幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

41 / 79
オリジナル色の強い4話裏ですが、
本編がそもそもパラレルだから問題ない・・・よね?
二次創作だからこそできることもあるハズ。


(2)受け手にとって変化は唐突であるという話

のっぺらぼう

 

ある男が夜道を歩いていると、うずくまって泣いている女性を見つけた。

男は女性に近づいて、

「お嬢さんどうしたんだい?大丈夫かい?」

と尋ねた。

だが、女性はうずくまって泣いてばかり。

「お嬢さん、何か悩みがあるなら聞いてあげるから、泣くのを止めて話してみな?」

と男は優しく声をかけた。

すると女性が顔を上げた。

「私、こんな顔だけど、本当に聞いてくれるの?」

その顔を見て男は悲鳴をあげた。

女性には目も鼻も口もなかったのだ。

男は慌てて逃げだした。無我夢中でひたすら走った。後ろを振り返る余裕なんてなかった。

しばらく走っていると、蕎麦屋の屋台の灯りが見えた。

男は急いで屋台に入って叫んだ。

「た、大変だ!大変なんだ!」

男の恐怖に歪んだ顔を見て、蕎麦屋の主人は不審そうな顔をして、

「お客さん、どうしたんです?何かあったんですか?」

と尋ねた。

男はさっきまでのことを蕎麦屋の主人に話した。

すると蕎麦屋の主人は急に不気味な笑い声を上げながら、

「もしかしてお客さん、貴方が会ったのはこんなんじゃありませんでした?」

とするりと自分の顔をなでた。

そこにあるのはあの女性と同じ目も鼻も口もない、のっぺらぼう。

男は絶叫し、気絶した。

 

 

上に書いたのは「のっぺらぼう」の簡単なお話だ。

似たような話を聞いたことがあるのではないだろうか?

のっぺらぼうという妖怪自体は存在しない。

狐や狸、ムジナ(大抵はアナグマのことを指す)などの動物が人を驚かせるために

化けたものと言われることが多い。

顔の無い化け物にもなれるところを見ると、目に見える人間に化けることなど、

狐や狸にとっては容易いことなのかもしれない。

 

少なくとも、佐笠(さかさ)加坂(かさか)はそう思っていた。

佐笠は妖狐(ようこ)と呼ばれる狐の妖怪だ。

人間として、妖怪であることを隠しながら高校に通っている。

妖狐というのは文字通り狐の妖怪だ。

日本の昔話などでは、人や動物に変身して人を化かすことが多い。

江戸末期の随筆『善庵随筆』などでは、妖狐は上から

天狐、空狐、気狐、野狐の順に格が上だとされている。佐笠は野狐である。

野狐とは要するに野良の狐。妖狐としては下位の存在だ。

そんな佐笠は人に、それも他者に化けるのが得意だった。

化け物に化けるには想像力が必要になる。

しかも自分でイチから姿を想像しなければならないのだからかなりの労力を必要とする。

だが、自分が知っている他者ならば、化けるのに必要な想像力はそんなに必要としない。

故に、佐笠は他者に化けることに関しては自信があった。

狐でも狸でもムジナでも、他者に化けることは容易いことだと佐笠は思っていた。

今クラスで話題になっているもう1人の水原の正体が、自分だとは思うまい。

そんな佐笠にある日声をかける者がいた。

東風谷早苗だ。

 

「知ってますからね?」

 

ぞっとした。

全てを見透かしたかのような目で見られたように思えた。

佐笠に言葉を送った東風谷早苗は、さっきとはうってかわって何事もなかったかのように、

いつものように友人と楽しそうに話をしていた。

 

・・・・・・・・・

 

「ちょっと脅かしてやるだけでいい。

その生徒にだけ聞こえるように『知ってるからね?』って言ってやるだけでいい。

あとは相手がよほどヤバい奴じゃなければ上手くいってくれるよ」

昨日、水原が帰った後、渡瀬は自身の考えを言った後で

早苗達に対策として上のセリフを言った。

「確かに、私は巫女ですから生徒の中に妖怪が紛れ込んでるのは知っていますし、

狐か狸の妖怪ということでしたら心当たりもあります。

でも、それだけでいいんでしょうか?」

「私も早苗ちゃんと同じ意見かな。犯人をとっつかまえちゃダメなの?」

早苗と森林は不満そうだった。

そんな2人に森林は言った。

「今回の件はこう言っちゃ水原君には悪いけど、大した被害はないんだ。

ただ水原君の偽物が目撃されたってだけ。

その偽物が何か悪さをしてその罪を水原君に押し付けようとしているんなら

早苗ちゃんが巫女として妖怪退治をしなくちゃいけないかもだけどね。

でも、水原君の偽物は今回何もしていないんだ。

後になって何かしていたと分かったらその時に行動すればいい。

でも今は注意するだけに留めておこう?」

 

そして今日の放課後。

早苗と森林はいつものようにオカルト研究部の部室に来ていた。

「言われた通りにしましたけど、佐笠君、これで止めてくれるでしょうか?」

「そもそも佐笠君が犯人って確証も私達には1つもないんだけどね。

先輩の予想をとりあえず信じただけで」

「これで違っていたらちょっと恥ずかしい気もするね」

「1番恥ずかしいのは私ですよう!違ってたら私意味もなく思わせぶりなこと言って

相手に『何だコイツ?厨二病?』とか思われたらどうするんですかあ!?」

などと話していた時だった。

コンコン、とドアをノックする音が聞こえる。

「どうぞ」と渡瀬が言うと1人の生徒が入って来た。

早苗はその生徒を見て思わず「佐笠君!」と声を出した。

 

「どうして、俺が犯人だって分かったんスか?」

「ん?分かんなかったよ?僕君とは初対面だし」

渡瀬の答えに佐笠は絶句した。早苗と森林も同じく絶句していた。

「僕は化ける能力を持った奴ら相手に片っ端からはったりを仕掛けようとしただけだよ。

君は水原君と同じクラスなんだろう?だから君に最初に仕掛けた。

そしたら君がこうして自白してくれたってだけだよ。

もしも君が犯人じゃなくて、今日も同じように水原君の偽物が現れるようなら

明日は違う生徒相手に仕掛けるだけだしね」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

渡瀬の言葉に森林が身を乗り出す。

「それじゃあ昨日は犯人の名前も顔も知らずに『ソイツが犯人だ』って言ってたの!?」

「うん。僕は君達とは学年が違うからね。他学年のクラスなんて普通は行かないよ」

「・・・本当、よく当たったなあ・・・」

うへぇ・・・と、森林は力なく座った。

まあ確かに、普通は他学年のクラスなんか行かないだろう。

部活の連絡などがあれば別だが、早苗と森林はオカルト研究部に入り浸っているが

部員ではないのだから。

と、早苗は妙に納得してしまっていた。

「答えたくなかったら無理には聞きませんが、佐笠さんはどうして

水原君に化けていたんですか?」

早苗は佐笠に問いかける。

「・・・人気者ってどういう気持ちなのか知りたかったんだ」

佐笠は静かに答えた。

「水原はクラスの中心で人気者だ。隅っこで縮こまってる俺なんかとは違う。

だから人気者ってのがどんな気分なのか1度体験してみたかった。

まあ、結局は見た目を真似ただけじゃよく分からなかったんだけどさ。

結局、実際に人気者にでもならなきゃ

人気者の気分なんて分かりっこないっことが分かっただけだったよ。

こうしてバレちゃった訳だし、今後同じようなことはしない。約束する」

佐笠の言葉を聞いていた渡瀬は、

「つまり君は友達がいないのかい?」

と言った。

「い、痛い所を遠慮も容赦もなく指摘するっスね・・・」

佐笠は若干引き気味に答える。

そんな佐笠に対して顔色ひとつ変えることなく、渡瀬は言った。

「放課後ヒマならオカルト研究部に来なさい。

人気者の気分は分からないと思うけど、友達がいる気分は分かるかもしれないよ?

ウチの部活、部員は僕しかいなくてね。

彼女達もよく遊びに来るんだけどやっぱり男友達が欲しいじゃない?

君さえよければ、僕はいつでも君を歓迎しよう」

渡瀬の言葉を受けて、佐笠はしばらく考えこんでいたが、やがて顔を上げて、

 

「おっす」

 

とだけ言って部室から出て行った。

 

・・・・・・・・・

 

「これで良かったんですよね?」

佐笠が部室から出て行った後、早苗は不安げに呟いた。

「さあね」

渡瀬は気にしない。

「今回の件で佐笠君のクラスの立ち位置が変わるわけでもないし

水原君のクラスの立ち位置が変わるわけでもない。

ただ、変わるのは水原君の偽物の存在だけだよ。

佐笠君が約束してくれたんだ。今回のようなことは起こらないだろう。

水原君の偽物の噂は、いずれ時間と共に忘れ去られる。

佐笠君がどんな気持ちで水原君に化けたのかは知らないけど、

そこは彼の問題だからね。僕らは彼が頼ってきた時だけ、手を貸してやればいい」

こうして、早苗達3人は今回の件に結論を出した。

「それにしても佐笠君って普通に会話できたんだねえ、

私いつも教室の隅で本読んでるイメージしかなかったからなあ。

まあ、普段はそもそもそこまで気にする相手じゃないしねえ」

「それは流石に酷いですよ、森林さん?」

「あっははは、ゴメンゴメン。

そういえば早苗ちゃんが声かけたってことはさ、佐笠君って妖怪なの?」

「ええ、佐笠君は狐の妖怪ですよ?」

「へえ、言われてみれば狐っぽい顔してるかも・・・」

「樹木ちゃんは噂に関することだと獲物を狙う獣みたいな顔をするね」

「あー!先輩ひどーい!女の子に向かって『獣』だなんてー!」

いつもの日常が戻る。

 

それから1週間。水原を見かけたという人はいなくなっていた。

早苗は水原に犯人を教えることはしなかった。

水原は、噂が消えればそれでいいと早苗に礼を言った。

放課後、オカルト研究部の部室ではいつもの3人に加え、もう1人の姿が見られるようになった。

 

・・・・・・・・・

 

そんなことがあったのが5月の下旬のこと。

それからオカルト研究部は決して多くはないが、いろいろな噂や不思議に対して、活動してきた。

それから1年が経ち、早苗達は2年生に、渡瀬は3年生になっていた。

この高校は6月の下旬に文化祭がある。

ちょうど、ほとんどのクラスが文化祭の出し物について準備を始める時期だった。

放課後の準備となれば、当然オカルト研究部に集まることはできない。

その代わり、この頃の早苗達は屋上で一緒に昼食をとるようになっていた。

「そういえば皆のクラスは文化祭の出し物何するの?」

「ん、メイド&執事喫茶。先輩のクラスは?」

「3年生は強制的に全クラス劇だよ。僕のクラスは劇で何やるかでまだ悩んでる」

「そういえば去年も3年生はどのクラスも劇だったっスね」

「というか私達のクラスはなんでメイド喫茶なんでしょう、なんてベタな・・・」

驚くことに、2年生になっても早苗、森林、佐笠の3人は同じクラスだった。

そしてもう1つ。

 

「まあまあ、決まっちゃったモノはしょうがないよ、さーちゃん」

 

1年の間にもう1人、オカルト研究部に集まるメンバーが増えていた。

 

三中(みなか)加奈美(かなみ)。渡瀬と同じクラスの女子生徒だ。

東風谷早苗ならば「さーちゃん」佐笠加坂ならば「かー君」といった具合に、

名前の頭をのばしたニックネームで友人を呼ぶ癖がある。

「三中せんぱあい!笑いごとじゃないですよーう!」

「東風谷さんクラスの男女問わず是非メイドになってくれって

接客班に強制的に入れられてたっスからねえ・・・」

三中に泣きつく早苗を見ながら佐笠はしみじみと語る。が・・・

「そう言いながら、早苗ちゃんがメイドになるかの多数決で

メイド賛成にこっそりと手ェ上げてたのは誰だったかなあ?」

「な、何でそのこと知って・・・!」

「そ、そうなんですか!?佐笠さん!?」

「いやあ、やっぱりかー君も男の子だねえ」

そんな会話をしていると、

キーンコーンカーンコーン、と昼休み終了10分前のチャイムがなった。

「そろそろ戻ろうか」

渡瀬が立ち上がる。

「そうですね、もうすぐ午後の授業ですし戻りましょうか」

「あれ?次って何の授業だっけ?」

「数学っス。ああ、今日は先生に当てられる日っスね、憂鬱だあ・・・」

早苗達も立ち上がり、屋上を出る。

「それじゃあ行こっか、そー君!」

「うん、そうだね」

三中と渡瀬が3年の教室に戻っていく。

「・・・」

早苗はその後ろ姿をじっと眺めていた。

「早苗ちゃん、どうしたの?」

森林が心配そうに問いかける。

「なんか落とし物でもしたっスか?」

佐笠も問いかけるが、早苗は「すいません、大丈夫です。行きましょうか」と言った。

 

そー君。

 

三中のその言葉がなぜか頭に残って離れなかった。

自分も皆も同じように呼ばれているのになぜこの言葉だけがひどく頭に残るんだろう。

早苗にはそれが分からなかった。

 

・・・・・・・・・

 

「ただいま戻りましたー!」

夕方になり、守矢神社に帰った早苗は元気よく声をあげる。

「ああ、早苗、お帰り」

「お帰りー」

「神奈子様?諏訪子様?」

早苗は2人の神に違和感を感じた。

いつもより元気がないような、覇気がないような・・・。

「どうかしたんですか・・・?」

その様子に嫌な予感を感じながらも、早苗は問いかける。

神奈子と諏訪子は目を合わせ、そして、覚悟を決めたように、神奈子が口を開いた。

 

「早苗、幻想郷って聞いたことはあるかい?」




今更言うのもアレですが、感想やもっとこうした方がいい
というのがありましたら遠慮なくどうぞお願いします。
ある程度の話の道筋は決まっているので大きな変更はできませんが、
直せる所があればできる限り直すように努力いたしますので。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。