というのは割と思いつきますが、その展開になるまでの過程は
行き当たりばったりです。
気ままな小説ですが、読んでやって下さい。
「♪~♪~」
「フフフ・・・呑気に鼻歌なんか歌っちゃって、私達が見ているとも知らずに」
「レミリアさん?なんかさっきからテンションおかしくありません?」
調理場で咲夜は食器を洗っていた。
そして、レミリアと想夢はそれを影からこっそりと見ていた。
黒いサングラスをかけて、黒いスーツを着て。
「こういうのは気分が大事なのよ!こんなこともあろうかと偶然人里で見つけた
スーツセット買っておいて正解だったわ!」
小声で話すレミリアに、
「いやどう考えてもこれ悪目立ちだと思いますよ?」
小声で返す想夢。
「そう?貴方がスーツを着て紅魔館にいると誰が見ても立派な執事よ?
ウチで働いてみない?可愛い女の子いっぱいいるわよ?」
「途中でキャバクラの呼び込みに変わってません?
お誘いは嬉しいですが、ここで働くのはまだ遠慮しておきます」
「そう、残念ね・・・次に期待することにするわ」
「そうして下さい、今は咲夜さんの動きに注意しましょう」
レミリアと想夢が話している内に、咲夜は洗い物を終えたようだ。
「次は・・・屋敷の掃除ね」
廊下にて、曲がり角から2人は咲夜を見ていた。
時々すれ違うメイド服の要請に不審な者を見るような目を向けられるのは
想夢の気のせいだと信じたい。
「掃除ですか・・・屋敷が広いだけに、後ろをこっそりついていくのも苦労しそうですね」
咲夜の手には室内掃除用の箒が握られている。
「さて、それでは始めましょうか」
咲夜が動きだす。
次の瞬間には、咲夜の姿は消えており、廊下は心なしかさっきよりも綺麗になったように感じる。
「あちゃー、失敗だったかしら・・・」
「そういえば咲夜さんって時間操れるんでしたよね、
そりゃ屋敷全体の掃除なんて時間かかりそうな仕事に能力使わないわけがないですよね」
「うぐぐ・・・とにかく次!次の仕事を覗くわよ!」
「レミリアさん?ヤケクソになってません?」
レミリアは頭を抱えて目を×の字にしながら叫んだ。
「いたわ、咲夜よ」
「洗濯物を干してますね」
紅魔館の庭で咲夜は洗濯物を干していた。
「時間を止めたら洗濯物も乾かないってことかしら・・・」
「いや、それだと掃除だって水拭きした後乾かないですよ?
気分的な問題なんじゃないですかね?」
「♪~♪~」
「歌ってるわ」
「歌ってますね」
「さっきと同じ曲ね」
「さっきと同じ曲ですね」
咲夜が洗濯物を干し終えて屋敷内に戻った後、
「あれ?見失ったわ?」
「どこ行ったんでしょう?」
2人は咲夜を見失っていた。
「上手くいかないものねえ・・・」
「何がですか?」
「そりゃあ・・・って想夢貴方分かって聞いてるでしょう」
レミリアが想夢にジト目を向ける。
「え?いや僕何も言ってませんよ?」
「え?」
「え?」
2人は顔を見合わせる。
「あの、どうかいたしました?」
「うわあああああああああああああああ!?」
「へにゃああああああああああああああ!?」
2人が後ろを向くとそこには咲夜がいた。
「お、落ち着いて下さい!あとお嬢様面白い悲鳴ですね」
「咲夜さんいつからそこに!?あとレミリアさんの悲鳴は確かに面白かったです」
「な、なによう2人して!?動揺してるのか落ち着いてるのかどっちよう!?」
一通り漫才をした後、
「所で、何が上手くいかないのですか?」
「あ、えーと・・・」
咲夜が軌道を修正した。
「お2人ともスーツを着ていますが、それと何か関係が?」
「えっとー・・・」
咲夜の問いにレミリアは答えられない。
冷や汗を流しながら目を逸らす様子がとても露骨に「ごまかそうとしている感」を出している。
「使用人の気持ちになってみようというレミリアさんの思いつきですよ」
見かねた想夢は自分から切り出すことにした。
想夢にもごまかせるか分からなかったが、若干ヤケクソだったのかもしれない。
少なくとも冷や汗垂れ流しでダメになっているレミリアよりは、
自分が動いた方がいいと思ったのだろう。
「使用人の気持ち・・・ですか?」
「ええ、普段から紅魔館では使用人達が働いているでしょう?
それでレミリアさんが『そういえば使用人達ってどんな気持ちで仕事してるのかしら?』と
呟きまして、それを確かめるためにまずは形から入ろうとスーツを着て使用人達が仕事をしている姿を
観察してたんです」
「そうなんですか?」
「はい!ねえ?レミリアさん?」
「うぇい!?え、ええ!そうなの!」
「はあ・・・」
咲夜は終始「何を言っているんだろう、頭大丈夫?」とでも言いたげな目をしていた。
想夢とレミリアは冷や汗を書きながら無理矢理笑顔を作るしかなかった。
「まあ、いいです。
そろそろお昼の時間になりますので、お二人共食堂にお集まり下さい」
そう言って咲夜は去って行った。
「バレずに済んだ・・・のかしら?」
「恥もかいた気がしますけどね・・・」
・・・・・・・・・
朝と同じく、昼食も想夢とレミリアの2人しかいなかった。
「やっぱり2人だと食堂もがらんとしてますねえ・・・」
「まあウチは夜型が多いからね、夕食にはそれなりに数が揃うと思うから
楽しみにしてなさい」
「分かりました。それにしてもこれからどうしましょう?
1日目の午前中ですでに咲夜さんに見つかっちゃいましたよ?」
「午後はやめた方がいいわねえ・・・さすがにバレそうだし、
今日はお開きにしてまた明日様子を見ましょう」
「そうですね・・・あ、スーツはやっぱり止めましょう、逆に怪しまれます」
「そうね、よくよく考えたら紅魔館で真っ黒なスーツは逆に目立っちゃうわね」
午前中にノリノリにでスーツに着替えたレミリアを見ていた想夢は、
「できれば最初からそれに気付いて欲しかった」
とは言えなかった。
昼食の後、想夢は庭に出ていた。
なんとなく陽の光を浴びたくなったのだ。服は元に戻した。
「僕1人じゃあいくら調べた所で意味がない・・・どうするべきか・・・」
レミリアと共に咲夜を尾行しても、知ることができるのは現在の咲夜の姿のみである。
想夢は知らないのだ。
レミリアが知っている咲夜も、他の紅魔館の住人達が知っている咲夜も、
昔の咲夜のことは何もしらない。
それは咲夜に限ったことではない。咲夜どころか、この幻想郷のことはほとんど知らない。
レミリアに咲夜の様子がおかしい原因を調べるから手伝ってくれと頼まれても
幻想郷にやって来たばかりの新参者の想夢には方法は何も思いつかなかった。
そうして想夢が悩んでいると、
「悩み事ですか?」
声をかけられた。
気が付くと、想夢の横には美鈴がいた。
「ああ美鈴さん、こんにちは」
「はいこんにちは、何かうんうん唸ってましたけどどうかしましました?」
「あれ?そんな風に見えました?」
「はい、それはもう露骨な位に!『どうしよう』とか『どうする』とか言っているのも
ばっちり聞こえてきました!」
「うぇ!?本当ですか!?やらかしたなあ・・・恥ずかしい・・・」
「まあ、気を落とさないで下さい!悩み事があるなら相談に乗りますから!」
元気な子だと、想夢は思う。
その元気な様子が、想夢の鬱屈とした考えを和らげてくれた。
「ちょっと質問してもいいですか?」
「はい!何でも聞いて下さい!」
「レミリアさんってどんな人なんですか?」
「お嬢様ですか?そうですねえ・・・チャレンジャーですね」
「チャレンジャー?」
「はい、『私は紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ!』と言っては
何でも出来るかのように振る舞うんです。
実際出来るのか分からないのにプライドが逃げることを許さないのか、『出来る』って
言いきっちゃうんですよね。
それで挑戦して失敗することも多々あります。
そこだけ聞くと無駄にプライドが高いだけの自信家に聞こえるでしょう?
でも、お嬢様は『出来る』と言ったことからは絶対に逃げません。
出来るように努力もするし失敗しても泣き言は絶対に言いません。
そうして『次こそは』ってまた挑戦するんです。
そうやって諦めない努力の人なんです。
吸血鬼として元々のスペックは高いのに決して驕らず、決して自惚れず、努力する。
お嬢様のそんな姿に感動して、私は紅魔館の住人になったんです」
「なるほど・・・やっぱりレミリアさんって凄いんですね」
「はい!それは勿論!」
美鈴は自分が褒められているかのように嬉しそうだ。
「それじゃあ、咲夜さんってどんな人なんですか?」
「咲夜さんですか?咲夜さんはですねえ、お嬢様とは反対のタイプですね。
お嬢様は吸血鬼として人間よりも高い身体能力を持っていますが、その上で努力します。
咲夜さんは人間なので妖怪に比べると身体能力の面で劣っています。
ですが、自身の能力と常に冷静に対処する理性的なスタイルを崩さないことで、
妖怪相手にも圧倒的な力の差を見せつけます。
お嬢様が出来ない強者なら咲夜さんは出来る弱者です。
自他共に認める『完全で瀟洒な従者』なんです。
まあ、時々悪戯のようなことをしているようなので絶対服従ってワケでは
ないようですが・・・」
「あ、やっぱりそれなりにくだけた関係なんですね、レミリアさんと咲夜さん」
「でも、最近はなんだか調子が悪いような・・・」
「それって、どういうことですか?」
「想夢さんも見てたと思いますが、昨日咲夜さんが私にナイフを刺そうと
してきたでしょう?アレ本来なら咲夜さんが外すことなんてありえないんです。
私なんてもう何回もナイフを頭に刺されてるんです!
その間1度も外したことなんてありません!
刺された回数が3ケタ超えてからは数えるのも面倒になりましたとも!」
なんでそんなに頭を刺されて死んでないのかとかそんなに刺される位
仕事中に寝てるんですかなどとは、聞ける雰囲気ではなかった。
念の為にもう一度。そんな雰囲気ではなかった!
「なんだか最近はいつもの笑顔もなんだか仮面をつけたみたいに不自然になる時があるし、
やっぱりどこか具合が悪いんじゃ・・・」
「ちょっと待って下さい、咲夜さんの笑い方が不自然なのって時々なんですか?」
「え?はい、そうですよ?」
「分かりました、お話ありがとうございます」
想夢は美鈴と別れ、紅魔館の中に入って行った。
・・・・・・・・・
「想夢様」
屋敷の中で咲夜に呼び止められた。
「はい、何でしょう?」
「もうすぐ夕食が出来上がりますので食堂までお集まり下さい」
「分かりました」
「それと、夕食後に少々時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「ああ、はい、分かりました」
「それでは後程」
咲夜は去って行った。
食堂には朝、昼とは違いレミリアの他にフラン、美鈴、先程会った咲夜の姿もあった。
「ああ、貴方がレミィの呼んだお客さん?」
紫色の神をしたどこか物静かな印象の少女が話しかけてきた。
「レミィ・・・レミリアの友人のパチュリー・ノーレッジよ、よろしく」
「は、博麗想夢です。よろしくお願いします」
静かで暗そうな印象に気圧されそうになった。
「パチェは普段は紅魔館地下の大図書館にいるわ。用があったらそこに行きなさい。
パチェは優秀な魔法使いだから、魔法に関することなら何でも答えてくれるわよ」
レミリアは友人を自慢するように笑う。
「何でもは答えられない、知ってることだけ」
パチュリーと名乗った少女は興味なさそうに応じる。
「・・・アレンジを加えても、そのセリフは作品違いです」
想夢は、ツッコミを我慢出来なかった。
夕食の後、想夢は紅魔館の地下のとある一室に来ていた。
咲夜にこの部屋で待っててくれと言われたのだ。
「お待たせしました」
咲夜がドアを開けて入ってくる。
「それで、話というのは?」
想夢が話しかけると、咲夜は苦しそうな顔をする。
「お願いしたいことが、あるんです」
思えば、咲夜が営業スマイル以外の、ちゃんとした表情を見るのは初めてかもしれない。
「・・・」
「・・・」
沈黙が流れる。
話しにくいことなのだろうか。
やがて、意を決したように、咲夜が口を開く。
「私を、殺してくれませんか?」
「・・・え?」
時間が止まった様な感覚だった。
聞いた言葉が信じられなかった。
質の悪い冗談かと思った。
それでも、
「どういうことですか?」
詳しく話を聞くべきだと思ってしまったのは、
それだけ目の前にいる咲夜が見ていられない程ひどい顔をしていたからだろう。
と、想夢は思うことにした。
「お嬢様と想夢様が今日私のことを尾行していたのには気付いていました」
「・・・やっぱり、バレてました?」
「はい、あれだけ目立つ恰好してれば」
そう言って咲夜はクスリと笑う。
ただの笑顔なのに今まで仮面を見続けてきたせいか、とても可愛らしく思えた。
「話、聞いてもらえますか?」
「はい、勿論」
仮面を外した従者が、語りだす。