幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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文化祭イベントって舞台が学校だと漫画、小説、ゲーム問わず
必ずと言っていい程ありますよね。
文化祭当日のイベントをぶっ潰したペ●ソナ3は
ある意味すごいと思う。


30・開催、喝采

昔々あるところにシンデレラという少女がいました。

シンデレラは父親と2人で暮らしていましたが、

ある日父親が再婚し、母親と2人の姉ができました。

最初こそ幸せでしたが、父親が死ぬと、母親と姉達はシンデレラに家事を押し付け、

自分達は遊んでばかり。

シンデレラは母親と2人の姉にいじめられてばかりで辛い日々を過ごしていました。

ある日のことです。

お城で舞踏会が開かれるので、母親と姉達はドレスに着替えてお城に向かいました。

もちろんシンデレラはお留守番。

いつものように家の掃除をしていると、シンデレラ、シンデレラと、

自分を呼ぶ声が聞こえるではありませんか。

シンデレラが顔を上げると、そこには魔法使いの老婆が立っていました。

シンデレラを可哀想に思った魔法使いは、魔法でシンデレラに

舞踏会へ行くためのドレスと馬車を与えました。

ただし、12時の鐘が鳴ると魔法が解けてしまうからそれまでに戻ってくるように

という条件をつけて。

シンデレラは喜び、魔法使いに礼を言って、ドレスを着て馬車でお城へ向かいました。

 

お城の王子様は退屈していました。

大臣が誰かと踊ってはどうかと勧めても、乗り気ではありませんでした。

王子様は舞踏会はあまり好きではありません。

舞踏会にやって来る女性達は皆、王子様の地位を目当てに言い寄って来る者ばかりだからです。

今日の舞踏会にやって来る連中もそんな奴らばかりなのだろうと王子様は思っていました。

そんな時です。

舞踏会に遅れてやって来た1人の少女がいました。

彼女はお城の内装や料理、他の人達の踊りなど、様々なモノに目を輝かせていました。

まるで初めて舞踏会に来たかのように。

王子様はそんな少女の姿に心惹かれました。

王子様は少女の元へ行き、少女をダンスに誘いました。

少女はそれに応じ、2人は楽しく踊りました。

その姿はとても美しく、周囲の目を奪いました。

しかし、楽しい時間は長くは続きません。

少女がふと時計を見ると、少女は慌てて、もう帰らなければとお城から出て行ってしまいました。

急に帰りだした少女に王子様は驚き、少女を追いかけました。

その時です。お城の鐘が鳴りだし、12時を告げました。

王子様が一瞬、鐘に目を向けている間に、少女の姿は見えなくなってしまいました。

せめて名前だけでも聞いておくべきだったと、王子様は項垂れました。

すると、目の前の地面にガラスの靴が落ちているではありませんか。

さては、少女が慌てて帰ったものだから途中で靴が脱げてしまったのだと

王子様は考えました。

 

舞踏会の次の日のことです。

王子様は町にある家を訪ね、自分の記憶とガラスの靴を頼りに、昨日の少女を探しました。

王子があんなにも女性に夢中になったのは初めてだったので、

このチャンスを逃してはならないと、大臣も王子様と一緒に少女を探しました。

しかし、ガラスの靴がぴったりはまるどころか、少女に似た人すらなかなか見つかりません。

そして、最後に残った家は1つだけとなりました。

ドアをノックしてみると、出てきたのは母親らしき人物と2人の少女。

昨日の少女とは全然にていないな、と思いましたが、

念の為に王子様は、2人の少女にもガラスの靴を履かせてみました。

案の定、ガラスの靴ははまりません。

ここもハズレか・・・と、王子様は諦めてお城に帰ろうとしました。

その時です。

家の奥から1人の少女が出てきました。

その少女を見た瞬間、王子様は彼女だ!彼女こそ昨日の少女に違いない!と思いました。

王子様はその少女にガラスの靴を履かせてみると、なんとピッタリ合うではありませんか。

王子様が少女に名前を尋ねると、少女はシンデレラと答えました。

王子様はシンデレラにプロポーズをして、シンデレラは涙を流して喜びました。

 

こうして、シンデレラは王子様と一緒に、お城で幸せに暮らしました。

めでたしめでたし。

 

・・・・・・・・・

 

「終わった、いろいろ終わった・・・」

文化祭当日、演劇を終えた想夢は舞台裏で呟いた。

当然のことながら、現在着ているのはシンデレラのドレスである。

「お疲れさま」

そんな想夢に声をかけたのは王子様の恰好をしたら藍だった。

練習などでも何度か見たが、やはりイケメンだと想夢は思った。

まあ、女性に「イケメン」は褒め言葉にはならないだろうから心の中に留めておこう。

「だ、抱いてください」

・・・と思ったらより酷い言葉が口から出ていた。何故だ。

「だ、え・・・?」

「いや、忘れてください・・・」

穴があったら入りたい気持ちになる。

「いやあ、幻想郷に来る前は数多の男達を虜にしたものだがなあ・・・

『抱かせろ』とはよく言われたが『抱いてくれ』と言ったのは君が始めてだよ、うん」

しかもしっかり返事までしてくれた。余計に恥ずかしい。

 

演劇も終えたので、文化祭開始後すぐに、天狗からくばられた文化祭パンフレットを見る。

「次の演目は・・・『三姉妹の演奏会』か・・・」

あの後衣装を着替えたりしていたので時間的にはもう始まっているだろう。

想夢は自警団の建物を出る。

自警団の建物で劇や発表会などを行い、他の場所では出店などを出している。

外の世界の文化祭における体育館とそれ以外の場所の関係だ。

「あら、想夢じゃない。演劇、なかなか良かったわよ?」

出店で何か食べ物でも買おうと人里を歩いていたら、声をかけられた。

「レミリアさん、お久しぶりです」

後ろを振り向くと、レミリア、咲夜、パチュリー、フラン、美鈴と、

紅魔館メンバーが勢揃いしていた。

「ええ、久しぶりね。それにしても驚きだったわ、まさか想夢にあんな才能が

あったなんてねえ?」

レミリアが満足気に頷きながら言う。

「・・・レミリアさん?そんな今知ったみたいな反応されても遅いですからね?

僕知ってますからね?貴方が女装コンテストに僕を推薦したこと」

「ヴぁい!?え!?何で!?」

反応が分かりやすい。

「お嬢様、落ち着いて下さい」

咲夜がなだめる。

「でも想夢キレイだったよ?ねえ?美鈴?」

「はい!私もう惚れ惚れしちゃいました!」

フランの言葉に美鈴が頷く。悪意のない2人の純粋な言葉が想夢を襲う!

想夢は何も言い返せない!

「まあ、演劇が楽しかったっていうのは皆の素直な気持ちだから」

と、最終的にパチュリーが綺麗に(?)まとめた。

紅魔館メンバーで一番まともなのはやっぱり彼女なのではと想夢は思った。

「そうそう、パンフレットにも書いてるけど私達も出し物やるからよかったら見に来て頂戴」

と咲夜が言う。

パンフレットを見てみると、午後の部の1番最初の出し物に

『十六夜咲夜の投げナイフショー』と書かれている。

「・・・あれ?『私達』って、咲夜以外にも?」

「ええ、お嬢様にアシスタントとして」

「レミリアさんに?」

「お嬢様なら間違ってナイフがぶっ刺さっても大丈夫だからね。

アシスタントとして適任なのよ」

「あれえ?私紅魔館の主のハズなんだけどなあ・・・」

尊敬の「そ」の字もない従者の物言いに少し困惑する主レミリアだった。

 

レミリア達と別れた後、想夢は昼食をどこで食べようかと人里の中を歩き回っていた。

「お客さんどうですかー!?はい!2名様入りまーす!」

元気な声が聞こえてくる。

肥のした方を見てみると、メイドさんが客寄せをしていた。

「メイド喫茶・・・と、いうヤツだろうか?」

パンフレットを開くと、地図の丁度想夢がいる辺りの場所には

しっかりと「メイド喫茶」と書いてある。

外の世界(の漫画やアニメ)の中でも学校の文化祭には必ずと言っていい程、

メイド喫茶のような類のものはあった。

実際に文化祭でメイド喫茶を見たことがあるのかと言われれば微妙なラインだが。

しかし・・・

「ふむ・・・ロングか・・・」

やっぱりメイド服のスカートは長い方がそれっぽく見える。

別にスカートが短いのが嫌だとは言わないが。

ましてや咲夜がメイドっぽくないとも言わないが。

やはりメイドと言えばロングスカートだろうという考えが想夢の中にあった。

「・・・いかんいかん、僕のキャラじゃない」

我に返る。今までこんな変態的な話はしてこなかったはずなのにいきなりどうした。

・・・してこなかったよね?

なんだか不安になってくる。

しかし、1度、頭をリセトしてもう1度よく見てみると。

改めて何か分かったりするものだ。

例えば、今そこで客寄せをしているメイドさんの正体とか。

「・・・・・・・・・佐藤君?」

 

メイド服の佐藤壱人が、それはそれはイイ笑顔で客寄せをしていた。

 

「おーい、佐藤君?」

「あ、お兄さん!メイド喫茶どうですか?可愛い子揃ってますよー!」

「えっと、佐藤君?一体何をしてるのかな?」

「え?誰のことですか?佐藤壱人なんて普通な人私知りませんよー?」

話しかけたらごまかされた。というか自分で「普通」って言った。

「佐藤君の文化祭の出し物ってメイド喫茶だったの?」

「人がごまかそうとしているのをさらりと無視して話を進めないでくださいよ。

まあ、そうです。僕のとこはメイド喫茶なんです」

「しかしまあ、ふ・・・いや、自然だな」

「そこに変な気を使うくらいなら『普通』って言っちゃってくださいよ・・・。

そういえば想夢さん、出し物の演劇でシンデレラ役だったんですよね?

パンフレットに名前書いてありますし」

「うん、そうなんだよねえ・・・」

そうなのだ。文化祭のパンフレットにはご丁寧に劇の役1人1人が紹介されていた。

これのせいで想夢の女装は劇を見ようが見まいが知れ渡ることとなってしまった。

出店のスタッフは大雑把にしか紹介していないので、壱人の名前は載っていないが。

こうしていろいろ紹介しているせいかこのパンフレット、妙にページ数が多い。

「文化祭のパンフレット」というよりは「修学旅行のしおり」レベルである。

しかしながら・・・

「女装コンテストは明日だってのに、文化祭初日から女装することになるとはなあ・・・」

「まったくです・・・」

この文化祭は2日間行われる。

そして、件の女装コンテストは2日目の最後のイベントとして行われる。

演劇の練習中に魔理沙から言われたことがある。

 

「いいか、想夢?劇でシンデレラを演じることで女装への耐性をつけ、

女装コンテストで吹っ切れるってのは前も話したな?

それ以外にもお前がシンデレラを演じることには意味があるんだ。

シンデレラを演じることで劇を見たお客はお前の女装に対して

シンデレラと同じような健気で純粋な印象を受けるだろう。

そこで今度は女装コンテストでまた違った雰囲気の女装をお客に見せつけてやるんだ。

するとそこには「ギャップ」が生まれてお前のコンテスト優勝の確率が上がるってワケだぜ!」

「何でそこまでして僕を優勝させたいのさ?」

「そんなのそっちの方が面白そうだからに決まってるだろう」

「この野郎・・・」

 

魔理沙の優しやに涙が出てきそうになる。

「ちょっと想夢さん!泣きそうな顔になってますよ!?」

「いや、なんで女装でギャップを目指さなきゃいけないんだろう・・・って思って」

「ああ、やっぱりアレってギャップ狙いなんですか」

「・・・やっぱり?」

「・・・僕のこのメイド服も女装コンテストのギャップ狙いらしいですよ?」

「「・・・はあ」」

楽しい文化祭の最中、誰に聞かれることもなく、2人のため息が重なった。

 

・・・・・・・・・

 

人里をいろいろ回ったり、出し物を見たりしているうちに、文化祭1日目が終了した。

皆、片付けや明日の準備などをしている。

想夢もシンデレラの演劇に使った道具や衣装を片付けていた。

シンデレラの衣装は博麗神社に持ち帰らなければならない。

きっと霊夢は大笑いするのだろう。

そんなことを考えていると。

「想夢さん!」

早苗が想夢の隣に来た。

「早苗?どうかした?」

「明日の文化祭、もしよかったら一緒に回りませんか?」

「ああ、構わないよ」

「はい!」

スムーズな流れで早苗と一緒に文化祭を回ることになった。

隣で早苗はニコニコ笑っている。

だからだろうか。

想夢には、きっと明日は楽しくなるだろうという思いがあった。

しかし、同時に明日に対してなんとなく、漠然とした不安があった。

ずっとニコニコ笑っている、早苗がなんだか怖く感じられた。

 

・・・・・・・・・

 

文化祭1日目が終了したその日の夜、紅魔館にて。

「・・・なんだか浮気の臭いがする・・・」

「咲夜?何を言ってるの?」

「いえ、なんだか話の展開的にこう言っておかないといけない気がして」

「本当に大丈夫?こう言っちゃアレだけど、中二病の従者とか私嫌よ?」

「・・・全世界ナイトメア」

「私のスペルカードがどうかした?」

「くっ!本物の中二病には黒歴史という認識がそもそも存在しないというの!?」

「どういう意味よそれ!?」

という会話があったとかなかったとか。

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