幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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4話は表と裏を同時並行で進めていきます。
また、本文にてもっともらしいことを書いていますが、
作者は頭がよくないので、知識が間違っている可能性があります。
ご容赦ください。


4話裏「女子高生巫女、東風谷早苗の妖魔録」
(1)例えばこんな日常があったとしての話


これは、過去の話だ。

東風谷早苗がまだ幻想郷に来る前の話。

 

「いってきまーす!」

 

明るい声が神社に響く。

高校の制服に身を包んだ早苗が神社から走り出る。

「いってらっしゃい」

「気を付けるんだよー」

走る早苗の背中に2人の神が声をかける。

これは、過去の話。

外の世界で生きていた頃の、巫女の話。

 

・・・・・・・・・

 

某県某所、高校にて。

1年A組のクラス。

「あ、早苗ちゃんおはよー」

「森林さん、おはようございます」

早苗はクラスの中では至って普通の女の子だ。

神社に住んでいようが、巫女だろうが、ここでは関係ない。

そんなことを気にする人がそもそもいないのだ。「ちょっと珍しいな」程度でしかない。

「早苗ちゃん知ってる?ここ最近ちょっと面白いことになってるよ!?」

「面白いこと・・・ですか?」

同じクラスの森林が興奮した様子で話す。

 

森林(もりばやし)樹木(じゅもく)

噂好きな女子で高校内のあらゆる噂について知っているらしい。

 

「クラスの皆がね、いろんなところで水原君を見たって言うんだよ!」

「水原君?」

 

水原(みなばら)洋介(ようすけ)

いわゆるクラスの人気者。中心。文芸部所属。

「ほらほら!クラスの皆の会話を聞いてみな?」

森林にそう言われ早苗は耳を澄ませてみる。

 

「聞いた?あの話・・・」

「ねえ、水原君って昨日の放課後何してた?」

「何って勿論部活だよ。部活が終わるまでずっといたから他の部員に確認してもらえば

答えてくれると思うけど」

「ほらやっぱり!アンタの見間違いなんじゃないの?」

「いやでもあの姿は絶対洋介だと思ったんだけどなあ・・・?」

「そういえば水原君ってなんで文芸部入ってるの?あんなに運動神経いいのに勿体無い」

「運動よりも本を読む方が好きなんだ。ホラ、好きなことを部活でできるって

とても素敵なことじゃないかな?」

「なるほど!洋介ってば考えることが大人だねー!」

「いや好きな部活に入るって普通のことじゃない?」

 

・・・だんだん話が関係なくなってきたので耳を澄ませるのを止める。

「ね?ね!?これは謎だよ!?テンション上がるね!」

目をキラキラさせながら森林は言う。

「森林さん、落ち着いて」

苦笑いで早苗は森林を落ち着かせる。

「これが落ち着いていられるっての!?早速放課後になったらあの人(・・・)に相談しよう!」

「分かりました!分かりましたから!とにかく落ち着いて!」

早苗が森林をなだめていると、

「はーいお前ら座れー、ホームルームの時間だ座れー」

「ありゃ、先生だ。そんじゃ早苗ちゃんまたあとでねー!」

先生がやって来たことで話していた生徒達が席に座る。

「はい、じゃあ今日は・・・」

 

・・・・・・・・・

 

「よーし早苗ちゃん!早速部室に行こう!」

放課後。

テンション高め、目をキラキラというより目をギラつかせた森林が腕をぶんぶん振りながら叫ぶ。

そんなに待ちきれなかったのだろうか?

「はいはい、落ち着いて、ね?」

早苗が興奮する森林を落ち着かせながら彼女の言う部室(・・)へ向かう。

 

『オカルト研究部』

とドアノブに看板が掛けられているドアの前に早苗と森林の2人はいた。

元々は隣の大教室の物置として使われていた部屋だが、大教室自体が使われなくなり

同時に使われなくなった物置を勝手に部室にしてしまったという裏話は

あまり知られていない。

「しっつれいしまーす!!!」

森林が勢いよくドアを開ける。

部室にはテーブル1つに向かい合うように置かれた2つの長いソファ。

横には小さいソファが2つある。テーブルを囲むように4つのソファが置いてある。

床にはカーペットが敷いてあり、小さな応接室といった感じだ。

「いらっしゃい、相変わらず元気だね、見てるこっちが疲れそうだ」

奥側のソファに座っている男子生徒が声をかける。

「先輩!疲れそうってなにさ!?そこは普通『見ているこっちも元気が出そうだ』とか

言う場面じゃない!?」

森林っが不服そうに叫ぶ。

「こんにちは、先輩」

「こんにちは早苗ちゃん、今日も礼儀正しくていいね」

「ひどい!早苗ちゃんばっかり!ってそんな話してる場合じゃないや、

聞いてよ先輩!最近・・・」

森林が相談しようとした矢先、

 

コン、コン、と

 

ドアをノックする音が部室に響いた。

「どうぞー」

先輩と呼ばれた男子生徒が叫ぶ。

「失礼します」

ドアを開けて入って来たのは水原だった。

「あなたが、部長さんですか?」

水原は、緊張した顔で男子生徒に問いかける。

「うん、僕がオカルト研究部部長の渡瀬(わたせ)想太郎(そうたろう)です。何か相談事があるのかな?」

先輩、渡瀬想太郎はまあ座ってと水原を座らせる。

「水原君、相談ってもしかして・・・」

「うん、やっぱり自分のこととなると少し気味が悪くてね・・・」

早苗の問いに水原は力なく笑う。

「それですよ先輩!今日相談しようと思ってたのはまさにそれです!」

森林に勢いが戻る。

「うん、それじゃあ話してみてくれるかな?」

渡瀬が促す。

 

「ここ最近なんですけど、町で俺のことを見たっていう人が結構いるんです。

でも皆が俺を見たって言う時間は、いつも俺が部活をしている時間なんです。

当然部室にいるので町で俺のことを見れるわけがないんです。

でも、見たって言う人に話を聞くと、ウチの高校の制服を着ていたって言うし、

ただのそっくりさんだって思いたいんですが、だんだん気味が悪くなって・・・」

苦しそうに水原が語る。

「そんなことがあったんですねえ・・・」

早苗がほええっと呆けたように言う。

「あれ、早苗ちゃんは知らなかったの?同じクラスだったと思うけど」

渡瀬が不思議そうに早苗に聞く。

「すいません、私自身はみたことがないんで・・・」

「そんなことよりだよ!今回のこの不思議な現象、先輩はどう思う?」

森林の問いに対して渡瀬は少し考えた後、口を開いた。

 

「まずは、可能性を除外していこう。

君たちは『バイロケーション』という言葉を知っているかい?」

「ば、バイロケーション?」

「知らないですね・・・」

「俺もです」

「よろしい、まずはバイロケーションについて説明しよう。

バイロケーションというのは同じ人が同時に複数の場所で目撃される超常現象の1つだ。

『一身二ヶ所存在』と表現されることもあるね」

「同時に複数の場所で目撃・・・それが僕の身に起きていると?」

「いいや」

水原の問いに対して渡瀬は首を横に振った。

「バイロケーションというのは、人の意識が体から離れる体外離脱の1つとされていてね、

体から意識が離れて遠くの物事をあたかも近くで見ているように感じる遠隔透視、

リモートビューイングの説明にも使われたりするんだけど、

このバイロケーション、自分の意思で発現する能力としての意味合いが強いんだ。

自分の意思とは関係なくこの現象が現れる場合は『バイロケーション』ではなく

『ドッペルゲンガー』と呼ぶ。こっちは知ってるんじゃない?」

「あ、知ってる知ってる!見たら死ぬ!ってヤツでしょ!?」

森林が手を挙げて答える。

「そう、その認識で大体合ってる。

それじゃあ君達に質問だ。その噂になってる偽水原君は2カ所以上同時に見られているのかな?」

「いや、俺が聞いた限りでは、日ごとに場所は変われど皆が言場所は全員同じでした。

偽物が同時に2カ所ってことはないと思います」

水原の答えに渡瀬は顎に手をあてて考える。

「ふむ、それじゃあ次の質問だ。その偽水原君と話したことがあるっていう人は

今までにいたのかな?」

「はい、最初に偽物を見た友人が実際に話したらしいです。

でも用事があるとかですぐに帰っちゃったって言ってました。

それ以降に見た人は皆『話しかけようとしたら逃げてしまった』って言ってました」

水原の答えに渡瀬は薄く笑った。

「そうか・・・よし、なんとなくだけど予想はついたかな」

「ほ、本当ですか!?」

「マジで先輩!?」

水原と森林が身を乗り出す。そんな2人を早苗が抑える。

「まあまあ落ち着いて。

まず言っておくと今回の水原ズは多分『ドッペルゲンガー』ではないよ」

「なんでそう言い切れるんです?」

早苗が疑問に思い聞いてみる。

「バイロケーションにもドッペルゲンガーにも言えることなんだけど、

どちらもそもそも人と話さないんだ。

実際に偽水原君と話したことがある人がいるならそれはドッペルゲンガーではないよ」

「それじゃあ、偽物の招待は一体・・・」

水原の問いに渡瀬は、

「それを今ここで教えるのは簡単だ。だけど偽水原君騒ぎを終わらせたいならちょっと今は

言えないな。

代わりに対策を教えてあげよう。

もしも偽水原君の正体が僕の予想通りなら明日が最後になるはずだよ?」

ずいっと顔を水原に近づけた。

「わ、分かりました」

妙に迫力のあるそれに、水原は従うしかなかった。

 

・・・・・・・・・

 

「今日は、ありがとうございました」

水原が部室から出て行った後、

「しっかし、水原君もよくオカルト研究部になんてきたよねー、

しかも先輩の話も結構熱心に聞いてたしさ。

普通オカルトなんてそうそう簡単に信じるかなー?」

森林が伸びをしながら言う。

「それだけ本人にとっては問題だったんだろうね。

他の誰かならともかく、自分だ。それが自分の知らない所で何日も現れるんだから

不気味でしょうがない。

もしその偽物あ悪さなんかしてしまったら責任がこっちにくるかもしれないしね」

「そういうもんなのかなあ?」

「まあ樹木ちゃんは噂も怪奇現象も大好きだもんね。

自分がそんな目にあったらむしろ大喜びで原因解明に乗り出すか」

「さっすが先輩!分かってるじゃーん!」

渡瀬の言葉に森林は笑う。

そんな光景を微笑ましそうに見ていた早苗だが、まだ気になっていることがある。

「先輩、結局偽物の水原君の正体ってなんなんでしょうか?」

「あ、それ私も気になる。水原君に正体を知られるとまずいんでしょ?

なら私達には教えても大丈夫ってことでしょ?」

「そうだね、君達なら言っても大丈夫か。

でも他の人、特に水原君にはバラさないようにね?いいかい?絶対だよ?」

そう言いながら渡瀬は顔をずいっと近づける。森林の方に。

「なんで私だけ!?」

「君の方がバラしそうだからだよ。性格的にも」

「あれ?森林さん、顔が赤くなってません?風邪ですか?」

「なってない!そんなことより偽物の正体!」

叫ぶ森林にきょとんとする早苗だった。

 

「まず、正体がドッペルゲンガーじゃないって言ったのにはもう1つ理由があったんだ。

こっちはさすがに水原君には言えないから言わなかったけど。

ドッペルゲンガーっていうのはね、『その人の霊的な生き写し』とも言われているんだ。

つまり、ドッペルゲンガーっていうのはその人の『コピー』とも言える。

コピーを生み出しているのはそれが意識的にせよ無意識にせよ元となる人、つまりは本人だ。

本人の霊力によってコピーが生まれているなら、水原君の霊力には何か異常があるはずだ。

そんな人が近くにいるなら、まず早苗ちゃんが気が付くはずだからね」

「わ、私ですか?」

唐突に名前を呼ばれ、少しどもってしまう。

「まあ普通は思わないよね。

早苗ちゃんが妖怪退治とかしてるモノホンの巫女さんだなんてさ」

森林がなんてことなさそうに言い、渡瀬も「そういうこと」とうなずく。

「早苗ちゃんが気付かないならバイロケーションやドッペルゲンガーのような

自分に原因があるパターンではない。

まあ、確信はなかったから、いくつか質問させてもらったわけだけどね。

さて、本人に原因がないなら原因は外部にあるということだ。

水原君になりすましている『何か』がいるということになる。

2人は何か知ってるかい?そういう他の人に変身しちゃうような存在。

妖怪でも悪魔でもなんでもいい」

渡瀬の質問に対して森林は、

「さっぱり、全然、全く、見当もつかない」

と速攻で考えることを放棄した。

「トモカヅキ・・・でしょうか?名前くらいしか知りませんけど

確か人に化ける妖怪だったような・・・」

早苗は恐る恐るといった感じで妖怪の名前を挙げてみる。

「トモカヅキは確かに人に化けると言われている妖怪だけど海の妖怪だ。

今回の件は街中で起こっているし、この町は山の方が近い。

守矢神社もあるわけだしね」

やんわり不正解だと言われてしまった。

「もー!じれったい!

結局先輩は偽物の正体は何だと思ってるのさー!」

とうとう森林の我慢の限界が来てしまった。

頭を抱えながら上を向いて叫ぶ。

「そうだね、だいぶダラダラと長引かせちゃったしそろそろ言ってしまおうか」

そして、渡瀬はようやく答えた。

 

「今回の件、僕は狸か狐あたりの仕業じゃないかと思ってる。

2人のクラスには狸や狐の妖怪はいないかな?」

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