そしてそれ以上に、トリックに自信がありません。
別に逆転●判やダンガン●ンパみたいなトリックを考えるような
小説ではありませんが、トリックがチープになってしまうのは悩み所です。
チープな食べ物は好きですけどね。カップ麺とか。
白玉楼の庭園から夕日が見える。枯山水の庭が橙色に染まる。
「それで、どういうことなんだ?」
想夢が妖夢に尋ねる。
妖夢はじっと想夢を見据える。
「想夢さん、昨日の試合を覚えているでしょうか?」
「そりゃ、昨日のことだし」
「では、今日、私が貴方に言った言葉を覚えているでしょうか?
剣を向け、戦えば相手のことがなんとなく分かると」
確か、茶屋でそんなことを言っていた。
「あの時、お互いに木刀でしたが、貴方のことがなんとなく分かりました。
貴方があの試合で全然本気を出していない・・・いや、本気を出せなかった。
本来、十六夜咲夜と互角に戦える程の実力を持つ貴方なら、私ともっと戦えるはずなんです。
私にはそれが不可解で仕方がない。
幽々子様は貴方に協力すると仰いましたが、正直、私はそんな簡単に協力する気にはなれない。
そんなに簡単に貴方を信用することができない。
ですので・・・」
妖夢が剣を抜く。
腰にまわした短刀を左手に。
背中に背負った長刀を右手に。
2本の刀を構える。
「私は、私のやり方で貴方という人間を見極めます。
それに、剣士としての性なんでしょうか?久々に刀を扱う人に出会えたんです。
私は、本気の貴方と戦いたい、全力の貴方と戦ってみたい!」
想夢は今、妖夢に疑われている。しかし、妖夢の気持ちはそれだけではないようだ。
やはり、彼女は好戦的だ。
そして、剣士として純粋だ。
だが、何故だろう?そんな気持ちを馬鹿にはできない。
「・・・分かった」
想夢の姿が巫女服に変わる。
1本の刀を右手に構える。
「では・・・行きます!」
妖夢が叫ぶ。
そして、地面に敷かれた小石が弾ける。
妖夢は、昨日の試合よりも速いスピードで想夢に向かっていた。
(斬る・・・!)
そのまま右手の長刀を縦に振るう。
「なっ・・・!?」
声が出たのは妖夢の方だった。
妖夢が長刀を振り終えた時、2人の距離は戦闘開始時よりも開いていた。
妖夢が長刀を振るのと同時に、想夢はその場で刀を横に振った。
刀と刀がぶつかり、想夢はそのまま刀を横に振りきり、妖夢を押し出したのだった。
妖夢の刀は押し出された後、距離が開いて生まれた何もない空間を振っただけだった。
(パワーも反応速度も昨日とは全然違う・・・!強さの変化の秘密は、その巫女服か?)
博麗想夢という男の情報は、戦術指南の前日に八雲紫からもらっている。
博麗の巫女としての力を使うと服装が巫女服に変わること。
そして、博麗刀という刀を扱うこと。
刀を扱っている以上、それなりの身体能力はあるはずだ。
仮にも博麗の巫女なのだから、妖怪と戦う術はあるはずだと妖夢は思っていた。
それ故に、昨日の試合は拍子抜けであった。
こんなにも弱かったのか?自警団の男衆よりは強いだろうが、予想を大きく下回る弱さだ。
3代目博麗の巫女、博麗想夢は歴代最弱だと聞いたが、これ程なのか?
・・・いや、違う。
これは彼の全力ではない。これは彼の本気ではない。
彼の力はこんなものじゃないはずだ。私の勘がそう言っている。
彼は、霊夢のように素の状態で強いわけではない。
博麗の巫女の力があってこそ、博麗想夢は強いのだ。
逆に言えば、博麗の巫女の力がなければ、博麗想夢は妖怪相手に無力なのだ。
その強さは魔法使い、霧雨魔理沙によく似ている。
力を引き出すために媒介が必要なのだ。
「身体能力を博麗の巫女の力で引き上げているってワケですか・・・」
やはり、彼は強い・・・!私の剣が、そう言っている・・・!
「はああああ!!!」
妖夢が刀を振るう。
右手の長刀。左手の短刀。
2つの刀を振るう。
そのスピードは昨日よりも速く、その力は昨日よりも強い。
当たり前のことだが、刀というものは両手で持ち、両手で振った方が威力は高い。
木刀を両手で振っていた時よりも威力が増しているのは、妖夢も妖夢で手を抜いていたからか。
しかし・・・その剣は届かない。
速さを増しても、力を増しても、届かない。
元々速かった剣がさらに2本にしたことで手数が圧倒的に増えたが、届かない。
妖夢の二刀を想夢は全て受け流していた。
1本の刀と、博麗の力で。
想夢の左手が、青白く、薄く、光っていた。
手に結界を纏わせることで斬撃を防いでいるのだろう。
防ぐ、弾く、受け流す。
刀で、あるいは結界を纏った手を使って妖夢の攻撃に対抗している。
妖夢もまた、想夢の攻撃を二刀で防いでいた。
お互いに攻撃し、その全てを防ぎきる。
そんな攻防戦が続いていた。
激しい剣戟に変化を起こしたのは想夢だった。
妖夢の刀をかわして後ろに下がる。
その行動に、妖夢もまた警戒して後ろに下がった。
「・・・」
「・・・」
お互いに無言。
そして想夢は地面を蹴った。
ただし、前に踏み込んで駆けだすためではない。
地面に敷かれた小石を、妖夢の顔目がけて蹴り飛ばしたのだ。
「嘘っ!?」
突然のことに、思わず妖夢は腕で顔を覆い防御する。
「しまった・・・!」
ほんの短い間だが、想夢から、目を逸らしてしまった。
その隙を想夢は逃さない。
すぐさま地面を踏み込み、妖夢の目の前まで駆け右手に構えた刀を横に振るう。
妖夢はすぐさま空高くジャンプし、刀は妖夢の足の下を空振った。
半人半霊、人間よりも身体能力の高い彼女のジャンプは屋敷の屋根まで届く。
「くらえ!」
空中で妖夢が叫ぶ。
顔を覆うようにしていた腕をそのまま裏拳のようにして振るう。
当然、手に持った二刀も振るわれる。
次の瞬間、
斬撃が、三日月の形をとって、飛んできた。
「はあ!?」
想夢は思わず声を荒げてしまった。飛ぶ斬撃なんて初めて見た。
横にサイドステップしてなんとか斬撃をかわす。
「お忘れですか?本来、この幻想郷には『弾幕ごっこ』という決闘ルールがあるんです。
斬撃を弾幕として飛ばすことなんて、何の不思議もありませんよ?」
地面に着地した妖夢が語る。
「まだ、手を残してたのか・・・」
「奇を衒うのはお互い様でしょう?相手を騙すのも戦略の内です」
そう言って妖夢は刀を振るう。
斬撃が飛んでくる。
「はああああ!!!」
妖夢が刀を振るう度に斬撃が次々と飛んでくる。
その大きさは長刀と短刀で違っている。長刀からの斬撃の方が、短刀からの斬撃よりも大きい。
「くっ・・・!」
遠距離攻撃を持っていない想夢は防御するしかない。
庭園を走る。刀を振り、結界を張る。かわす、防ぐ、受け流す。
そうやって飛ぶ斬撃に対抗していると、
「そこお!!!」
妖夢の掛け声と共に、巨大な斬撃が生まれる。
3~4メートルはあろう斬撃が想夢に襲い掛かる。
「おおおおおおおおおお!!!!!」
斬撃をかわしきれないことを悟り、想夢は全力で刀を振るう。
妖夢の斬撃と想夢の斬撃、2つの斬撃がぶつかった衝撃で周りに破壊力の波をまき散らす。
地面の小石が舞い上がり、その下の土や砂が舞い上がり煙となる。
「・・・前が・・・」
視界がふさがれる。
妖夢の居場所が掴めない。
想夢が周りを見渡そうとした瞬間、煙の中から手が伸び、想夢の右手首を掴んだ。
煙が薄れ、妖夢の顔が見えてくる。
「これで・・・終わりです・・・!」
「・・・そうだな、これで終わりだよ」
煙が晴れた後に見えたのは、左手で想夢の右手首を掴んでいる妖夢と、
妖夢の首に刀を
「僕の勝ちだ」
「どうして・・・いつの間に、持ち手を・・・?」
妖夢は呆然と呟く。
「持ち手は煙が出た時に念の為に左に移しておいた。
それと、今回勝てたのはただの偶然だ。運が良かったとも言う。
妖夢は言ったよな?『奇を衒うのはお互い様だ、相手を騙すのも戦略の内だ』って。
だけど、妖夢にそんな方法は似合わない」
妖夢は剣士として純粋だ。
とても真っ直ぐな剣を振るう。
それには妖夢自身の真面目な性格も影響しているのだろう。
とにかく妖夢の振るう剣はとても真っ直ぐだ。
想夢は戦いの中でそれをずっと見ていた。
二刀よる圧倒的な手数の斬撃。その全てが真っ直ぐ直線のような剣筋をしていた。
だからこそ、奇を衒う、相手を騙すなんて曲りくねった方法は真っ直ぐな彼女には合わない。
彼女が使うにしても、彼女が使われるにしてもだ。
決して彼女が弱い訳ではない。
ただ、自分の苦手な土俵で戦ってしまったことが彼女の敗因だ。
彼女は真っ直ぐなのだ。正々堂々と正面きってぶつかり合うのを得意としている。
それ故に相手の土俵に入って相手の土俵で戦ってしまうのだ。
「そう、ですか・・・」
妖夢は下を向いてしまった。
「・・・僕が勝ったのは偶然だってさっきも言ったよね?
剣を持ち手を変えたところに、偶然妖夢が僕の右手を掴んで刀を無力化しようとした。
だからこそ、奇を衒って妖夢の首に左手で刀をつけることができた。
妖夢は真面目だからついつい相手と同じ土俵に立って戦おうとしてしまう。
だけど、それはどんな方法でも戦えるってことじゃないかな?
頑張ればどんな土俵でも相手に勝てるかもしれない」
「でも、現に私は負けてしまいました」
「今回は、ね。でも・・・」
「慰めならやめてください!惨めになるだけですっ!」
言葉が思いつかない。
想夢が何を言っても妖夢の心に響かない、妖夢の心に届かない。
昨日会ったばかりの人間では彼女は納得しない。
(・・・この場合、どうするべきだろう?)
想夢は悩んだ。そして考えた。それでも、何も思いつかない。
「・・・」
「・・・」
無言のまま、ただただ経っていく時間に想夢が焦りを感じ始めたころ。
「2人共、そんなところでどうかしたの?」
庭に、声が響いた。
「「・・・え!?」」
2人が声のした方に顔を向けると、西行寺幽々子が立っていた。
「ちょっと見ない間に随分仲良くなったみたいね?手まで繋いじゃって」
フフフと幽々子が口を隠して笑う。
「え?・・・うええぇぇ!!??」
妖夢が叫びながら手を離す。
そういえば、今までずっと妖夢に手を(正確には手首を)握られたままだった。
「うう・・・」
妖夢の顔が真っ赤になる。さっきまでの雰囲気は欠片も残ってなかった。
「妖夢」
不意に幽々子の表情が真面目なものになる。
「・・・はい」
それにつられ、妖夢の表情も強張る。
「次、頑張りなさい」
優しく、それだけ言った。
「は、はい!」
妖夢が応える。その顔にはさっきまでの不安は見えなかった。
それだけで通じるものが2人にはあるのだろう。
それを少し羨ましく思った。
「・・・というか、何をしてたか知ってたんじゃないですか」
やっぱり、西行寺幽々子は本心の見えない人だ。
想夢は改めてそう思った。
「さ、2人ともいっぱい動いて汗かいたでしょう?
お風呂、湧いているから入ってらっしゃい」
「それじゃあ、想夢さんから先に」
「いや、妖夢が先でいいよ」
「いえ、お客様である想夢さんが先に」
「いやいや、妖夢は女の子なんだから先に入った方が・・・」
「一緒に入ればいいんじゃないかしら?」
「「それはダメです!!」」
「あらあら、顔を赤くしちゃって思春期かしら?
貴方達机の下にエッチな本なんて隠しても無駄ですからね?すぐバレますからね?」
「「お母さん!?」」
コントかと思うような会話をしながら白玉楼の中に入る。
ふと、想夢は空を見上げた。
すっかり夜になってしまった。
空には三日月が、優しく光って浮かんでいた。
・・・・・・・・・
同時刻、
マヨヒガで紫は想夢と妖夢の戦いをスキマから見ていた。
幽々子の姿はない。白玉楼へ帰ったようだ。
「おーっす」
紫の前に人影が現れる。
「あら萃香、いらっしゃい」
「お邪魔するよ。どうやら2人の勝負は決着がついたみたいだねえ」
「そうね、そういえばさっきまで、
「私の『能力』ならあの場に紛れることなんて朝飯前だね。
それにしても2人とも強いねえ、もっと強くなったら私も彼らとケンカがしてみたいよ」
萃香は笑う。
「妖夢もそれなりに好戦的な性格してると思うけど、貴方はそれ以上ね」
「楽しみがなきゃ人生は充実しないよ?自分が楽しいと思えることには積極的にならなきゃ」
「人生って・・・貴方はむしろ人間に敵対する側じゃない?」
「あっはっは!それもそうだ!・・・ふう、それよりもさ」
萃香が真面目な顔になる。
「想夢を近くで見てて不思議に思ったんっだけどさ」
「・・・?どうかしたの?」
「想夢ってさ、本当に博麗の巫女なの?」
萃香の言葉に対して、紫は
「ええ」
と、短く答えた。
・・・・・・・・・
「・・・ん?」
風呂に入り終わり、もう寝ようとした想夢が部屋に入ると、
中に青白い蝶々が1羽布団の上にとまっていた。
ちなみに、蝶々に限らず昆虫は学術的には1頭、2頭と数えるのが正しいらしい。
まあ、学術も何もない話の中でするような話題ではないが。
蝶々は、布団から飛び立ち想夢の方へと向かってくる。
思わず蝶々に向かって手を伸ばす。
だが、蝶々は想夢に触れると跡形もなくフッと消えてしまった。
そのことを不思議に思いつつ、想夢は布団に入り眠りにつくのだった。