デュークが答える。

 

「結構。行動に支障が出ない程度の社内情報拡散はお任せします」

「了解しました」

 

 

「では、改めて今回の依頼の中身をご説明します」

 ベアティガーマン中佐は切り出した。

 

「まず、ガルマ・ザビ氏は式への参加を見送られました。御本人が語るには、混乱を避けたい。とのこと。賢明な方です」

 流石はザビ家でもっとも温厚と言われたお坊ちゃんである。尊敬する。

 

「サビ家からはゼナ・ザビ氏が出席されます」

 妥当なところなんだろうと思う。

 

 

「ガルマ氏が出席なされる噂は、即位式を執り行うと公表された直後から出始めました。

 出元は私も把握していません。

 ただ、ザビ家を期待する人々は、未だ相当数いる状態です。そこで私は……」

 

 中佐は全員を見渡し、続けた。

「彼が本国に現れると知った者が、何をしでかすか、噂を利用し見てみることとしました」

 

 打ち合わせをしていたかのように、デュークは繋げた。

「何も起こらなければそれでよし。

 起こるなら、それぞれ対処する。と理解して構いませんか?」

 中佐は大きくゆっくりと頷いた。

 

 

「御社には、地球近傍から月近傍までの、ガルマ氏が乗っているとされる警護ポッドのバトンレースに参加していただきます。

 おそらく、地球近傍に上がるまでは何処も手出しはできません。

 ポッドがこの船に載ってからが本番の警戒範囲となります。時間としては短いですが、何かが起きた場合、御社の手腕に期待します」

 

 

 中佐の横で、コモリ・ハーコート少尉が議事録を記録している。

 顔には『面倒くさいことになりそうだな』と言いたげな表情が張り付いているが、不満を抱いてはいないようだ。

 もう慣れているみたい。

 

 中佐による主旨の説明が終わると、諸々の取り決めや打ち合わせを行う。コモリ少尉はどんどん忙しくなっていく。

 

 

 

「では、他に何か?」

 そう中佐が問うので、ちょうどいいから訊いてみた。

「今回のあたしたちへの依頼の出元はあなたですか?」

「そうです」

 中佐は間髪入れず答えた。

 

 

 いい加減、少尉が限界を迎えそうになった頃、話し合いは終わった。

 

「お疲れでしょう。食事を用意していますから、食堂へどうぞ」

「ああ、それはありがたい」

 

 2人は何やら小声で言葉を交わす。

《我々が仲が良いと、社内にいる〈誰か〉に見せつけねばなりませんから》

《そうですね。よくわかりますよ、船長》

 

 

 聞き取れないので、聞かないことにした。たぶん、この2人は気が合う。

 今はあたしの横に立つ、コモリ少尉を見やる。ああ、たぶん、あたしと彼女は今、同じ表情をしている。

 

 

 作戦室から通路に出て、タイミングを合わせ、さらに外側の固定通路に飛び乗った。

 

「アレは新型ですか?」

 回転シリンダーから外に出て、船内が見える窓のある固定通路。整備デッキが見える窓の下

(シリンダーは主船体外側にあるため、船内に向くのは天井である)

 に立つリュウに、〈ガーベラ〉を見たエグザベ・オリベ中尉が嬉しそうに話し掛けていた。

 

 世が世なら、連邦の新型機を見られはしない立場だ。

「MS好きなの?」

「僕の乗機は〈ギャン〉なんです」

 

「へえ。アレ、どんな具合?」

 世が世なら、ジオン軍人にそんなこと聞けやしない。

 

 

 食堂近くの扉が回ってきたので、再びシリンダーに乗り込んだ。

 

 食堂にはいつもより豪勢な料理が並んでいた。今回は珍しく、タムラさんの手料理も付いていた。

 食事は和やかに終わり、解散の時間となる。

 

 

「あ、シマさん、シマさん」

 コモリ少尉が、気密控室に入る前に愛想よく近づいて来た。

 

「中佐は変わったヒトですから、今後も何かあったとしても、あまり気にしないでください」

「ありがとう。気にはしないが気をつけとく」

 少尉はウインクして控室に入っていった。

 

 

 入れ替わりに。

 先に控室に入っていたベアティガーマン中佐が、ちょっとした荷物を抱え、戻って来た。

 

「シマ・ハチジョウさん、コレを」

「……なんですか、コレ?」

 

「まぁ、土産物ですね。あなたに渡すのが一番良いと思います」

「……開けてもいいですか?」

「どうぞ」

 

 

 箱を開けると、起動音が聴こえた。

 中にいたヤツは、点灯した目をあたしに向け、棒読みで言った。

 

「ハロ、ハロ、ショキセッテイヲ、シヤガレクダサイ」

 

 

 早速、気にはしないが気をつけとく事例が現れた。

「……なんですか? コレは」

 

 中佐はたぶん微笑みながら言う。

「マスコットロボットのハロです。御存知ありませんか?

 教育すればMSのナビもしてくれるかもしれない、優れモノです」

 

 してくれるかもしれないって、なんだよ。

 

 

「ソコノカタ、ハヤクセッテイシヤガレクダサイ」

 

 こういったモノを押し付けられるのは、猫のピート以来だ。いや、ピートは愛猫になったけれども。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。