幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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最近暑くない?(唐突)
まだ4月なんだけどなあ・・・。
それとも私の服装がダメなのか・・・。


38・不治の病、不死の語らい

~本日のお見舞い~

 

咲夜「想夢、入院したんですってね。

   入院中は気分が滅入るでしょうから紅茶を持ってきたわ」

 

想夢「ああ、ありがとう・・・あれ?」

 

咲夜「どうかした?」

 

想夢「紅茶はカップに入ってるし湯気も出てる・・・。

   永遠亭で作ったの?」

 

咲夜「そんな訳ないじゃない。

   紅魔館からここまで時を止めて持ってきたのよ」

 

想夢「えっ」

 

・・・・・・・・・

 

「それではお世話になりました」

次の日、検査で特に異常はなかった早苗は、晴れて退院となった。

永遠亭の玄関口で早苗はお礼を言う。

服装はいつもの巫女服に戻っていた。

「気を付けて帰るのよ?」

そんな早苗を永琳は笑顔で見送る。

その姿は医者と患者というより学校から帰る生徒とそれを見送る先生のように見える。

「それじゃあまた」

「はい!機会あればまた守矢神社に遊びに来てください!」

想夢もまた早苗を見送る。

こちらは未だに入院服のままである。

「あ、そういえば想夢さん」

「ん?」

「この永遠亭、私と想夢さんの他にも入院してる人がいるみたいです。

よろしければお話ししてみてはどうでしょう?」

最後に早苗はそう言って、永遠亭の外に出る。

「それじゃあ行きましょうか」

外で早苗を待っていた鈴仙が先導する。

永遠亭がある「迷いの竹林」はその名の通り非常に迷いやすい。

通り抜けるには竹林の地理に詳しい者に案内してもらう必要がある。

鈴仙よりもてゐの方が竹林には詳しいのだが、見つからなかったので仕方がない。

 

「入院患者、他にもいるんですか?」

去って行く早苗の背中を見つめながら、想夢はなんとなく永琳に聞いてみた。

「・・・」

しかし、永琳からの返事はない。

「永琳さん?」

「・・・」

想夢が永琳の方を向くと、永琳は顎に手をやり何やら考え込んでいるようだった。

「ねえ、想夢君」

「はい、何でしょう?」

永琳は何か決心したような顔で想夢の方を向いた。

 

「もう1人の入院患者。会ってみたい?」

 

・・・・・・・・・

 

「会ってみたい?」などと疑問形で聞かれはしたものの、

その言葉の意味は「会ってみてくれ」と言ってる風にしか聞こえず、

当然想夢には「はい」と答える以外の選択肢は無かった。

しかし、一連の流れを見る限りまともなヤツではなさそうだ。

少なくとも「新しい友達ができるかな?」なんて感覚で会いに行く相手ではないらしい。

想夢に割り当てられた部屋から大分離れた所にその患者の部屋はあった。

とりあえずは部屋の襖に向かってトントンと2回ノックをする。

「はいはーい」

すると可愛らしい少女のような声が返ってくる。

スッと襖が開けられる。

中にいたのは中学生か高校生くらいの少女だった。

その目線は想夢と比べると大分低い。

身長が低いわけではない。少女は車いすに座っているのだ。

入院服を着た車いすの少女がじっとこちらを見ている。

「あれあれ?見ない顔だね?永遠亭の新しい住人さん?」

人差し指を下唇につけ、首を傾げて少女は想夢に問いかける。

「現在入院中の博麗想夢です。よろしく」

「ああ、あの有名な博麗さんか!なるほどなるほど」

想夢が名乗ると少女は手をグーとパーにしてポンと叩く。

まるで黄色とオレンジのしましまの背景で頭の上の電球のマークが出そうな感じ。

さっきといい今といい、彼女の動きはなんだか演技のように見えてくる。

「ボクの名前は万十寺(まんじゅうじ)百々千代(とどちよ)。この永遠亭に居候させてもらってる患者さ!」

そう名乗りながら、百々千代は両腕を大きく広げる。

見れてば見ている程、話せば話す程、百々千代という少女が嘘っぽく見えてくる。

まるで演劇の中の世界の人物と話しているかのような気分だった。

「うん?君の入院の理由はその腕の包帯かい?」

百々千代は想夢の左腕に巻かれた包帯を見る。

「ああ、骨にヒビが入っていてね、それを治すためにここにいる。

後はまあ、新薬のテスターって奴かな?」

「新薬・・・へぇ、先生、また新しい薬に挑戦してるんだあ!さっすが先生だね!」

「そういや、君の入院の理由は?」

「うん?ボク?」

「まあ、言いたくなければ無理には聞かないけど」

入院や病気のことなど話したくない人もいるだろう。

あれ?コイツさっきこっちの入院についてずけずけと聞いてきたよな?

もしかしてコイツって結構ふてぶてしい?

なんてことを想夢は思ったりしていた。

「いやあ、別にどこが悪いってワケじゃあないんだけどね。

車いすに乗ってるけど脚が悪いから入院してるってわけじゃないし。

むしろ体は健康そのものなんだよね」

「それじゃあ、なぜ?」

想夢が聞くと百々千代は笑いながらこう言った。

 

「ボクって不老不死だからさ、その不死性を消すためにここいいるのさ」

 

まるで食べ物の好き嫌いでも言うかのように。

状況が状況だった輝夜とは違い、百々千代は大したことでもないと言わんばかりだった。

 

・・・・・・・・・

 

永遠亭のとある一室。

その部屋は他と比べて異質な雰囲気を漂わせていた。

薄暗く、部屋の中には見慣れない機械がいくつも置いてある。

そんな機械に囲まれながら、永琳は机の前に座っていた。

右手には赤い液体の入った容器を持ち、左手には黄色い液体の入った容器を持っている。

そして、机の上には何も入っていない容器が置いてある。

からの容器に手に持つ2つの液体を両方入れ、容器に蓋をして軽く振るう。

そして容器の蓋を開けてみれば、そこには綺麗なオレンジ色の液体があった。

「・・・失敗かしら?」

オレンジの液体を見ながら、永琳は難しい顔で首を傾げる。

見栄えは良い。

しかし、彼女の好む結果ではなかったようだ。

「永琳、いるかしら?」

ガラリと戸を開けて入って来たのは輝夜だった。

「あれ?何それ?オレンジジュース?」

「ん?飲む?」

「おーいいの?やりぃ!」

そう言うと輝夜は机の上に置いてある容器の中のオレンジ色の液体を口に含む。

「うぇ!?な゛ぁにごれぇ・・・」

そして、すぐに容器にオレンジ色の液体を戻した。

「はい水。飲まないでうがいして吐き出しなさい」

苦しそうな顔をする輝夜に、永琳はどこから持ってきたのか、水の入ったコップを輝夜に渡す。

水を受け取ると輝夜はすぐに口に入れ、ガラララと口をゆすぎペッと容器に水を吐き出す。

「あー大分すっきりした・・・

ってか永琳!?何よアレ!全然オレンジジュースじゃないじゃないの!」

「誰もオレンジジュースだなんて言ってないわよ」

「じゃあ何よアレ」

「毒薬の試作品ってトコかしら?まあ成功とは言い難いけどね。

口に入れた途端に吐き出すような味じゃあ飲ませる毒としては使えないもの」

怒る輝夜に涼し気な顔でさらりと言う永琳。

そこには医者としてではなく、ただ友人として話す彼女がいた。

「まあ不老不死が毒薬くらいで死ぬとは思ってないわ」

「不老不死だって傷は痛いし、毒は苦しいんですー。

それぐらい永琳だって分かってることじゃない。私と同じ不老不死なんだし」

「そうね、私だって痛いのや苦しいのはなるべく遠慮願いたいわ。

だから輝夜で実験しているわけだし」

「え、えーりん!?」

それが冗談かどうかはひとまず置いといて、

輝夜は真面目な顔つきになる。

「それで?結局さっきの毒は何のために作ってたのよ?

もしかしてあの子のためかしら?」

輝夜の言葉に永琳は頷く。

「そのために作ったものではあったけど、失敗したみたいなのよね。

仮に成功していたとしても毒があの子に効くとも思えないけれど」

そう言って永琳はため息を吐く。

「だからと言って毒殺を大成功させてもダメなのよねえ。

あくまでも目的は不老不死という特異性を取り除くことにあるのだから。

死んでしまっては意味がない。

ホント不老不死って厄介極まりないわね」

自分で聞いておきながら、愚痴のように呟く永琳の言葉に返事を返すこともせず、

輝夜は部屋の中を見回す。

すると、オレンジの液体に輝夜の唾液が混ざった容器の近くに

赤色の液体の入った容器と黄色の液体の入った容器を見つけた。

永琳が手に持っている容器とはまた別の物のようだ。

「えいりーん、これは何?」

「ん?ああ、飲んでみる?」

輝夜は赤い液体を口に含む。

そしてすぐに吐き出した。

「なっにコレェ!?これのどこがトマトジュースなのよ!?」

「誰もトマトジュースだなんて言ってないわよ。

っていうか気付きなさいよ。さっきと同じパターンじゃない」

「み、水!水!」

「はいはい、飲まないでうがいするのよ?」

輝夜に水を渡しながら、

(物忘れが激しくなってきているのかしら?

まあ1000年以上生きてるおばあちゃんだし、ありえなくもないけど・・・。

これも不老不死の影響だとしたら早急に対処しないと)

などと永琳は考えていた。

「ちょっと!何か失礼なコト考えてない!?」

「気のせいよ」

 

・・・・・・・・・

 

「君は蓬莱山輝夜、八意永琳の不死性の証拠というものを見たことがあるかい?」

場所は再び百々千代の病室。

「証拠・・・っていうか永琳さんも?」

「ああ、知らなかったのか。そうだよ、先生も不老不死さ。

あんまり周りにバラしたいモノでもないだろうし、言わなくて当然か」

百々千代は1人で納得したように頷いてから、

「それよりも証拠だよ証拠。先生が知らなくても輝夜姫の方は知っているんだろう?

それでどうなんだい?見たのかい?」

「まあ、見たけどさ」

思い出すのは昨日の夜のこと。

突然上半身裸になった輝夜が自身の胸にナイフを突き刺すという

文字だけにするとかなり猟奇的にも思えるようなあの出来事。

あんな状況だったとはいえ女の子の半裸を見れてラッキーだったと思うべきか

それともいきなりのショッキングなシーンを見てもう思い出したくないと考えるべきか。

ある意味よくトラウマにならなかったなと声に出して言いたくなる。

「そっかそっか、見たんだね。

じゃあ今度はボクの不死性の証拠を見てもらうとしようか」

そんな想夢の悩みなんて知らんと言わんばかりに百々千代はまた笑顔で問題発言をする。

「待って、待って待って、何で2日連続で女の子の自殺もどきを見なきゃいけないの?

これなんて罰ゲーム?今度こそトラウマになっちゃうって」

「大丈夫大丈夫、昨日輝夜姫の何を見たのかは知らないけど

たぶんこっちの方がマシな絵になるはずだって」

慌てる想夢をなだめながら、百々千代が取り出したのは1丁の拳銃だった。

右手で拳銃を持つと、その銃口をこめかみに向ける。

「もっとヤバイ絵になるじゃないかあ!

待って!本当に待って!女の子の脳ミソが吹っ飛ぶシーンなんて見たくないから!」

これはマズイ。想夢の精神安定のためにも止めねばなるまい。

「ほんじゃよく見ててねー」

なんの迷いもなく引き金を引く百々千代。

「軽っ!?不老不死って皆こうなのか!?」

想夢は慌てて止めようと百々千代の右腕を掴もうと自分の左手をのばすが

左腕に巻かれた包帯を見て自分の左腕の骨にヒビがあることを思い出し、

一瞬動きを止めてしまった。

そして、

 

ばあん、と大きな音が部屋に鳴り響いた。

 

「・・・っ」

思わず目を閉じてしまった。

目を開けるのがものすごく怖い。

「ほら、どうしたんだい?目を開けないと見えないよ?」

暗闇から百々千代の気楽な声が聞こえる。

(開けられるわけがない。開けたらどんな光景が目に入ってくるかわかったもんじゃ・・・)

そこまで考えてふと疑問に思った。

「ほらはーやーく、話が進まないよ?」

頭を拳銃で撃って何故目の前にいるであろう百々千代は普通に喋れるのだ?

輝夜だって胸にナイフを刺した時は血が流れていたというのに。

どうせ回復するとしても、頭なんて撃ったら意識を失うくらいのことにはなりそうだが。

「・・・」

勇気を出して恐る恐る目を開ける。

想夢の目に映ったもの。

 

それは、さっきまでと何もかわらない百々千代の姿。

 

そして、彼女が左手の指でつまんでいる、潰れた弾丸だった。

 

「は?どうなって・・・」

「だから言ったでしょ?大丈夫って」

潰れた弾丸をいじりながら百々千代は自信有り気に言う。

「ボクの不老不死は輝夜姫の不老不死とは性質が違っていてね。

どんな傷だって治ってしまうのが輝夜姫の不老不死ならば、

ボクの不老不死はそもそも傷がつかない。

今やってみせたように例え頭を銃で撃っても弾丸の方が潰れボクはノーダメージさ」

拳銃をしまい、右手を銃の形にして人差し指をこめかみにつける。

「まあ、ボクと輝夜姫では不老不死になった経緯が違うからね。

輝夜姫の方の理由が知りたいなら本人に聞いてみるといいよ。

答えてくれるかどうかは知らないけどね。

ボクが聞かせたいのはボクが不老不死になった経緯だからね」

百々千代はこめかみに当てていた人差し指を想夢の方に向ける。

そのまま銃を撃つ真似をしながら言った。

 

「ボクの不老不死の原因は単純さ。ボクのクソッタレな能力のせいさ」

 

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