今月中に間に合ったー!
それではどうぞー!
想夢が目が覚めるとベッドの上だった。
「目が、覚めたようですね」
頭を横に向けるとベッドの傍で咲夜が椅子に座ってこちらを見ていた。
「・・・咲夜さん?」
「フフ、口調が元に戻りましたね」
「え?・・・あ」
そういえば、途中から素の口調になっていたような気も・・・。
場の雰囲気に流されたとはいえ、なんだか小恥ずかい。
が、今はそんな話をしている場合ではない。想夢は上半身を起こして咲夜に問いかけた。
「破壊衝動は、どうなったんですか?」
「半分程は成功したようです」
「は、半分?半分ってどういうことですか?」
嫌な想像が頭の中を駆ける。何かとんでもない間違いをしたのではないだろうか?
「そんなに不安そうな顔をしないでください。想夢様のおかげで私の中の破壊衝動は
ちゃんと消え去りました」
想夢の不安と裏腹に咲夜は微笑んでいた。
自身の破壊衝動について相談してきた時では考えられない程、優しい笑顔だった。
そもそも、今回の咲夜と想夢の戦い、想夢の目的は咲夜に勝つことではない。
想夢の狙いは最初から咲夜のストレス発散である。
咲夜の破壊衝動を解放させ、自身相手に暴れさせる。
そうやって咲夜の破壊衝動が消えるまで自分が耐え続ければいい。
途中で気絶してしまうという大失敗をしてしまったが、咲夜の言葉を聞くに、
結果としては成功したのだろう。
「想夢様との戦いの後、私は気絶した想夢様を抱えて客室まで連れて行きました。
その途中でお嬢様、妹様、パチュリー様の3人が待っていたんです。
想夢様をベッドに寝かせた後、3人に嘘偽りなく今回のことについて話しました。
美鈴も含めて皆事情は薄々気付いていたみたいです。
お嬢様には『お前は私の従者であると同時に紅魔館の家族だろう!?
そんなに私達は頼りないか!?頼るに値しないか!?』と泣きながら怒られてしまいました」
「それって、もうレミリアさん達に黙っている必要はないってことですか?」
「はい、もう隠し事はナシです」
咲夜はスッキリした顔で言う。
「ああ、あと、想夢さんが寝ている間にシェルリオさんがやって来ましたよ」
「シェルリオさんが?」
「はい、今回の件の原因の一端は自分にあると謝罪しにきたようです」
そういえば、シェルリオは自分が咲夜の人格を増やしたから咲夜に破壊衝動が
生まれてしまったと言っていた。
人格を増やしたにも関わらず、人格が変わらなかったせいで、
ストレス発散用の増やした人格が元の人格に影響を与え始めたが故に。
「それで、どうなったんです?」
「レミリアさんが1発殴って『これでチャラにする』と言って終わりです」
「随分とあっさりしてますね」
「彼女だけが悪いというわけではありませんからね。
今回のことは何も言わなかった私も悪いですし、お嬢様達も『お互い、もっと
歩み寄るべきだったわね』とも言われました。それで、ここからが本題なんですが・・・」
咲夜の表情が曇る。
「私の破壊衝動、再発するかもしれないんです。
想夢さんとの戦いで破壊衝動を解放して、思うがままに暴れたことによって、
私の中の破壊衝動は消えました。ですが、元々の原因は私が溜め込んだストレスです。
1度破壊衝動を解放してしまったが故、またストレスを溜め続ければ
今回と同じようなことになってしまうかもしれません」
つまり、アフターケアが必要ということか。
咲夜が想夢をじっと見つめる。
「ですから、できれば、その、時々でいいので私のストレス発散に付き合ってくれませんか?
別にケンカしてほしいって言っているわけではないんです。
一緒にお出かけしたり、買い物に付き合ってもらったり、そんなことでいいんです。
お願いできませんか?」
ストレスの塊が破壊衝動として表に現れてしまったから、今回は咲夜と戦うしかなかった。
だが、破壊衝動は消えたのだ。
これからはストレスが破壊衝動になってしまう前に定期的にストレスを発散すればいい。
ストレスの発散方法は暴れる以外にも沢山あるのだから。
随分と気が付くのが遅くなってしまったものだ。
「僕でよければ、喜んで」
想夢は答えた。
博麗の巫女としてではなく、誰かに頼まれたからでもない。
ただ、なんとなく、自分がそうしたかったから答えた。
・・・・・・・・・
「今回は本当にありがとうございました」
「次は普通に来れるといいわね」
「またねー」
「今度は図書館にも遊びに来なさい」
「また来てくださいねー!」
紅魔館の面々と挨拶をし、紅魔館を出る。
博麗神社に帰ろうとしたところで、
「色々と大変だったみたいね?」
いつの間にか想夢の目の前に、日傘をさした女性がいた。
「紫さん・・・?」
紫はこちらを見て微笑んだ。
「博麗神社に帰るのでしょう?少し一緒に歩かない?」
道中、紫は想夢に問いかけた。
「どうだった?異変を解決した感想は?」
「アレを解決したと言っていいのやら・・・っというか、何で紫さんが知ってるんですか?」
「知ってるもなにも、リアルタイムでスキマから見てたわよ」
紫は悪びれもせずに言う。
「紅魔館の面々からは感謝されているんでしょう?
なら、解決したと胸を張っていいんじゃないかしら?
貴方は貴方のやり方で異変を解決したのよ。霊夢とは違うやり方でね」
「霊夢は、どんなやり方で異変を解決するんですか?」
紫の言葉で、ふと霊夢のことが気になった。
彼女は想夢とは違う、正真正銘この幻想郷の博麗の巫女なのだ。
「霊夢は、勘で動くわ。勘で異変の原因を探して、邪魔する者は全員叩き潰す。
そうやって最終的には異変の元凶を叩き潰して異変解決!ってパターンが多いわね。
貴方は他者の話を聞いて行動する。他者に堂々と力を貸してくれと頼み込む。
1人でやりきる霊夢と誰でも頼る貴方。やり方は正反対だけど、
どちらも立派に『博麗の巫女』をやってくれているわ」
そういうものだろうか。
自分は博麗の巫女としてちゃんとやれていただろうか。
そんなことを考えてしまう。
「それにしても、今回も『設定』を増やしてしまったわね」
レミリアに対して嘘をついたことだろう。
そもそも自分はこの世界の人間ではない。
当然、この世界の歴史上に存在する「博麗想夢」などではない。
パラレルワールドに存在した「博麗想夢」なのだ。
自身の存在を偽るのだから、そのための「設定」が必要になる。
「また、設定について話し合わないといけないわねえ」
「そうですね、すいません・・・」
「いいのよ、ところで幻想郷に来てからそこそこ経つけど、そろそろ慣れたかしら?」
「はい、皆良い人ばかりで助かってます」
「それは何よりね」
紫が微笑む。
想夢も微笑んだ。
幻想郷で出会った人達は本当に良くしてくれている。
異世界に迷い込んだ人間の中では自分は運の良い方なんじゃないだろうか。
「でも」
紫の目が細くなる。
「まだ、何か悩んでいるんじゃない」
「・・・分かっちゃいます?」
「ええ、私、賢者だから」
紫は冗談交じりに腕を組む。見た目は大人びているのに、行動はどこか子供っぽい。
「いいのよ、存分に悩みなさい。
ゆっくりでもいいから歩き続ければ、いつかきっと答えは見つかるわ」
「あ、そのセリフ賢者っぽいです」
「もう!真面目に言っているのよ?」
2人で笑い合う。
土で出来た道の上、真昼間の出来事だった。
・・・・・・・・・
想夢が博麗神社に着く頃には、空が赤く変わろうとしていた。
「おーい!れいむー!」
神社の境内にいる霊夢に呼びかける。
「あれ?想夢?今日帰ってくるなら連絡くらいよこしなさいよ。
夕飯の材料足りるかしら?」
霊夢が若干不機嫌そうに言う。
いきなり帰ってくるのはやっぱり迷惑だっただろうか。
「まあ、いいわ。とにかくお帰りなさい・・・ってどうしたのよ?驚いたような顔して」
「いや、『お帰り』って言ってものなんだなって思って」
「そりゃあ、お帰りぐらい言うわよ。あなただって今は一応家族みたいなものよ?」
「家族・・・」
久々にその言葉を聞いた気がする。
なんがか心の奥が温かくなるのを感じる。
「ほら、『お帰り』って言ったんだから
「ああ、そうだった」
想夢は今日1番の笑顔で答えた。
「ただいま」
最終回みたいな終わり方ですが話はまだまだ続きます。
今回の話で「紅魔館編」として一区切りつけた感じです。
矛盾点、理解できない点も多々あると思いますがどうかご容赦ください。
全ては私の文才のなさが故・・・。
こんな作品ではありますが、これからもお付き合いのほど
よろしくお願いします。