幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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頭の中にストーリーがあるのに文章にできない作者です。
想像力と文章力をください・・・。


5・記憶と疑惑と思惑

「さて、まずは自己紹介から始めましょう!」

「結局押し切られた・・・」

 

おそらくお偉い様の娘であろう少女(少なくとも想夢はそう思っている)に誘われて、

想夢は現在茶屋にいる。

「私は稗田(ひえだの)阿求(あきゅう)、稗田家当主を務めております」

「へえ、当主・・・君が?」

「はい!」

内心、想夢は驚いていた。

ただの裕福な少女だと思っていたら自分のことを当主だと言う。

お偉い様の娘というか、お偉い様そのものだった。

阿求と名乗った少女が嘘をついている可能性もあるだろうが、裕福であるということは、

有名であるということと同義である。

おそらく、人里に住むほとんどの人が当主の名前を知っているのではないだろうか。

極端な例を挙げれば、「私が総理大臣です」と言っているのと同じだ。

だからきっと、阿求の言葉に嘘はないのだろう。

・・・だとすれば、きっとこの思考に意味はない。

「それで、あなたの名前を教えてくださいますか?」

「ああ、博麗想夢だ」

「やっぱり!」

やっぱり?と想夢は聞き返す。

「ああ、すいません。

実は昨日八雲紫様が稗田家にいらっしゃいまして、博麗想夢という人物について調べたいと」

「・・・僕について調べるために君の家に?」

「ああ、すいません!説明不足でしたね」

わたわたと話す様子は当主とはいえ年相応だなと想夢は思った。

「稗田家は人里で最も多くの資料を保管しているんです。

特に幻想郷の歴史については稗田家が代々『幻想郷縁起(げんそうきょうえんぎ)』という本を編纂しています。

そして調べた結果、博麗想夢とは3代目の博麗の巫女の名前であると分かりました。

八雲様から博麗想夢を名乗るお人がこの幻想郷に来ていると聞きまして、

是非ともお会いしてみたいと思いあなたのことを探していたのです」

「はあ成程、それで僕だと分かった理由は?」

「事前に八雲様からあなたの写真をもらいました」

「いつ撮ったんだ・・・」

 

・・・・・・・・・

 

しばらく話をして、想夢は茶屋をあとにした。

想夢が去ったあとで、

「・・・どうだった?」

阿求の後ろから声がする。

振り向けば、阿求の後ろには八雲紫がいた。

「悪い人には見えませんでしたし、嘘をついている様子もありませんでした。

しかし、本当に彼は3代目博麗の巫女、博麗想夢なのでしょうか?

正直、まだ信じられません。

稗田家に生まれる『御阿礼(みあれ)()』は1度見たものは忘れません。

だから『幻想郷縁起』に間違いがあるとは思えません。

ですが・・・」

「そうね」と紫が言葉を引き継ぐ。

「3代目なんてもう随分昔のことだし、巫女として強かった初代ならともかく

3代目は順番も巫女としての力量も平凡で中途半端であまり印象に残らないのよねえ。

だからこそ『1度見たものを忘れない程度の能力』を持つ『御阿礼の子』の編纂した

『幻想郷縁起』の情報が鍵となるんだけど、これはどういうことかしら?

博麗想夢の情報は載っていたけど・・・

 

女性・・・なのよねえ」

 

・・・・・・・・・

 

その日の夜のこと。

「失礼します、お嬢様」

真っ赤な屋敷の真っ赤な部屋に、メイド服の女性が入る。

彼女が「お嬢様」と呼ぶのは部屋の中で椅子に座っている吸血鬼の少女。

咲夜(さくや)、早速だけど紅茶を入れて頂戴」

吸血鬼の少女はメイド服の女性に命令する。

「ここに」

次の瞬間には、テーブルの上に淹れたての紅茶が置かれていた。

「相変わらず仕事が早くてなによりね、ところで咲夜?

今日のお使いでは何か収穫はあった?」

この場合の収穫とは、「何か面白そうな話はあったか?」という意味である。

「そういえば、1つ報告すべきことが」

「何かしら?言ってみなさい」

「どうやら外来人が1人、幻想郷に入ったらしいです」

「外来人?最近じゃあ珍しくもなくなってきたけど、それがどうしたの?」

「それが、ただの外来人ではないようです。

なんでも、博麗神社に住まわせてもらい名前を博麗想夢というらしいです」

「へえ、博麗神社に博麗想夢ねえ・・・どちらにしても何だか意味深ね」

幻想郷に住む住民にとって外来人は珍しいものではない。

幻想郷と外の世界を隔てる結界を偶然通り抜けてしまう者、

妖怪の賢者の様々な思惑に巻き込まれる者、

何らかの事故や事件に巻き込まれる者、

そういった理由で外の世界の住人が幻想郷にやって来てしまうことは、

よくとまではいかないにしても確かにあることなのだ。

そして、幻想郷に来てしまった外来人達は、大きく3つに分けられる。

1つは、博麗神社から外の世界に帰る者。

基本的に外来人は1週間もあれば博麗神社の情報を手に入れ、外の世界に帰る。

ただし、外の世界に帰る者は幻想郷での記憶が無くなってしまう。

1つは、幻想郷に永住する者。

幻想郷に来たばかりの者は基本的に元の世界に帰ろうとするが、

ごく稀に幻想郷に永住する者もいる。

1つは、幻想郷の妖怪に殺される者。

博麗霊夢のような特別な存在を除いて、妖怪に対して人間というのは無力だ。

殺された者達には申し訳ないが、「運が悪かった」と言うしかない。

 

幻想郷に入ってしまった場合、外の世界に帰るにしても

しばらく寝泊りできる場所が必要になる。

永住するならば自分の住処が必要になる。

どちらにしても本来、博麗神社に人を泊めることはない。

博麗の巫女としての仕事に問題が生じる可能性があるからだ。

そんな博麗神社に人が泊まり、更に名前が「博麗想夢」というのだ。

これを不思議に思わない訳がない。

「最近は異変も起きてなかったけど、これはなんだか面白いことになりそうね」

吸血鬼の少女の口がニイッと三日月を形作る。

「咲夜」

「はい」

「その博麗想夢とかいう外来人とコンタクトをとりなさい。

そして可能であればこの紅魔館に誘いなさい」

「かしこまりました」

そう言って、咲夜は部屋から消えた。

「運命の変化はきっとこのことだったのね?私にも見えない運命なんて・・・

ああ、なんだか本当に楽しくなりそうな予感がするわ」

 

吸血鬼の少女の独り言は続く。

夜はまだ始まったばかりなのだから。

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