幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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今回から第5話です。
病院にはあんまりいい思い出はありません。
いや、いい思い出がある方が変なのか・・・。


5話「休止期間、急死奇談」
36・強さの形


~本日のお見舞い~

 

霊夢「想夢、しばらくは永遠亭暮らしになるんでしょ?

   一応入院って扱いなワケだし、お見舞いにコレを持ってきてあげたから、

   ありがたく使いなさい」

 

人生ゲーム―「愛している」と言った貴方の言葉は嘘だったの?―

 

想夢「1人で遊ぶモノじゃないよね?

   あとコレ本当に人生ゲーム?昼ドラのタイトルじゃなくて?」

 

・・・・・・・・・

 

永遠亭という場所は病院の他に、薬の販売を商売として行っている。

八意永琳には、「あらゆる薬を作る程度の能力」があるのだ。

しかし、その料金はとても良心的だ。いや、良心的なんて言葉では足りないくらいだ。

なにせ、お金をとらないこともあるのだから。

その理由としては、八意永琳があまり金に対して執着していないからだろう。

故に、想夢に対しても、八意永琳は治療費をとることはしなかった。

その代わりに・・・。

 

「新薬のテスト・・・ですか?」

「ええ、貴方には治療費を請求しない代わりにこの薬の実験に付き合ってほしいの」

 

早苗との戦いの次の日、永遠亭の診察室のような場所にて、想夢と永琳は話していた。

永琳は自分の手に錠剤をとって想夢に見せる。

「これが貴方に試してみてほしい薬よ」

「これは?」

「人間の自然治癒力を高める薬よ」

「自然治癒力?」

「そう。自然治癒力っていうのは人間や動物が生まれながらに持っている、

ケガや病気を治す力や機能を指す言葉のこと。

例えば、小さな怪我なんかはバイキンが入らないように絆創膏でも張っておけば

気がついたら治ってるってことがあるでしょう?

それも自然治癒力があるからね。

この薬を飲めば一定時間自然治癒力がアップするってワケ。

貴方の骨のヒビだけど、このままなら完治するまで大体1ヶ月ってところかしらね。

だけどこの薬を使えば、私の予想なら1週間前後で完治すると思うわ」

「なるほど・・・」

柔らかい笑顔で話す永琳。自信に満ちているようとも言える。

「まあ、貴方が嫌だって言うなら無理強いはしないわ。

言い方を悪くすれば、貴方に対して実験台になれって言ってるようなモノだし。

それに、副作用がないとも限らないわ。

安心して、断っても貴方のホネのヒビは責任を持って治すから」

「ああ、いえ、やらせていただきます」

新薬と言われると不安があるが、別に強制はされていないのだし、いいだろう。

「そう、ありがとう。

それじゃあ今日から1日1回、夕食の後にこの錠剤を1錠水と一緒に飲んで頂戴」

そう言って、永琳は薬の入ったビンを想夢に渡す。

「何か体に異変を感じたらすぐに言ってね?」

さっきまでの柔らかさとは違い、想夢の目をじっと見て真剣な表情で言う永琳。

やはりこの人にも不安はあるのだろうか。

すると、

 

「なぁに、心配することはあ無い。師匠の薬はいつだって完璧よ・・・」

 

ガラリと診察室の扉が開かれたかと思ったら、ウサ耳少女がキメポーズで立っていた。

 

「・・・あれ?」

よく見れば昨日想夢が目が覚めたときにいた少女ではないか。

はて、あんな性格だっただろうか?

「ふむ、どうかしたか?随分と珍妙な顔をしておるようだが?」

ウサ耳少女はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

ただし、キメポーズは崩さずに。

これが漫画だったら背景に「ゴゴゴゴゴ」と効果音でもつきそうなものだが、

正直、どう反応したらいいものかさっぱり分からない。

「・・・」

すると、永琳がすっと無言で立ち上がった。

「永琳さん?」

「む?師匠?トイレか?」

永琳はそのままウサ耳少女の前まで歩いていくと・・・

「そぉい!!!」

手刀でウサ耳少女の頭を叩いた。

ゴッ!!と痛々しい音が響く。多分手加減なんてしてない。

「いっっっっっっっったぁ!?し、師匠!?いきなり何するんですか!?・・・ってアレ?」

鈴仙(れいせん)、気分はどうかしら?」

「え?あ、師匠!?だだだ大丈夫ですハイ!!」

慌てたように叫ぶ鈴仙と呼ばれたウサ耳少女にため息を吐く永琳。

「この薬はダメね・・・」

「あの、永琳さん?薬って・・・」

想夢は恐る恐るといった感じで聞いてみる。

「ああ、効果薬(こうかやく)って薬よ。

ホラ、プラシーボ効果ってあるでしょ?

ただのアメを『これは酔い止めの薬だ』って言って渡すと本当に酔い止めに効いたってアレ。

薬じゃないものを飲んだのに薬を飲んだのと同じような効果を発揮する、

いわゆる『思い込みの力』ってヤツね。

彼女に飲ませたのはちょっぴり体がポカポカする程度の薬だったんだけど、

それを彼女には自信をつけさせる薬だと言って渡したの。

だけどまさかここまで効果を発揮するとはねぇ・・・。

自信がつき過ぎて言動まで変になるとは思わなかったわ・・・」

そう言いながら永琳はこめかみに指をあてる。

「うう、師匠?私どうかしてたんですか?」

「しかも覚えてないときたか・・・」

手で頭を押さえながら鈴仙と呼ばれたウサ耳少女が涙目で話す。

その様子を見て永琳はさらにため息を吐く。

あれ?あれれ?あーれれぇ?

と、想夢の中に疑問が生まれる。

「ああ、想夢君、私からの話はこれで終わりよ。薬の件、よろしくね?」

振り返ってウィンクをする永琳。

「あ、はい・・・」

力なく返事をする想夢。

さっきまでは期待していたが、今はもう不安しかなかった。

 

・・・・・・・・・

 

「・・・あれ?」

永琳との話を終えて、部屋に戻ってくると部屋の襖が少し開いていた。

しかし、誰かが中に入っているとか、そういうことではないらしい。

襖の上の方に黒板消しが挟まっているのだ。

なんともまあ古典的な。というかどこからこんなものを持ってきたのか。

想夢はとりあえず襖を引く。

入ろうとしなければ黒板消しが落ちてきても当たることはない。

しかし、黒板消しが落ちることはなかった。

「・・・あれ?」

どうやら襖にくっついているらしい。

手を伸ばして黒板消しをとる。

粘着面を外にして一回転させたガムテープを使ってくっつけていたようだ。

「しかし一体誰が何のために・・・?」

そんなことを考えていると・・・

 

「ばぁん!!!!」

 

「うぉっと!?」

大きな音にびっくりして、黒板消しを落としそうになる。

一瞬、黒板消しが爆発したかと思ったが、黒板消しから音が鳴っただけのようだ。

いや、黒板消しから「ばぁん」なんて音が出ること自体おかしいことなのだが。

しかしながら、この黒板消しを一体どうすればいいのやら。

その場に立ったまま考えていると、

「入らないのー?」

と声が聞こえてきた。

振り向くと、鈴仙とは別のウサ耳少女がそこにいた。

鈴仙と比べると随分と幼い見た目をしている。

「君は?」

「人に名前を聞くときは自分から名乗るのが人間の礼儀だったと思ったけど?」

「それは君から話しかけなかった場合の話だ」

「ふむ、まあそういう考え方もあるだろうねー。

あたしゃ因幡(いなば)てゐ。この永遠亭に世話になってる善良なウサギさんだよ」

「そう、僕は博麗想夢。よろしく」

想夢が名乗るとてゐは首を傾げた。何か変なことを言っただろうか?

「おや、疑わなくていいのかい?

私がこの自己紹介をすると大抵は『自分から善良と言うなんて怪しい』って

警戒するんだけどなー?」

「まあ、わざわざ反応するようなことでもないかなって」

「えー、なんか傷つく反応だなー?」

「ごめんごめん、でもさ、『善良な一般市民』なんているわけないからね?」

「おっ?そう言い切るってことは君ィ、さては性格の悪いヤツだね?」

てゐがニヤニヤと笑う。

「さて、どうだろうね?」

想夢は、笑わなかった。

 

「それで、てゐは僕になんか用?」

想夢が部屋に入ると、てゐも一緒に入ってきた。

想夢が座布団に座ると、てゐも座布団を用意して想夢の前に座った。

「いやあ、折角噂の博麗の巫女が入院してんだからさ、

永遠亭の住人としてはどんなヤツか見ておきたいじゃん?

そのために黒板消しまで仕掛けたんだからさ」

「ああ、やっぱりアレ仕掛けたのは君だったのか」

「まあねぇ、

しっかしまあまあまあまあ、反応が普通だったねえ。

それこそただの一般市民のような反応と言うべきか。

博麗の巫女なら驚きと共にその場で1回転とかしてみるべきだと思うんだよね」

「それはそれでわざとらしすぎると思うけどね」

何かのCMだろうか?

「しっかしまあ不思議なモノだよねえ」

てゐが目を細めて笑いながら口を開く。

「不思議って?」

「あんたからは強者の気配や雰囲気を全く感じないことだよ。

強いヤツってのは大抵そういう何かを纏っているものなのさ。

例えばウチの師匠とか、例えば八雲紫とか、例えば博麗霊夢とか。

一目見てコイツは強いって思わせる何かを強者は持っているモノなのさ。

それは威厳だったりカリスマだったり恐怖だったり不思議さだったりするわけだけど、

あんたはそのどれも持っていない。

それに近い何かは持っているようだけどね。

よく言えばそれなりの強さを持っている。悪く言えば中途半端な強さでしかないってヤツさ」

この兎、初対面で随分ズバズバと人を滅多切りにしてくる。

「それで結局、何が不思議だってのさ?」

「君からは強さを感じないのに東風谷早苗とガチバトルをして勝っていることが

あたしゃ不思議なのさ。

彼女には強くなろうとする(・・・・・・・・)強い意志(・・・・)がある。

それは漫画やアニメなんかでの所謂『王道な強さ』ってヤツさ。

まるで主人公のような強さとも言うべきかね。

だからこそ不思議なのさ。

あんたから感じる強さと東風谷早苗から感じる強さなら、断然、東風谷早苗の方が上だ。

それでも実際に戦って勝ったのはあんたの方。

ね?不思議だろう?」

そう言っててゐは笑う。

想夢は笑わなかった。というか笑えなかった。

なんだかもしかして自分って嫌われてる?そんな気分になった。

「ちなみに・・・君から見た僕の持つ強さってどんなの?」

「ん?それは・・・」

てゐが何か言いかけようとした時だった。

「てーゐー?どこに行ったのー?」

と廊下から声が聞こえてきた。

「おっと!楽しいおしゃべりの時間はここまでさ!

それじゃあ縁があったらまた会おう!」

声が聞こえてきた途端、てゐは流れるような動作で部屋の窓をガラリと開けて、

外へ飛び出して行ってしまった。

開けっ放しの窓から、秋の寒い風が部屋の中に入ってくる。

想夢はちょっぴり、てゐを恨みながら窓を閉めた。

「あ、すいません、こっちに薄いピンクのスカートの垂れ耳の兎が来ませんでした?

因幡てゐっていう名前なんですけど」

想夢が窓を閉めると同時に、永琳に鈴仙と呼ばれていたが部屋に入って来た。

「君はさっきの・・・」

「え?ああ、自己紹介がまだでしたね。

私の名前は鈴仙・優曇華院(うどんげいん)・イナバと言います。どうぞ遠慮なく『鈴仙』とお呼びください」

「え?ああ、博麗想夢です」

やけに「鈴仙」の部分を強調していたが、何かこだわりでもあるのだろうか?

「貴方は博麗想夢さんですね?師匠から聞いてます。

それで、てゐを見なかったでしょうか?」

「あー、さっきまでは部屋にいたんですけど、どっか行ってしまいました」

「もう、てゐったら・・・分かりました。ありがとうございます」

そう言って鈴仙は部屋から出て行こうとする。

「あ、1つ聞いてもいいですか?」

その後ろ姿に向かって想夢は呼び止める。

「何でしょう?」

「さっきてゐに僕は『強さ』は持っていないけど近い物は持っている的なことを

言われたんですが、何か分かりませんか?」

「・・・あの子、そんなことを言ったのね・・・まったくもう。

すいませんが、私には分かりかねます。

彼女は他者の『強さ』を見るのが得意ですから何か感じるモノがあったのでしょう」

「・・・それじゃあ、貴方から見て僕はどんな風に見えます?」

「それは、出会ったばかりの兎に聞くようなことではないと思いますが、

そうですね・・・強いて言うなら、

 

貴方からはなんだか偽物の空気を感じます」

 

なんてことなさげに、興味なさげに、鈴仙はさらりと言い放った。

 

・・・・・・・・・

 

あの後、鈴仙が部屋から出て行ってからも、想夢はしばらく動けずにいた。

しかし、気になりはしたものの、それを聞くことはできなかった。

そしてそのまま夜になった。

想夢は何もすることもなく、縁側でぼうっと星空を眺めていた。

そんな想夢の背中に

「隣、いいかしら」

と声をかける者がいた。

「どうぞ」

と、後ろを振り返りもせずに想夢は答える。

想夢の隣に腰かけたのは、黒く艶やかで真っ直ぐな長髪が美しい女性だった。

「貴方は?」

今日1日で何回同じ質問を繰り返しているのだろうと思いながらも、想夢は尋ねる。

「ん?私?私は蓬莱山(ほうらいさん)輝夜(かぐや)。永遠亭の主みたいなモノよ。

貴方の名前はは博麗想夢でしょう?今噂になっている博麗の巫女さん。

 

ねえ?ちょっと私とお話ししましょう?」

 

輝夜と名乗った女性はそう言って、想夢に向かって微笑んだ。

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