幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

20 / 79
前書き、後書きにはこれを書こうと、
本編を書いている最中に考えても、
いざ、前書き、後書きを書くときにはもう
忘れてしまっていることがよくあります。
後でって考えたことってついうっかり忘れちゃいません?


17・信頼と心霊、考え方の話

冥界・白玉楼(はくぎょくろう)

妖夢が言うには、そこに妖夢の主である西行寺幽々子がいるという。

 

そもそもの白玉楼とは、中国の故事から文人や書家が死後に行くところとされている

白玉造りの天上の楼閣のことである。

白玉とは文字通りの白い玉。決して団子の一種ではない。

 

幻想郷の白玉楼は冥界に存在する。

冥界とは「閻魔による裁判を終え、成仏または転生が決まった霊たちが

それを待つ間過ごすところ」である。

そのため基本的に冥界には死者しかいない。

本来は生きている者が行けるような場所ではないのだが、

現在は現世とあの世の境い目が薄くなっているため、わりと行き来自由なのだ。

その冥界には小さな屋敷が建っている。

そこが幻想郷の白玉楼。

 

自警団での戦術指南をした次の日。

想夢は人里で妖夢と待ち合わせをしていた。

人里の茶屋で妖夢を待つ想夢は、そういえば以前もここで女の子と話したなと考えていた。

「お待たせしました」

「いや、今来たところですから大丈夫ですよ?」

妖夢が来て対人でありがちな会話をする。

「そういえば想夢さんって素の口調はもっと砕けてますよね?」

「・・・よくわかりましたね」

「昨日、自警団の男衆と会話してたのを聞いていましたから。

それに私、これでも剣士ですから、剣を向け、戦った相手のことはなんとなく分かります」

「そこは剣を交えた(・・・・・)って言う場面じゃないですかね?」

「幻想郷では剣を扱う者はあまりいませんから。『弾幕ごっこ』のルールもありますし

剣以外のものを相手にすることの方が圧倒的に多いんです」

「な、なるほど」

まあ確かに、咲夜もナイフを使うがアレを剣士と呼ぶ者はいないだろう。

「それで想夢さん、素が砕けた口調なら敬語でなくても大丈夫ですよ?

あと、名前も妖夢って呼び捨てで大丈夫です」

「そうですか?じゃあ改めて・・・こんなんでいいか?」

「はい、問題ありませんよ」

そう言って妖夢が笑う。

「そういえば、妖夢も口調は敬語のようだが」

「私は普段から口調は敬語ですから。私がタメ口になるのは敵対した者だけです」

タメ口・・・普段が丁寧な口調だと、なんだかタメ口を聞いてみたくなる。

そういいえば咲夜も口調は丁寧だったな。

そもそも幻想郷には初対面の人間に対して馴れ馴れしいのが多い。

そんなことを想夢は考えていた。

 

・・・・・・・・・

 

茶屋で和菓子を食べながら妖夢から冥界や白玉楼の説明を受ける。

「そういえば、冥界って幽霊とか死んだ者しかいないんだよな?

ということは妖夢も幽霊ってこと?」

「いえ、私は半人半霊です。私の周りを浮いているこの白いのが私の半霊の部分、

私のこの肉体が半人の部分です。

あ、何か特別な事情があるなんてことはないですからね?

私は生まれた時から半人半霊なので。魂魄家は半人半霊の家系なんです」

「半人半霊・・・そういうのもいるのか」

「幻想郷ですからね。さて、話はこれくらいにしてそろそろ参りましょうか」

妖夢が立ち上がって言った。

「冥界ははるか上空にあるので地上からは歩いていけません。

空を飛ぶという手もありますが、それなりに遠いので今回はこれを使います」

そう言って想夢が取り出したのは小さな紙切れだった。

紙切れには八雲紫がよく使うスキマの絵が描いてある。

「・・・これは?」

「『出張!誰でもスキマ妖怪(使い捨てタイプ)』です。

まあ店で売ってるような物ではないので『誰でも』とはいきませんが

この便利アイテムの名付け親は紫様なのであしからず」

「お、おう・・・」

「この『誰でもスキマ妖怪』、通称『スキマ紙』ですが、

簡単に説明しますと、この紙を使うと場所と場所を繋ぐスキマを出すことができます。

有名な青いタヌキ型ロボットの『どこ●もドア』の使い捨てバージョンですね」

「はあ・・・どこでも●ドア・・・」

「想夢さん、そこだと伏せ字の意味がないです。ある意味違う名称に見えなくもないですが」

妖夢が紙を破くと、何もない空間にスキマが現れる。

それはまるでダンガン●ンパのゲーム画面のようにも見える。

「・・・2.5D」

「はい?」

「いや、なんでもない」

「そうですか?それでは、行きましょうか」

そう言って妖夢はスキマの中に入る。

それに続いて想夢もスキマの中に入った。

 

・・・・・・・・・

 

スキマを抜け、着いた場所は庭園だった。

白く小さな石が地面に敷いてある。これが白玉だろうか?

すぐそこには大きな屋敷が建っている。いかにも日本の由緒正しき〇〇邸といった雰囲気だ。

「着きました。ここが白玉楼です」

妖夢の後に続いて想夢は屋敷の中に入った。

 

「幽々子様をお呼びしますのでここで少々お待ちください」

屋敷、白玉楼の一室に通された想夢は座布団に座ってぼうっと考えていた。

ここの主の名前を聞いたとき、もしやと思った。

はたしてその考えが本当に合っているのか・・・。

「西行寺、幽々子・・・」

「私がどうかしたかしら?」

襖が開く音と女性の声がした。

考え事をしている内に下を向いていたらしい。

顔を上げると、水色の着物を着た女性がにこやかにほほ笑んでいた。

優しそうな温かそうな雰囲気の女性だ。

女性の周りには小さな白い何か(・・)がいくつか漂っている。

妖夢の半霊に瓜二つな見た目をしたそれは、恐らくは幽霊なのだろう。

女性は想夢の向かい側に座り、妖夢はその隣に座る。

「初めまして、西行寺幽々子といいます。

ここ白玉楼の主として、閻魔大王より冥界の管理を任されております」

自己紹介をして礼をする。ただそれだけの行為で彼女の雰囲気がガラリと変わる。

先程の柔らかそうな雰囲気から一転して、優雅で落ち着きのある雰囲気を纏わせる。

「・・・なんてね?」

かと思えば、口に手を当ててクスクスと小さな女の子のように笑う。

掴み所がない。一体どれが本当の彼女なのだろうか?

「博麗想夢です。よろしくお願いします」

とはいえ考えてばかり、驚いてばかりいても始まらない。

とにかくこちらも自己紹介をせねば。

「ええ、よろしく。ところで、私の名前を意味深に呟いていたけど何を考えていたのかしら?」

「え!?そ、それは・・・」

「もしかして、何かエッチなことでも考えてた?」

「いやいや、いやいやいや、違いますよ・・・」

「そう?私スタイルは良い方だと思うけど?」

この人は初対面の相手に何を言っているんだ?

隣に座っている妖夢も顔を真っ赤にしている。

「なんて、冗談よ冗談」

幽々子は笑う。

 

「本当は、貴方が元いた世界での幽々子(わたし)を思い出していたってところかしら?」

 

「っ!?」

何故、彼女がそれを知っているのだ?

「驚かせちゃったわね?ごめんね?

実は紫から事情は聴いているの。できれば私にも協力してほしいってね」

幽々子の言葉はなんとなく母親をイメージさせる。

母親が子供に言い聞かせるような・・・。

「貴方がどうして事情を隠しているのかは知らないけど、

紫の頼みだもの。親友のためならできるだけ協力してあげたいじゃない?

だから何かあったら相談してね?妖夢共々、できることなら協力するわ」

「あ、ありがとうございます・・・?」

正直、予想外の展開だった。

それからの幽々子の話は他愛のないものだった。

昨日の戦術指南、人里の甘味といったような話題や、

幻想郷はどうだ、紅魔館はどうだった、ここ白玉楼はどうか、など

想夢がこれまでに行った場所の話題も話した。

 

・・・・・・・・・

 

今日はそのまま白玉楼に泊まることとなった。

晩飯をご馳走になり、与えられた部屋で想夢は1人考えを巡らせていた。

なぜ、幽々子は協力してくれると言ったのだろうか。

本人は紫に頼まれたからだと言っていたが、いくらなんでも初対面の相手にいきなり

「協力する」なんていえるだろうか?

正直、好意的過ぎて逆に信用ができない。

そもそも何故幽々子は知っていた?

確かに、紫に聞けば想夢がパラレルワールドの人間であることは分かるだろう。

紫の親友だという幽々子なら、それも可能だろう。

それに、紫から幽々子に教える可能性も十分にある。

想夢の協力者を増やそうと考えていたのかもしれない。

なら、幽々子はどうして自分が元の世界でも幽々子と交流があったことを知っていた?

そんなことは誰にも、紫にも話していない。

紫が能力で想夢の心にスキマを作り、情報を引き出したうえで幽々子に教えたのか?

できれば、ゆかりがそんなことをするとは思いたくはない。

ただ、自分の口がすべっただけだと思いたい。

想夢は紫を信用している。

それは、自分のいた世界でも交流があった名残もあるが、

この幻想郷で初めて八雲紫という妖怪に会ったときにある程度の問答をしたからというのが

1番の理由だ。

1番最初に疑ったから。

理由のない信用なんてものは存在しない。

では、レミリアの場合はどうだろう?

彼女が想夢を紅魔館に招いたのは純粋な好奇心だったと想夢は考える。

恐らく初めて会った時点では勿論、想夢に頼み事をしてきた時点でも信用は

してなかったはずだ。

それはきっと咲夜も同じだろう。

彼女達が信用していたのは、想夢の「博麗の巫女」という肩書きだ。

咲夜の破壊衝動は十分異変と呼べるものだった。

異変ならば博麗の巫女はそれを解決しなければならない。

「出会って間もないからこそ頼む」のではない。

「異変のスペシャリストである『博麗の巫女』だからこそ頼む」のだ。

まあ、レミリアに多いの本心も咲夜の本心も分からないが。

もしかしたら本当に想夢に言ったことが全てなのかもしれない。

少なくとも、異変が解決した今は、少しは信用されていると思いたい。

ならば幽々子は・・・

 

「想夢さん、入ってもよろしいでしょうか?」

考え事をしていたら、部屋の外から妖夢の声が聞こえた。

「どうぞ」

「失礼します」

部屋の中に妖夢が入ってくる。

その表情は、人里の茶屋で会った時のような、幽々子と話していたときのような

柔らかいものではなかった。

真剣そのもの。

刀のような鋭さを秘めたような顔をしていた。

「それで、どうした?」

「実は、想夢さんにお願いしたいことがあるんです」

「お願いしたいこと?」

「はい・・・

 

実は、私と戦ってほしいんです」

 

「・・・は?」

妖夢の言葉に耳を疑う。

戦ってほしい?一体何のために?

咲夜と同じように何か事情でもあるのだろうか?

「ここではなんですから、外にでましょう」

妖夢の言葉に従い、2人は部屋を出た。

 

・・・・・・・・・

 

「それで、どうだったの?想夢に会ってみて」

想夢が妖夢と話していたのと同時刻、幽々子は別の場所にいた。

マヨヒガ。

関東・東北地方に伝わる奇談で、「迷ひ処」「迷い家」と書くが、読みは「まよいが」である。

話によって細かな違いはあるものの、大体は

 

山奥で迷った旅人が、立派な門の屋敷を偶然発見する。

しかし、その屋敷に人の気配はない。

その屋敷の物を持ち帰ると幸運が訪れる。

 

というもの。

有名なのは日本民俗説話集「遠野物語」ではないだろうか。

幻想郷でも「マヨヒガ」は、大体奇談と同じである。

幻想郷の住人達にもある程度は知られているが、奇談の通り「迷い込む」場所なので

マヨヒガという場所があることを知ってはいるが実際に見たこと、行ったことはないという

人がほとんどである。

例外として八雲紫は自分の意思でマヨヒガに行くことが可能で、

誰かと話したりするのにマヨヒガを利用することが多い。

(決して、八雲紫の住居ではない)

また、幻想郷のマヨヒガには猫がよく集まるが、それはまた別の機会に話そう。

 

幽々子は、マヨヒガで紫と話していた。

「ええ、面白い子ねえ、からかうと可愛い反応も見せるし。

妖夢とは違ったベクトルで真面目だと思ったわあ」

「そ、そう、程々にね?」

幽々子という女性は飄々としていて、本心が見えない。

そしてなにより、良くも悪くもマイペースなのだ。

ゆったりしていて慌てることもない。

そんな性格をしているが故に、

 

「まあ、何か隠しているのは確かねえ。パラレルワールドの博麗の巫女ってだけではないわ」

 

誰よりも真実を見据えていたりする。

「やっぱりねえ・・・まあ、それを本人から聞き出すのはまだ難しいか」

「落ち込むことはないと思うわよ?彼、紫のことはそれなりに信用してると思うわ」

「そうかしら?」

「ええ、そうでなきゃ『八雲紫』の話なんてしないわよ。

これって信用・・・いえ、信頼してる証拠っていわない?」

「信頼・・・そうね、そうなら嬉しいわね・・・」

呟いて、少し下を向き、微笑む。

八雲紫という女性はあまり周りから信頼されていない。

元々の性格が幽々子に似て飄々としており、本心が見えないのだ。

さらに自身の能力によってどこにでも現れるため、それがより一層胡散臭さを増しているのだ。

妖怪の賢者、幻想郷最古参の妖怪という立場があるため、

彼女を信用する者は多いが信頼している者はほとんどいない。

そんな紫を信頼している者といえば、幽々子か霊夢くらいのものだろう。

故に自らが信頼されるというのは、紫にとってはかなり嬉しいことだったりする。

 

そんな紫を見て、幽々子もまた、微笑むのだった。

 




どさくさに紛れて主人公の過去をさらっと出しちゃった気がします。
この作品、主人公の一人称で進んでいるわけではないので
主人公の過去を出そうとすると、演出に悩みます。
まあ、仮に一人称視点の物語だったとしても多分
同じ場所で悩むんだろうとおもいます。
過程は違っても結果の変わらないパラレルワールド。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。