幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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改めて文章を書くことの難しさを感じる今日この頃。
きっと漫画を描いたとしても同じようなことを言うんだろうなぁ・・・。


27・行かせない、生かさない

「はあああぁぁぁ!!!」

叫び声をあげながら椛と名乗った白狼天狗は刀を振るう。

右手に大き目の刀を持ち、左手に盾を構えている。

想夢はその斬撃をかわし、刀で受け止め、いなす。

相手の攻撃に対処できているが、こちらから攻めることができない。

どこからともなく他の白狼天狗が現れて攻撃をしかけてくるのだ。

ここは妖怪の山だ。地の利は相手にある。隠れる場所などいくらでもあるだろう。

「どうしました?最初と比べると余裕がなくなってきたように見えますよ?」

椛が挑発をしながら刀を振るう。

「くっ・・・!」

想夢はそれをかわす。

その瞬間、後ろから現れた白狼天狗が斬りかかる。

「くらえ!!」

その白狼天狗の攻撃をかわして白狼天狗を倒すと、椛がすぐさま次の攻撃をしかける。

まさに悪循環だった。

そうした流れがずっと続く中、椛と想夢の刀がぶつかり合い、鍔迫り合いが起こる。

想夢は両手だが椛は片手だ。人と妖怪の力の差か。

そんな鍔迫り合いの最中のことだった。

 

「この状態なら、回避も防御もできませんよね?」

 

と、椛はニヤッと笑った。

次の瞬間、数人の白狼天狗が想夢の後ろから襲い掛かってくる。

鍔迫り合いの真っ最中、想夢に動くことはできない。

「終わりですよ」

椛の言葉に嫌な汗が浮かぶ。

後ろの白狼天狗の振るった刀が想夢に届こうとしたその時だった。

 

想夢と白狼天狗の間を青白く光る星型の弾が想夢と白狼天狗の間を横切った。

「!?」

思わず後ろに下がる白狼天狗達。

椛も鍔迫り合いを止め、後ろに跳んで距離をとった。

「今のは・・・?」

「まさか・・・」

困惑する想夢に驚く椛。

「遅くなりました!想夢さん!」

早苗が上空から飛んできたのだ。文字通りに。

早苗は想夢の後ろに着地し、白狼天狗達に向かって御祓い棒を構える。

「私が他の白狼天狗達を相手します。ですので想夢さんは椛さんに集中してください!」

「分かった!」

背中合わせに構える想夢と早苗。

椛と他の白狼天狗達は2人を睨みつけたまま動かない。

そのまましばらくお互いの出方を探っていたが・・・

「えーいもう我慢できません!来ないならこちらから行くまでです!」

早苗が我慢の限界を迎えてしまった。

 

「開海『海が割れる日』!」

 

早苗の言葉を発すると、早苗の目の前に波が現れた。

太陽の光に反射して波を構成する水が輝いている。

波は前方へ走りだし、水は勢いに任せ白狼天狗達にぶつかり、彼らをその場から押し出す。

小規模ながら、その様子は全てを飲み込む津波のようにも見えた。

「スペルカード・・・」

椛が呟く。

本来は弾幕ごっこで使う技であるが、決して実戦で使えないわけではない。

当たれば負けの弾幕ごっこならば弱い弾幕を使えばいい。

実戦ならば、相手にダメージを与えるための弾を作ればいい。

もっとも、弾幕ごっこででも怪我人や死人が出るときはあるのだが。

 

早苗のスペルカード発動と同時に想夢も前へ踏み込み、椛に向かって横に刀を振るう。

椛は左手の盾で刀を防ぎ、そのまま右手の刀を振るうが、

想夢は身を屈めて斬撃をかわす。

その隙をつくように白狼天狗達が現れ突撃してくるが、

「させません!」

早苗が霊力で作り出す弾によって全員が倒される。

「くっ・・・!」

椛の顔に焦りが浮かぶ。

先程までのやり方がいきなり通じなくなったのだ。

しばらくは想夢と椛の剣戟が続くが、徐々に椛が押され始める。

そして、

「せやあああぁぁぁ!!!」

叫び声と共に想夢が刀を振るう。

椛が盾を構えた瞬間、想夢の刀が青白く光った。

「!!」

「押し通させてもらう!!!」

想夢は博麗の巫女だ。博麗の結界術を使うことができる。

これまでも結界術を戦いに使ってきたが、その結界を作っているのは何か?

答えは、霊力。

霊力は人間の力の源であり、結界を作るだけが使い道じゃない。

弾幕を作る、空を飛ぶ、能力を使うなど、霊力の使い道は様々だ。

そしてその中には身体能力や攻撃の威力など、単純な「力の強化」という使い道もあるのだ。

「ぐ、うぅ・・・!!!」

霊力を刀に流し、腕から刀の切っ先まで、霊力を纏った一撃は防御態勢をとった椛を

そのまま吹っ飛ばした。

吹っ飛んだ椛は山に生える木に頭からぶつかり気絶した。

 

・・・・・・・・・

 

椛を撃破した後、自身に向かってくる敵意の視線が減ったことに想夢は気付いた。

「いったいどうなってるんでしょう・・・?」

早苗が不安げに呟く。そういえば・・・

「早苗、霊夢はどうしたんだ?呼びに行くって言ってたけど・・・」

想夢が聞くと、早苗は信じられない言葉を口にした。

 

「それが・・・霊夢さんを呼びに博麗神社に行ったんですけど、神社に霊夢さんいなくて・・・。

それどころか妖怪の山と博麗神社を往復する間に人も妖怪も誰一人として見かけなかったんです」

 

「・・・え?」

何と言った・・・?早苗の言葉が衝撃的過ぎて理解に時間がかかった。

確かに人里に人はいなかった。

それはただクロのせいで自分が認識できていないだけだと思った。

妖怪の山で白狼天狗達と戦って認識できない状態は終わったと思っていた。

だが、早苗は誰一人見ていないと言う。

本当に認識していない状態は終わったのか?それとも早苗が認識していないだけか?

あるいは本当に誰もいなくなってしまったのか?

「そもそも私が想夢さんを呼びに行ったのは、神奈子様と諏訪子様が

突然消えてしまったからなんです。

いつものように劇の練習のためマヨヒガに行こうとしたら神奈子様と諏訪子様の姿が

見当たらなくて、先に行ったのかと思ってマヨヒガに向かったんです。

途中でにとりさんに会ったんですけど、様子がおかしくて、

会った瞬間信じられないようなモノを見る目で私を見るんです。

にとりさんは私に言いました。

『今までどこに行ってたんだよ!?もう皆やられてしまった!』って」

早苗の話を聞いているとどんどん訳が分からなくなってくる。

ここは本当に自分の知っている幻想郷なのか?

話している早苗自身も訳が分からないようだった。

「そしたらいきなり黒い霧のようなものが現れて、にとりさんが『逃げろ!』って叫んで、

私、これは異変だと思って、人を呼ぼうとして人里まで行ったら想夢さんがいたんです」

そして、その後霊夢を呼びに行ったが博麗神社に霊夢はいなかった。

早苗の行動は分かった。

そして、話の中で気になる言葉があった。

 

黒い霧。

 

思いつくものは1つしかない。

「・・・クロ」

この現状はクロの仕業なのか。

いろいろな考えが頭をよぎるが、いくら考えても思考はまとまらない。

「・・・とにかく、守矢神社を目指そう」

「はい・・・」

今はただ、行動するしかなかった。

この異様な状態で2人の不安は高まるばかりだったが、2人ともそれを顔には出さなかった。

お互いに心配をかけまいとしているのだろう。

「・・・行こう」

想夢と早苗が一歩踏み出したその時だった。

 

「はい、ちょっと止まってもらえますかー?」

 

突然、風が吹いた。

そして、2人の前に黒い翼の少女が舞い降りた。

「・・・文」

「はい、清く正しく・・・いや、もうどうでもいいことですね。どうも、射命丸文です」

想夢は文とは会ったことがあるが、この少女が文だとは思えなかった。

想夢の会った文と今目の前にいる文はそれだけ違っていた。

見た目の話ではない。

雰囲気の話だ。

ノリの軽そうな新聞記者。それが想夢の文に対する第一印象だった。

だが、目の前にいる射命丸文は、ひどく暗い目をしていた。

いや、目だけじゃない、表情も暗く、全体的に雰囲気が暗い。

そして、敵意、悪意、殺意・・・マイナスの感情がにじみ出ているとでも言えばいいのか。

見た者をぞっとさせるような雰囲気を今の文は纏っていた。

想夢がここまで違うと感じてしまうのだ。

同じ妖怪の山に住み、文と会うことも多いであろう早苗はどうだろうか。

横目に早苗を見る。

恐怖や怯えを出すまいと必死に頑張っているようだが、少し顔が青いようにも見えた。

「白狼天狗の報告を聞いて来てみれば・・・随分と懐かしい顔がいますね」

文が口を開く。

「早苗さん、今更何の用ですか?もうここに貴方の居場所なんてないんですよ?

神社に戻ってどうしようってんですか?あんな朽ち果てた神域に何かあるとでも?

・・・さっさと山から出て行ってもらえませんかねえ?」

「・・・ちょっと待ってください」

文の言葉を早苗が遮る。その声は震えていた。

「さっきの言葉、どういう意味ですか?」

「はあ?」

「神社が・・・守矢神社が朽ち果てた(・・・・・)ってどういうことですか!?」

必死な声で早苗が叫ぶ。

そんな早苗の叫びに文は、

「ああもう、なんだってんですか」

イライラしたように答えた。

 

「貴方だって知ってるはずですよ?守矢の神はもう朽ち果てた。

だから貴方は幻想郷から逃げたんじゃないですか。

まさか、全てを捨てて逃げ出した当の本人が、忘れたなんて言いませんよね?」

 

早苗が膝から崩れ落ちる。

「なん・・・で・・・何が、どうなって・・・」

普段の早苗ならば信じなかっただろう。

「神奈子様と諏訪子様が負けるはずありません!」と言い切っただろう。

だが、理解の追いつかないような状況を立て続けに見せつけられたのだ。

神奈子と諏訪子の不在、人々や妖怪達の不在、敵意を向けてくる天狗達。

その全てが早苗の思考をマイナスの方向へと引っ張る。

そんな早苗に文は言葉を続ける。

「だいたい何ですかその恰好は?今更巫女の恰好をして何のつもりですか?

巫女であることも、風祝(かぜはふり)であることも、神であることも、幻想郷の住人であることも

全部捨て去って消えたくせに・・・忌々しい」

文は憎々しげに早苗を睨みつける。

その後、文は想夢の方を見て不思議そうな顔をした。

「ところで、貴方は誰です?私の名前を知っていたようですけど・・・

それに、その服は博麗の巫女ですか?博麗の巫女なんてもう何年もいないってのに・・・」

文が想夢のことを知らない。

博麗の巫女がいない。

文の話を聞けば聞くほど違和感を覚える。

自分が今まで過ごして来た幻想郷とこの幻想郷には違いが多すぎる。

人がいないだけならまだクロの説明だけでも納得できた。

自分が認識できないだけだと言うならまだ納得できた。

だが、本当にそれだけか?

ここはまるで異世界だ。

 

自分達は知らないうちに別の幻想郷に来てしまったのではないか。

 

クロはこうも言っていた。

「『認識できない』というのは『いない』のと同じこと」と。

クロの言葉が嘘でも本当でも、

この幻想郷が想夢の知る幻想郷とは違う世界であることは確かなのだ。

だとしたらこれもクロの仕業なのだろうか?

いや、今はそれを考える時ではない。

大事なのは、ここが想夢と早苗にとって異世界なのではないかということ。

ならば、可能性はある。

「早苗、大丈夫だ」

「・・・え?」

想夢は早苗に呼びかける。

「もしも僕の予想が合ってるなら、話は上手くいくはずだ。まずは守矢神社を目指そう」

「は、はい!」

自分を奮い立たせるように大きな声で返事をする。

「行かせませんよ?」

文が2人を睨みつける。

「貴方達にはさっさと山から出て行ってもらいます。

白狼天狗達相手にあれだけやらかしてくれたんです。

山からは追い出しますが、タダで帰れるなんて思わないでくださいよ?」

ばさぁ!っと翼を広げると、文の周りに風が巻き起こり、文の体が空へ浮かぶ。

「早苗、行ける?」

「・・・はい、大丈夫です。不安が消えたわけじゃないけど、希望もまだ消えてません。

この目で何が起きてるのか確かめるまでは、自分にも相手にも負けてられません!」

改めて、2人はそれぞれの武器を構える。

「私は烏天狗です。白狼天狗と一緒だと思っていると痛い目に遭いますよ!」

「相手がなんだろうと知ったことか!この訳分かんない状況から抜け出すためだ。

勝たせてもらう!」

文が紅葉の葉に似た見た目の扇を取り出し、振るう。

扇を振るうと強い風が想夢を達襲う。

「うおっ!?」

いきなりの強風に想夢は思わず刀を持っていない方の腕で顔を覆う。

「隙あり!」

その瞬間、文の姿が消えた。

慌てて想夢が刀で防御の姿勢をとるが・・・

「どこを見ているんですか?」

文が現れたのは想夢の真後ろだった。

「風を司る私のスピードについてこれます!?」

そのまま想夢に蹴りを入れる。

「・・・!!!」

素早い蹴りに、想夢の体が軽く吹っ飛び、地面に倒れた。

「まだですよ!」

そのままさらに攻撃を入れようとする文に、

「私を忘れないでください!」

早苗の弾幕が襲い掛かる。

文は想夢への追撃を止め、早苗の弾幕を躱しきる。

「私だって風祝なんです!なめないでください!」

「そうでしたね、まったくやり辛い・・・」

叫ぶ早苗に忌々しく呟く文。

その間に想夢は立ち上がった。

「想夢さん、大丈夫ですか?」

「ああ、これくらいどうってことない」

刀を構えなおす。

お互いににらみ合う。

 

妖怪の山、第2戦が改めて開始した。

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