幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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野菜を切って皿に盛るはずが、
三角コーナーにポイしていました。
疲れてるのかな?


37・会話、解は?

~本日のお見舞い~

 

魔理沙「おーっす想夢、入院だって?1人じゃ退屈だろう?

    ホレ、漫画持って来てやったぜ」

 

想夢 「おお、ありがとう!」

 

魔理沙「ああ、そうそう、その漫画返す時は

    紅魔館のパチュリーんトコに持ってってくれなー」

 

想夢 「は?パチュリー?何で・・・まさかこの漫画・・・」

 

・・・・・・・・・

 

蓬莱山輝夜。

輝夜という名前からも分かる通り、私は昔話の「かぐや姫」そのものなのだと彼女は語る。

 

「そこで私は言ってやったのよ。

だったら私の言う無理難題をクリアしてみせろってね」

「無理難題って自覚はあったんですね」

かぐや姫の話は誰もが知っているだろう。

かぐや姫の美しさに、彼女に求婚する男性も多かったが、彼女はその全てを断った。

特に熱心だった5人の貴公子には、結婚の条件として無理難題を与えた。

ある者には火鼠の皮衣を、またある者には蓬莱の山の玉の枝を持ってこいと言った。

「そんなもんが地球上にあるかって話よねえ?

それなのにあいつらったらマジになっちゃってさあ、

でもこっちがいくら『結婚する気はない』って言ってんのにナルシスト気味に

『僕なら絶対に君を幸せにできる』とか言ってきちゃってさあ。

こっちも迷惑してたしお互い様よね?」

言葉とは裏腹に輝夜は笑っている。

思い出話ができて楽しいのだろう。

「そうだ、折角だし貴方にもかぐや姫の無理難題を1つ、与えましょう」

「いや別に僕プロポーズとか考えてませんけど?」

「いいからいいから、ちょっとした遊びだと思って付き合いなさい」

輝夜はケラケラと笑う。

その真意はさっぱり分からない。

「それじゃあ貴方に質問します。

貴方にとって命の価値とはどれくらいのモノでしょうか?」

なんだか重い内容の質問だった。

なにがちょっとした遊びだ。

「・・・さて、僕には答えられない質問です。答えを決めることができません」

想夢は明確な返答をしなかった。

生まれてかれこれ22年。

命の価値なんてモノについて真剣に考えたことなど1度もない。

だから質問されても答えられるはずもなく、自分なりの考えというのも持っていなかった。

「そう、それじゃあやっぱり貴方にとっては文字通りの無理難題だったってことかしら?」

「そうですね」

「『分からない』ってのも立派な答えの1つだと思うけどね」

「ちなみに、輝夜さんはどう考えてるんです?命の価値について」

想夢が聞くと、輝夜はすっと立ち上がった。

「そうね、私だけが聞くのも不公平だし、私の考えも教えましょうか」

そう言うと、輝夜は想夢から少し離れ、くるりと想夢の方へ振り向いた。

そして唐突に服を脱ぎ始める。

「え、いや、いきなり何して・・・!?」

「いいから黙って見ていなさい」

慌てる想夢に輝夜は軽く言い放つ。

上半身は全て脱いでしまった。

白い肌が月の光にさらされ幻想的に見える。

しかし、その幻想を濁らせるものが1つあった。

ポケットにでも入れていたのか、輝夜の手には小型のナイフが握られている。

「これが私の命の価値」

 

そう言うと、輝夜は自信の胸にナイフを突き刺した。

 

「なっ!?」

「っ・・・ぅ・・・」

驚く想夢のことは気にせずに、輝夜は胸から乱暴にナイフを引き抜く。

塞ぐ物が消えた傷口から血がどろりと流れる。

「いっっっっっつう・・・!あーもうやっぱ慣れないなあ、涙出そう・・・」

涙が出そうというより、輝夜の目からはぼろぼろと涙が出ている。

「何やってるんですか!?えっとえとえと、どうするんだっけ・・・

絆創膏・・・じゃなくて包帯?それともガーゼか!?」

突然の輝夜の奇行に、想夢は混乱していた。

しかし、想夢と違って輝夜本人は冷静だった。

「ほら、慌てている暇があったら私の傷口をよく見てみなさい」

「嫌っ!自傷癖に加えて傷口を他人に見せたがるグロテスクな趣味とか無理っ!」

「ええい!落ち着けィ!」

輝夜のキレ気味のツッコミにより、想夢はやっと冷静さを少しだけ取り戻した。

「・・・そういえば、なんでそんなに冷静なんですか?」

「ほら、ちゃんと見てみなさい。見れば全部分かるから」

そう言って輝夜は自分の胸を指さす。

女性の胸をまじまじと見つめるのもどうかと思うが、

相手が見ろと言ったのだから仕方ないと自分に言い聞かせて、想夢は輝夜の胸を見る。

「・・・あれ?」

輝夜が手で血を拭った胸には傷など無かった。跡も残さずに。

「どうなって・・・」

「これが私の命の価値よ」

もう片方の手で涙を拭いながら輝夜は話す。

「傷がすぐに塞がることを言っているんじゃないわよ?

こんなのはただの副産物に過ぎないわ。

 

私ってね、不老不死なの」

 

予想のナナメ上のカミングアウトだった。

回復能力が高いとか自然治癒力が凄いとかそんなレベルを軽く超えていた。

不老不死。

老いない。

死なない。

死なないが故に、殺せない。

死なないが故に傷がついてもすぐに治ってしまう。

「さてはて、肉体がどんなに傷ついても完全に治ってしまうから不死なのか、

それとも不死だから傷が治るのか、これもある種の無理難題かしら?

話を戻しましょう。

私の思う人間の命の価値。

私は人の命にはそれはそれは高い価値があると思っているの。

寿命というルールに縛られた命こそ美しい。

殺せば死んでしまう、脆くて消えやすい命こそ輝いて見える。

だってそうでしょう?

限りがあるからこそ人は足掻いて足掻いて自分の命を精一杯に燃やすのよ。

終わりのない命なんてつまらないもの。

死なないのだから生きることに対してだんだんと消極的になっていくのよ。

この幻想郷には人間の他にも妖怪もたくさんいるわね?

妖怪は人間よりも長い寿命を持っているけど、それでもいつかは死んでしまう。

だから人間と同じように生を楽しむことができる。

さて、命の素晴らしさが理解できたかしら?

これが、私の思う人の命の価値。

命を尊く思うからこそ、貴方に聞きたい」

その時、輝夜の目が細まったように見えた。

そして次の瞬間、輝夜は想夢の目の前に移動し、想夢の頬に手を添えていた。

自らの血で真っ赤に染まった手を。

「何故、貴方は命の価値をわざわざ下げるようなマネをしているのかしら?」

顔は笑っているものの、目は笑っていない。

まるで獲物を逃がすまいとする獣のような雰囲気を輝夜から感じた。

「言っている意味が、よく分かりません」

「フフ・・・そんなに動揺しなくてもいいのよ?別にとって食おうってワケじゃないの。

ただちょっと聞きたいことがあるだけよ」

まるで心まで見透かされている気分だった。

心臓が落ち着かない。何を言われるのか恐怖している自分がいる。

そんな想夢の様子を輝夜は楽しんでいるようだった。

「貴方の噂はここ、永遠亭にも届いてる。

『もう1人の博麗の巫女が現れた』って皆が噂していたわね。

今じゃあ時間も経ったからそこまで噂は聞かなくなったけど。

だけど、この噂のもっと詳しい部分についてはあまり触れられていないのよね。

『もう1人の博麗の巫女の正体は封印された3代目博麗の巫女だ』ってヤツ。

過去の時代の人間がなぜ現代に復活したのか、誰も話さない。

噂の中心となっている本人ですらね。

だけど私が疑問に思っていることはそこじゃない。

別に博麗想夢の復活した理由なんてどうでもいい(・・・・・・)

そして。

 

「私が気になっているのはなんで『自分は博麗想夢だ』なんて

ウソを吐き続けているのかってことよ」

 

輝夜の言った「疑問」に想夢の緊張は今日1番に高まった。

「何を言って・・・」

「ごまかせるなんて思わないことね」

想夢が言おうとした反論は、何かを言い始める前に輝夜に塗りつぶされてしまった。

「私は不老不死なの。

だから生物が生きている時間ってのにはそこそこ敏感なのよ。

それにウチには永琳がいる。もはや羨ましくすら思えない程に高レベルの天才がいる。

貴方の腕の骨のヒビを調べるため、いくつか検査を受けたでしょう?

その時についでに貴方自身について調べさせてもらったわ。

結果として面白い事実が分かったわ。

貴方同様、東風谷早苗にも検査を受けてもらったわけだけど、

彼女ってもともとは外の世界から幻想郷にやって来た外来人の現代人なのよね。

そんでもって東風谷早苗と博麗想夢のデータを比べてみればあら不思議。

ほとんど一致しちゃうのよね。

まあ、調べたのは私じゃなくて永琳だし、私の領分じゃないから

具体的に何のデータがと聞かれちゃうと返答に困るけど。

さあ、答えてちょうだい?明らかに現代人である貴方は誰?」

想夢の頬に添えられている輝夜の手にほんの少しだけ力が入る。

実際に肌で感じているからこそ分かる。

どれだけ笑っていても、どれだけ自分の優位性を示しても、

輝夜は想夢に対して緊張している。

警戒していると言い換えてもいい。

正体の分からない相手に警戒して、緊張している。

きっとこの場で戦えば輝夜が勝つのだろう。

片腕にヒビのある体で不老不死の存在を相手に勝てるような気は想夢には全くなかった。

それでも、今にも殺されてしまいそうな恐怖を目の前にしても、

今更意味などないのだろうという考えが頭の中をよぎっても、

想夢は努めて顔に恐怖が出ないように、無表情を装って。

「僕は博麗想夢です。そのことについては、嘘は言ってません」

と言った。

「・・・含みのある言い方ね?」

「過去の人間であることに関しては全て嘘です。

ただ、それでも僕が博麗想夢であることに変わりはありません」

「ふうん?つまりこういうことかしら?

貴方は3代目の巫女、博麗想夢と同じ名前を持つだけで別人であると」

「・・・」

「でも、それなら何故貴方は博麗の巫女の力を使えるのかしら?

それも貴方が自分の正体をごまかす理由にあるのかしら?」

「・・・分かりました。話しましょう」

「あら?」

根負けした。

このまま話を続けていても、すぐにバレてしまうような気がした。

だから想夢は話すことにした。

自分がこことは別の並行世界の博麗の巫女であることを。

その事実を隠すために3代目博麗の巫女の存在を語っていることを。

「ふぅーん、そう・・・」

想夢の説明を聞いて、輝夜はすんなりと納得したようだった。

「そうなると新しい疑問も出てくるけど、まあいいわ。

私が気になっていた部分は分かったからね」

そう言って、輝夜はようやく想夢から手を離す。

「・・・生き返った気分です」

「それはさぞかし良い気分ね?」

輝夜は笑う。想夢は笑えなかった。

 

・・・・・・・・・

 

さて。

お忘れかもしれないが、この永遠亭には想夢の他にもう1人入院している。

「うぅ、夜中にトイレに行く時ほど不安な時ってそうそうないですよ・・・」

そう、東風谷早苗である。

とはいえ想夢と違って、早苗の体にはそこまで危険なダメージはない。

明日検査して体に異常がなければその場で退院といった具合だ。

現在トイレを目指して歩いている早苗の顔は若干不安そうに見える。

別に夜中に1人でトイレに行けないわけではない。

そんな年齢はとっくに過ぎている。

ただ、やはり暗い廊下を通ってトイレに行くというのは歳をとっても慣れないものだ。

どうしても不安を感じてしまう。

そして、

そんな不安を感じている状態だと、いろんなモノが怖く見えてくる。

 

きーこ、きーこ、きーこ・・・

 

「ひっ!?」

どこからかまるで車輪を回すような音がする。

例えるならば、糸車を回して裁縫をする時のような。

そんなきーこきーことした小さい音が鳴っている。

「な、何ですかぁ?何の音ですかぁ・・・?」

明らかに震えた声で早苗は辺りを見回す。

そして、早苗は見る。

夜の暗がりの中からきーこきーこと音をたててやって来る、車輪の存在を。

「・・・あれって」

それは車いすだった。何の変哲もないただの車いす。

早苗が見たのは車いすが勝手に廊下を移動している姿・・・ではない。

車いすが動いているのだ。当然動かしている人がいる。

車いすの場合、車いすに座って動かしている場合と車いすを押している場合がある。

今回のは座って動かしている場合だった。

誰かが車いすに乗っている。

暗がりのせいか顔はよく見えないが、恐らく女性だろう。

「あ、あの、貴方は誰ですか?」

早苗は車いすに乗っている人物に声をかける。

別に永遠亭で患者とすれ違うことなんて珍しくもないが、

夜中に病院で誰かと会うなんてシチュエーションが早苗にとってアウトだった。

これで相手が幽霊だったなんてオチは勘弁してもらいたい。

「ん?私?」

返って来た声は可愛らしい少女のようなものだった。

「私はここの患者だよ、お嬢ちゃん」

と、車いすの人物は言う。

「そういう君は誰なんだい?」

「あ、私は東風谷早苗です」

問い返され、早苗は答える。

「そうかそうか、君があの奇跡を起こすっていう守矢の巫女か」

表情は見えないが、早苗には相手が笑ったように思えた。

「だけど、ダメだなぁ・・・」

恐らく、笑っているであろう車いすの人物は言葉を続ける。

 

「君の奇跡じゃ、ボクには届かないようだ」

 

 

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