まだまだ安定はしません。
これが行き当たりばったりクオリティの真骨頂。
そして、主人公の設定になんだかブレが生じてきた気が・・・。
主人公として軸がぶれている。
ぶれぶれぶれぶれぶれぶれぶれぶれ・・・
「私を殺してほしいと言いましたが、正確には私の心を殺してほしいのです」
「心・・・?」
咲夜は真剣な表情で語る。
「想夢様は『紅魔館の吸血鬼の妹は気がふれている』という言葉を聞いたことがありますか?
フランドール様は自分では抑えられない破壊衝動を持っており、
時折狂ったように周囲の物を手当たり次第に破壊するという意味で言われた言葉なんですが、
実際はフランドール様の能力と世間知らずが誇張されて噂になってしまったのです。
生まれてからほとんどの時間を1人で孤独に過ごしてきたフランドール様に
常識やマナーなどを教えてくれる人はいませんでした。
だから手加減するということを知らないでいました。
本人にはただの遊び、じゃれ合いのつもりでも吸血鬼に全力で襲われる方は無事では済みません。
そのうえ『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を持っているので
その能力が人々に知られた結果人々から『狂っている』と思われるようになりました。
以前レミリアお嬢様が異変を起こし、
異変解決のために霊夢と魔理沙が紅魔館に乗り込んできた際に
フランドール様とも会いました。
その時に何があったのか、私はその場にいなかったので分かりませんが
それ以来フランドール様は人が変わったように常識的になり、紅魔館の他の住人達とも
普通に話すようになりました。
精神が幼いだけでもともとは冷静に考えるタイプなので誰かに教わったことで
すぐに常識を覚え実践しようとしていました」
「なぜ、いきなりそのような話を?」
「私は先程、私の心を殺してほしいと言いましたね?
私の殺してほしい心というのは、破壊衝動なんです」
「それって・・・」
「フランドール様のものとは違うと思いますが破壊衝動です。
1ヶ月程前からですかね・・・時々理由もなく暴れたくなるんです。
なんとなく周りのものを壊してしまいたくなるんです。
まるで自分とは違う誰かが頭の中にいるみたいに『今手に持っている皿を床に叩きつけたら
周りはどんな顔をして私を見るんだろう』、『今目の前の彼女をいきなり殴りつけたら彼女は
どんな表情を見せるのだろう』といつの間にか考えてしまうんです」
「なら、昨日美鈴さんの頭をナイフで刺そうとしたのも・・・」
「あ、それは破壊衝動とは関係ないです」
「あ、はい・・・」
想夢は微妙な顔をしたが、咲夜は構わず続ける。
「いつの間にか恐ろしいことを考えてしまっている自分に気が付き自分への嫌悪感で
吐きそうになったこともありました。
なんとかして破壊衝動を抑えようと、自分で心を殺そうとしました。
なるべく感情を表に出さないように、それでもメイドとして周りには感情があるように
見せるために」
「もしかして、あの営業スマイル・・・」
「やっぱり不自然でしたよね?私なりに心を殺そうとした結果です」
咲夜は困った様に笑う。
「それで、私にご協力願えませんか?」
「なぜ、僕なんです?紅魔館の人達には話しにくい内容だとは思います。
ですが、それでも霊夢や魔理沙の方が信用できるでしょう?」
「想夢様にお願いするのは、私と想夢様の関係性が薄いからです。
想夢様なら情に流されず私に協力してくれると思いました。
それに、私の破壊衝動を殺してもらうには、私の破壊衝動に対抗できる人でないといけません。
博麗の巫女だった想夢様なら実力も問題ないかと」
「待ってください。僕は確かに博麗の巫女でしたけど僕が担当したのはほんの僅かな間だけだし
なにより僕は歴代最弱の博麗の巫女ですよ?咲夜さんの相手が務まるかどうか・・・」
「博麗の巫女としては最弱だったとしても、この幻想郷全体で見て弱いとは限りません。
実際に貴方はちゃんと博麗の巫女として務めたのだから」
咲夜は引かない。引く気がない。
「・・・考える時間をください。明日にはちゃんと返事します」
想夢は返事を先延ばしにするのが精一杯だった。
「・・・分かりました。お返事、期待しています。
あと、このことはお嬢様には秘密で・・・」
咲夜はまるですがる様な目をしていた。
・・・・・・・・・
「そーうーむー!」
咲夜と別れ、地下の廊下を歩いていたらフランに出会った。
「フラン?どうした?」
「それはこっちのセリフだよ、なんか難しい顔してるよ?
例えるなら2人の内どっちか1人を見殺しにしないともう1人を助けられない状況に
陥ったみたいな」
「えらく具体的な例えだな・・・あながち間違ってもいないけどさ」
「おお、当てずっぽうでも言ってみるもんだね」
「当てずっぽうかよ・・・」
「それで?なんか悩みでもあるの?」
「あー・・・悩みっていうかなんていうか・・・」
「言ってみなー?誰かに聞いてもらうだけでもスッキリするもんだよ?」
そういうタイプの悩みじゃないんだが・・・そう思いながらも想夢はフランに聞いてみる。
「フラン、咲夜のことなんだけど・・・」
「咲夜?想夢咲夜に一目惚れでもしたの?
いやー私は脈ナシだと思うよ?想夢に向ける笑顔完全に営業スマイルだったもん」
「いやそういう話じゃなくて・・・フランは何か感じてないか?
レミリアさんも美鈴さんも咲夜さんの様子がちょっとおかしいって思ってる」
「あ、意外とマジメそうな話だった」
意外だと言われてしまった。自分はそんなにシリアスから離れた似人間だろうか?
確かに幻想郷にきてからわりと漫才のような会話が増えた気がする。
だが、自分は基本的にツッコミ役だったはずだ。
周りがボケに走るから自分がツッコミをしているだけだ。
つまり、自分がシリアスとは程遠い存在だと思われているのは周りが悪い。
昨日知り合ったばかりのフランが自分のことをシリアスキャラではないと言うのだから
周りのボケに走る酷さは相当のものなのだろう・・・。
と、本来の目的とは脱線してどんどん泥沼にはまっていく想夢の思考は、
フランの言葉で一気に現実に戻される。
「そーむー!きーいーてーるー!?」
「あ?ああ・・・」
「想夢から聞いてきたんだからしっかりしてよね?
確かに最近の咲夜はちょっと様子がおかしいと思うけどって話!」
「そ、そうか、分かった。
・・・それで、今から1ヶ月程前に紅魔館で何かなかったか?」
想夢がここで「咲夜さんに」ではなく「紅魔館に」と言ったのは、
単純に問題が咲夜個人のものだとはまだ断言できなかったからである。
フランは少しの間黙って考え、やがて思い出したように、
「そういえばお姉様が想夢とは別の外来人を屋敷に招待したのが
大体1ヶ月前ぐらいだったと思う」
「別の外来人?」
「そ、背の高い女性の吸血鬼。
1ヶ月ぐらい前にひょっこり現れて、そのまま幻想郷に住み着いちゃったのがいるの」
予想外の収穫だ。
レミリア、フラン、美鈴、パチュリーと、紅魔館の主要なメンバーには会った。
紅魔館外部にも関係者がいるとは思わなかった。
「ありがとう、明日早速会いに行ってみる」
「どういたしまして」
この日のフランとの会話はあとはただの雑談となった。
・・・・・・・・・
「1ヶ月前に招待した吸血鬼?」
「はい、その人の情報が欲しいのですが」
翌日、朝食の後レミリアに呼び出され、レミリアの私室にて
「第1回、咲夜の秘密を暴く会議(レミリア命名)」という
悪質パパラッチのような会議をたった2人で開いた際に、
想夢は昨日フランから聞いた話についてレミリアに質問していた。
「そういえばそんなのいたわねえ、普通に幻想郷に馴染んでたから忘れてたわ。
一応アイツも最近幻想入りした外来人なのよね・・・」
「わ、忘れてたんですか・・・」
「まあ、外来人なんて基本さっさと外の世界に帰るか、さっさと定着するか、
さっさと妖怪のエサになるかのどれかだからねえ」
「な、なるほど」
「それで、その外来人だったわね。
確か、名前はシェルリオ・ワインレッド。
愛称はシェリーだって自分で言ってたわね、愛称なんてキャラじゃないくせに・・・。
それで、フランの言った通り彼女は吸血鬼で外来人。
もともと『外来人』っていうのは幻想郷に
だから外の世界で自身の存在を信じる人がほとんどいなくなって
外の世界で存在を保てなくなった・・・つまり世界に忘れられたような、
想夢は存在としては3代目の博麗の巫女が今の幻想郷にタイムスリップしたようなもの
・・・でいいのかしら?
本来なら外来人とは呼ばないんだけど、外来人として話が広まってしまったから
もう仕方がないわね。
シェルリオは偶然幻想郷に入り込んだ外来人で、そのまま幻想郷に住み着いたわ。
紅魔館からちょっと離れた場所に『魔法の森』ってのがあって、そこに住んでるそうよ」
「魔法の森、ですか・・・」
「シェルリオ本人から直接話を聞くのがいいかもね、
私が外にでると咲夜まで着いてくることになっちゃうから
想夢1人で行くことになっちゃうけど、地図は渡してあげるから頑張って?」
「はい」
昨日み比べると随分とマトモな会話だと想夢は思った。
「・・・何か失礼なこと考えてない?」
「・・・気のせいでは?」
運命を操る程度の能力は未来だけでなく心まで見透かすのだろうか?
・・・・・・・・・
吸血鬼は基の能力が高い代わりに弱点が多い。
十字架、銀製品、流れる水など。
その中の1つに「日光」がある。
魔法の森に来て、想夢は何故シェルリオが魔法の森を選んだのか少し分かった気がした。
魔法の森は全体的に薄暗い。
木々の枝葉が上手い具合に空を覆い隠すように生えているのだ。
森の中を探索するように歩いていると、1件の小屋を見つけた。
森の中が暗いからだろう、小屋の中に明かりがついているのが窓の外から見える。
「すいませーん!」
小屋の扉をノックして声をかける。
ここがシェルリオの家なら万々歳だし、違うなら違うで案内してもらえるかもしれない。
「はいはい、どちら様?」
小屋の扉が開く。
小屋の中から出てきたのは、紅い目に赤黒い髪をした長身の女性だった。
着ている服は人里でもよく見かける一般的な物だったが、少々汚れていた。
腰まである長さの髪も少しボサボサしている。
なんというか、全身から「ダメな大人」といった雰囲気が出ている。
背中から生えた1対の翼は、蝙蝠の翼の骨格を複数の矢印で作ったかのようだった。
「おや、初めて見る顔だね?」
「あ、はい初めまして。博麗想夢といいます」
「ああ、1週間位前に幻想入りした外来人さんか。
私の名前はシェルリオ・ワインレッド、1ヶ月位前に幻想入りした外来人さ。
ま、外来人同士仲良くしようじゃないか」
シェルリオと名乗った女性は手を前に出す。
「初対面が仲良くなるための最初のきっかけは自己紹介と握手だよ」
「よ、よろしくお願いします」
想夢も手を出しお互いに手を握る。
服や髪に対して、肌は随分と綺麗だった。
「今日は挨拶回りといったところかい?」
「いえ、レミリアさんに聞いてシェルリオさんに会いに来たんです」
「レミリア嬢ちゃん?君は紅魔館に住んでいるのかい?」
「いえ、紅魔館には少しの間お世話になっているだけで基本は博麗神社です」
「おお、博麗神社かあ。
そりゃそうか、噂で聞いたけど君も霊夢ちゃんと同じ博麗の巫女だもんね。
それで私に会いに来たってどういうこと?初対面だしナンパってワケじゃないよね?」
「ナンパではありませんよ、ちょっと聞きたいことがあるんです。
十六夜咲夜という女性をしっていますね?」
「咲夜ちゃん?知ってるよ?レミリア嬢ちゃんの従者のメイドちゃんでしょ?」
「彼女について貴方に聞きたいことがあるんです」
「・・・ふーん?」
シェルリオの目が細まる。瞳の紅がギラリと光った気がした。
そのまま小屋の中に入って行き、こちらを向いて手招きする。
「おいで、紅茶は出せないけど麦茶ならあったと思うから。
中に入ってゆっくりお話ししようよ?」
怪しく、薄く笑う彼女の顔はどこか悲しそうにも見えた。