前回よりは長く出来ましたが、文才は変わらず。
これからは、1話の長さを最低でもこの位にできればと思っています。
では、どうぞ。
「自分が人間であることに自信が持てないですって?」
夢を見ていた。
記憶に新しい大した特徴もない喫茶店の様な店で、
男は、女性と話していた。
「貴方が人間かどうかだけど・・・
貴方自身もよく分かっているんじゃないかしら?
私が人間じゃないって分かっているんでしょう?
少なくとも人と妖怪や神の区別位はついているんでしょう?」
「ええ、まあ・・・」
女性の言葉に男は肯定した。
「人とそうでないモノの区別がつくなら分かるわよね?
妖怪、化け物、怪物、神様・・・人が私のような存在をどう呼ぶかは
千差万別だけど、私のような存在の数は本当に少ない。
今を生きる貴方には普通のことなんでしょうけど、
今から何百年も昔の時代に比べれば、妖怪も神も数が激減してしまったわ。
その理由は分かるかしら?」
「・・・いえ」
「妖怪や神様ってね、人に存在を信じられていないと存在を保つのが難しいの。
人と違って妖怪や神様は精神に依存する存在だから、
存在そのものが人と比べて不安定なの。
昔は『八百万の神々』なんて言われて世界のあらゆる事象に
不思議な何かが関わっているなんて思われていたから
妖怪も神様もそこら中にいたけど、科学の進歩によって人々は
妖怪も神様もだんだん信じなくなっていった。
今の世の中は人以外には生きづらくて仕方がないの」
そこまで言って、女性は少し間を置いた。
何かを懐かしむように目を閉じて、何事もなかったかの様に話を続ける。
「さて、ここまで説明したんだもの、もう分かるわよね?
貴方は確かに他者にはない特殊な能力を持っている。
だけど、貴方はちゃんとぶれることなく存在している。
大丈夫、貴方は人間よ」
最後に、女性は男を安心させるように、力強い笑みを浮かべて言った。
「他でもない妖怪の賢者、八雲紫が言うんだから信じなさい」
・・・・・・・・・
目を覚ました。
見知らぬ部屋が視界に映る。
男が目を向けると、外に人の姿が見える。
少女の姿が2つに、女性の姿が1つ。
・・・いや、女性の方は人ではなく妖怪か。
そのまま見ていると、魔女のような格好をした少女がこちらを見た。
「こっち見てるソイツは誰だ?」
「え?」
残りの2人がこちらを向く。
「あなた、名前は?」
巫女服の少女に名前を聞かれる。
「博麗・・・想夢」
・・・・・・・・・
現在、テーブルを挟んで男と、少女達が向かい合うように座っている。
「とりあえず私達も名乗っておくわ、その方が公平でしょ?」
金髪の女性が切り出す。
「私の名前は八雲紫、この幻想郷を管理しているしがない妖怪よ」
「八雲・・・紫・・・」
男は名前を繰り返し呟き、何かを考えるように黙ったが、
少し経ってすぐに元の様子に戻った。
「そんじゃ次は私だ!
私の名前は
魔理沙って呼んでくれ!」
続いて自己紹介したのは魔女の格好をした少女だった。
「分かった、よろしく」
さっきと違い男の反応はあっさりしていた。
そして最後、巫女服を着た少女は、
「博麗霊夢よ、巫女やってるわ」
と、素っ気なく言った。
「そういやアンタも博麗だっけ?霊夢の兄貴かなんかか?」
魔理沙が興味津々に聞いてくる。
「私の記憶だと私に兄弟も姉妹も居なかったとおもうけど」
霊夢が反論し、
「そうね、霊夢の母親の代よりも前から博麗の巫女達を見てきたけど、
霊夢には兄弟も姉妹も居なかったはずね」
紫が言葉を続ける。
「それに、貴方、名前を想夢と名乗ったわね?博麗想夢・・・
確か2代目か3代目あたりの博麗の巫女の名前が博麗想夢だったわ。
歴代の博麗の巫女の中でも1、2を争う程弱かったと言われているけど・・・
貴方がその博麗想夢だというの?」
「・・・」
男は答えない。
「貴方が八雲紫と名乗るのならば、1つ聞きたいことがあります」
答えない代わりに逆に問いかける。
「・・・何かしら?」
「この世界は、原作ですか?」
ずっと笑みを崩さなかった紫の表情が一瞬だけ真顔になる。
「成る程ね、そういうこと」
「ちょっと紫?1人だけで納得してないで私達にも分かるように
説明しなさいよ」
霊夢が不満げに言う。
「そうね、この人の言葉に嘘はない。
霊夢、この人は間違いなく博麗想夢、貴方のずっと前の博麗の巫女よ」
「何でそんなことが言いきれるんだ?」
霊夢も魔理沙もまだ納得してないようだ。
「そうは言われても、私の口からはちょっと説明できないわね・・・
強いて理由を挙げるならなら、この人は私しか知らないはずのことを知っているから
としか言えないわね」
「紫、これだけは教えて?この人は信用できるの?」
「ええ、それは断言できるわ」
霊夢は紫に確認をとり、男の方へ向き直った。
「博麗想夢と言ったわね?さっきも言ったけど私の名前は博麗霊夢、
この博麗神社の巫女をしているわ。
それで、これは正直聞くのもはばかられるんだけど、
あなた、当然住むアテはないのよね?」
霊夢の言葉に男は頷く。
「そうだな、幻想郷に来たのも今さっきだし」
「ならとりあえずこの博麗神社に住みなさい。
正直男であるあなたが博麗の巫女だなんて、未だに信じられないけど、
紫もこう言ってるワケだし、とりあえずはあなたが博麗の巫女だと
信じてみることにするわ」
「分かった」
やけにあっさり話がまとまったと、想夢は思った。
最初に霊夢に向けられた目には自分に対する不信感しかなかった。
魔理沙からはあまり不信感は感じられなかったが、それは彼女の
性格によるものなのだろう。
霊夢の不信感を拭ったのは紫の言葉だった。
霊夢は紫の言葉を信用しているのだろう。
・・・ふと、顔を上げる。
霊夢と魔理沙の姿は消え、紫1人だけが残っていた。
「気がついた?」
「え?ええ、まあ・・・霊夢と魔理沙は?」
「ちょっと席を外してもらったわ、2人が部屋から出て行くのにも
気がつかないなんて、よほど真剣に考え事をしていたのね?」
紫にそう言われ気恥ずかしさからか、少し顔が熱くなる。
「さて、せっかく2人っきりになったんだし、少しお話しましょう?」
紫の笑みの形が変わる。
さっきまでの、からかうような微笑みから、子供のような無邪気な笑みへ。
「もう少し踏み込んだお話を・・・ね?」