幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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1日1本、500ミリのペットボトルの爽健●茶を飲んでます。
でもお茶が好きなわけではありません。


32・飾る話、化する話

自警団屯所の大訓練部屋。

ここは学校の体育館と同じような構造になっている。

想夢達の演劇や咲夜のナイフショーなどの出し物もここで行われた。

そして現在、大訓練部屋のステージ裏にて、女装コンテストの準備が進められていた。

「いい?想夢、アンタは演劇でシンデレラの姿を見せつけるというアピールをしたわ。

シンデレラといえば健気でか弱い少女。そのイメージをあなたは観客達に刻み込んだのよ。

つまり、アンタの女装のイメージは今健気でか弱いってコンテストの観客達は思ってるワケ。

そこで今回アンタに着てもらう衣装はコレよ!」

想夢にアドバイスをしているのは霊夢だ。

「いいですか?壱人さん、貴方はメイド喫茶の呼び込みとしてアピールをしました。

愛らしいメイドさんの姿の貴方を見てコンテストの観客は貴方の女装に愛らしいイメージを

持っているハズです。そこで!貴方にはコレを着てもらいます!」

ふと他の参加者達を見ると、壱人にアドバイスをしているのは阿求だった。

こういうことには結構ノリノリのようだ。それでいいのか稗田家当主。

「「何で男同士で女装の争いなんぞせにゃいかんのだ・・・」」

偶然にも想夢と壱人の声が重なる。

熱心にアドバイスをする霊夢、阿求とは対照的に、2人のテンションはどん底だった。

 

・・・・・・・・・

 

「レディース、エーンド、ジェンットルメーン!!!

幻想郷中の物好きな諸君!女装がしたい物好き君!女装が見たい物好きちゃん!

よくぞ集まった!

それではこれより第3回幻想郷文化祭女装コンテストを開催しまーす!!!

司会進行は私、射命丸文でお送りします!!!」

想夢がステージ裏からこっそり大訓練部屋の様子を見ると、

ワアアァァ!!!と部屋中が人の熱気に包まれていた。なんだこのテンション。

見ている方は気楽でいいもんだと言いたいところだが、

見ている方も全然気楽じゃなさそうな雰囲気だった。

「それでは!ルールを説明します!

参加者には1人ずつ登場してもらい、私の質問に答えてもらいます。

質疑応答によるアピールタイムです。

1人のアピールタイムが終わったら、5人の審査員にそれぞれ評価してもらいます。

評価はポイント制!1人最大10ポイントまでとし、5人の合計ポイントが

その人の女装の評価点となります。

1番評価点の高い参加者にはミス・幻想郷の称号と、トロフィーを贈呈します!

なお、トロフィーは換金不可ですのであしからず。

それでは、審査員の発表です!最初の審査員は『妖怪の賢者』こと八雲紫さん!」

「皆さん、よろしくね?」

紫が手を振ると、ワアアァァ!と歓声が起こる。

やはりノリというかテンションが異常だ。

「八雲紫さんはやはり『妖怪の賢者』というだけあっていろいろな人を見てきたのでは?」

「そうね、人間にも妖怪にもいろんな性格の人がいるわね。

だから、今回の女装コンテストも外見だけではなく中身も重視しないとね?」

「はい!コメントありがとうございました!

続いての審査員は命蓮寺(みょうれんじ)の筆頭!(ひじり)白蓮(びゃくれん)さん!」

「そんな、筆頭だなんて・・・聖白蓮です。よろしくお願いします」

聖白蓮。金色と紫のグラデーションがかかったような長髪の女性だった。

「白蓮さんは今回どういう所に注目していきたいですか?」

「そうですね。やっぱり『女の子らしさ』でしょうか?

やっぱりこういうのってノリが大切・・・なのよね?多分」

そう言って白蓮はにこやかに笑う。

なんというかほんわかした人だ。

「はい!ありがとうございました!次いきましょう!

続いての審査員は私のご同業、姫海棠(ひめかいどう)はたてさん!」

「ど、どうも・・」

ツインテールの少女がおずおずとお辞儀をする。

ご同業と文は言っていたし、彼女も天狗なのだろう。

「はい、では何かコメントどうぞー」

「あれ?なんか私だけ扱い雑じゃない?」

「はい!感動するコメントありがとうございました!」

「おーい!?何!?文!?あんた私のこと嫌いなの!?」

ツッコミを入れるはたてをよそに文は司会進行を続けていく。

「続いての審査員の紹介です。永遠亭のお医者さん!八意(やごころ)永琳(えいりん)さん!」

「どうもー」

青と赤の2色の服を着た銀髪の女性がにこやかに手を振る。

「八意先生は医者ということですし、いろんな患者さんを見てきたのでは?」

「そうね、相手と向き合う仕事だし、人を見る目には自信があるわ」

「なるほど!それでは最後の審査員の紹介です!

ある意味このコンテストに最も合った審査員。二名方(になかた)大二郎(だいじろう)さん!」

「よろしくー!」

想夢は言葉を失った。

二名方大二郎。たくましい筋肉ムキムキでサングラスをかけた大男が、

ハイテンションで愛想を振り撒いていた。

「さて、大二郎さんには今回審査員長も務めていただくワケですが、

期待の程はどうでしょう?」

「そうね・・・やっぱりどれだけ女の子になりきれるかが大事よね?

重要なのはノリよノリ!そういう意味では去年の優勝者の壱人ちゃんもまだまだよ!

彼、いや、彼女はまだまだ成長するわ!それに、今年は何やらライバルもいるみたいじゃない?

そういう意味では今年は期待しまくりよ!大波乱になりそう!!!」

「それは盛り上がりそうですね!ありがとうございました!

それでは、審査員の紹介も終わったところで、早速!

女装コンテストを始めていきましょう!!!」

 

・・・・・・・・・

 

本格的に女装コンテストが始まった。

他の参加者のアピールタイム中は大訓練部屋を覗くことはできない。

公平な審査をするためだ。

故にステージで今何が起こっているか見ることはできない。

想夢はただ自分の番が来るのを待っているしかできなかった。

・・・コンテスト用の衣装を着て。

「想夢さん」

「・・・佐藤君」

ぼーっと順番を待っていたら壱人が話しかけてきた。

「君のそれは・・・ゴスロリか?」

「はい、阿求さんが『可愛さをアピールしたのだからこのまま可愛さで

ゴリ押ししましょう!メイドの次はお嬢様です!』って・・・」

ゴスロリ。正しくはゴシック・アンド・ロリータの略。

暗く病的、それでいて好色で神秘的なゴシックのファッションスタイルと

少女のあどけなさや小悪魔的可愛らしさを表現するロリータのファッションスタイル、

この2つを合わせた日本独自のファッションスタイルである。

「しかし、阿求ちゃんもよくこんな服持ってたなあ・・・」

「外から流れ着いたものを阿求さんが買ったらしいですよ?」

・・・自分で着るつもりだったのだろうか?

「しかし、ゴスロリか・・・」

「どうかしました?」

「いや、何でも・・・」

そうして話しているうちに、想夢の出番がきたようだ。

「次、博麗想夢さーん!準備お願いしまーす!」

「あ、はーい!・・・それじゃあ、行ってくる」

「はい、お気をつけて」

ステージへ向かう想夢とそれを見送る壱人。

その姿はまるで戦場へ向かう兵士とその妻の如く。

まあ、どちらも女装しているワケなのだが。

 

・・・・・・・・・

 

「はい、エントリーナンバー5!博麗想夢ちゃんでーす!!!」

「どうも、よろしく」

想夢の挨拶に部屋中がしん・・・と静まる。

そして一拍置いて、

「「「おおおぉぉぉーーー!!!」」」

と部屋中が活気と熱気に包まれた。

「いやあ、なんというかカッコイイ!って感じですね!

女装コンテストでこの路線で挑んだのは想夢ちゃんが初めてじゃないですかね?」

文が興奮気味に話す。

想夢の恰好というのは黒を基調としたスカートタイプのスーツ。

所謂オフィス・レディを彷彿とさせる恰好をしている。

「そうかしら?そういうのは意識していないのだけれど・・・」

想夢は努めて冷静に、淡々と答える。

(クールビューティー、クールビューティー?クールビューティー!)

口とは逆に頭の中ではひたすら「クールビューティー」を繰り返していた。

「アンタ本人は美人系、女性にモテる女性になることができるハズよ!

だからクールビューティーを目指しなさい!」

と霊夢に言われ、この衣装を渡されたのだ。

クールビューティーがどういうものかイマイチ理解できていないが、

想夢は想夢なりのクールビューティーを目指していた。

「それでは想夢ちゃん、いや、想夢さん!むしろ想夢お姉さん?

自信の1番のポイントはどこでしょうか!?」

「ポ、ポイント?え・・・っと、顔?」

「顔ですか!なるほど!確かにこうして女性の恰好をしていると

本物の女性にしか見えませんもんねえ。

しかも可愛さではなく美しさで攻めてくるとは、やっぱり狙ってたんですか?」

「え!?えーと、はい?」

「おお、やっぱり狙ってたんですね!これは策士です!策士が現れました!」

なんだこのテンション・・・。

想夢は意識していたクールビューティーのことなんてもう完全に忘れていた。

予想以上にグイグイくる文の司会進行、やたらとノリのいい観客達、

コンテストの雰囲気そのものに気圧されてしまっていた。

「では最後に、観客に向けて一言どうぞ!」

「え・・・と、よろしく、ね?」

クールビューティーなんてどこにもなかった。

作戦は失敗だろう。

「はい!ではアピールタイムはここまでとさせていただきます!

それでは、審査員の方は得点をどうぞ!!」

文が言うと、どこからかドラムロールが聞こえてくる。

そしてドラムロールが終わると共に、審査員の得点が一斉に発表された。

「9点!9点!9点!9点!8点!合計は44点!ということは・・・

博麗想夢さん、現時点でトップです!それでは何人かに評価を聞いてみましょう。

では、八雲紫さん、いかがだったでしょうか?」

「そうね、とても面しろ・・・じゃなくて楽し・・・でもなくて

初々しくて良かったと思うわ。

でもそれなら努めて冷静にならなくてもいいんじゃないかしら?」

いつもの調子で感想を述べる紫。

想夢にはなんだか笑いをこらえているようにも見えたが気のせいだろうか?

「ほうほう、では、審査員長の大二郎さん、コメントお願いします」

「緊張と恥ずかしがってる姿が実にグッド!

最初の凛々しさが一気に崩れるのもギャップがあっていいわあ!

あとはもうちょっと笑顔が欲しかったわね?

固くてもいいから表情が作れればもっと点をあげてもよかったんだけどねえ」

実に良い笑顔で、サングラスの大男が述べる。

「なるほど、表情ですかー、

はい!それではエントリーナンバー5!博麗想夢さんでした!

皆さん、もう一度拍手をお願いしまーす!」

パチパチパチと観客からの拍手に包まれながら、

想夢はステージ裏へと戻って行った。

「・・・44点かあ」

嬉しいような、悲しいような、なんだか複雑な気持ちだった。

 

・・・・・・・・・

 

「今年の優勝者は、博麗想夢さんでしたー!皆さん、盛大な拍手をお願いしまーす!」

 

全員のアピールタイムが終わり、出場者が全員ステージに並ぶ。

その中で今年のコンテストの優勝者として想夢は他の出場者達よりも1歩前に出ていた。

「ど、どうも」

「優勝者として、何かコメントをお願いします!」

「え・・・と、あ、ありがと?」

「いやあ、こんな時まで初々しいですねえ、だが、それが良いッ!!」

後から聞いてみたが、壱人は41点で2位だったらしい。

ノリノリでアピールしすぎて逆に狙ってるようにしか見えなかったんだとか。

「それでは、これにて女装コンテストは終了します!

参加者の皆さん、審査員の皆さん、会場の皆さん、お疲れ様でしたー!」

文の言葉と共に、場は大きな拍手に包まれた。

 

「ふう・・・」

普段着に着替えた想夢は、肩の荷が下りたように息をはいた。

想夢の優勝という形でコンテストは終了した。

これが文化祭最後のイベントだったので、後は文化祭の終了宣言をして片付けに移るだけだ。

とはいえ、想夢のやるべきことは特にない。

文化祭1日目の時点で自分達が片付けるべき物はほとんど片付けてしまっているからだ。

だから想夢は文化祭終了後、さっさと神社に帰って寝ることにした。

明日に備えなければいけない。

やるべき仕事は、まだ残っている。

 

・・・・・・・・・

 

おまけ、

文化祭終了後、想夢が神社に帰る少し前。

「ああ、想夢さん、ちょっといいですか?」

「文?どうかしたの?」

「いえ、今日の女装コンテストでは想夢さんと壱人さんで良い写真がたくさん撮れたので、

その写真を渡しに来ました」

「写真ってコンテスト中の?文が撮ったんじゃないよね?」

「ええ、私は司会進行でしたから、写真は他の写真係の天狗に任せました。

それでですね?想夢さん、実は今回のコンテスト、

観客の方にも誰の女装が1番良かったかアンケートを行ってたんですけどね、

男性だと壱人さん、女性だと想夢さんが圧倒的に多いんですよ」

「はぁ・・・それで?」

「ここは是非とも想夢さんと壱人さんの女装写真集を作って売り出そうと・・・」

「やめてっ!?」

 

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