幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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「第1章、第2章・・・って書くにはちょっと短すぎない?」と思い、
1話、2話・・・という区切りにしています。
では、この1,2・・・と分けている部分はどう言えば
いいのだろうか・・・?


22・コンティニューゲーム

ゴトン

と、音がして、妖夢の偽物の上側(・・)が地面に落ちた。

「ああ、これは負けですね」

妖夢の偽物が言う。

「頭に首、右肩、右腕、右手、今の私に残っているのはこれだけですか。

これじゃあ3人どころか1人にすら勝てません。まったく、油断してしまいました」

肩から胸にかけて斜めに斬られ、妖夢の偽物の体は真っ二つになった。

下側の体は黒い霧のような「何か」となって霧散してしまった。

残った上側の断面からも、黒い「何か」が漏れ出ている。

「しかし、私があのような手に引っかかるとは、少々自信過剰でしたかねえ?」

想夢が妖夢の偽物に不意打ちで攻撃を仕掛けられた時、

妖夢が偽物だと気が付いた時、

1つの不安が想夢と咲夜の中にはあった。

それは、「目の前の妖夢の偽物が本物の妖夢の体を乗っ取っている可能性」である。

だから咲夜はまず妖夢を探した。

そして妖夢を連れて想夢のもとへ戻る際、妖夢に頼み事をした。

「咲夜さんの後ろにいた妖夢こそが本物。私の後ろにいた妖夢は・・・半霊の分身ですか」

咲夜が妖夢に頼んだのは、半霊を使った不意打ちだった。

半人の方の妖夢が咲夜の後ろ、妖夢の偽物の前方で派手に注目を集める中で、

半霊の方の妖夢に、妖夢の偽物を斬らせる作戦だった。

霊は人よりも存在が希薄だ。故に気づかれにくい。

そして、不意打ちの苦手な妖夢がやることに意味があった。

「妖夢なら正々堂々とやるだろう」と思わせることで、とにかく不意打ちの成功率を上げた。

わざわざ妖夢の偽物に、「本物の妖夢ならそんなに上手く不意打ちなんてするはずがない」と

言ったのもそのため・・・と言いたいが、それはただの偶然だ。

まあ、妖夢が本当に乗っ取られているなんて状況だったら使えない手だったが。

「それで、君は誰なんだ?どうして僕を狙う?」

想夢が妖夢の偽物に聞く。

斬ったからなのだろうか、それとも化けの皮が剥がれようとしているのか。

妖夢の偽物の髪や目、肌が黒くなっていく。

褐色とか黒人などという話ではない。まるで灰色の絵の具で塗ったかのように、

肌の色が変わっていく。

「私が何者か、ですか・・・それは、今はまだ秘密にしておきましょう」

それでも、妖夢そっくりな話し方は変わらないままだ。

「貴方を狙う理由も教えることはできません。ここで言ってしまうと、

咲夜さんや妖夢にも聞かれてしまいますから。

ただ、言うべきことがあるとすれば、これはただの演出です。

そして、今回のこの出来事は伏線です。

私である必要はなかった。咲夜さんでもよかった。紫様でもよかった。幽々子様でもよかった。

戦う必要はなかった。会うだけでもよかった。言葉を交わすだけでもよかった。

話しかけるだけでよかった。

派手さはいらなかった。地味な接触でもよかった。

ただ、今回は妖夢だった。今回は戦った。今回は派手に始めた。

さて、

 

私の言葉、何が本当で何が嘘でしょうか?

 

私は大事なことを言ったんでしょうか?

 

私はちゃんと考えて言葉を発しているんでしょうか?

 

私は伏線になったのでしょうか?

 

何を知るにしても情報が足りません。

 

何を得るにしても情報が足りません。

 

こんなに意味深な言葉ですら、もしかしたらテキトーに話しているだけかもしれません。

 

それじゃあ最後に、これだけは本当だということを、言ってあげましょう。

 

『これで終わりではないですよ?』

 

それでは、また会いましょうね?約束ですよ?」

 

妖夢の上側は黒い霧となって消えた。想夢達はしばらくその場から動かなかった。

ただ、何かが始まろうとしている。あるいは、もう始まっている。

それは、3人共、感じていた。

「・・・妖夢、助けてくれて、ありがとう」

想夢が妖夢にお礼を言う。どのような形にしても、まずはこの不穏な空気を変えたかった。

「ええ、協力すると言いましたから、有言実行できてよかったです」

妖夢も笑って答える。

妖夢の姿をしていた半霊が、ただの半霊に戻る。

「それでは、私はこれで。

今回のことを幽々子様にご報告しなければいけませんので」

そう言って、妖夢は去って行った。

「僕達はどうしようか」

想夢が咲夜に聞く。

「そうね・・・私はお嬢様に報告するのは夜で十分だし、想夢さえよえれば、

もう少し付き合ってほしいのだけれど」

「それじゃあ、人里に戻りましょうか」

「・・・ええ」

想夢は答える。

咲夜は笑っていた。

 

・・・・・・・・・

 

「それで、戦闘直後にデート再開したの?

なんていうか・・・アンタも咲夜も図太いっていうか、イイ性格してるわね・・・」

霊夢が呆れたようにこちらを見る。

陽が沈みかけている時間。

デートを終えて、「またね」と咲夜と別れ、神社に帰って来た。

夕食を食べながら、想夢と霊夢は向かい合って話す。

「ところで、霊夢。人里で会った人のことだけど・・・」

「ああ、あの子ね。学校の制服を着た子なら、『佐藤(さとう)壱人(いちひと)』。

ただの人間よ。幻想郷に来たのはいつだったかしら・・・もうすぐ1年になるのかしら?

まあ、いかにも外の世界出身ですって恰好してるうから気になるのも分かるけど、

本人は至って普通の一般人よ。私達のようになにか特別な能力があるわけじゃない。

妖怪と戦ったことがあるわけじゃない。

普通に生きて、普通に笑って、普通に幸せそうな、普通な人間よ」

「やけに普通を強調するね・・・」

「ええ、なんでかしらねえ?

 

彼に関してはどうしても『普通だ』って思っちゃうのよねえ・・・」

 

・・・・・・・・・

 

同時刻、白玉楼にて。

「それで、幽々子、話っていうのは?」

紫と幽々子が向かい合って座っていた。

「ええ、これは話すべきか迷ったんだけどね。実は、想夢に私の『能力』を使ってみたのよ」

「な、なんですって!?」

紫が声を荒げて驚く。

当然だ。幽々子の持つ能力とは「死を操る程度の能力」というもの。

名の通り命あるものに「死」を与える。単純にして協力な能力。

そんなものを使ってもしも仮に想夢が死んだらどうするつもりなのか。

「まあ、少しの間仮死状態になる程度のモノを彼に仕掛けてみたの」

「はあ、ちなみに、どんな風に?」

紫が尋ねると、幽々子は片方の手のひらを上に向けた。

すると、手のひらの上に1匹の青白い蝶々が現れた。

「この蝶々を使ったの。

だけど、その結果がどうにもよくわからなくてねえ・・・それで紫の意見が聞きたくて」

「私の意見?」

紫の顔つきが神妙なものになる。

「私の能力が想夢には効かなかった(・・・・・・)のよ」

「・・・効かなかった?」

「そう、彼の能力は知っているわ。『断ち切る程度の能力』でしょう?

もしかしたら私の能力を断ち切って死を回避したかとも思ったんだけど、

それだとどうしても納得できない部分があって」

「納得できない部分?」

正直、想夢が「断ち切る程度の能力」で幽々子の能力を回避したとしても、

紫には納得ができない。

咲夜の時とは状況が違う。

想夢が咲夜の能力を封じることができたのは、咲夜が能力を使う前に自分の能力を発動させて

いたからだ。

それは咲夜との戦闘中という状況だったからこそ、想夢は咲夜の能力に用心できた。

咲夜の「時間を操る程度の能力」を想夢は事前に知っていた。

だから、その能力が自分に襲い来ることも予想ができた。

だが、幽々子の場合はどうだろう?

想夢は幽々子の能力がどんなものなのか知らない。

さらに、想夢は自分の方へ向かってきた蝶々にただなんとなく触れただけだ。

それが「死そのもの」だとも気付かずに。

そんなものが1度発動すれば想夢は能力を使う暇なく仮死状態になってしまう。

能力が発動した後では、想夢の能力では防げないのだ。

つまり、想夢の「断ち切る程度の能力」で相手の能力を封じるには、

少しでも相手の能力を理解しておく必要があり、相手の能力の発動前でないと使えない

ということである。

しかし、幽々子の発した言葉は、紫の考えを超える内容だった。

 

「私の能力が打ち消された瞬間、想夢から私と全く同じ能力を感じたの」

 

・・・・・・・・・

 

さらに同時刻。

ある山の上の神社にて。

「ただいま帰りましたー!」

少女の元気な声が響く。

「あ、お帰りー早苗ー」

早苗を呼ぶ声が聞こえる。

「ああ、早苗、お疲れさま」

早苗の前に現れたのは、目玉のついた帽子をかぶった少女と注連縄(しめなわ)を背負った女性だった。

いや、「背負った」というのは正確な表現ではないが、そこまで言及する程のことでも

ないだろう。

神奈子(かなこ)様、諏訪子(すわこ)様、聞いて下さい!今日、ある人に出会ったんです!」

「ある人?また随分と真剣な表情で言うねえ、まさかその人に一目惚れでもしたの?」

帽子の少女が笑う。

「え?一目惚れ?いやいや、お父さん・・・じゃない、お母さん?いやいやとにかく早苗、

まずはその子をウチに連れて来なさい。保護者としてじっくり審査します」

注連縄の女性は1人で暴走していた。

「いやいやそういうんじゃないですよ。

神奈子様、諏訪子様。お二人は噂のもう『1人の博麗の巫女』の噂は聞いてますよね?」

「うん知ってるよ、最近有名だからね。もしかして早苗が会ったって言うのはその

博麗の巫女のことかい?」

帽子の少女が尋ねる。

「はい!噂の博麗想夢さんに偶然会ったんです。そしてその姿が

ちょっと気になってまして・・・」

「姿が気になるって・・・そんなに変な服装でもしてたのか?」

注連縄の女性が首を傾げる。

「いえ、服装が変とか、顔が変とか、そういう話じゃないんです。ただ、その・・・

 

その博麗想夢さん、あまりにもそっくりだったんです。その、先輩(・・)に・・・」

 

「え?先輩って・・・」

「アイツにか?」

少女と女性の表情が曇った。

 

・・・・・・・・・

 

同時刻なのかどうか、時刻も位置もわからない場所で四季映姫は1人で考えていた。

(果たしてこのままでいいのでしょうか、いや、よくはないですね。

むしろ今のままでは悪いのですから、私はわざわざあの人と接触したのですから。

しかし、あの人を「人」と呼んでもよいのでしょうか?

確かに死後に化け物になるとはいいましたが、

 

彼、今のままでも十分に化け物と呼べるレベルですからねえ・・・。

 

まあ、それでも彼を「人」だと思えるのは、彼がそうあろうとしているからか、

それとも、彼の周りに彼以上の化け物がいるからなのか。

あるいは私が、彼を「人」という名の「化け物」だと認識しているのか。

さて、これからどうなるのだろう。博麗想夢。いや、――—)

考えに考えて、考えて考えて、映姫は一言小さく呟いた。

「今は見守りましょう」

 

・・・・・・・・・

 

夜。

昨日寝ていなかったこともあり、想夢は早めに眠りについた。

妖夢の偽物、佐藤壱人、西行寺幽々子、東風谷早苗、四季映姫。

想夢の知っている所で、あるいは、想夢の知らない所で。

想夢の気付いた所で、あるいは、想夢の気が付かない所で。

想夢が気にしている所で、あるいは、想夢が気にしていない所で。

場所はそれぞれ、人もそれぞれ。

ただ1つ共通して、

 

想夢の知らない、想夢の気が付かない、想夢が気にしていない話が、

ゆっくりと、ゆっくりと、それでも確かに、確実に進んでいた。

 

そのことを想夢はまだ知らない、まだ気が付かない、まだ気にしない。

だけどそれは、いずれは先へと進む話だ。

 

そして、すでに始まった話でもある。

話はまだ、終わらない。こんな途中じゃ、終われない。

 

ここじゃない場所で、ここかもしれない場所で、

誰かの知らない話が、誰かの知っている話が、

誰かが気にした風に、誰も気にもしない風に、

 

話が、 続く。




今回で3話「白い剣客、酷い幻覚」は終わりです。
まあ、短編やら設定やらがもしかしたら入るかもしれませんが。
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