病院で渡されたシロップ薬を思い出しました。
粉薬とシロップ薬は苦手です。
~本日のお見舞い~
阿求「想夢さん!お見舞いに来ましたよ!」
想夢「阿求」
阿求「いやぁ遅くなって申し訳ありません。仕事が忙しくて・・・」
想夢「いや、来てくれただけで嬉しいよ」
阿求「まあ、お上手なんですからもう!
あ、これお見舞いの品です。どうぞ」
想夢「ああ、ありがとう。・・・これは、羊羹?」
阿求「はい!人里の茶屋の羊羹です!」
想夢「・・・初めてまともなお見舞いを見た気がする・・・」
阿求「はい?」
想夢「いや、何でもないよ。本当ありがとうね?」
阿求「はい!」
・・・・・・・・・
入院生活5日目。
「骨はもう大丈夫みたいね。なんか不便とかはあった?腕が痛むとか」
「いえ、そういうのは特になかったです」
「そう、それなら今日と明日様子を見て問題なかったら退院ということにしましょう」
午前中の検査の結果、腕の骨のヒビはなくなっていた。
予想していた期間よりも短かったが、特に問題も起きなかったことから
新薬の実験は大成功と言っていいだろう。
今日問題がなければ、明日からは軽い運動ならしてもいいらしい。
腕が治ることについては嬉しいことではあるが、
今日1日は大人しくしてないといけないことには変わりない。
ほぼ健康だけどとりあえず安静にしていなければというのが怪我や病気では1番辛い。
インフルエンザとかで熱は下がったけど今日1日は安静にしててねと
言われた時の気分に似ている。
自分はもう元気なつもりだが1日中布団で横になっていなければならない。
まあ、幸い病気ではないので
「うつしたらヤバイからうろちょろするな」とは言われないが。
いや骨折でもうろちょろしたら迷惑か・・・。
「さて、どうしようか・・・」
暇の潰し方を考えるが、どうにも思いつくものがない。
魔理沙が持って来てくれた漫画も全て読み終わってしまっている。
これを返しに行かなければならないのが自分だというのがとても面倒だ。
そんな風にとにかく時間を潰そうといろいろ考えていると・・・。
「想夢、いるかしら?」
声と同時に部屋の戸が開いた。
「輝夜さん?」
戸を開け部屋に入って来たのは輝夜だった。
「入るよ」
「妹紅も?」
輝夜の後から妹紅も部屋に入って来る。
「む・・・」
部屋に入った妹紅はしかめっ面をしていた。
名前を呼んだだけだが何か悪いことでもしてしまったのだろうかと不安になる。
「えっと・・・どうかした?」
「私がタメ口で輝夜が敬語なのがなんか気に入らない。輝夜もタメ口にして」
どうやら犬猿の仲というのは本当のようだ。
というか、そこは普通「自分にも敬語を使え」ではないのか。
輝夜と想夢の仲を縮めようと気を遣っている可能性が・・・あると思いたい。
「いいんじゃない?私も家来でもない人から敬語で話されるのってなんか疲れるし。
別に想夢が姫様扱いしてくる必要もないわけだし」
輝夜はケラケラと笑っている。
「でも百々千代とは私友人関係のハズなんだけどあの子私のこと『かぐや姫』って
嫌がらせのように呼び続けてるのよね。止めろって言ってんのに」
「なんか嫌われることでもしたの?」
「いやー、アレは絶対本人が面白がってるだけだと思うわ」
輝夜と妹紅が2人で話し始めてしまった。
「あのー、何か用があったんじゃ?」
このままでは何故部屋に来たのか分からないまま時間ばかりが過ぎてしまう。
本当は仲良いんじゃないのこいつ等?と思いたくなってくる。
まあ口には出さないが。
「ああ、そうだった。一緒にゲームしようと思って呼んだんだよ」
そう言うと、妹紅は手に持っていたゲームソフトを想夢に見せる。
マ●オパーティ4
「・・・あんた等本当は仲良いんじゃないの?」
言ってしまった。
思うだけに留めておこうとついさっき思ったばかりなのに口に出してしまった。
なんだこいつ等。
仲良いじゃん。
普通に友達じゃん。
一緒にゲームするレベルじゃん。
「いやいや、勘違いしないで頂戴?
私と妹紅はどちらのゲームセンスが上か白黒はっきりつけるために
このゲームをするのであって決して仲が良いってワケじゃないのよ?
ただこのマ●オパーティ4を2人でプレイしてCOMを相手にするよりだったら
人力のプレイヤー4人で遊んだ方が盛り上がるじゃない?
ちょうど今この永遠亭には暇人・・・じゃなくて手の空いてる人が私達の他にも
いるわけだしね?ね?私の言いたいこと分かるわよね?」
輝夜が必死に弁明してくる。
いや何故ゲームセンスで勝負しようとしてるんだこの人達。
昨日の百々千代の話が何1つとして伏線になってないじゃないか。
しかもサラっと暇人と言わなかったか?
ツッコミを入れるとキリがない。
「と、とにかく!
ゲームするんだから私の部屋に来なさい!
もうすでに百々千代も呼んでるんだから!いいわね!?」
ビシィッ!!!と効果音がつきそうなくらい勢いよく輝夜は想夢に向かって指を指す。
「・・・この展開はかんがえてなかったなあ」
そう言いながら、とりあえず想夢は輝夜と妹紅についていくことにした。
・・・・・・・・・
「師匠、薬の販売、問題なく終わりました」
「そう、お疲れ様」
人里へ薬を売りに行っていた鈴仙は報告をしに、永琳の部屋に来ていた。
「そういえば、さっき姫様の部屋の横を通ったんですが、
妹紅さん達と4人でマ●オパーティしてるみたいでしたよ」
「そう、まあリアルファイトじゃないなら大人しくゲームしててくれた方が助かるわ。
止める心配もないし」
永琳は苦笑いを浮かべる。
百々千代が想夢に言った普通の人間なら簡単に死ぬレベルのケンカをするというのも
あながち嘘ではないのだろう。
もっともこの場でこのやりとりを聞いていない想夢は未だ
輝夜と妹紅の関係性については疑ったままであるが。
「でもゲーム音を聞く限りだとやってるの4なんですよね。
ウチには6もあるって言うのに」
「姫様のお気に入りはド●キーコングだからね。
それに昔のゲームだって時々やりたくなるでしょう?
私今でも初代のマ●オパーティやってるし。」
「ああ、アレやり過ぎると手の皮向けちゃうんですよねえ」
「そのために作ったんじゃない。皮膚を強化して防御力を高める薬」
「あの薬そんなことのために作ったんですか!?」
「そんなことって何よ!大事なことじゃない!
私がどれだけあのゲームをやり込んだのか知ってるの!?」
「ええ・・・」
マズイ。
だんだんと暴走していく永琳を見て鈴仙は冷や汗をかく。
師匠ってこんなキャラだっけ?と頭の中で考える。
とにかく何か別の話題を探さねば。
「あ、そ、そういえば!師匠!
本当に想夢さんに百々千代さんの不老不死解除を手伝わせるつもりなんですか?」
「え?ええ、そうだけど?」
聞いた瞬間真顔に戻って答える永琳。
相手は師匠だが何だコイツと言ってしまいたい気持ちをグッと抑えて鈴仙は話を続ける。
「こう言ってはなんですが、師匠の力でもなんともできなかったことですよ?
正直、私には想夢さんにそこまでの力があるとは思えないのですが」
「ええ、そうね」
意外なことに、永琳は否定しなかった。
「え?師匠が頼んだんですよね?協力してくれって。
師匠、想夢さんの力に期待して頼んだんじゃないんですか?」
「ええ、確かに、想夢君の力は幻想郷に来た当初と比べれば強くなっているわ。
実際、神の力を振るう東風谷早苗を相手に勝っているわけだしね。
だけど、
百々千代の能力をずっと封じてられる程の力はないでしょうね」
「じゃ、じゃあ師匠は何で想夢さんにお願いなんてしたんですか?」
きっと師匠のことだから何か考えがあってのことだろう。
そう期待を込めて鈴仙は問いかける。
「仕方ないじゃない。だって百々千代がそうしてくれって頼んできたんだもの」
鈴仙は絶句した。
師匠に考えなんて何もなかった。
むしろ師匠は関係すらしていなかった。
「正直、彼女が何を考えているのか分からないけど、
ああして私に頼むってことは何かしらの考えがあってのことなんでしょうね」
永琳はさらに言葉を続ける。
もはや他人事にも聞こえる言い方だ。
「え、ええ・・・。師匠、それ大丈夫なんですか?」
正直、不安を隠しきれない。
「まあ、大丈夫なんじゃない?」
永琳は軽くに言ってのける。
いくらなんでも楽観しすぎなんじゃないか。
そう思った鈴仙は何か言おうとして永琳の顔を見た瞬間、声が出なくなった。
「だってもう済んでしまったことだから。
百々千代の意思が変わらない限り結果は変わらないのよ」
言葉や言い方には全然似合わない。
それでいて、話の内容にはとてもよく似合っている。
そんな冷たい顔を永琳はしていた。
・・・・・・・・・
「いやあ、楽しかったねえ」
晩飯の後、想夢は百々千代に用事があると呼ばれ、彼女の部屋にいた。
輝夜の部屋でマ●オパーティをした後、妹紅は自分の家へと帰った。
「輝夜と妹紅、めっちゃ争ってたな」
「リアルファイトに発展しなくてよかったねえ」
ゲームの途中、輝夜と妹紅の競い合いが激しかった。
お互いにつぶし合って、あまり想夢や百々千代を狙うことはなかったが、
それでも想夢はゲームにほとんど勝てなかった。
3人共想夢よりもプレイが上手すぎるのだ。
「むしろ君が弱すぎたから2人共リアルファイトまでいかずに済んだのかもよ?」
そう言いながら百々千代はクックック・・・と笑う。
手をグーにして下唇にあて、我慢するように笑う様子は、やはり演技のように
想夢の目に映るのだった。
「ところで、用事って?」
「ああそうだ、今日は君にプレゼントがあるんだ」
百々千代は机の前まで移動して何か紙袋のようなものを手に取る。
「はいコレ」
紙袋を百々千代は想夢に渡す。
「開けてみて」
百々千代に言われて紙袋を開けて中を見てみると、クッキーが入っていた。
「ささ、遠慮せずに食べなさい」
ニッコリと満面の笑みで言う百々千代。
その笑顔から妙な迫力を感じ、断れる雰囲気でもない。
というか普通にしててくれれば断る理由なんて何もないのだが、
笑顔の強要のせいで何か企んでいるのかと疑ってしまう。
変な薬とか入ってないよね?
想夢はクッキーを1つ口に運ぶ。
「・・・美味しい」
普通に美味しいクッキーだった。
「よかったあ、上手く出来てたみたいだ」
ホッと胸を撫で下ろす百々千代。
どうやら本当に何も企んではいなかったらしい。
「でも、どうしてクッキーを?」
「ん?だって想夢君明日で退院でしょ?
だからちょっと早めの退院祝いってヤツだよ」
「そう?ありがとう」
「ふふん、どういたしまして」
腰に手を当て胸を張る姿は、やはり演技しているように見えた。
「それじゃあ、そろそろ部屋に戻るね」
百々千代の部屋で話している内に、夜も遅い時間になってきた。
「・・・ねえ、想夢君」
戸に手をかける想夢の背中に、百々千代が呼びかける。
今まで聞いたことのないような小さな声だった。
「君は、死ぬことについて考えたことがあるかい?
先生も、かぐや姫も、妹紅ちゃんも、ボクも、皆不老不死だ。
そして皆、死ぬことについて考えている。
君は、自分の死について考えたこと、あるかい?」
背中を向けているので想夢には、百々千代がどんな表情をしているか分からない。
だが、想夢は振り向かない。
振り向かないまま、こう答えた。
「僕には、分からないよ。
死ぬってのがどんなことなのか、死ぬってのがどんな気持ちなのか。
想像もできない。
だけど、叶うならば笑いながら『良い人生だった』って言いながら死にたい」
「そっか・・・うん、ありがとう、変なことを聞いたね。
それじゃあ、お休みなさい」
「ああ、お休み」
そして、想夢は出て行った。
部屋に1人、百々千代は静かに呟く。
「やっぱり、君に頼んで正解だったみたいだ。君が死を知っている人間で本当によかった」
そして百々千代は笑った。
誰にも見せない、素の表情で。
・・・・・・・・・
ちなみに。
想夢が出て行った後でさあ寝ようかと百々千代は布団の方を向いた。
しかし、車椅子の状態のため、ここから布団に行くのは少々疲れる行為である。
出て行く前に布団に入るのを手伝ってもらえば良かったと
百々千代は軽く後悔したとかしなかったとか。
・・・・・・・・・
ついでに。
幻想郷に来てから想夢は基本的に夕食の後すぐ歯を磨いている。
当然、百々千代からクッキーを渡された時、想夢はすでに歯を磨いた後だった。
部屋に戻った後でクッキーを食べたことを思い出しだし、
歯磨きをもう1回やらくてはならなくなったことに、
想夢は軽く後悔したとかしなかったとか。