幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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悩みまくった結果、6話はこんなカンジの方向に決まりました。
また、この話に登場する本のタイトルは作者がテキトーに考えたモノです。
深く考えず、軽い気持ちでどうぞ。


45・存在、損壊

「まさか名前を忘れられるとは思わなかったわ・・・」

「本当に申し訳ありません・・・」

 

紅魔館の図書館にて本の山に埋もれていた少女を引っ張り出してみると、

中にいたのはパチュリーだった。

名前を聞いたのは前回紅魔館に来たときに会った1回だったので忘れてしまっていた。

文化祭の時にも会ったような気がするが、あまり印象に残っていない。

慧音など人里の住人ならよく見かけるし話もするのだが。

「まあ、いいわ。改めて自己紹介させてもらうけど私はパチュリー・ノーレッジ。

普段はこの図書館にいるからよ・ろ・し・く」

よろしくの部分を若干協調したように聞こえたのは気のせいだろうか。

「えっと、よろしくお願いします。

ところで、何があって本の山の中にいたんです?」

「本をとろうとしたら周りの本が落ちてきて、

運動神経に自信のない私はそのまま昨日の夜から今日まで気絶してたってワケよ」

「き、昨日から?あれ、でも図書館には鍵がかかっていたはずじゃあ・・・」

つまり彼女は昨日からずっとここにいたということになる。

小悪魔はパチュリーがいるのを知らずに鍵をかけたのだろうか。

「パチュリー様って本を読みだすと止まらなくて、こっちの声も聞こえなくなっちゃうんですよ。

だからパチュリー様が自分の世界に入っている時はそのまま放っておいて

図書館に鍵をかけるんです。

パチュリー様・・・というより魔女にとっては食事も睡眠も娯楽の範囲ですし」

後ろで2人のやりとりを聞いていた小悪魔が答える。

知っていて鍵をかけるらしい。

「まあ、折角来たんだし何か本でも探してゆっくりしなさい」

そう言うパチュリーは小悪魔のトンデモ発言には全く気にしない。

図書館に鍵をかけられるというのは彼女にとっても当たり前のことらしい。

 

・・・・・・・・・

 

パチュリーに言われたからというわけではないが、

想夢は図書館の中を歩き回りながら本を探す。

折角こんな大きな図書館にやって来て見つけたものが

何かのゲームのメモと礼美利亜という名前の知らない誰かが書いた黒歴史だけというのは

勘弁願いたい。

「ここはどうだろう」

独り言を言いながら1つの本棚の前に立つ。

その本棚の中には小説が置いてあるようだが、どれも想夢の読んだことのない本だった。

有名だが読んだことがないというワケではない。

むしろタイトルすら知らない本ばかりだ。

幻想郷で書かれた本だろうか?

そう考えると、何やら面白そうなモノがありそうな気がしてくる。

特にこういったミョーな本が入ってるコーナーには何かあるのが「お約束」だ。

漫画や小説の読み過ぎ、アニメの見過ぎとも思われかねない考え方だが、

想夢本人が幻想郷というアニメや漫画のような世界に来てしまっているので問題はないだろう。

「『ハウスの動く家』『昭和妖怪合戦ずんどこ』『とどろけ姫』・・・」

どこかで聞いたような名前の本がずらずらと並んでいる。

「こっちの段は・・・

『折角異世界に来たのでチートでハーレムを作ってみた』

『現実でモテない俺が異世界で人気者なのはやっぱりおかしい』

『ここは異世界!?だったら何でも出来るハズ!!』

・・・頭が痛くなってきた」

裏表紙にあらすじが書いてあったので見てみると、

キャラクターに細かい差があるものの、内容はどれも同じようなカンジだった。

さっさと次の段を見てみよう。

「・・・『パリィ・ホッターと受け流し入門』

『ホーム・ローン』・・・またどこかで・・・ん?」

微妙なタイトルの本を見ていると、その中に1つだけこの本棚には似つかわしくない

本が置いてあるのを見つけた。

 

『もう1つの紅魔館』

 

手に取ってみると表紙にはタイトル以外には何も書かれていない。

しかし、この本棚の中に唯一あったマトモな本だ。

いやあ、でも、この本棚に置いてあったほんだしなぁ・・・。

・・・マトモだと信じたい。

とりあえず近くにある机と椅子のみのシンプルな読書スペースで椅子に座って本を読んでみる。

どうやら、過去に紅魔館で起きた異変について書かれた本のようだ。

 

むかしむかし、

幻想郷に紅魔館という真っ赤で大きな館が湖の近くにありました。

紅魔館にはとっても長生きな吸血鬼が住んでいました。

吸血鬼はお日様が嫌いです。

お日様の光の中では吸血鬼はとても弱ってしまうからです。

そこで、吸血鬼は真っ赤な霧で幻想郷からお日様を隠してしまいました。

これでお昼でも外で遊べるぞ!と吸血鬼は喜びました。

しかし、真っ赤な霧は人にとっては体に悪いものでした。

人里に住む人は真っ赤な霧のせいで苦しみました。

この真っ赤な霧を消すには吸血鬼を倒すしかないと、1人の女の子が立ち上がりました。

彼女の名前は・・・―――

 

・・・・・・・・・

 

「・・・ん?あれ?」

 

本を読んでいたと思ったら、気が付いたら寝ていたようだ。

慌てて体を起こして想夢は気付く。

自分は椅子に座って本を読んでいたハズだ。

だが、想夢は地面に仰向けに寝ていた。

そしてなにより、想夢がいたのは図書館ではなかった。

図書館どころか紅魔館ですらない。

石造りの庭に仰向けで寝ていた。

「・・・どうしてこうなった」

辺りを見回すと、神社が目の前に見える。

いつの間に移動してしまったのだろうか。

「あの、大丈夫ですか?」

突然の出来事に焦っていると、神社の中から人が出てきた。

「早苗?」

神社から出てきたのは緑の髪に青い巫女衣装。

東風谷早苗その人だった。

ということはここは守矢神社だろうか?

「え?あ、はい・・・」

声をかけられた早苗は何やら不審そうにこちらを見ている。

「でも、何でいきなり守矢神社に・・・?」

「守矢神社?ここは博麗神社ですけど」

「あれ?そうなの?」

早苗が出てきたから守矢神社かと思ったが、ここは博麗神社だったようだ。

「そうか、博麗神社の方か・・・それじゃあ霊夢はいる?」

「霊夢・・・さんですか?」

想夢の言葉に早苗は首を傾げた。

 

「あの、霊夢さんって、誰のことでしょうか?」

 

早苗の言葉が信じられなかった。

「え、え?いや、霊夢だよ、霊夢。博麗霊夢」

「い、いえ、そんな人は知りませんが・・・

 

あと、私のことを知っているようですが、貴方、誰ですか?」

 

霊夢のことも、自分のことも知らないと言う早苗の言葉に戸惑ったが、

ここで想夢の頭の中には1つの仮設が浮かんだ。

「まさか、また?」

想夢の顔に嫌な汗が流れる。

前にも似たような状況になったことがある。

 

まさか、またしてもパラレルワールドの幻想郷に来てしまったのだろうか。

 

「あの、大丈夫ですか?」

早苗が想夢を心配するが、その顔には警戒の色がまだ残っている。

「早苗、どうかしたか?」

早苗との会話に戸惑ったり慌てたりしていると、神社の中からもう1人女性が出てきた。

その女性は金髪に、9本の狐の尻尾を生やしていた。

「八雲・・・藍」

「む?君は・・・」

蘭は想夢を見て少し驚いたと思ったら、早足で想夢に近づき、想夢をいろんな方向から

じろじろと見だした。

「あ、あの?藍さん?」

早苗が呼びかけるが、藍は気にせず想夢を観察する。

そして、一通りいろんな方向から想夢を観察し終えた後、藍は想夢にこう言った。

「君は、博麗の血の者なのか?」

 

・・・・・・・・・

 

その後、とりあえず中で話をしようということで、

神社のとある一室の中、想夢と早苗、藍の3人は向かい合っていた。

「そうか、パラレルワールドの博麗の巫女か・・・」

想夢の自己紹介に蘭は少し考える仕草を見せ、すぐに想夢に向き直った。

「君がどのような幻想郷にいたのか知らないが、

とりあえずはこの幻想郷について説明したほうがいいだろう。

まず、君の言う博麗霊夢という人間はこの幻想郷にも博麗の歴史の中にも存在しない。

さらに言えば今この幻想郷に正式な博麗の巫女は1人もいない。

ここにいる東風谷早苗が現在の博麗の巫女代理だ」

「博麗の巫女が、いない?」

蘭の言葉に想夢は少し驚いた。

霊夢がいないだけならともかく、博麗の巫女自体がいないとは思わなかった。

早苗が博麗神社にいるのはそういう訳だったのか。

「先代の博麗の巫女の命が長くはもたないと分かってから、

我が主である紫様は次の代の博麗の巫女を探しに行ったきり今も帰ってこない。

そうしているうちに先代も死んでしまった。

だが、偶然にも守矢の巫女が幻想入りしてきて、博麗の巫女の代理を頼んだという訳だ。

以来、この幻想郷は私が結界の管理をし、早苗には博麗の巫女代理として

妖怪退治などの仕事を任せているのさ」

「は、はい・・・そんな感じです」

想夢が早苗の方に目を向けると、早苗はおずおずといった感じに口を開いた。

まだ警戒されているらしい。

「ところで、想夢君。

君が元の世界に帰れるように私の方でも何か方法を探してみよう。

その代わりと言ってはなんだが、その間早苗の手伝いをしてくれないだろうか。

早苗には保護者代わりの2人の神がいるが、妖怪退治にいちいち神様が出る訳にもいかない。

私もいざという時のために結界の管理に重点を置かねばならない。

早苗以外にも異変の解決者はいるにはいるが、そういうのは1人でも多い方がいい。

どうだろうか?」

「それぐらいなら引き受けますけど、僕そこまで強くないですよ?

弾幕だって撃てないからスペルカードルールも使えないし」

想夢の返答を聞くと、藍はきょとんとした顔になった。

 

「スペルカードルール?何だそれは?」

 

思わず想夢は早苗の方を向く。

早苗も不思議そうな顔で想夢を見ていた。

そして2人の反応を見て想夢は思い出した。

スペルカードルールの発案者が博麗霊夢であるということを。

博麗霊夢が存在せず、彼女に近しい八雲紫が不在であるこの幻想郷では、

スペルカードルールは存在しないのだ。

「な、なんてこった・・・」

当然ながら、弾幕の撃てない想夢は実際にスペルカードルールで戦ったことなど1度もない。

仮にこの幻想郷で誰かと戦うことになったとしても、

やることは今までと何も変わらないだろう。

しかし、この幻想郷は想夢のいた幻想郷といろいろ違う点が多すぎる。

前回、別の幻想郷に早苗と迷い込んでしまったときはすぐに帰れたが、

今回もすぐに帰れるという保証はない。

先行きが不安になってくる想夢だった。

2度目とはいえ、慣れるモノではない。

 

・・・・・・・・・

 

結局、その日はそのまま博麗神社に泊まることになった。

見た目は全く同じ博麗神社だが、どこか落ち着かなかった。

「ほうほう、博麗想夢か、ほうほうほう・・・」

「ふむふむ、博麗の巫女ねえ、ふむふむふむ・・・」

想夢の目の前には見覚えのある2人の神がいた。

八坂神奈子、洩矢諏訪子、共にこの幻想郷では初対面となる。

どこかに出かけていたらしく、想夢達が話している途中に帰って来た。

2人とも想夢の知る性格のままだったが、どこか違和感を感じずにはいられなかった。

早苗とも距離の開いた関係のままだ。

 

そして、次の日。

朝、起きると早苗、藍、神奈子、諏訪子の4人が神社の外で空を見ていた。

想夢も外に出て空を見てみる。

時間的に日は既に登っているはずだ。

しかし、眩しく光る朝日の姿はどこにもない。

あるのは、鈍く光る白い太陽を隠すような赤い空だけだった。

心なしか視界もぼんやり赤くなっているような気がする。

「何だ・・・コレ?」

「霧だよ」

独り言のように呟いた想夢の言葉に藍が返す。

「現在、幻想郷中を覆うように赤い霧が広がっている。

そして、赤い霧のせいで太陽が隠れてしまっているんだ」

「それって何かヤバイんですか?」

「ああ、霧が太陽を隠しているだけなら曇り空と何も変わらない。

『何か今日薄暗いなー』って思うだけですむだろうが、この霧は妖怪が生み出したもの。

この状態が長時間続けば人間の体には悪影響が出るだろう・・・」

藍は空を睨みながらそう言った。

状況は思ったよりも深刻そうだ。

「犯人は分かっているのか?」

神奈子が欄に問いかける。

「恐らくは紅魔館に住む吸血鬼だろう。

このしつこい赤色と、霧を使うという手段。

こんな方法を使うのは霧の湖のすぐ近くに住む奴ぐらいのものだろう」

「そうか。早苗、分かっているな?」

「はい!妖怪退治ですね!」

神奈子が早苗に目を向けると、早苗は勢いよく空に飛び出して行った。

「あー、もう行っちゃったよ・・・早苗はせっかちだなぁ」

諏訪子はそんな早苗の様子を苦笑いで見送る。

「さて、想夢君」

藍が想夢の方に振り返る。

「昨日の今日だが、早速頼むよ。

早苗を手伝ってこの異変・・・『紅霧異変』とでも名付けようか。

首謀者を倒して紅霧異変を解決してくれ」

 

こうして、異なる幻想郷での想夢の異変解決が始まった。

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