幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

34 / 79
12月と1月がここまで忙しくなるなんて思いもしなかった(絶望)
絶望は伝染するらしい。2月まで伝染しないといいなあ・・・。
誰か私に希望をください。


31・最中の話、祭中の話

文化祭2日目。

ついにこの日が来てしまった。

昨日の時点で恥をかいたというのに何故2日も続けて恥を上塗りしなければならないのか。

そう、女装の件です。

「想夢さん、どうかしましたか?」

隣では早苗がニコニコしている。

「いや、大丈夫だよ。行こうか?」

「はい!」

とりあえず今は文化祭を楽しむとしよう。

 

・・・・・・・・・

 

「おーい、そこの2人、ちょっと見て行かなーい?」

出店を見て回っていたら、声をかけられた。

「あれ、にとりさん?」

早苗が不思議そうな声をあげる。

にとりが屋台でなにやら怪しげな機械を売っていた。

「にとりさん、劇以外にも仕事があったんですねえ」

「その通り!この屋台に並んでいるのは全て私の発明品さ!じっくり見てくれたまえ!

そして出来れば買ってくれたまえ!」

潔い商売の仕方だった。

「これは?」

想夢がある機械を指さして尋ねる。

それは指輪のようだが、宝石の代わりに2つの針がついた小さな機械がついている。

サイズこそ指輪ではあるが、アナログな腕時計のような見た目をしている。

「ああ、それはねえ、『霊力増幅機3号(れいりょくぞうふくきさんごう)』だよ」

「3号?」

「そう、3号。コレの前にプロトタイプと2号を作ったんだけど実用性は望めなくてね、

3号でようやく使えるようになったってカンジかなあ。

この霊力増幅装置はその名の通り、人の霊力を増幅させるんだ。

詳しくはこの説明書を読めば分かるよ!」

「どれどれ」

 

霊力増強装置3号取り扱い説明書。

・この装置は人の霊力を引き出す力を補助するものである。

・スイッチ1つで簡単にオン/オフ切り替えが可能。

・身体能力をちょっとだけ上昇させるなど、霊力の扱いのちょっとした補助くらいにしか

 使えませんのであしからず。

 

「・・・これは」

「・・・必要、なんでしょうか?」

想夢と早苗は2人揃って首を傾げる。

正直に言ってしまえば凄く微妙な装置である。コメントに困る。

「そ、そんな残念なモノを見る目をしないでよ!

折角『霊力増幅機3号』の他に妖力バージョンと魔力バージョンも作ったのに」

「より一層必要なのか疑問に思うな・・・」

「妖怪は私達人間よりも身体能力とか高いですしねぇ・・・」

想夢と早苗の反応が予想外だったのか、にとりの目に焦りが浮かぶ。

よっぽどの自信作だったのだろうか?

「な、なら試しにつけてみればいいよ!

そうすればこの発明がどれだけ凄いか分かるはずさ!」

「わ、分かった・・・」

にとりの必死な叫びに気圧されて、想夢は霊力増幅機3号を指にはめた。

スイッチを入れ霊力増幅機3号の効力をオンにすると、

 

霊力増幅機3号はボンッと小さな音を出して煙を吹いた。

 

「・・・えーと」

「・・・これは、故障ですかね?」

「ノオオオオオオォォォォォォッッッ!!!!!!」

想夢と早苗がさらに微妙な表情になる中、にとりの絶叫が響いた。

 

・・・・・・・・・

 

「あ、想夢さん、早苗さん」

「やあ、妖夢」

「こんにちは」

にとりと別れ、また出店を見ていたら、妖夢に出会った。

「お久しぶりです。劇見ましたよ、とても楽しかったです。

特に想夢さんのシンデレラがとても綺麗でした!」

「うぐ・・・」

綺麗だったという言葉に全然嬉しさを感じられないというのも珍しい。

褒められているはずなのに恥ずかしさばかりがこみ上げてくる。

「ど、どうかしましたか?」

「い、いや何でもないよ、ハハハ・・・」

妖夢が純粋な目でこちらを見てくる。本気でただ純粋に褒めてくれたのだろう。

ここまで素直に褒めるのも珍しい。

「妖夢ー、よーうーむーってあら」

「あ、幽々子様」

妖夢と話していたら、近くの店の中から幽々子が出てきた。

「おか・・・幽々子さん、お久しぶりです」

「こんにちはー」

「2人共久しぶりね・・・おか?」

つい「お母さん」と言いそうになってしまった。

危ない危ない・・・。

「それにしても聞いてよぉ、今年の文化祭では『大食い大会』やらないって

言うのよぉ!酷いと思わない!?」

「それは・・・」

「ああ・・・」

憤る幽々子に妖夢と早苗は何かを察した様子。

「何かあったの?」

早苗にこっそりと聞く想夢。

早苗もヒソヒソ声で話し出す。

「実はですね、2年前の文化祭で『大食い大会』ってイベントをやったんです。

その2年前の大会で他の挑戦者達に圧倒的な大差をつけて優勝したのが幽々子さん。

それで去年の大食い大会では幽々子さんは実況・解説役に選ばれたんですけど、

実況しながら解説しながら食べる食べる。

挙句の果てに去年の優勝者の食べた量の倍近くを実況・解説の仕事と同時に食べてしまったんです。

さすがに見栄えが悪いんで今年の文化祭は大食い大会無しになったんでしょう」

「なるほど・・・」

バラエティ的には面白い気もするが。

まあ、結果の分かりきった試合では視聴率はとれないというヤツか。

「それじゃあ僕達はこの辺で」

「ええ、楽しんでらっしゃい。

でもハメを外しすぎるのはダメよ?他の人の迷惑にならないようにね?」

「お、お母さん!」

今日も西園寺幽々子のお母さん節は絶好調だ!

 

・・・・・・・・

 

「そろそろお昼にしませんか?」

「そうだね、どこかのお店で何か食べようか」

お昼時、2人は近くのお店に適当に入ってみた。

「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」

「えっと、2人で」

「お二人様ですね?只今少々混雑しておりまして、相席でもよろしいでしょうか?」

店員に聞かれ、想夢は早苗の方を向く。

「どうする?」

「私は大丈夫ですよ」

「じゃあ、相席でお願いします」

「かしこまりました!それでは、こちらにどうぞ!」

店員に案内された席に行くと、

「おや、想夢君、お久しぶりだね」

「想夢さん、ご無沙汰しています」

見知った顔が並んでいた。

「シェルリオさんに、周さん」

「えっと、周さんは知っていますけど、もう1人の方は想夢さんとお知り合いですか?」

早苗が尋ねる。

「ああ、君とは初対面だったね、初めまして。

私はシェルリオ・ワインレッド。魔法の森に住むしがない吸血鬼だよ。

君のことは噂や新聞で知っている。よろしくね?早苗ちゃん」

そう言ってシェルリオは手を伸ばす。

「あ、はい!東風谷早苗です。よろしくお願いします」

早苗はその手を握る。

仲良くなるきっかけは自己紹介と握手だ。

「そうそう、想夢君は面白いことをするね?

今日の文化祭で女装コンテストに出るんでしょ?

なのに昨日の時点で女装してるんだもん、もうとってもわら・・・ビックリしたよ」

「シンデレラ、私も見ましたよ。とっても面白かったです」

シェルリオは大笑いしている。

周も努めて真顔でいようとしているが、「面白かった」の部分が若干震えていた。

笑いを我慢しているのだろう。

妖夢とは大違いだ。

ここまでいろんな人に言われるともう慣れた感じがする想夢だった。

「そ、そういえば、お2人は文化祭で何をやっているんですか?」

早苗が慌ててで話題を変える。彼女なりのフォロー・・・だと思っていいんだろうか?

「私は自警団の方で迷子の保護をやってます。

人が多く集まるイベントなので、毎年小さい子が何人か迷子になっちゃうんですよね。

皆さんも迷子を見つけたら自警団までご連絡下さい」

「私は文化祭は今年が初めてだからね、屋台の組み立ての手伝いくらいだよ。

文化祭が終われば屋台の片付けの手伝いもするけど、

文化祭の最中は特にやることはないかな?」

 

世間話をしながら昼食をとる4人。

「ところで、シェルリオさんの食べてるソレ、何ですか?」

「コレ?『大将の気まぐれラーメン』ってメニューには書いてあるね。

この店の料理人がノリと勢いで作ったラーメンらしいよ?」

「へえ、美味しんですか?」

「・・・そばの味がする」

「・・・ラーメン、なんですよね?」

「うん・・・」

「・・・」

深く考えないことにした。

 

・・・・・・・・・

 

昼食を食べ終わり、周とシェルリオと別れた想夢と早苗は、

また人里の中をぶらぶらと歩いていた。

「想夢さんってもしかして、女たらしなんですか?」

「何故、その発想に・・・?」

「いえ、想夢さんの知り合いって皆女性ばっかりな気がして」

「ちゃんと男の友人もいるよ!佐藤君とか!」

「そんなの女性と変わりませんよ!」

「それ、本人には絶対言っちゃ駄目だよ?」

そんな会話をしながら人里を歩いていると?

 

「かき氷売ってまーす!冷たい冷たいかき氷ー!

冬場にアイスを食べる感覚で買ってみませんかー!?」

 

という声が聞こえてきた。

見ると小さな少女達がかき氷を売り歩いている。

「・・・かき氷?今秋だぞ?」

「でもアイスって年中食べますよね?」

「それは近くに暖房があるからだろう、外で食べるとなると勇気がいるな・・・」

そんなことを話していると、

それが耳に入ったのか、カキ氷を売っている少女の1人がこっちにやって来た。

「そこのアンタ!かき氷にも勝てないようではサイキョーへの道はまだまだ遠いわよ!?」

「へ、サイキョー?」

「どこかの誰かが言ってたわ、

諦めんなよ!諦めんなよお前!どうしてそこで諦めるんだそこで!もう少し頑張ってみろよ!

ダメダメダメ!諦めたら!周りのこと思えよ、応援して・・・」

「暑苦しい」

「グエッ」

少女のどこかのテニスプレーヤーのような言葉を止めたのは、

いつの間にか少女の後ろに立っていた女性のチョップだった。

「まったく・・・すいませんウチの生徒がって想夢さん?早苗も一緒か」

「慧音さん!」

「・・・えっと・・・あ、上白沢先生!」

少女の後ろにいたのは慧音だった。

思い出すのに数秒かかってしまった。むしろよく思い出したと自画自賛したい。

前にあったのっていつだっけ?

「私が担当している寺小屋のクラスでかき氷の販売をしているんです」

「というワケで買っていけー!」

少女が勢いよくかき氷を差し出す。

「そ、それじゃあ2人分もらおうかな?」

少女の熱意に負け、かき氷を貰う。なんて熱い少女だ。かき氷は冷たいが。

「ところで、そっちの巫女は分かるけどお前は誰だ」

少女が想夢に問いかける。思えば相手から名前を聞かれるのはこれが初めてかもしれない。

「僕は博麗想夢。君は」

「アタイはチルノ!

知的でルナティックでノープロブレムな三拍子揃ったサイキョーの妖精さ!」

「そ、そうなのかー」

意味を分かって使っているのだろうか?

「あとハイ、コレ」

「ん?」

チルノにかき氷と一緒に何か手渡された。

「せんせーがこの時期に外でかき氷はやっぱり寒いから買ってくれた人には

これも一緒に渡しましょうって。

小型暖房装置って名前で、よく分からないけど持ってると温かくなるんだって」

「ほうほう」

感心する想夢だったが、

「そんなハイテクそうなものどうやって作ったんでしょう?

かき氷を買った人に渡してるってことはたくさん作ってるんですよね?」

早苗が疑問を提示した。

そう言われればそうだ。

と、もらった小型暖房装置を見ると、

 

ホッカ●ロ

 

と書いてあった。

「「・・・」」

「どうかしたかー?」

黙り込む2人にチルノが不思議そうな顔で尋ねてくる。

「あの、慧音さん?」

「上白沢先生?」

「小型暖房装置です」

「「いや、でも・・・」」

「小型暖房装置です」

「「あ、はい」」

文句など言わせないというオーラが慧音から溢れ出ているように見えた。

 

・・・・・・・・・

 

2人で文化祭の出し物を巡り、夕方近くになった頃、

「そろそろ女装コンテストの準備を始めまーす!

参加者は自警団屯所の大訓練部屋裏まで来てくださーい!」

と放送がなった。

「あ、そろそろ行かなくちゃ」

「はい!想夢さん、頑張ってください!私も応援してますから!」

「そんなに目を輝かせて期待を膨らませないでほしいなあ・・・」

まさにキラキラという効果音が似合いそうな程に早苗の目は輝いていた。

ここまでくると女装に抵抗感を持つ自分がおかしいのか?という気持ちにすらさせられる。

いやいや、自分は正常なハズだ。

「想夢さん」

「ん?」

「明日、ちょっと時間を頂けませんか?大事なお話しがあるんです」

突然にそんなことを言いだした早苗の顔は、さっきまでのキラキラはどこへやら、

とても真剣な表情をしていた。

「分かった、明日だね」

「はい、明日の日が昇る頃、人里の東の門の前で待っています」

「日が昇るって・・・えらく早い時間帯だね?」

「他の人には聞かれたくないので・・・」

「まあ、分かった。それじゃあ、行ってくるね」

「はい、行ってらっしゃい」

そう言って想夢と早苗は別れる。

自警団の屯所に歩いていく想夢の背中を見ながら早苗は、

 

「私も、覚悟、決めないとな」

 

と、呟いた。

その声は誰にも聞こえず、文化祭の活気のある人達の声にかき消された。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。