わりと平和な話が続いています。
(自傷はしてるけど)
~本日のお見舞い~
想夢「あの、妖夢さん?これは?」
妖夢「はい!ダンベルです!入院となれば体も鍛えられないでしょう?」
想夢「いや気持ちは嬉しいんだけどさ・・・僕腕にヒビある状態だし・・・」
妖夢「大丈夫!想夢さんならダンベルを持ち上げる気合いでヒビも治せるハズです!」
想夢「治んないよ!僕をなんだと思ってるのさ!?
君そんなギャグ漫画の体育会系みたいなキャラじゃなかっただろう!?」
・・・・・・・・・
朝。
想夢が永遠亭に来てから今日で4日目となる。
「おはよう」
目を覚ますと上から声が聞こえた。
想夢の上には知り合ったばかりの彼女の顔が・・・見えない。
代わりに脚が見える。車輪のついた椅子が見える。
「・・・」
「どうしたー?寝起きで頭が回らない?」
車椅子に座った少女、百々千代は上から見下ろすようにこちらを見ている・・・のだろう。
顔が見えないので想夢の予想でしかないが。
「・・・なんでいるの?」
とりあえず声を出す。声を出すとなんだか頭も冴えてくる。
まずは目先の問題を片付けなければ。
「今日は君を外に連れ出そうと思ってね。
別に先生から外出禁止とかは言われてないだろう?」
「まあ確かに外出は自由だけどさ」
その代わり左腕にあまり負荷をかけないようにと注意されているが。
「それならちょっと出かけようじゃないか。
なぁに、別に人里まで行こうと言っているワケじゃないよ。
あくまで近場だよ近場」
楽しそうな百々千代の声が頭の上から聞こえてくる。
上半身を起こすことで、ようやく百々千代の顔が想夢の視界に映る。
この小娘(年上)、首をがくんと上に向けて思いっきり天井を見ていた。
「近場ってどこさ?」
「おっと、朝1番のボケをスルーかい?まだ頭回ってないんじゃないの?」
「いいから」
「分かった分かった、言うからさ、もう、イラついちゃって、低血圧なのかねえ?」
百々千代はぶーっと口をとがらせる。
「今日行くのは迷いの竹林にある小屋・・・いや、家かな?」
首を傾げながら百々千代は呟く。
「まあとにかく、不老不死に会いに行くんだよ!」
「・・・は?」
イイ笑顔でとんでもないことをさらっと吐き出す百々千代。
「ほうら、興味が出てきただろう?」
愉快そうにカラカラと笑う。
輝夜が不老不死であることを知ったのは一昨日。
百々千代、永琳が不老不死であることを知ったのは昨日。
入院4日目。
輝夜から数えて3日目。
早くも4人目の不老不死と出会うこととなった想夢であった。
・・・・・・・・・
「ここを右」
「ここを左」
「あっと、ちょっと行きすぎちゃったかな。少し戻って」
からからからと車輪が回る。
太陽が高く上るお昼頃、百々千代の指示に従って、想夢は車椅子を押していた。
このところ晴れの日が続いているおかげで土の道でも車いすは問題なく進む。
「ここを右ねー」
しがしながら、よく道が分かるなと百々千代の指示を聞きながら想夢は思っていた。
迷いの竹林が何故迷いやすいのか。
それはどこを見ても全く同じ景色にしか見えないからだ。
この竹林に生える竹は不気味な程に綺麗に並んでいる。
全ての竹が同じ間隔で、同じ感覚で生えているのだ。
まるで方眼紙でも見ているかのよう。
そんな竹林の中を永遠亭の住人は迷わずに進めるというのだ。
百々千代も例外ではない。
とんでもねー小娘だと心の中で思っていた想夢だったが、これには感心する。
そうして百々千代に指示されるがままに足と車椅子を進めていくと。
小屋が見えた。
「ああ、あそこだよ」
百々千代が小屋を指さす。
「小屋にしか見えないだろうけど立派な家だかんね?
トイレだってお風呂だってしっかりついてんかんね?」
「家の条件って風呂とトイレだっけ?」
百々千代の言葉に想夢は苦笑いで返すが、
実際のところ家の条件など想夢も百々千代も知らないのでなんとも言えない。
ちなみに、法律的には家と小屋に違いはないらしい。
そんなわけで小屋・・・もとい家の前までやって来た想夢と百々千代。
「あっそびっにきったよー!」
百々千代が小屋の戸をトントンと叩く。
途中でトントンがドンドンに変わる。
トントン、ドンドン・・・ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
戸のノックがビートを刻む。
太●の達人もビックリの連打力を百々千代が見せつける!
脚が動かない分の力が腕にでもいっているのだろうか。
「おーい!いないのー!?」
一度戸を叩くのを止めて百々千代は叫ぶ。
そしてもう一度戸を叩こうと腕を振り上げたその時。
「うるせえええええぇぇぇぇぇッッッ!!!聞こえてるっつーの!!!」
戸が勢いよく開かれ中から人が出てきた。
白い長髪にもんぺ着用と、また新しいタイプの少女だった。
しかし、あまりにも突然戸が開いたものだから、勢い余って百々千代の腕は動いてしまう。
「あっ」
「え?ぐふ・・・」
くぐもった声をあげて少女は後ずさる。
戸を叩こうと動いた百々千代の腕は、丁度拳が少女の顔面を撃っていた。
・・・・・・・・・
「いやあ、ごめんね?いきなり出てくるもんだからさあ」
「いや、お前のアレは絶対わざとだよね?
だって私言ったもん。用があるならインターホン鳴らせって前に言ったもん」
頭をかきながら笑顔で謝る百々千代を、少女は鼻をおさえながら睨む。
勢いよく鼻をぶつけたせいか涙目になっている気がする。
「で、お前誰?」
少女は今度は想夢の方を睨む。
「え?あ、博麗想夢・・・です、はい」
少女から感じる威圧感に負け、なんだかいつもよりも丁寧に挨拶してしまう。
「はくれい・・・?ああ、アレね」
アレだ片付けられてしまった。
「私は
「よろしくお願いします・・・」
初対面なのでしょうがないことではあると思うのだが、
今までの幻想郷の住人と比べると距離を感じる自己紹介だった。
「そんなに気にしなくてもいいと思うよ?
妹紅ちゃんは人よりも内側と外側の線引きがはっきりしてるだけだからさ。
人と関わるのは苦手だけど仲良くなった相手には遠慮しないってタイプなだけだから」
百々千代がケラケラと笑いながら想夢の背中を叩く。
フォローのつもりなのだろうか。
「それで、百々千代?要件は何?
わざわざ新顔連れてウチに来たってことは何かあるんでしょう?」
妹紅は険しい顔で百々千代に尋ねる。
想夢も百々千代をじっと見つめる。
出かける前に「不老不死に会いに行く」と意味深に言ったのだ。
きっと何かあるのだろう。
思いつくのは百々千代の不老不死に関することだろう。
じっと百々千代が言葉を発するのを待つ。
そんな空気の中で百々千代は、
「え?別に?ただ遊びに来ただけだよ?そう言ったじゃん」
と、あっけらかんと言った。
「「は!?」」
想夢と妹紅の声が重なる。
「あれだけ意味深に言っておいて!?」
「何を言っているのかね君ィ?あんだけギャグパートで話を進めてきたのに
そんなにいきなりシリアスになるワケないじゃないか」
慌てる想夢に対してなんだか腹の立つ表情をしている百々千代。
「はぁ、とりあえず飲み物持ってくる」
溜息をつき、妹紅は部屋の奥へと入っていった。
「大丈夫?もしかしかして怒らせたんじゃないの?」
「ダイジョーブダイジョーブ、ああ見えて面倒見のいいヤツなんだよ?」
「そうだね、現に今思いっきり面倒かけてるんだもんね」
少しすると、妹紅がお盆を手に戻って来た。
お盆の上には飲み物の入ったコップと茶菓子の皿が乗っている。
「はい、麦茶でいい?」
「あ、どうも」
「あんがとねー」
妹紅の用意した麦茶を飲んで一息つく。
「それで、本当に遊びに来ただけ?何かの用事とかじゃなくて?」
「うん、ただ遊びに来ただけー。
強いて言うなら想夢君の紹介をするためだよ」
しつこく確認する妹紅だが、百々千代は遊びに来ただけとしか言わない。
そうしてしばらく3人で話していた。
・・・・・・・・・
「それじゃあそろそろ帰ろうか?想夢君、車椅子押してー」
日が傾く夕方近く、晩御飯の時間も近くなってきたので帰ることにした。
「送ってくよ。日が落ちると活発になる妖怪もいるし、
お前もその腕じゃあ戦えるか心配だし」
よっこいせと妹紅が立ち上がる。
まあ確かに片腕での戦闘なんてしたくないので妹紅の申し出をありがたく受け取ることにする。
竹林の中を3人で歩く。
正確には歩いているのは2人だけだが。
妹紅が道を知っているので、帰りは行きと比べるとスムーズに帰ってこれた。
「それじゃ、後はもう大丈夫だろうし、私は戻るわ」
「え?あぁ、はい」
「またねー」
永遠亭の近くまで来ると妹紅はそこで案内を終えて帰ってしまった。
「妹紅って、永遠亭の人と仲悪いの?」
「いんや、永遠亭の人っつーかかぐや姫と?
仲が悪いって言い方が合ってるのかどうか分からないけど、
会ったらケンカしちゃうくらいには犬猿らしいよ?
さすがに人送ってる最中にケンカなんてしたらシャレにならんし、
そうなる前に帰っておこうって考えじゃない?」
「ふーん、そんなにヤバイの?そのケンカって?」
「2人共不老不死だからね。
普通の人なら簡単に死んじゃうようなレベルのこともわりとやるよ」
「うわぁ・・・」
自分で聞いたことではあるが、想夢は軽く引いてしまった。
永遠亭は比較的平和だと思っていたらそうでもないようだ。
この幻想郷に平和な場所など存在しないのか・・・。
「あーそうだ、想夢君」
「ん?」
永遠亭の中にに入る直前、百々千代が車椅子を押す想夢の手を止めた。
「妹紅ちゃんにはああ言ったけどさ、
本当は今日妹紅ちゃんの家に行ったことにはちゃんと意味があったんだよ?」
「え?」
「君を連れて遊びに行くこと自体が意味になってるのさ。
ふざけたカンジで言っちゃったけど、君を妹紅ちゃんに紹介すること。
それが1番の目的だよ」
「それってどういう・・・」
「仲良くしてやってね?」
百々千代はにいっと笑顔で問いかける。
まるで答えを最初から知っているかのように。
「それじゃ、早く家ン中入ろ?今日の晩御飯はなんだろうね?」
「はは」
さっきまでの意味深な態度はどこへやら。
想夢は苦笑いを浮かべながら車椅子を押して永遠亭へと入っていった。
・・・・・・・・・
その日の夜。
晩御飯を終えた百々千代が部屋に戻ると、1通の封筒が机の上に置いてあった。
万十寺百々千代様。
手紙にはそう書かれているが、差出人の名前はなかった。
「・・・」
そんな怪しい手紙を、百々千代はためらいなく開けて中身を取り出す。
出てきたのは1枚の手紙だった。
手紙にはただ1文だけ、
もうすぐ準備が完了しそうです
とだけ書かれていた。
「ふうん、そっかそっか。それはまあ、嬉しいことなんだろうねえ」
誰が聞いているわけでもない。誰が見ているわけでもない。
それでも身振り手振りは大げさに、百々千代は笑う。
「まあ、ボクにはきっと関係のなくなる話だろうねえ」
そう言って百々千代は手紙を丸めてゴミ箱に捨てた。