幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

19 / 79
今回は短いですが戦闘シーンがあります。
が、あんまり期待はせずに軽い気持ちでお読みください。
人の動きを文字で表すって難しい・・・。


16・自警団にて

「起きろー」

目が覚めるとツノが見えた。

「おお、起きた起きた」

少女が想夢の顔を覗き込む。

この幻想郷に来て一体何人の女性に寝顔を見られただろう?

というか、何で自分を起こしにくるのはいつも霊夢以外の人物なのだろう?

ここは本当に霊夢の家なのか?いや、神社だけどさ・・・

などと考えながら、想夢はとりあえず目の前の少女の名前を思い出そうとする。

昨日自己紹介したばかりだし、流石に魔理沙のようなことにはならないはずだ。

「・・・西瓜?」

「それじゃあ夏の風物詩だよ?」

「・・・あれ?S●ICAだっけ?」

「ごめん、それはちょーっと分からないなあ。

何?その未来のオーバーテクノロジーみたいな名前?レーザーでも出すの?」

どうやら幻想郷にS●ICAはないらしい。

それもそうか、そもそも幻想郷には電車がないのだからアレは無くて当然か。

「す、す・・・すまん、ネタがもうない」

「いや最初から誰も頼んでないからね?お姉さんをからかうんじゃないよ」

「お姉さんって・・・自分の体型鏡で見てから・・・」

鏡で見てからモノを言えと言おうとした時、

スッ と音がして、

気が付いたら萃香の拳が想夢のすぐ横にあった。

ちょっとした痛みを感じて左の頬に手をやると、小さな切り傷ができていた。

「次はクリティカルヒットさせるよ?」

「す、すいませんでした・・・」

正直、ギャグパートで使うような技ではなかった。

多分、ギャグみたいにケガが次の瞬間には治ってるなんてことにはならないだろう。

だって目がマジなんだもん。明らかにシリアスなシーンで使うような目してるんだもん。

「鬼は嘘を嫌うけども本当のことを言われて傷つかない訳じゃあないんだよ?

そこんとこ理解してくれるとお姉さん嬉しいんだけどなあ?」

「わ、分かりました!」

「ん、よろしい」

そう言って萃香は想夢から拳を引き、昨日と同じだらしのない笑顔に戻った。

「そ、それで萃香さん?いや、萃香様?ほ、本日はどのようなご用件で?」

布団から起き上がって想夢は言う。

「いや、特に何か用事が用事があったワケじゃないよ。

強いて言うなら君を観察するのが目的かな?おかげよく分かったよ。

それじゃあねー」

言うだけ言って萃香は部屋から出て行ってしまった。

想夢は部屋に1人。

「・・・なんだったんだ?」

想夢の発した疑問に答えてくれる者はいなかった。

 

・・・・・・・・・

 

突然だが、人里には「自警団」と呼ばれる組織がある。

幻想郷の妖怪の中には、人を食べる種類も少なくない。

ただし、人里の中の人間を襲ったり食べたりなどすることは、

八雲紫の定めた幻想郷のルールによって禁止されている。

この場合の「人里の中にいる人間」とは、「人里に住んでいる人間」ではない。

文字通り、「人里の中にいる人間」なのだ。

人里に住んでいる人間でも、人里から出れば妖怪に襲われる可能性もあるし、

考えにくいことだが人里の外に住んでいる人間も、人里の中にいる間は

襲われる心配がないのだ。

勿論、人間側もただ黙って襲われているわけにはいかない。

博麗霊夢や霧雨魔理沙などといった力のある人間は、依頼によって人間の護衛を

することもある。

幻想郷のルールを破ろうとする相手に対しては、八雲紫が直接相手をする場合もある。

そういった人間の妖怪に対する対抗手段の1つが「自警団」である。

自警団は人里の人間によって構成された組織だ。

「自警」団であるため、目的は妖怪に対する防衛であり、妖怪を討つことではない。

人里の外に用事がある人間の護衛や、ルールを破って人里を襲おうとする妖怪から

人里を護ることが主な仕事だ。

その他、人里内の人間同士のいざこざや事件の調査など、外の世界の警察に近い役割も

持っている。

仕事の中には、霊夢や紫の仕事とかぶっているものもあるが、彼女らも万能ではないのだ。

ある程度は人間の力でなんとかする必要があるのだ。

 

さて、ここまで長々と自警団について語ってきたが、

それは想夢が自警団に呼ばれたからである。

幻想郷には「スペルカードルール」、別名「弾幕ごっこ」と呼ばれる決闘ルールがあるが、

自警団が相手をする妖怪などはこのルールを守らない者が多い。

純粋な武力、戦闘の技術などが必要となるのだ。

故に、力のある者から戦い方を教えてもらうこともある。

人里の皆の想夢に対するイメージは「新しく幻想郷にやって来た力のある人間」である。

想夢の分かりづらい設定などは一般の人にはぶっちゃけどうでもいいのだ。

そんな「力を持った人間」である想夢は今回、戦術指南役として自警団に呼ばれている。

 

「ようこそおいで下さいました、(わたくし)、受付の手洗(たらい)(まわり)といいます。

今回の案内も務めさせて頂きますのでよろしくお願いします」

手洗と名乗った女性は、丁寧に礼をした。

「よろしくお願いします、手洗さん」

「周とお呼びください。手洗というのは字的にあまり好きではないので・・・」

「そ、そうですか・・・分かりました」

幻想郷の女性は何で皆揃って名前で呼ばせたがるんだろう。

「こちらが道場です。今回の戦術指南に参加する人達が待っています」

コンコンとノックをして周が戸を開ける。

その瞬間、想夢の目に映ったのは、

「せえぇぇぇぇぇぇい!!!」

どぉん、という凄まじい音と、気合の入った大声と共に、

 

吹っ飛ばされる数人の男達の姿だった。

 

「なっ・・・!?」

想夢が驚いていると、スッと周が横に移動した。

「え?うぉう!?」

次の瞬間、吹っ飛ばされた男の1人が想夢にぶつかり、想夢は男の下敷きとなった。

 

・・・・・・・・・

 

「先程は、本当すいませんでした・・・」

男共を吹っ飛ばした白髪の少女が恥ずかしそうに謝る。

少女の側では真っ白な何か(・・)がふよふよと浮いている。

「いえ、大丈夫です、ハイ・・・」

それに対し、想夢も丁寧に返す。若干げんなりした顔だが。

道場の真ん中にて、2人は正座で向かい合っていた。

「想夢さん、こちら、今回の戦術指南のもう一人の指南役、魂魄(こんぱく)妖夢(ようむ)さんです」

2人の仲を取り持つように間に座る周が想夢に白髪少女を紹介する。

「初めまして、魂魄妖夢です。今回はよろしくお願いします」

先程とは打って変わってキリッとした表情で妖夢な名乗った少女は語る。

「博麗想夢さんですね?噂は聞いております」

「う、噂?ですか?」

「はい、3代目の博麗の巫女でとてもお強いんですよね?」

「いや、強いだなんてそんなことは・・・」

想夢としては3代目の部分につっこんできたのが驚きだった。

人里でそこに触れる人は稗田阿求ぐらいのものだ。

「でも、実際強いんですよね?紅魔館のメイド長とも互角に戦ったと聞きましたし」

周が言う。

「いやいや、でも負けましたし」

「でも、互角に戦ったうえ、相手の手からナイフはじき落としたとか。

自警団で噂になっていますよ?」

周の追撃が恐ろしい。ガンガン攻めてくる。

というかあんな個人的な戦いがどうやって噂になったんだ?。

「さて、想夢さんにまずお願いしたいのは妖夢さんとの手合せです」

「手合せ?」

「はい、先程も見たと思いますが妖夢さんはとても強い。

幻想郷の中ではそこそこの実力者として知られるくらいの知名度は持っています。

それこそ、大の大人の男が数人で挑んでも歯が立たない程に。

これでも自警団の人達は弱い妖怪なら1人でもなんとか倒せる程度には訓練されているんです。

それでも、妖夢さんにはまるで歯が立たない。

ですので、まずは想夢さんに妖夢さんと手合せしてほしいのです。

想夢さん程の力があれば妖夢さんともまともに戦えるはずです。

そして、私たちはその戦いを見てこれからの参考にしたい」

「まあ、言いたいことは分かりました。とにかく手合せすればいいんですね?」

想夢が応えると、妖夢が立ち上がった。

「その通りです。それでは、話もまとまったことだし、早速始めましょう。

自警団の皆さんも待ちくたびれているだろうし、何より私が待ちきれません」

妖夢が笑う。

随分と好戦的なようだ。

「分かりました、始めましょう」

想夢も笑う。

ただし、その笑顔は妖夢のソレとは違いただの虚勢であるが。

 

・・・・・・・・・

 

道場の真ん中から少し距離をとって想夢と妖夢は向かい合う。

お互いの手にはそれぞれ木刀が1本ずつ握られている。

「準備はいいですかー?」

離れた場所で周が呼びかける。

周の他にも、自警団の人達も2人を見ている。

「問題ありません」「いつでもいいですよー」

前者の言葉は妖夢。真面目な顔で一瞬たりとも油断しないという気迫が窺える。

後者の言葉は想夢。妖夢同様顔は真面目だが、その心中は穏やかではない。

「・・・こんなにたくさんの人に見られながら戦うのは初めてだな・・・。

はぁ、緊張するなあ・・・帰りたい・・・」

誰にも聞こえないように想夢は呟く。

「それでは!・・・始め!!」

周の声が道場に響く。

直後、

その声をかき消す程の、まるで弾丸を撃ち出したかのような大きな音が響いた。

その音が妖夢が床を蹴って走り出した瞬間の音だと、想夢が気付いた時には、

妖夢は既に想夢の目の前まで迫っていた。

「はああ!!!」

そのまま妖夢は木刀を横に振るう。

想夢は、木刀を縦に構えて受け止める。

「おや、戦う時は変身すると聞いていましたが?」

「あくまでも能力を使う時のみですよ」

「そう、です、か!」

妖夢が力押しで木刀を振りきる。

想夢はそのまま後ろに吹っ飛ぶ。

「・・・後ろに飛んで衝撃を和らげましたか」

「バレたか・・・」

後ろに飛んだ想夢が床に着地をする瞬間で、妖夢は再びダッシュする。

すぐに2人の距離は元に戻る。

「そこぉ!!」

妖夢はダッシュしたまま想夢の足首を狙って横に木刀を薙ぐ。

しかし、妖夢な木刀は想夢の足首には当たらない。

妖夢がダッシュして木刀を振るうと同時に想夢は床に木刀の先を突き刺すような動きで

叩きつけた。

床に刺さりはしないものの、手で押さえられて床に立った木刀によって

妖夢の攻撃は防がれた。

想夢は攻撃を防がれたことによって動きの止まった妖夢の木刀を踏みつけ、

自分の木刀を持ち直し、妖夢の首を狙って横に振る。

妖夢は頭を下げて木刀をかわし、そのまま想夢の額に頭突きを食らわせた。

「ッ!」

頭突きによって少し後ろによろめいてしまう。

その隙を妖夢は逃さない。すぐさま木刀を振るって次の攻撃を繰り出してくる。

 

そこからは、防戦一方だった。

妖夢の1番の特徴はスピードの速さだ。

咲夜のような能力を使ったトリッキーさはないが、1撃1撃がとにかく速いのだ。

攻撃のスピードが速ければ、攻撃の威力も増す。

想夢は妖夢の素早い連続攻撃をかわしたり、木刀で受け止めたりしていくが、

どうしても反撃へ転ずることができない。

そんな状況がしばらく続いていたが・・・

「せぇやあ!!!」

カッ!短い音がして妖夢の木刀が想夢の木刀を手からはじき飛ばす。

「しまっ・・・!?」

そのまま想夢の首筋に木刀をくっつける。

「・・・私の勝ちですね」

 

・・・・・・・・・

 

妖夢との試合が終わった後、想夢は妖夢と共に自警団の人達に戦い方を教えていた。

とはいえ、人にモノを教えるなんて想夢には初めてのことだったので大分手こずった。

休憩時間には

「あれだけやれりゃあ十分スゴイって!」

「そうそう、俺らなんて数人がかりで1分もたないしな!」

「それを1人であんだけやるんだもんな!アンタすげぇよ!」

と自警団の男衆にやたらと声をかけられた。

褒められているのか慰められているのか微妙なところだ。

 

「今日はありがとうございました」

戦術指南が終わり、想夢と妖夢は自警団を出る。

「想夢さん少しよろしいでしょうか?」

帰ろうとする想夢を妖夢が呼び止める。

「どうかしました?」

「はい、実は想夢さんに会って頂きたい方がいるのです」

「会うって・・・誰に?」

 

「私の主、西行寺(さいぎょうじ)幽々子(ゆゆこ)様です」

妖夢の出した名前に、想夢は言葉を失った。

 

「・・・どうかしましたか?」

「西行寺・・・幽々子・・・」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。