幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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戦闘シーンはキャラクターの動きをいろいろ考えます。
個人的には●が如くとか好きです。
毎回どんなQTEがあるのかなと楽しみにしています。


34・覚悟、活路

ゴロゴロと雷の音がする。

ザアザアと雨が降っている。

雨雲が空を覆い薄暗い。

だが、それは想夢と早苗の周りに限った話だ。

少し離れた場所にある人里を見れば、日の出の光が見えている。

だが、そんなものを見ている余裕など2人にはなかった。

 

「雷がどうしてギザギザとした線を描くか知っていますか?

それは雷が直進と静止を繰り返し行っているからです。

私達には瞬間の出来事ですが、実際には何度も同じステップを踏んでるワケです。

私が起こした奇跡はあくまで天候を変えただけ。

魔法で作ったような雷ではありません。

そんなスピードのエネルギーに対抗する策、貴方にありますか?」

「それは、早苗に雷が落ちる可能性だって十分あるんじゃないの?」

「そうかもしれませんねえ?でも私って結構運が良いんですよ?

私は『きっと私には雷は落ちないだろう』という運の良さを信じます」

「そうかい」

地を蹴って想夢は駆けだす。

雨が降り始めたばかりの大地は土がまだ固い状態である。

それでも力強く地面を踏めば深い足跡が残ってしまうが。

早苗はその場から動かずに、想夢に向かって1本の風の槍を飛ばす。

柔らかくなった土の地面では動くよりも立ち止まっている方が得策だと思ったのだろう。

想夢は飛んできた風の槍をジャンプして躱し、そのまま早苗の目の前に着地する。

右手に持った刀を握り、まっすぐに早苗の目を威圧するように見る。

そして刀を前に突き出す。

早苗は自分から見て左側にお祓い棒を構え、防御の姿勢をとる。

しかし、刀とお祓い棒がぶつかることはなかった。

想夢は刀を突き出した後、横に一回転し早苗から見て右側から裏拳のように刀を振った。

「ッ!!」

早苗はとっさに頭を下げ刀を躱す。

そして右手に持ったお祓い棒を想夢の顔目がけて振り上げるが、

それはガキンという音と共に想夢の左手の甲に防がれた。

「・・・結界ですか」

「結界は博麗の十八番だろう?」

想夢は結界を纏った左手を振るいお祓い棒を弾く。

お祓い棒を弾かれた早苗はすぐにお祓い棒を振り直し第2撃に移る。

想夢も刀を振り、刀とお祓い棒がぶつかり、剣戟が起こる。

早苗はお祓い棒を振るい風の槍を生み出し激しく攻める。

想夢は刀を振るいお祓い棒を弾き、左手を振るい風の槍を防ぐ。

そんな剣戟が続いていたが、

不意に早苗が後ろにステップを踏んで想夢から距離をとった。

「そろそろいいですね」

「何?」

想夢の手が止まる。

「時間が稼げたんです」

早苗は笑う。

「私の奇跡は規模が大きいモノ程起こすのに時間を使います。

さらに戦いながらとなれば、より時間がかかってしまいます。

ですが、ようやく準備はできました。これからお見せしましょう!」

そう言うと、早苗はお祓い棒を前に突き出す。

するとお祓い棒の周りに風が渦を巻くように集まってきた。

風の勢いはだんだんと強くなっていき、形を作っていく。

そして生まれたのは1本の風の槍だった。早苗が何本も撃ち出していた風の槍だ。

 

ただし、想夢の目の前のソレは普段の風の槍の何倍もの大きさを持っていた。

 

そのまま巨大な風の槍が想夢に向かって撃ち出される。

「ぐ・・・うぉぉおおおおおおおッ!!!」

刀で槍を防ぐが、勢いよく回転して進んでくる槍をなかなか止められず、

槍に押されてどんどん後ろに下がっていってしまう。

しかも地面が雨に濡れているせいで上手くブレーキをかけることもできない。

だから腕に力をこめる。

後ろに押されていくことに関してはどうにもできない。

まずはこの風の槍をなんとかせねば。

「・・・!叩っ斬る!!!」

風の槍を押し返すように、全力で刀を振るう。

斬られたことで風の流れに乱れが生じ、霧散するように風の槍は消滅した。

 

断ち切る程度の能力。

 

それが形のないものであっても、斬ることのできる能力。

想夢自身が能力を使いこなせていないため本来の力が発揮できずにいるが、

それでも、不自然な空気の流れによって形を作った風を斬ることはできたようだ。

しかし、槍が消えても勢いは消えない。

想夢は早苗に掌底で吹っ飛ばされた時よりもさらに深く、刀を地面に突き刺す。

足をめり込ませるように地面を踏み、ブレーキをかける。

そうして数メートル程線を引き、ようやく想夢は止まった。

「はぁっ・・・はぁっ・・・!」

息が荒い。

大分体力を消耗したようだ。

戦っているからというのもあるが、

容赦なく降る冷たい雨がより一層体力を消耗させているのだろう。

 

「まだですよ?想夢さん、槍が1本だなんて誰がいいました?」

 

だが、相手はこちらのつかれなど待ってはくれない。

早苗の方を見れば、お祓い棒を前に出し、さっきと同じ大きさの槍をまた飛ばそうとしていた。

「最初から2本撃つことを前提とした奇跡ですよ?

さあ、どうします?槍を斬ることはできても勢いは殺せませんよ?

それに、雨で濡れた地面じゃあ土煙を起こして隠れることもできません。

大人しくやられちゃってくれませんか?」

「ははは、ちょーっと図に乗ってはいないかい?

まだ方法はあるさ、こんな状況じゃなきゃ使えない方法がね」

「へぇ?どんな?」

「例えばこう、目を狙うとかね!!」

そう言うと想夢は地面をえぐるように蹴り上げた。

すると、泥が早苗の方に目がけて飛んで行く。

「っ!!」

早苗はとっさに顔を両腕で覆う。

腕を動かしたことで集めていた風が霧散し、槍が消える。

さらに、肝心の泥は途中で勢いがなくなり早苗の目どころか、

そもそも早苗のいる場所まで届いてすらいなかった。

「しまった!」

早苗が気付いた時にはもう想夢は早苗に向かって走り出していた。

想夢に蹴り上げた泥を正確に目に当てる技量なんてない。

別に泥で目を狙う必要なんてないのだ。

ただ、一瞬でも早苗に隙が作れればそれでよかったのだ。

こちらから早苗に近づくための隙が作れればそれでいい。

思えば妖夢と戦った時も同じ手を使った。

しかし、今回は妖夢の時とは違う点がある。

それは、距離。

妖夢の時は反撃の暇を与えずに妖夢の目の前まで行くことができた。

だが、今回は風の槍のせいで距離が離れすぎている。

つまり早苗の所に着くまでに、彼女にも反撃のチャンスがあるのだ。

当然、早苗はそのチャンスを逃さない。

もう1度お祓い棒を前に出し、風を集める。

そして、想夢に向かって風の槍を撃ち出す。

1撃目に比べれば小さいが、それでもそこそこの大きさになった風の槍が想夢に向かって

飛んで行く。

それでも、想夢は足を止めない。勢いを止めない。

飛んでくる風の槍に向かって走り、風の槍が想夢当たる瞬間、槍の下へと潜り込んだ。

所謂、スライディングという動きだ。

「なっ!?」

想夢の避け方が予想外だったのだろう。早苗に更なる隙が生まれる。

想夢は足を止めない。そのまま早苗の方へと走り続ける。

もはや2人の距離は、早苗に次なる反撃を許さないところまで縮まっていた。

早苗は驚きと怯えが混ざったような表情をしている。

その時、

薄汚れた灰色をした曇り雲が白く光る。

ゴロゴロと音が鳴る。

その瞬間、早苗の顔つきが変わる。これが最後のチャンスだとばかりに、

牙を光らせる手負いの獣のような顔で想夢を睨む。

お祓い棒を持った手を天に上げる。

「私は私の運を信じます!想夢さんが泥で私の『目を狙う』と言ったように、

私は『想夢さんに雷を落とす』という奇跡を起こしてみせましょうッ!!!」

上げた腕を勢いよく下に振るう。

そして雷は宣言通り、想夢のいる場所に向かって落ちてきた。

だが、雷は想夢に当たらない。

 

雷は想夢が上に向かって投げた刀に向かって落ちた。

 

「!!!?」

声もでない。

今度こそ最後となるであろう1撃を防がれたのだから。

想夢が早苗の言葉を聞いてとっさにおこなった防御策が、刀を上に投げることだった。

実際は、雷は高い所に落ちるというワケではない。

雷が落ちる直前の静止状態を中心とした射程距離の中で最も近い物体へと落ちるのだ。

つまり、雷の射程距離の中で最も近くにあったのが刀だったからそこに落ちたということ。

そんな詳しい雷の仕組みなんて想夢は知らない。

「雷は高い所に落ちる」という言葉をなんとなく知っていたから

それをがむしゃらに実行しただけだ。

雷なんて気にせず、刀を上に投げ、すぐに走り出す。

今度こそ早苗の手段はなくなった。

刀は投げ捨てた。代わりに拳を握る。

そして、

想夢は早苗の顔面を思い切り殴りつけた。

防御が間に合わず、パンチをもろに食らって後ろに吹っ飛ぶ。

そうして地面にぶつかり1回転する。

「・・・・・・・」

刀はくるくる回って、近くの地面に落ちて刺さった。

想夢は荒く息を吸ったり吐いたりを繰り返す。

体力は消耗しているし、精神も大分すり減らしている。

だが、まだ緊張は解かない。

倒れた早苗がすぐに起き上がってきたからだ。

早苗は起き上がるとすぐにこちらに向かって駆けだし、お祓い棒を捨てた。

そして、想夢の顔面を殴ったのだった。

「はあっ!はあっ!はあーっ!!」

荒く息を吐く。

早苗の方ももはや限界そうだった。

顔に出さなかっただけで、実際には想夢同様、かなり体力や精神を消耗していたのだろう。

「まだ・・・終わってません・・・!!!」

早苗は想夢を睨んで叫ぶ。

「ああ・・・!!!」

想夢もそれに答える。

お互いににらみ合い、拳を握る。

 

そこからはもう、戦いとしてはかなり滅茶苦茶なモノだった。

お互いに相手の攻撃を全く防御せず、ただただ殴り合っているだけだった。

相手に対して容赦なんてしない。

1発1発が全て、全力のパンチだ。

そんな殴り合いがずっと続くようにも思えた。

ただ、そうした戦いにも、終わりはやってくる。

想夢も早苗も体中がもうボロボロで、ひどい見た目をしていた

お互いに息も絶え絶えだった。

それでも、拳を握る。

そして、腕を振るう。

想夢と早苗、お互いのパンチが相手の顔にクロスカウンターのように当たる。

実際にはただの相打ちなのだろう。

だが、確かにダメージはあった。

想夢の体がふらつき、崩れ落ちていく。早苗はまだなんとか立っていた。

「これで・・・」

勝負は決まった。

そう、早苗が思った時だった。

「あれ?」

想夢の体はもう限界を超えている。だから崩れ落ちたのだろう。

なのに、なぜだ?

 

なぜ、彼はまだ倒れていない?

 

想夢が倒れる音が聞こえない。

想夢は足を踏ん張り、腰を曲げ、崩れ落ちる途中で、倒れまいとしていた。

「そんな・・・まさかっ!?」

想夢の顔はこちらを睨みつけていた。

想夢の拳はまだしっかりと握りしめられていた。

まるでまだ終わっていないと言いたそうに。

「―――――――――――――――!!!」

もう声も出ない。

言葉にも音にもならない叫びを上げて、想夢は拳を振るう。

その拳は早苗の顔面に突き刺さり、彼女を大きく吹っ飛ばした。

吹っ飛ばされた彼女は、地面に倒れるように落ち、今度は起き上がらなかった。

そして想夢も、気力を全て使い果たしその場に倒れてしまった。

雨はまだ降り続き、想夢の体温と体力を奪う。

そのまま想夢は意識を失った。

 

・・・・・・・・・

 

「・・・」

目を覚ますと天井が見えた。

だが、ここは博麗神社ではないようだ。

「あ、起きた」

声が聞こえる方を見ると、兎の耳を生やした少女の姿が見えた。

「ここで安静にして待っててください。

師匠ー!例の人が起きましたよー!」

兎の少女はそう言うと部屋から出て行ってしまった。

それから少しして、今度は部屋に赤と青の服を着た女性が現れた。

「気分はどうかしら?」

「悪くはないですが・・・えっと、貴方は?」

「あら、一応見たことはあるはずよ?」

「え?」

そう言われると見たことがあるような・・・。

「・・・女装コンテストの審査員の人?」

そう尋ねると、女性は笑いながら言った。

 

「そう。私は八意永琳。貴方はここ、『永遠亭』に運ばれた患者さんってトコね」

 




次回、第4話完!・・・の予定。
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