幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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時間が空いてしまいました。
レポートって疲れます。



26・内と外の線引き

「想夢さんって朝はご飯派ですか?それともパン派ですか?」

「特にはないけど・・・最近までは朝ごはんなんてそもそも食べなかったし」

「あれ?そうなんですか?私はてっきり『ご飯?パン?フッ甘いな・・・朝はシリアルだろ?』

とか言うと思ってたんですが」

「・・・君には僕がそういう風に見えていたのか?」

「いいえ全く!」

「イイ笑顔で言うなぁ!」

 

今朝の会話より抜粋。

 

・・・・・・・・・

 

「よーし、できたー!」

「おー!」

「ついに・・・できてしまった・・・」

にとりと早苗が喜びの声を上げる中、想夢は複雑な心境だった。

完成してしまったのだ、シンデレラの衣装が。

覚悟はしていたとはいえ、いざとなるとやはり女装には勇気がいる。

作ったのは見るからにボロボロな少し汚れた服の服と、薄い水色の清潔そうなドレス。

対極に位置する2つの衣装。

「あとはこれをどうやって着替えるかなんだよね」

にとりが頭をかきながら言う。

「他のシーンは特に問題ないんだけどさ、魔法使いが魔法でこのボロ服をこっちのドレスに

変えるシーンだけはどうしたもんか悩み所なんだよね。

劇を見てる人達の前で服が変わるワケだからさあ。

まさかカーテンなんか使って『30秒で早着替え!』なんてやるわけにもいかないし、

魔女役の魔理沙は衣装チェンジみたいな魔法は絶対覚えてないだろうし、

いっそのこと『超高速早着替えマシン』でも作ってみるか・・・」

「アリスさんに相談してみては?同じ魔法使いなんですし」

早苗の提案ににとりは「あー・・・」と納得したような顔をする。

「そういえば彼女もそうだったか。

そうかそうか、それじゃあアリスとも協力して舞台裏からなんとかしてみるかな?

まあそっちはそれでいいとして、とりあえずは服のサイズを確認しなきゃ。

想夢、ちょっとこの2つの衣装着てみてー!」

「ぐ・・・わ、分かった、着るから!着るからその期待した目をやめて!?」

 

―――着替え中―――

 

「ど、どうだ!?」

ボロい方のシンデレラ衣装を着た想夢が叫ぶ。半ばヤケクソ気味だった。

「おおー、似合う似合う!」

「すっごくお似合いです!」

にとりと早苗の黄色い歓声に嬉しいような、悲しいような、複雑な気分だった。

「ああ、あと想夢は文化祭まで髪切るの禁止ね?」

「え?」

「髪伸ばした方がより女の子らしくなるからね。

素の状態で女の子に見えれば、カツラとか用意する必要もなくなるしさ」

その後、ドレスの方の衣装も着てみたが反応は同じだった。

 

「さ、次は早苗の衣装を作ろうか」

「その前に僕はどうしてればいいんでしょうか・・・?」

男性である自分が女の子の衣装作りに参加するわけにもいかないだろう。

「あー・・・そうか、でも協力してくれる人は欲しいし、他のメンバーも

自分たちの衣装で手一杯だろうしー・・・」

悩むにとりと想夢。

「わ、私なら大丈夫ですよ!?想夢さんなら男性とは思えないんで!」

早苗のフォロー(?)が入り、精神的にダメージを受ける想夢。

「よし、じゃあ想夢にも手伝ってもらおう。女性として(・・・・・)

悪ノリするにとり。

結局、女装させた想夢に「お前は女だ」と言い聞かせ、早苗の衣装作りを手伝うことになった。

「いやでも女の子の体のサイズを測るのはいくらなんでもダメだと思うんだけどなあ・・・」

「想夢さん!なるべく男らしさを消すためになるべくしゃべらない方向でお願いします!」

「いっそのこと女の子みたいな喋り方にすればいいんじゃない?」

「いやいやいや、待って、落ち着こう?」

 

・・・・・・・・・

 

「ただいま」

「おかえり」

博麗神社に帰って来た。なんだか精神的に疲れた想夢だった。

「あれ?想夢?なんだかさらに女らしくなった?」

精神的ダメージがまた1つ。

「・・・ちなみに、どこらへんが?」

「いや、なんか雰囲気が」

想夢の精神ダメージはどんどん加速していった。

 

翌日、ニヤニヤしながら「いってらっしゃい」と霊夢に言われながら、

想夢は博麗神社を出た。

絶対に昨日の「女っぽくなった」をまだ引きずってやがるな・・・と考えながら。

マヨヒガに行くには妖怪の山に入る必要がある。

妖怪の山は人里のさらに先にある。

人里から行くならともかく、博例神社からでは普通に歩いていたのでは

時間がかかりすぎてしまう。

だから、想夢は人里で魔理沙と待ち合わせし、彼女の箒に乗せて貰う。

文化祭準備期間中は基本毎日そうしてもらっているので、今日も想夢は人里へ向かう。

 

だが、

 

様子がおかしい。いつまで経っても待ち合わせにこない魔理沙もそうだが、

それ以上に、人里に活気がない。

活気どころか人がいない。

人里に入り、待ち合わせ場所に着くまでに誰にも会わなかった。

一体どうなっているのか・・・。

辺りを見回す想夢に誰かが後ろから声をかけた。

「よう、久しぶりだな」

馴れ馴れしく、気軽に、友人に挨拶するように。

「魔理沙?」

想夢が後ろを振り向くと、魔理沙がいつもと変わらない姿でそこにいた。

いつもと変わらない姿で、いつもと変わらない仕草で、ただ、雰囲気が違うように感じた。

「久しぶり・・・って昨日も会ってるだろう?」

「昨日?何を言って・・・ああ、そうか、これじゃあダメか」

そう言って魔理沙は笑う。魔理沙らしくもない、真っ黒な笑みを浮かべる。

「人里に入るにはコイツの姿が一番自然だと思ったが、お前が分かんないんじゃあ意味ないな」

魔理沙がそう言った直後だった。

一瞬、視界にノイズが走ったように見えた。

気が付くと、魔理沙の姿はなく、魔理沙がいた場所には妖夢が立っていた。

 

「これでも分かりませんかねえ?想夢さん?」

 

妖夢が黒い笑みを浮かべる。

「君・・・」

そして想夢は思い出す。

妖夢の偽物に襲われたあの日を。真っ黒になって消えたアイツを。

「どうやら思い出してくれたようですね?お久しぶりです」

「君、あー・・・なんて呼べばいいんだ?『偽物』?・・・で、いいのか?」

「それはちょっと傷つきますね・・・気軽に『クロちゃん』とでも読んで下さい」

「クロ・・・?」

「サイボーグ・・・」「ストップ!!」

なんとも締まらない会話だった。

 

「さて、と」

雰囲気をシリアスに戻すために、クロは咳払いを1回する。

「人里に人がいないの、分かります?」

クロは想夢に問いかける。

「ああ、君がやったんじゃないのか?」

「私は人里や人里の住人には何もしていませんよ?まあ、貴方にはやりましたが」

さらりと言ってのけるクロ。

身構える想夢。

「僕に・・・?」

「ああ、そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ?ちょっと貴方の存在を切り離しただけですから。

簡単に言えば、貴方と幻想郷の住人が互いに互いを認識できなくしただけです。

想夢さんには周りの人達が認識できないし、周りの人達には想夢さんが認識できません。

だから姿も見えないし声も聞こえない。

そして『認識できない』というのは『いない』のと同じこと。

だから認識できない者同士がぶつかることもない」

クロはクスクスと笑う。

「ここまで出来るくらいには、私の力も強くなったということですよ。

今、この世界には私と貴方しかいません。世界で2人きりですよ?

必然的に彼氏彼女の仲になっちゃうと思いません?」

「それで、こんなことをした理由は何だ?」

「あら、つれない人ですね、もう少しお話しましょうよ?貴方を愛する女の子が

こんなに話したがってるんですよ?」

「積極的過ぎるでしょ・・・」

 

一区切り。

もう一度咳払い。

真面目なトーンに戻す。

 

「私は貴方に言いましたよね?『これで終わりではない』と。

私の演出はまだ続きます。私の伏線はまだ続きます。

さて、今回はどんな方法で貴方を攫うと思います?」

「・・・どうしようか?」

いまいちシリアスになりきれない話の中でも、想夢は内心焦っていた。

前回の戦闘でクロの強さは分かっている。

そして、クロは前回よりも強くなっている。

正直、勝てる気が全くしない。

「まあ、今回は私は戦いに来た訳ではありませんし、

今ここで貴方と戦うなんてことはしませんよ。やり方って大事ですし、

簡単に物事を進めてしまってはお話もつまらなくなってしまいます。

ここはまだまだ伏線を張るに留めておきましょう」

クロが何を言っているのか理解っができない。

だが、そこに確かな思惑があるのは感じる。

「ねえ、まだ・・・教えてくれないワケ?君が僕を狙う理由。

前は、僕以外にも人がいるから教えないって言ってたけど」

想夢は表面上は冷静を装って尋ねた。

しかし、内面は自分の理解できないことだらけでビビりまくりだったが。

「んー、まだ教えません。なんだか2人の世界に3人目が入ってきちゃったみたいですし。

あーあ、せっかくの2人の世界だったんですがねえ・・・。

まったくどうやって侵入してきたのやら・・・。

それじゃあ、今日は帰ります。『また、会いましょうね?』それでは」

そう言って、クロは黒い霧となって消えた。

「・・・・・・・・・あれ?」

クロは消えた。

しかし、人里に人が戻る気配は全くない。

「もしかして・・・取り残された?」

冷や汗が出てくる。

さっきまで隠していた焦りやビビりが目に見えるようになってくる。

「ヤバイ、ヤバイ、どうする?解決策が見つからない・・・え?

これからどうするの?世界で僕独りぼっち?世界レベルのぼっちになっちゃうの?」

そうして、焦ってビビッてうろたえていると。

「想夢さん?」

「うわああああああぁぁぁぁぁ!?」

「ひひゃああああああぁぁぁぁ!?」

後ろから声をかけられビビりマックスで叫ぶ想夢。

それにつられたのか、それとも想夢の声にびっくりしたのか、声をかけた方も叫ぶ。

「さ、早苗!?」

「想夢さん!いきなりさけばないでくださいよう!」

プリプリと頬を膨らませて早苗は怒る。

「ご、ごめん。それで、どうかしたの?」

「ああ、そうでした!想夢さん手伝ってもらえませんか!?」

ハッとして、焦ったように早苗は言う。

 

「妖怪の山が暴走しているんです!」

 

・・・・・・・・・

 

「はあ!・・・はあ!・・・」

 

妖怪の山。人里から山の参道入り口まで走ってやって来た想夢は立ち止まって息を整える。

早苗は「霊夢さんを呼んできます!」と博麗神社に、文字通り飛んで行った。

「山が暴走してるって・・・何が起こってるんだ?」

想夢は山の中に入っていく。

妖怪の山は見た目は何も変わっていない。

しかし、参道を歩いていると山の中に嫌な雰囲気が満ちているのが分かった。

まるで山そのものから敵意を向けられているかのような、そんな気分だ。

 

少しの間山を歩いていたが、ふと、足が止まる。

誰かがこちらを見ている。

いや、これは睨みつけているのだろうか。

明確な敵意が痛い程に伝わってくる。

「そこのあなた」

そう言って現れたのは白い狼のような少女だった。

マヨヒガに行くときに何度か見かけた、白狼天狗(はくろうてんぐ)という妖怪だ。

妖怪の山は仲間意識が強く、排他的だ。

白狼天狗達は、そんな山を千里を見通す目で見張り、

侵入者に対して警告を行う役割を持っている。

もっとも、守矢神社への参拝客など、侵入者ではなく客とみなされる場合もあるが。

想夢の場合は目的がマヨヒガで、魔理沙も一緒にいるため、一応、客とみなされている。

だが、この白狼天狗はこちらを敵視している。

おそらくは「山から出て行け」と警告してくるのだろう。

 

「侵入者ですね?死んでもらいます」

 

そう言って白狼天狗は、腰にぶら下げた刀を抜き出し、想夢に向かって縦に振った。

「・・・ッ!」

反射的に横にかわす。

そのまま想夢は戦闘時の巫女服となり、博麗刀を構えた。

すると、

 

「反抗の意思あり、増援を呼べ」

 

「何人かは上部へ連絡しに行くんだ」

 

「コイツを山から逃がすな」

 

「侵入者は敵だ。敵は殺せ」

 

山のあちこちから声が聞こえてくる。

そして、姿は見えないが視線の数が増えていく。

「死ねえ!!!」

さっきの白狼天狗がまた想夢めがけて刀を振るう。

その斬撃を刀で受け止めながら、想夢は白狼天狗の腹に蹴りを入れた。

「ぐ・・・!」

そのまま白狼天狗は吹っ飛ばされ、山に無数に生えている木の1本にぶつかり気を失った。

すぐさま次の白狼天狗が襲い掛かってくる。

しかし、これも一撃で倒すことができた。

今度は3人同時にかかってくる。これも想夢は撃退した。

思った以上にこの白狼天狗達は弱かった。

マヨヒガに行く途中に出会った白狼天狗達に弱そうな印象は受けなかった。

いくらなんでも弱すぎる。

そのことが気がかりであったが、これならばこの場を切り抜けられるかもしれないと、

想夢は思った。

 

しかし、突如として今までよりも速いスピードで、今までよりも重い斬撃が想夢を襲った。

「な・・・!?」

なんとか刀で防いだ想夢だったが、思わず後ろに一歩下がる。

想夢に突っ込み、斬撃を放ってきた白狼天狗は想夢から一旦距離をとった。

 

犬走(いぬばしり)(もみじ)、参ります」




※東方に関して「この小説読んだせいで
何が公式設定で何が違うのか分かんなくなったよ!」
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