幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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相変わらず行き当たりばったりで書いています。
時々、書いている途中に「これがテンプレってやつか?」と
思ったりすることもでてきました。
はたしてテンプレはあるのか、本編いってみましょう。


21・視覚、死角、刺客

人里から少し離れた場所。

道から外れ、草が茂っている。

そこに、想夢と咲夜と妖夢の3人はいた。

「それで、異変というのは?」

咲夜が妖夢に尋ねる。

「人里の方を見てください。内側からでは分からないかったでしょうが、

外から見れば人里の異常が見えるはずです」

妖夢にそう言われ、想夢と咲夜は振り返って人里を見る。

目に映るのは、普段と何も変わらない人里だ。

「・・・何も変わらないけど」

想夢が言って振り向くのと、

 

「まあ、そりゃあそうでしょうね」

 

妖夢が想夢の首めがけて刀を振るうのは同時だった。

「!!」

突然のことに想夢の体は反応しない。

動けない。

だが、妖夢の振るった刀が想夢を斬ることはなかった。

咲夜が想夢の腕を掴んで後ろに引っ張ったのだ。

想夢は尻もちをつく形で倒れてしまったが、おかげで妖夢の斬撃をかわすことはできた。

「・・・おや、まさか反応されてしまうとは」

「紅魔館のメイドたる者、突然の出来事に対応できなくてどうします?」

こんな時でも咲夜は完全だった。

「そのフレーズ・・・聞いたことがあるんだけど」

「まあ、黒●事ネタだし。私と相性の良いネタだと自分では思っているわ」

そして、こんな時でもシャレて(・・・・)いた。

「余裕がありますねえ?」

妖夢がニィィッと笑う。それは昨日までの妖夢では考えられない程、暗い笑みだった。

「それで?どういうつもりかしら?」

咲夜が妖夢を睨みつける。

「冗談にしては笑えないよ?」

想夢も立ち上がって妖夢を睨む。

「どうしたもこうしたもないですよ?

それに冗談でもありません。私は本気で貴方の命を狙っていますよ。

少々人を知ったつもりになっていやあしませんか?

貴方に私の何が分かるってんでしょう?

そもそも・・・」

「違うよ」

想夢は妖夢の言葉を遮る。そして、妖夢の顔をじっと見て言った。

 

「妖夢のフリをした君は誰だ?冗談にしては笑えないぞ?って僕は言ってるんだ」

 

「・・・何を言っているんでしょう?私は正真正銘、魂魄妖夢ですよ?」

妖夢の顔から笑みが消える。無表情で淡々と語る。

「私も貴方とのことをよく知っているとは言えないけど確かに・・・

さっきみたいな笑顔や今みたいな顔は見たことないわね」

「本当に君が妖夢なら、あんなに鮮やかな不意打ちを決められるわけないだろう?

妖夢のことなんてほとんど知らないことばっかりだけど、これだけははっきり言えるよ」

2人の言葉を受けて、妖夢の偽物は「はぁ~」っとため息をついた。

「もうちょっと混乱してくれてもよかったと思うんですがねえ・・・

もっとちゃんと彼女の性格を調べておくべきでしたよ」

妖夢の偽物は面倒臭そうに言う。

「咲夜さん」

「分かったわ」

咲夜が人里に向かって走り出す。

「助けでも呼んでくるおつもりで?」

「まあね、用心はしておくべきだろうから」

想夢の姿が巫女服に変わり、刀を手に持つ。

刀は互いに1本。両者共にいつでも踏み込めるように姿勢をとる。

「確かに用心は大事ですね。ですが、用心だけじゃあ変えられない状況ってのもあるんですよ?

例えば、運です。運は戦闘の状況を変えてしまう要素です」

妖夢の偽物は再びニィっと笑う。

「運が悪かったですねえ?私と出会った時にもう1人誰かいれば、

私に勝てる確率もあったでしょうに・・・」

「分からないよ?君がいくら強いのか知らないけど、運が良ければ

君にだって勝てるかもしれないよ?」

「分かってませんねえ、運っていうのは確率ですよ?1%の確率を当てることはできても、

100%や0%には、結果を変える術なんてないって言ってるんですよッ!!!」

妖夢の偽物が踏み込んでくる。本物と同等かそれ以上のスピードだ。

想夢は刀を横に構え、そこに妖夢の偽物の刀が叩きつけられる。

 

その瞬間、圧倒的な衝撃が、想夢を襲った。

 

まるで巨大な岩を持っているかのようだ。少しでも気を抜くと潰されてしまう。

それ程までに妖夢の偽物の刀は重かった。重すぎた。

「ぐ・・・!」

「どうしました?表情が随分必死ですよ?さっきまでの余裕はどこに行きました?」

刀を叩きつけた本人は涼しげな顔で言う。

声を出す余裕すら想夢にはなかった。目の前の細身の少女のどこからこんな力が生まれるのか。

歯を食いしばり、目を見開き、大地を踏みしめ、腕に力を入れ、刀を握る。

右手で刀の柄を握り、左手で刃を下から支える。

「貴方も器用な真似をしますね。刃を支える手をコーティングして左手への

ダメージを防いでいる。ですが、そんな体力も霊力も消費し続けるような方法で

いつまで耐えられますかねえ?」

そんな想夢に対して、妖夢の偽物は嘲るように笑う。

「・・・ぐ・・・うぅ・・・ぅぉおおらあ!!!」

全身の力を込めて、想夢は刀の左側を下げ、右側を上げる。

刀を斜めにして、そのまま右に滑らせ、自身も全力で右へとずれる。

たった1度の攻撃を受け流すためだけに、全身全霊の力をこめた。

妖夢の偽物の刀はそのまま地面に叩きつけられる。

ゴッ!!!と、刀とは思えない大きな音を立て、辺りが土煙に覆われる。

「ハア・・・ハア・・・!」

想夢は急いで息を整える。土煙で辺りがよく見えない。

「い、今のうちに・・・」

「逃がしませんよ?」

妖夢の偽物の声がする。

次の瞬間、激しい突風が襲い土煙が消え去った。

驚いた様子の想夢の前には、左手を肩の高さで横に伸ばした妖夢の偽物の姿があった。

手を振る。その行為だけで彼女はこの辺りの土煙を吹き飛ばしたのだ。

「逃げに徹しようとしても無駄ですよ。どこまでも追いかけて、捕まえてやりますよ」

「ッ!!」

ぞっとする。冷や汗が顔を流れる。

攻めに使おうが逃げに使おうが、彼女に小細工は通用しない。

「そんな顔をしないでくださいよ。別に殺すつもりはありませんから」

妖夢は笑顔で言う。

「ただ、私の目的のために貴方に協力してもらいたいだけなんですから」

「目的・・・?」

「はい、そのために貴方をちょっとここから拉致しようとしてるだけなんですよ?

決して怪しい者じゃないですよ」

「自分のセリフをもう1度言ってみよう?怪しさバリバリだから」

「はい、そのために貴方を・・・」

「本当にやらんでよろしい」

調子が狂う。想夢は呆れた表情で目の前の少女を見る。

「まあまあ、そんな顔しないでくださいよ。できればもっと緊張した顔をしてください。

殺す気はなくても貴方を気絶させて連れ去るつもりはメチャクチャありますから」

そう言って、妖夢の偽物は刀を振るう。

「くそっ!!」

想夢は後ろに跳んで躱す。

妖夢の偽物の攻撃は受け止めきれない。受け流すのも危険だ。

彼女に攻撃に「触れる」対処は出来ない。確実にこっちの体力が先に切れる。

故に、躱すしかない。

「ほうら!どうしました!?ちゃんとよけないと真っ二つ・・・

ああいや、真っ二つとまでは言いませんがタダじゃあ済まないですよ!?」

妖夢の偽物が刀を振るう。振るう。振るう。

想夢はただただ躱す。かわし続ける。

そうしている内に、妖夢の偽物はじれったくなってきたのか。

「ちょっとやり方を変えてみましょうか、こんなのはどうでしょう?」

そう言って、突然妖夢の偽物は刀を地面に叩きつける。

土煙が舞い、視界が遮られる。

想夢が目を凝らそうとした瞬間、煙の中から刀が想夢の胸を突くように飛び出してきた。

体を横に逸らしてそれを躱す想夢。

だが・・・刀を持っているはずの彼女の姿がない。

刀は想夢を通り過ぎ、地面に刺さった。

「こっちですよっと?」

妖夢の偽物の声が聞こえてきたのは、後ろ(・・)だった。

妖夢の偽物は振り返った想夢の頭を掴んで地面に叩きつける。

「っが!!」

「そんなに痛そうな声出さないでくださいよ。これでも手加減してるんですから。

あーあー、表情まで痛そうですね。ちょっと心が痛んじゃいます」

妖夢の偽物は想夢に馬乗りになり、想夢の首に手を添える。

ただし、手に力を入れることはしなかった。

「さて、動かないでくださいよ?動くと苦しいやり方で気絶させなきゃいけませんから。

貴方も楽に意識を手放したいでしょう?・・・よし、動く気配はありませんね?」

そう言って、妖夢の偽物は想夢から手を離した。

「ち、ちなみに、どういった方法で気絶させるおつもりで?」

なんとなく想夢は聞いてみる。

「苦しいやり方なら気絶させます。楽なやり方なら『気持ちのいいこと』をします」

「き、気持ちのいいこと?」

「貴方、寝不足でしょう?目の下にクマができてますし。

なら、力を抜いて眠らせるのが、貴方も痛い思いはしないし役得だしでいい案でしょう?」

「そもそも僕は拉致されたくないんですが・・・」

「私は拉致したいので、これくらいのワガママ許してください」

正直、ワガママの範疇を軽く超えていると思うのだが、これ以上何を言っても

この少女には通じないのだろうと想夢は思った。

「では、まずはキスから」

妖夢の偽物の顔が想夢の顔に近づく。

次の瞬間。

 

「そんな展開には絶対させないわよ!断固ぶち壊しよ!!」

 

2人の顔の間を、1本のナイフ横から通り過ぎて行った。

2人が横を向くと、咲夜が少し離れた場所に少し怒った表情で立っていた。

「なんですか!人が助けを呼びに行って戻って来たと思ったら!

なんで私がいない間に2人してイチャイチャしてるんですか!?

そもそも今日は私のデートのはずだったでしょうが!どうしてこうなった!?」

叫びながら咲夜がダッシュでこちらに近づいてくる。

その迫力に、破壊衝動が復活したようにも思えてしまう。

咲夜が怒りの表情で、ナイフを妖夢の偽物の顔目がけて振るう。

「おっと」

ナイフをジャンプで躱す形で、妖夢の偽物はようやく想夢から離れた。

「さ、咲夜さん?」

立ち上がった想夢は恐る恐る咲夜に呼びかける。

「想夢」

さっきと一転して、咲夜は笑っていた。

スーパーでレジ打ちをさせたら行列が出来そうなほど完璧な笑顔だった。

それ故に、笑顔の裏が見えないことに想夢は少し恐怖を感じた。

「この埋め合わせはまた次の機会に、ということでいいわね?」

「あ、はい」

今逆らったら殺される!妖夢の偽物よりもこっちの方が怖い!

「とにかく、今はアイツを倒すことに専念しましょう?」

「なぜ敬語なのか気になるけど、まあいいわ。

ただ、今日は護身用の最低限のナイフしか持って来てないわ。

弾幕ごっこ用のナイフじゃ効果はなさそうだし、紅魔館で戦った時のような弾幕は使えない。

ナイフを使った近距離攻撃がほとんどだと思って頂戴」

「分かりました」

改めて、想夢と咲夜は妖夢の偽物と対峙する。

「作戦会議は終わりですか?それじゃあ再開しましょうか」

妖夢の偽物は余裕の笑みを浮かべていた。

いつの間に出したのか、左の手には短刀が握られている。

「はあっ!」

右と左の手にナイフを1本ずつ持って咲夜が突っ込む。

妖夢の偽物が短刀を横に振るう。

短刀が右手のナイフに当たり、そのままナイフを吹っ飛ばす。

「っ!!」

無理矢理ナイフを飛ばされ、咲夜の右手に激痛が走る。咲夜の顔が苦痛に歪む。

「貴方に用はありません。貴方は別に殺してもいいですね」

妖夢の偽物は短刀を前方に構え、咲夜の首目掛けて突き出す。

が、

腕を伸ばしきり、突き出した短刀は何も貫かなかった。目の前に咲夜はいなかった。

咲夜は、妖夢の偽物の真後ろにいた。

「時間操作ですか!」

咲夜は時間を操り、妖夢の偽物の攻撃を躱していた。

妖夢の偽物は振り向くと同時に短刀を横に振るう。

咲夜はそれを姿勢を低くして躱す。

「いいのかしら?私ばかりに目を向けて?」

咲夜が薄く笑う。

それと同時。

想夢が妖夢の偽物の後ろから刀を横に振るった。

「分かっていますよ、これくらい」

妖夢の偽物は後ろを向くこともなく、短刀を後ろに構えて刀を防ぐ。

咲夜も残った左手のナイフを突き出すが、手を掴まれて失敗に終わる。

「さあ、次はどうします?3人目を出しますか?

咲夜さんはそもそも誰かを呼びに行ったのでしょう?」

妖夢の偽物が目を細める。

「まあ、この程度の実力なら、もう1人増えても問題なさそうですが」

妖夢の偽物の両の手に力が入る。

想夢の刀が少し押し返され、咲夜の左手に痛みが走り、顔にじっとりと汗が浮かぶ。

「じゃあ、試してみようか」

顔に冷や汗を浮かべながら、想夢が笑って言う。

「何ですって?」

妖夢の偽物が怪訝な顔をする。

瞬間、

 

「貴方が、私の偽物ですか」

 

声が聞こえた。

妖夢の偽物が目を向ける。

咲夜のずっと後ろ。そこにいたのは、白い髪の少女。

 

魂魄妖夢がこちらを睨みつけていた。

 

「へえ・・・私の本物さんですか」

妖夢の偽物は余裕を崩さない。

妖夢はその場で抜刀の構えをとる。

「はああああッッッ!!!!!」

構えて叫ぶ。空気が震える。辺りに緊張が走る。

妖夢の構える刀に緑色の妖力の光が集まる。

断迷剣(だんめいけん)・・・『冥想斬(めいそうざん)』!!!」

だん!と地面を踏み込み、抜刀する。

巨大な緑色の斬撃が妖夢の偽物目がけて飛んでいく・・・ことはなかった。

抜刀した瞬間、それまで刀に集まっていた妖力はそのまま霧散してしまった。

あっけなく、音もなく、何事もなく、ただ、妖夢の斬撃はその場で空振った。

「・・・は?」

妖夢の偽物が戸惑いの声をあげる。

ただし、その声は盛大な空振りをした前方の妖夢に対してではない。

 

ずっ・・・という音と共に自身の胸から生えてきた刃に対してだ。

 

「なんで?・・・え?」

妖夢の偽物は目を見開いて胸の刃を見つめる。

その顔には初めて驚きの表情が浮かんでいた。

その表情のまま後ろをゆっくりと振り向く。

後ろには、自分が短刀に刀を防がれた想夢の姿がある。

そして、

想夢の隣で自分に刀を刺している、魂魄妖夢の姿があった。

前を向く。やはり、妖夢の姿が見える。

後ろを向く。やはり、そこにいるのは魂魄妖夢だ。

「魂魄妖夢が・・・2人?」

咲夜の後ろの妖夢が口を開く。

「私達の・・・勝ちです!」

妖夢の偽物の後ろにいる妖夢が刀を上に上げる。

胸から肩が斬られる。

 

そして、妖夢はそのまま刀を振り下ろす。

 

妖夢の偽物の体は、真っ二つになった。

 




個人的には「咲夜」と呼び捨てよりも「咲夜さん」とさん付けの方が
しっくり来ます。
しかし、まさか3度目の戦闘回が出ることになるとは・・・
いや書いてるのは自分なんですがね。
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