機動戦士Gundam GQuuuuuuX Meeeeeantimes   作:伴都さん

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8.

 

 

 標準カレンダー、業務当日の前夜。

 あたしはデュークの私室の前にいた。

 

 しおらしげにトントンと軽くドアを叩き、返事を待って入室。

 

「……どうだ?」

「後ろから誰かに見られたらどうすんのよ!」

 

 これからデュークと密会だ。後ろから誰かに見られていたかも知れないが、ま、いいか。

 …………。

 

 

 

 んなわけないだろ。

 ドアを閉じると、既に別ルートから来ていたタムラさんとリュウがいる。

 

タムラさんはお茶を啜り、リュウは若干ニヤっとしてあたしを見た。

 

 

 席に着こうとした時、ブリッジ当直のグエンから連絡。

『船長、今さっきフィアースがトイレに入りました』

 

「リサイクルする方、外に出す方、どっちだ?」

『外部排出式の方です』

 

「了解した。引き続き当直頼む」

『了解です』

 

 

 デュークは言った。

「さあ、鬼が出るか蛇が出るか、話し合おうか?」

 業務前、最後の幹部会議が始まった。

 

 

 

 全体ミーティングを終わらせ、あたしたちは配置に着き始めた。

 

 MS、搭載機パイロット組は、発進デッキ脇のパイロット控室で最後のブリーフィングだ。

 

「内火艇他、搭載機はひとまず待機だ。

 但しいつでも発進可能状態を保て。

 MSは出動可能全機出る。

 

 フォワードはスタウスキ・ハチソン組、哨戒が主になる。

 バックはあたしとフィアース・イディアル組、ガルマ氏の乗る警護ポッドをシャトルから受け取り、護衛しながら、この〈シービスケット〉へ導く。

 

 ポッド着船を見届けたら、全機帰投」

 

 あたしはここにいる全員を見渡す。

「ガルマ氏は〈有名人〉だ。何も無ければいいが、あるとすれば、まずこの警護ポッドを迎えるタイミングが第一となる。気を引き締めてくれ」

 

 

「はい、主任」

「なんだ、イディアル?」

 

 ブリーフィングがミーティングになるが許す。

 

「全体ミーティングで出ない話題だったんですが、何故シャトルや警護ポッドが狙撃される可能性に触れなかったんですか?」

「それはどのタイミングだ?」

「上ってくる途中です」

「上から狙えば一発ってこと?」

「はい」

 

 ソレ、固定標的の話だよ。高速移動標的は簡単に説明できないんだがな。よし、ケムに巻こう。

(固定標的の話でも、今度は軌道上の自分が早過ぎたりするのだが)

 

 

「簡単に言うとな、話題に出ないくらい可能性が低いんだよ」

「……はい?」

 

 ここで第一宇宙速度だの、それに到達するまでの加速だの、交差軌道だのに触れている暇は無い。

 

「あ〜、今おまえは地球近辺の衛星軌道で地球の周りを回っている。さて、下に降りるにはどうする?」

「下に向かって加速します」

 

「それだと上に向かう」

「はい?」

 

「そんな感じでな、上ってくるシャトルとMSでは速度の感覚が違うんだよ。

 今はそういうコトにしとけ。

 興味を持ったら後でその手の本を読め」

 

「……了解しました」

「誘導ミサイルみたいなの、使えれば話は別だが、ミノフスキー粒子のせいで使えない。この話は終わり」

 

 

 あたしはブリーフィングに戻す。

「敵がいたとする。ガルマ氏に何かしたいなら、その機会は三つある」

 

 手元の紙にマーカーを使う。

 

「警護ポッドを受け取る時、月近傍への移動中、警護ポッドを渡す時だ。

 移動中も、実は加速、巡航、減速とシークエンスは別れる。

 で、仕掛ける相手にとってやり易いのが、移動中以外の二つだ。

 つまり、この後が第一のチェックポイントだ。OK?」

『了解しました!』

 

 ようやく全員の声が揃う。新顔が揃ってくれるまでちょっと時間掛かったな。

 

 

「それでは各員、自機に乗り込め、整備スタッフに機体の状態を訊き、チェックリストとの照合を忘れるな」

 

 主任の仕事は一区切りである。

「では解散、ちゃんと戻ってこい!!」

 

 

 

 〈ガーベラ〉のコクピット、各種コンソールの灯が点き、シート足元脇に、ハロが自力で自分を固定する。

 

 やって来たリュウが言う。

「結局、ソイツは載せるんだな」

 

「ベアティガーマン中佐がナビができるかもしれないなんて言うからさ」

「かもしれないはダメだろ……」

 

「シンパイスルナ、リュウ」

 渋い表情で、あたしたち2人は顔を見合わせた。

 

 

「機体はオールグリーン。ほら、チェックリスト」

「ありがと! まだ稼動データ要るよね?」

 

「なるべく良いのを頼む。で、どうだい?」

「イディアルが予想より真面目なのがわかったくらいかな?」

「なんだよ、ソレ」

「詳しくは後で。じゃ、行ってくるね」

「了解、無事戻ってこい」

 

 

 

『シマ・ハチジョウ、〈ガーベラ〉出る!』

 二組の発進を見届け、あたしは最後に船を出た。

 

 直後ブリッジより入電。

『シマ、よろしく頼む』

『任せといて、船長』

 

 電波状況によってはこれが最後の交信だ。

 

 

 シャトルとの交信後、分離された警護ポッドに寄り添う。

 ポッドを操縦するのはエグザベ・オリベ中尉だ。

 

『シマさん、よろしくお願いします』

『よろしく。その呼ばれ方、ちょっと新鮮』

『……?。そういえば、何故シマさんは姐さんと呼ばれてるんです?』

『…………〈シービスケット〉に着いたら話すよ』

 

(さて、フィアースはどんな情報を流したのかな?)

 あたしはそっと、意識を集中させた。

 

 

 

「あ〜、緊張した」

 

 ……いや、まだだった。

 現時点での結論。とりあえず何も無し。

 

 無事〈シービスケット〉に警護ポッドを収容。ガルマ氏はエグザベ君が対応するとして、〈シービスケット〉は加速に入った。

 

 今回は経済軌道ではないため、急加速、高速巡航、急制動の流れだが、この過程で仕掛ける連中がいるとしたら、手練とみて良い。

 したがって、あたしの胃が痛くなるとしたら、この間だ。約20時間。

 

 

「ガルマ様とやらは、挨拶無しですか?」

 不服そうにフィアースが言う。

 

「VIPだからこれが一番いいんだよ」

 ダヴィ・スタウスキが突っ込む。

 

「そうそう。場合によってはあのヒト、ジオン公王だよ」

 ケリィ・ハチソンが同調。

 

「エグザベ君を通して、コメントもらったよ。……『苦労掛けて申し訳ない』って。腰低い人だわ」

 あたしは適当に作って言った。

 

 この時点で、ダヴィとケリィには内情通達済み。

 

 

 機体整備の擦り合せに、リュウのもとに出向く。整備課オフィスに、ちょっと力の抜けたリュウがいた。

 

「……気ぃ抜け過ぎ」

「お互い様だろ? 気が張ると疲れるんだよ」

「今後、仕事が続けばこの繰り返しだよ?」

「……言えてる」

 

 一瞬でシュッとしたリュウと段取りを確認してるところに、タムラさんが無重量状態の中、器用に密閉マグに入った飲み物を持ってきてくれる。

 

「二人ともホットコーヒーでよかったね?」

『助かります』

 

 

 あたしは懇願する。

「タムラさん、全部終わったら何か作って」

「わかったわかった。……何がいい?」

 

「……とりあえずハンバーグに。……それから」

「制動に入るまでがリクエスト期限だよ」

「……はい」

 

 

 オフィスに3人以外誰もいないのを確認して、小声で話す。

《……で、ガルマ氏についてはそう言っといた》

 

《……船長とエグザベ君に共有ですな》

《全部把握してるのは、ブリッジ組とオレたちと……》

《パイロットではスタウスキとハチソンだよ》

 

《エグザベ君と言えば、先程ガルマ氏用の食事を渡したよ》

《……ソレ、誰が食べるの?》

 

《彼も気が張ってるだろうから、構わないだろう?》

《いいなあ……》

 リュウとあたしが同時に反応した。

 

《おいおい、さっきリクエストした人が何言ってんの?》

 

 

 船長室でデュークに諸々の報告。

「……わかった。君等は休め。パイロット全員、重力区画でいいぞ。どちらにせよ仮眠待機だからな」

「……ですよね〜」

 

 

 

 大体中間地点、ルウムの脇を過ぎる。

 

 遥か遠くに淡い光が見える。何対かのスペースコロニー。

 

 連邦の公的な復興計画が進まないから、有志か誰かが破損の少ないコロニーを改修したり、使えるゾーンを組み合わしてコロニーをでっち上げたそうな。

 

 

 

 制動に移る直前に、タムラさんにフライドチキンを追加注文した。

 結局ここまでも何も無し。

 

 後は再び警護ポッドが発進して、〈ソドン〉以下送迎艦隊に渡すのみ。

 ポイントは絞り込めたのだろうか?

 

 

 急制動開始。

 あたしたちはMSコクピットで待機。

 

 制動後は〈シービスケット〉が目的地まで最も遅い巡航速度で進む行程。何か仕掛けるなら、最後のやり易い時間。

 

 

 ジオン艦隊との会合ポイントが近づく。

 手順は前回と大体同じ。

 

 スタウスキ・ハチソン組が先発、エグザベ君の警護ポッドが発進、あたしと新顔2人組が続いた。

 

 警護ポッドはあたしたちのやや前方にいる。

 あたしたちはすぐ後方で哨戒だ。

 

 

 元々の巡航速度にMSの分が加わり、徐々に〈シービスケット〉から離れた。

 〈ソドン〉からのビーコンはまだだ。

 

 ふと、フィアースの〈ザク〉が少々前に出る。いかにもさり気なく。

 あたしは頭の中で自前のカウントを叩く。どうだ? 来るのか?

 

 フィアースの〈ザク〉の背部スラスターが明るくなった瞬間、あたしは叫んだ。

 

「フィアース、持ち場を離れるな!」

 返事は無い。ガン無視かよ。

「フィアース!!」

 

 

「主任、悪いですが、動かないでください」

 あたしの〈ガーベラ〉の前にイディアルの〈ザク〉が塞がる。マシンガンの銃口があたしに向く。

 

「フィアース、さっさと行け!」

 どうやら本当のパシリはフィアースの方だったようだ。

 

 

 

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